特集

フライング Vを年代ごとにレビュー。Vintage Salon vol.7 Gibson Flying V Collection

GIBSON
・1958年製 Flying V sn:8 2704
・1967年製 Flying V sn:000926
・1975年製 Flying V sn:412168
・1980年製 Flying V2 sn:82940021

 東京・渋谷にある“ESPミュージアム”で、2017年1月29日(日)、「Vintage Salon vol.7 Gibson Flying V Collection」が開催される。これはESPミュージアム所蔵の貴重なヴィンテージ・ギターを、アンプで鳴らし、そのサウンドの素晴らしさを体験するという有料予約制の公開視聴会だ。今回は59年、67年、75年のフライングVに加え、80年のフライング V2も登場。デモンストレーターにSYUを迎え、ミニライブ形式の「Vintage Salon」となることが予想される。

■ギター・デザイン史を語る上で欠かせないVシェイプ・モデルの元祖

[1958年製 GIBSON Flying V sn:8 2704]

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▲1958年製 GIBSON Flying V sn:8 2704

 1950年代、フェンダー社とギブソン社は競争するかのようにエレクトリック・ギターの開発を行なっていた。新鮮なテレキャスターやストラトキャスターのデザインに対して、伝統的なアーチトップ・スタイルを踏襲しているギブソン・レスポール・モデルは、新鮮味に欠けるといった声が一部のユーザーから寄せられていた。そこでギブソン社では、斬新なソリッド・ギターの開発に着手した。"モダニスティック・ギターズ"と名付けられたこのプロジェクトからは、1958~59年にかけてフライング V、エクスプローラの2機種が発表された。しかし、当時の一般的なギターのイメージからはほど遠かったこれらのギターが市場に受け入れられることはなく、製造は短期間で打ち切られた。その後、ギターが備えた優れたデザイン性と機能性が時代とともに再認識されるようになると、60~70年代にかけて次々に再生産され、現在ではギブソンを代表する人気モデルになっている。

 モダニスティック・ギターズの第一弾として1958年春にフライング Vが発売された。当時のアメリカは、初の人工衛星エクスプローラ1号の打ち上げに成功し、宇宙開発ブームが訪れていた。こうした状況の中で開発されたフライング Vは、ヘッドストックからボディまでが一体となった独創的な形状で、このデザインにはデザイン・パテントが認可された。

 弓矢を連想させる直線を使ったシンメトリーなボディ・デザインは従来のギターとはかけ離れており、ボディの木目も中央でV形に合わせられている。ボディ/ネックに使用される木材はコリーナの商標名で知られるホワイト・リンバウッド。マホガニーに似た木目を持ったこの木材は、それまで一部のギブソンのスティール・ギターにも使用されていた木材でもある。

 斬新なのはボディ形状だけでなく、最終22フレットまでがほぼボディから飛び出した状態でボディ/ネックがジョイントされ、深いダブル・カッタウェイ以上の演奏性を実現していることである。ボディ厚は1-1/2インチ(約38ミリ)で、約43ミリのナット幅に設定されたローズウッド・フィンガーボード、ヘッドストック・フェイスには、アンプやスティール・ギターに使われていたプラスティック製ロゴが取り付けられている。

 ハードウェア類はいずれもゴールド仕上げのパーツが使われているのも特徴で、クルーソン・デラックス・チューナー、チューン "O" マティック・ブリッジ、2つのハムバッカー(PAF)などは同年代のレスポール・モデルと共通している。また、弦はボディを貫通する形で裏側から張られている。

 斬新なスペックが満載されたオリジナル Vは、1958~59年にかけて98本が出荷された。

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▲ほぼ最終フレットまで飛び出した形状のネック・ジョイント部は、ダブル・カッタウェイ以上の演奏性を誇る。また、直線、シンメトリックといったデザインは時代性を考慮すると極めて先進的であった。

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▲木目をV字に合わせているのが50年代モデルの特徴。このsn:8 2704も以前紹介したsn : 9 1713もボディのサイズが大きいにも関わらず軽い。コリーナ(ホワイト・リンバ・ウッド)を使うことで、大きなサイズと軽さを両立させている。

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▲バック

■音楽シーンの変化に合わせ再登場した新設計のフライングV

[1967年製 GIBSON Flying V sn:000926]

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▲1967年製GIBSON Flying V sn:000926

 60年代後半になると、音楽シーンもブルース・ロック、サイケデリックといった新しいロック・スタイルが登場し多様化していった。当時のギブソンからは、SG、ファイアーバードという2種類のソリッド・ギターが発売されていたが、拡大するソリッド・ギターの市場を踏まえ、フライング Vの再生産が試みられた。後に数回再生産されるが、フライングVの最初の再生産は1966~67年にかけてのことで、ナチュラルとチェリーの2カラーがトータルで113本生産されている。

 このフライング VはアウトラインこそV形だが、内容は50年代とは大きく異なっている。まず、ボディ/ネックにはマホガニー材が使用され、約40ミリのナット幅、そしてボディ厚はSGと同じ1-5/16インチ厚(約33ミリ)と薄く、更にボディ・サイズも一回り小さくなっている。また、ボディ/ネックが17フレット位置でジョイントされるようになった結果、パーツ全体がボディの中にずれ込むようなデザインになっている。2つのピックアップ、コントロールのパーツ類が大型化されたピックガード上に取り付けられているのも特徴となる。以降のフライング Vは、基本的にこの66~67年スタイルを踏襲する形で製作されている。

