インタビュー

デビュー15周年を迎えたフラメンコ・ギタリスト沖仁の新作『Clásico[クラシコ]』と愛機に迫る!

Open The TREASURE BOX 【File#6】

沖仁

 本誌の人気コーナー『Open The“TREASURE BOX”』。毎回ミュージシャンにとっての“特別な1本”にクローズアップし、楽器に関するストーリーや拘りを撮り下ろし写真と共にレポート! ウェブ版のこちらでは、デビュー15周年を迎えたフラメンコ・ギタリスト、沖仁の新作の魅力と機材についてたっぷり語ってもらった!

oki-jin.jpgデビュー15周年で色々な節目がありました

ーデビュー15周年おめでとうございます!

沖仁:ありがとうございます。最近デビュー当時の写真を見たけど感慨深かったです。あの頃は"若気の至り"と言うか...こんな自分がよくもまぁデビューできたなと(笑)。だから、昔の音源を聴くと結構恥ずかしいんですよ。でも、ソロでインストゥルメンタルのギタリストを続けるのは、決して簡単なことではないですからね。"継続は力なり"と言うけど、本当にそうだと改めて思いました。

ーキャリアを振り返って今も憶えている印象的な光景は?

沖仁分かれ道と言うか、"節目"は何回もあって、インディーズからメジャーへの移籍は大きな転機でした。あのタイミングでそれまでの伴奏の仕事を辞めて、ソロギタリストとして生きていく決心をしたんです。本当に大きな決断でした。あの時、一時期だけど一切仕事がなくなりましたから。それから、3大フラメンコ・コンクールのひとつ『ムルシア"ニーニョ・リカルド"フラメンコ・ギター国際コンクール』での優勝も大きな出来事でした。

ーあのニュースで、沖さんを知った方も沢山いらっしゃったと思います。

沖仁本当に断固たる決意で挑みましたから。当時は"ここでダメなら一度方向性を改めなければいけない"と思うほど、自分を追い込んでいました。それまで"フラメンコ・ギタリスト"と名乗って活動してきたけど、それに対する評価が下されるタイミングだと思いましたから。優勝できたことで"ああ僕は大丈夫なんだ!"と自分を信じることができました。

ー以前の取材でも「フラメンコ・ギタリストと名乗るには、それ相応の勇気が必要だった」とおっしゃっていましたよね。

沖仁ロック、ジャズ、クラシックなど、様々なジャンルのギタリストがいるわけじゃないですか? その中で、皆さんに自分がどんなギタリストなのかを知って頂くために、しっかりと名乗る必要があると思ったんです。何も付けずに"ギタリスト"と名乗るなら、色々なスタイルを演奏する必要があるけど、結局僕はフラメンコしか弾けないわけで。

ーこれまでに渡辺香津美さん、木村大さん、押尾コータローさんなど、ジャズからクラシックまで、様々なスタイルのギタリスト達と意欲的なセッションをしてきましたね。

沖仁音楽とギターに対してはできるだけオープンな状態でいたいんです。だから頂いたオファーは基本応えたい。呼んで下さる方々も本当に素敵な人達ばかりで、いつも"待ってました!"という心境なのですが(笑)、呼んで下さる人は僕と同じ音楽にオープンな方ばかり。だから合わせていて楽しいんです。ソロ活動では常にフラメンコとストイックに向き合っている感じなので、ちょっと疲れてしまうこともあるんですね。だから、コラボを通じて新鮮なインスピレーションをもらって、それをソロに持って帰れば良いかなと。毎週、違うジャンルの現場にいることもありますが、どの場所でも自分を使い分けてはいないです。逆に、いつもの自分のコンサートの方が硬くなってしまうかも(笑)。あの場は、基本ひとりでお客さんと対峙する気持ちでいますから。

JinOki_Clasico_jk.jpg  沖仁 / Clásico[クラシコ]

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ー『Clásico[クラシコ]』について訊かせて下さい。本作は、ここ数年のライブやオーケストラとの共演で演奏した曲に、ストリングスをフィーチャーしたアレンジを加え、独自のフラメンコ・スタイルに昇華させた内容です。なぜ、このコンセプトにチャレンジしようと?

