インタビュー

マーティン・カスタムショップ部門のギター・デザイナーが初来日

Behind The Scene

EMILY MEIXELL(エミリー・メイセル)

マーティン・カスタムショップ管理者

 11月4〜6日にかけて開催された2016楽器フェアでは、海外からも多くの楽器メーカー関係者が来日した。その中の一人が、マーティン・カスタムショップのスタッフであるエミリー・メイセル氏である。女性ながらマーティン内のあらゆる製作工程を熟知し、現在はカスタムショップの管理者を務めている。今回は個別に行ったインタビューに加えて、2016楽器フェアでのトークイベントでの様子を織り交ぜて、マーティン・カスタムショップの近況をお伝えしよう。

1_IMG_1877.JPG▲エミリー・メイセル氏

 マーティン社での経歴を教えてください。

 2006年に入社し、まず弦の部門に配属されました。その後は7年間に渡って様々な製作部門に就いてギター製作における全ての工程を習得しました。そして3年前の2013年にカスタムショップに配属されました。

 カスタムショップのスタッフ数は?

 現在は20名です。カスタムショップに入るには高いスキルを持ち、さらに社内での厳しい面接をパスしてようやく入ることができます。ちなみにマーティン社全体のスタッフ数は約450名で、男女比はカスタムショップと会社全体共に半々です。

4_IMG_1868.JPG ▲インレイ加工の実演。カスタムショップのスタッフとして、ギター製作におけるあらゆる工程をマスターしている。

 カスタムショップの管理者として、主にどのような業務をされていますか?

 お客様の要望する理想のギターを作るお手伝いをしています。以前は製作にも携わっていましたが、現在はお客様と対話してギターをデザインする方が主な業務です。それは個人のお客様というよりも、基本的にはディーラーからのオーダーに対応しています。また、オーダー・モデルだけでなく、カスタムショップ自体が製作するギターのデザインも担当しています。カスタムショップ・モデルを製作する際には、マーティン本社の地下にある倉庫から、私が木材をセレクトしています。ギター・デザインは大事な業務なのですが、実際の製作に関われないのは、今ではちょっと残念ですね。

3_IMG_1874.JPG▲トークイベントで使われた木材サンプル

 カスタムショップにおけるギター・デザインの作業について教えてください。

 まずは基本モデルを決めて、その仕様を要望に合わせて変えていく作業ですので、おそらく日本でのギター・デザインと変わりはないはずです。ですが、マーティン社では非常に多くの種類の木材をストックしていますので、そこからインスパイアされることも多いです。また、マーティン・ミュージアムに展示されている歴代のギターを見て、アイディアを思いつくこともありますよ。

2_IMG_18802.JPG▲エミリー本人がデザインしたカスタムショップ・モデル

6_IMG_1847.JPG▲カスタムショップ・モデルを自ら弾いて音の違いを解説

 木材を選ぶポイントは?

 まず木材をタップしてその響きをチェックすることです。それから木目や色といったルックスですね。柾目よりも少しうねった木目の方が私の好みですね。

 ボディ・サイズや木材など、最近のオーダーの内容で何か傾向はありますか?

 お客様の要望は常に変わっていきます。木材については、以前はグアテマラン・ローズウッドやココボロの人気が高かったのですが、最近ではシンカー・マホガニー(川や湖などの水中に沈んでいたことで、通常のマホガニーよりも硬く軽量となり、ギターに適した音響特性を持つとされている)の需要が増えています。ボディ・サイズは、昨年はスモール・ボディの人気が非常に高かったのですが、今年は誕生100周年というタイミングもあってドレッドノードのオーダーも増えています。ですが、スモール・ボディは依然として根強い人気がありますね。

5_IMG_1835.JPG▲トークイベントで木材の特性について解説している様子

 カスタムショップでは珍しい木材を使用することも多いようですが、注目している木材はありますか?

 ローズウッドに近い音響特性を持つキングウッドという南米産のマメ科の木材を使用して3本のギターを製作中です。あとはカスタムショップの上司であるダニーは、メキシコ産のプラム・カタロックスという非常にレアな木材を使用して5本のギターを製作しています。

 これまで有名なミュージシャンからのオーダーを手がけたことはありますか?

 昨年はジェイソン・イズベルとエド・シーラン、最近だとジェイムス・バレンタイン(マルーン5)のギターをデザインしました。ジェイムス・バレンタインのギターはまだ製作中ですが、サーティファイド・ウッド(森林保全に配慮して生産された木材)のマホガニーを使用しています。いつかエリック・クラプトンから直々にオーダーがあれば最高なんだけど、まだ電話はないわ(笑)。  

 来年のNAMMショウが間近ですが、何かスペシャルなモデルは展示されますか?

 それはまだ社外秘です(笑)。今お伝えできるのは、アーティスト・モデルや、今までにない木材を使用したカスタムショップ・モデルなど、面白いギターをいくつかお見せできると思います。

 日本のマーティン・ファンに一言お願いします。

 世界的に有数のマーケットである日本のギター・ユーザーが、マーティンを愛してくれていることをとても感謝しています。2016楽器フェアのために初めて日本に来たのですが、残念ながら今回は滞在期間が短いので、ぜひ来年も日本に来れることを願っています。

本稿は月刊『Player』2017年1月号「Behind The Scene」にテキストを加筆、写真を追加したものです。

Player

2017年7月号

定価760円
(本体704円)A4判

2017年6月2日(金)発売

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