 50年代同様に先端部分が尖ったヘッドストックはやや細くなり、ギブソン・ロゴは、ファイアーバードと同様にトラスロッド・カバーへと移動された。特に長く大きなトラスロッド・カバーは、ごく初期モデルのみの特徴であり、ヘッドストック裏側には縦向きにシリアル・ナンバーが打刻されている。出荷時にはショート・ヴァイブローラが搭載されていたが、写真のギターは既にストップ/バー・テイルピースへと交換されている。

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▲ボディに使われている木材はマホガニー。写真のギターは塗装のクラックこそ入っているが、良好なコンディション。

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▲パーツ類も50年代とは全く異なるものが搭載。ショート・ヴァイブローラを外したネジ跡が確認できる。

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▲ボディとネックのジョイントは17フレット位置。

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▲バック

■時代がデザインに追いつき、レギュラー・モデルとなったフライング V

[1975年製 GIBSON Flying V sn:412168]

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▲1975年製 GIBSON Flying V sn:412168

 60年代後半から70年代初頭にかけて生産されたフライング Vは、いずれも結果的にリミテッド・モデルとなっていたが、ついに1975年にレギュラー・モデルとして定着した。また、フィニッシュもチェリー、ナチュラルに加え、エボニー、アイボリー、サンバーストといったバリエーションが用意され、ロック・ミュージックを象徴するモデルとなった。

 1975年モデルは、基本的に66~67年スタイルを受け継いだマホガニー製で、ヘッドストック先端がやや丸みを帯びている点が特徴となる。約40ミリのナット幅というスリムなネック・グリップが採用されている。ネック裏側ナット位置には、強度を上げるためのボリュート加工も施されている。また、トライアングルに配置されたコントロールは、その間隔が狭いこともあり、ウィッチハット型のノブが使われている。

 写真のギターは1975年製。ピックアップ・カバーが外されているため、Tボビンと呼ばれる70年代ハムバッカーを確認できる。70年代半ばからのギブソン・ギターには、やや幅広のナッシュビル・チューン "O" マティック・ブリッジが標準的に使われたが、何故かフライング Vには幅の細い旧タイプのブリッジが引き続き使われている。翌1976年にエクスプローラの再生産も始まったことで、斬新なモダニスティック・ギターズに時代がやっと追いついたと言えるだろう。

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▲ピックアップのカバーが外されているため、3弦と4弦の間に「T」のような図柄を確認できる。

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▲コントロール間の間隔が狭いためウィッチハット型のノブを採用。

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▲ヘッド部の強度を上げるためのボリュート。

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▲バック

(TEXT : JUN SEKINO)

【50s / 60s / 70s Flynig Vの比較】

今回のVIntage Salon 取材は同時に上記3本を取材できたので、その3本を並べて1枚の写真に収めた。特にヘッドのアップ写真では形状、カバーの違いなどが一目瞭然である。

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▲左から75年製、67年製、58年製。

■当時の最新技術を積極的に導入したフライング Vシリーズの異端児

[1980年製 GIBSON Flying V2 sn : 82940021]

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▲1980年製 GIBSON Flying V2 sn : 82940021

 ギブソンでは、70年代終盤にRDなど当時のギターの流行を採り入れた意欲的な新製品を続々発表した。79年に登場したFlying V2もその中のひとつである。アウトラインこそV型だが、それまでのフライング Vの歴史とは関係性が薄く、当時の最新の製作技術や流行をV型に収めたデザインと言える。

 ボディ/ネックともにウォルナットとメイプルを5層にレイヤーした材を使用。ボディトップの外周は印象的な曲線でベベルドエッジ加工、バックも腹部に接する部分がコンター加工されている。ピックアップはボディ形状に合わせたブーメラン型となり、最終フレット部にピックアップのエスカッションが食い込む異色のデザインとなっている。ピックアップは特殊な素材で固められているため内部を確認できないが、シングルコイルのピックアップにノイズ対策のシールド加工を施しているようだ。フレットはジャンボ。ブラス製のナットを装備している。これらは70年代後半の最新の仕様であった。加えて、テイルピースは正面からはソリッドの金属に見えるが、実は台座部分に木材が使われているなど手が込んだ設計である。

 ギターの製造面、機能などの観点からは注目のデザインを豊富に導入しているが、市場での人気は上がらず、3年間の生産を経て82年に姿を消した。皮肉にもフライング V2の生産が終了した直後、ヘビーメタルのギタリスト達がこぞってフライング Vを使い、また、同時期に50年代のフライング Vのリイシュー生産も開始。それ以降、フライング Vは人気商品として現在の地位を確立していった。

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▲ボディのアウトラインは様々な箇所でベベルド加工されている。また、ピックアップが最終フレットまで食い込む特徴的なデザイン。

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▲テイルビースは木材の台座の上に金属プレートを採用している。ジャックはボディトップではなく、V字の内側に配置されている。

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▲バック

(TEXT : GAKKIソムリエ)

Vintage Salon vol.7 Gibson Flying V Collection 

      • vs7.jpg日時 : 2017年1月29日(日)
    • 会場 : ESPミュージアム
    • 時間 : 13:00~ 16:00~(2部制)
    • 完全予約制(定員各40名)
    • 参加費 : 2,500円
    • 参加特典 : ERNiE BALL弦 非売品オリジナルグッズ
    • 参加方法 : ESP系列ショップ、またはESP Museum WEB SITEからお申し込み


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