沖仁近年、イベントやライブでクラシックのミュージシャンとの共演が多くて、その時にギターと他の弦楽器とのコンビネーションに大きな"可能性"を感じたんです。本作の中でも、ジョージ・ガーシュウィンの「Someone to watch over me」は、TVCMのために先駆けて制作したんですが、そのテーマが"世界一の時間へ"ということだったので、ストリングスを入れてゴージャスな形でやってみようと。あの時に、『Clásico』の全体像に関する手応えを掴めました。

ーオーケストラは指揮者のコンダクトを基準とするので、他のジャンルとリズムに関する解釈が異なる気がするのですが、そういった部分は?

沖仁そこは常にありました。彼らは指揮者に合わせるので、僕らの"せーの"とは合い方が違う。あと、フラメンコはリズムが前ノリ気味だけど、クラシックは後ろにタメがあるんです。初めてストリングスを交えて演奏した時はそれが上手く合わずに気になりましたけど、何回も現場で一緒に合わせる中で、そこをしっかり越えられて手応えを掴めました。

ー本作は、前作『Dialogo[ディアロゴ]〜音の対話〜』から4年振りとなりますが、ギターと他の弦楽器を馴染む感覚を掴むためにこの4年を費やしたのでしょうか?

沖仁曲はずっと前から候補があったし、それは演奏や作曲面ではないんです。むしろ、自分なりのアレンジを追求したら4年が経った感じです。最後のストリングスのレコーディングが終わったのが去年の秋でしたから。ストリングス無しの状態でアレンジを完璧に練りたかったんです。曲のメロディとハーモニーがちゃんと交わりながら、ソロギターの要素も内包している音楽...今回はそれをちゃんと実現させたかった。そこまでアレンジを練れれば、ソロギターでも、ピアノとのデュオでもしっかりとワークすると思ったんです。

ー楽曲と演奏が見事に調和していますね。1音1音がとても丁寧で、全く淀みがない...それはしっかりとアレンジが練りこまれているからだなのだと思います。

沖仁即興の部分と、アレンジを含め完全に作り込んだ部分、それらが半々の部分...この3つのバランスは曲によって様々。その正解を探すために、実際にライブで演奏して確かめた部分もありました。即興部分は、例えば「Spain」のイントロなどがそうで、あそこはコード進行すら固定されていない。その逆のケースも然りですから。

ーそこまでアレンジを練ったから、ここまで密度の濃い作品に仕上がったのでしょうね。近年、CDリリースのサイクルはどんどん短くなっていますが、『Clásico[クラシコ]』はそういうものとは異なる、ヴィンテージ・ワインのような"余韻と説得力"が曲と音に宿っています。

沖仁とても光栄です。自分では、作品の良し悪しはもはやわからなくなっていますが(笑)、とにかく"渾身の作品"とだけは、はっきり言えます。

今の僕が奏でたい音が『Clásico[クラシコ]』に宿っています

03_oki.jpgーフラメンコには、ギター、カンテ(歌)、パルマ(手拍子)という三大要素があります。『Clásico』は、モダンな要素も内包されていますが、パルマとカンテの要素が本当に"絶妙"に効いていますね。

沖仁ええ。

ー決して強く主張しないけどしっかりと存在していますし、しっかりとストリングスにも交わっている...だから、曲にフラメンコらしさが宿るのだなと。

沖仁色々な試行錯誤はありました。去年の秋と冬のツアーではパルマを入れなかったんです。ツアー中は何度も"パルマが欲しい"と感じましたよ。甘くクリーミーな料理ばかりを次々に食べる感じというか...ピリッとしたスパイスが欲しくなりました。フラメンコ・ギタリストには、本能的にそういう欲求があるのでしょうね。あれは、ドラムやパーカッションとは違うので。でも、必ずしも生のパルマではいけないわけじゃないんです。「Estrellas[エストレージャ]〜星空と涙〜」では、SILENT POETSの下田法晴さんに打ち込みのトラックで、そういうニュアンスを入れてもらいました。

ー12曲中8曲にパルマが入っていますが、核となる最低限の部分だけで、フラメンコらしいリズムを表現しているなと。だからこそ、ストリングスや鍵盤、パーカッションが加わっても、曲がしっかりと機能しています。

沖仁有ると無いでは大違いですね。「Tierra[ティエラ]〜大行進曲〜con葉加瀬太郎」は、その最たる曲。サウンド・プロデュースを亀田誠治さんにお願いしたんですが、亀田さんもパルマと、プログラミングしたビートの相性に凄く気を使っていました。「パルマが効き過ぎると、スペインらしい民族音楽の要素が出てしまい、ポップの要素が薄れてしまう」と話していましたね。

ーなるほど!

沖仁パルマひとつでも、プロと素人の手拍子では全く別物なんです。今回は伊集院史郎さんとSIROCO君という最強の2人が参加してくれました。彼らのパルマは本当に素晴らしくて、レコーディングの時にパルマ以外の音をミュートしても、とても音楽的に聴こえるんです。

ー今回カバーされた「Spain」、「禁じられた遊び」、「ロミオとジュリエット」、「Someone to watch over me」についてコメントを下さい。「Spain」は、前作でもファンキーなアレンジでカバーしていましたね。

沖仁理由はそれぞれあります。「Someone to watch over me」は先ほど話した通りです。「Spain」は以前も収録しましたが、近年僕のライブで欠かせない曲になっているんです。そういった中、皆さんが知っているチック・コリアのオリジナルを踏まえ、そこでどれだけ"自分らしい曲にできるか?"にチャレンジしました。「禁じられた遊び」は、おそらく誰もがこのメロディを知っているという、クラシック・ギターのスタンダードです。その部分を残しながら、フラメンコではこれだけ違うメロディに聴こえるのがおもしろいでしょ?と挑戦した曲です。「ロミオとジュリエット」はもともと好きな曲だったので、自分らしいアレンジが出来ると思いました。

ーヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという弦楽器のハーモニーが本作のキーですが、ストリングス・アレンジは野崎洋一さん、川崎龍さん、柏木広樹さんが参加されていますね。

沖仁曲によって色々で、最初は打ち込みで作ったイメージを聴いてもらい、そこからアレンジを送ってもらったんです。彼らも、すぐに僕のイメージが掴んでくれたので、次第に打ち込みを送らずとも満足できる素晴らしいアレンジが完成していきました。ソロギター1本で完璧に成立していながら、そこに綺麗な彩りを与えてくれる"何か"が欲しかった。それが今回のストリングスですね。アカペラだけで魅了される歌、バックがないと成立しない歌と色々あるけど、僕のソロギターは前者でありたい。だから、ギターありきで、しっかりアレンジが付いてくるものにしたかったんです。

ー「Spain」と「マドリードの花市場」の2曲では盟友である、ギタリストの智詠さんが参加しています。ライブでもご一緒されていますが、気心の知れた美しいギターのハーモニーも聴きどころですね。

沖仁智詠君は僕のライブでもずっと一緒に弾いてきた仲なので、何も言わなくても"それ!"という望み通りのパートを弾いてくれました。この2曲は一発録りです。打ち込みが入っている曲、自分が弾けばそれでいい部分もあるけど、ライブ的な演奏の曲では、やはり彼にギターを弾いて欲しかった。僕にはないアイデアで素敵なハモりパートを弾いてくれていますし、そういう2人のギターのハーモニーを聴くのもおもしろいと思います。

ー亀田誠治さん、葉加瀬太郎さんが参加した「Tierra[ティエラ]〜大行進曲〜con葉加瀬太郎」は、どのようにして完成したのですか?

沖仁亀田さんと3年前にした立ち話の約束が結実した曲です。僕が亀田さんのイベントで演奏した時、打ち上げで「いつか僕の"勝負曲"を作る時は、正式に亀田さんにお力をお借りしてもいいですか?」と話して、快諾して頂いたんです。その後、亀田さんに"こんな曲できました"と何回か書いた曲を聴いてもらい、亀田さんが一番反応してくれたのがこの曲でした。あの段階では、まだプロデュースをオファーするわけでもなく、ただ曲の感想を頂きたかったからでした。その後、この曲に葉加瀬さんが参加してもらうことになり、亀田さんにプロデュースをお願いしたのは去年の秋です。あの時点はまだ1コーラスしかなくて、それから亀田さんと話し合いながらアレンジを固めました。亀田さんは、あくまでプロデューサーとしてのスタンスで自分のイメージを言うけど、曲は僕自身でしっかりと完成することを望んでいましたね。アレンジを練る際に印象的だったのが、亀田さんが「あらゆる人生の局面にいる人達に聴いてもらうには、明確なリズムが大事」と言っていたことです。それ位、亀田さんのイメージには全くブレない"ストレートなリズム"がありました。そこに、今の音楽シーンを熟知しているベーシストとしての亀田さんの確信を感じました。プロデューサーとしては、担当するアーティストと現場を考慮して、最高のものが生み出せるようベストを尽くす"達人"。現場の雰囲気がとても良かったし、それぞれの最高な演奏が出るまでしっかりと待ってくれるんです。本当に頼り甲斐がありました。

ー本作は、コンテンポラリーなフラメンコを切り拓く、沖さんらしい挑戦的かつ魅力的なナンバーが収録されています。「アグヘータを訪ねて」と、「Al norte-Al sur[アル・ノルテ-アル・スール」は、フラメンコ・ギタリスト沖仁の真髄が堪能できるナンバーでハイライトだと思います。

沖仁これらは自分にとっても、とても大事な曲だと思います。

ー今作は、より多くのリスナーにアピールでき、とても間口が広いと思います。その中で、この2曲は伝統的なフラメンコの息吹を感じますし、コアなフラメンコのリスナーも納得するナンバーとも感じました。

沖仁多くの人が"フラメンコ"と感じる要素って、その形式にあると思うんです。フラメンコの形式は本当に厳格で、そこを守ったのがこの2曲。厳密に言うと、自分なりに結構ハミ出してはいるんですが(笑)。本当に厳格な世界なので、それを守らないのを善しとしない方がいるのもわかります。でも、僕はその伝統に敬意を払いながら、自分らしい"今のフラメンコ"を提示していきたい...ミュージシャンのアルバムには、その時の自分に"正直な音"が現れていると思うんです。僕がこれまで出したアルバムの中で、厳格なフラメンコに沿ったものもあれば、他のジャンルの影響を含めて、枠を飛び越えてしまったものもあります。そういう色々なバランスの中で、今の僕が奏でたかった音が、『Clásico[クラシコ]』には宿っています。

ー取材するにあたって、デビュー・アルバムから色々と聴き返したんです。今の沖さんの音は"優雅"というか、凄く懐が深いですよね。もちろん、デビュー当時の鋭く卓越したテクニックは健在ですが、凄く優しい音色を奏でているなと...。

沖仁田中実さんという、今回参加して頂いたエンジニアさんのお陰もありますね。「Someone to watch over me」を録って頂いた時、とても魅力的な音だったので。田中さんとは、三味線奏者・上妻宏光さんとの現場がきっかけで、その音が正に優雅で深みのあるトーンだったんです。今回は、メインのヤマハ沖仁シグネチャー・モデルの他、マヌエル・レジェス・イーホ、テオドロ・ペレス、黒澤哲郎さんの沖仁モデル、1940年代のミゲル・ロドリケスなど色々なギターを弾いたし、録り方も色々変えました。曲によってはラインを混ぜて録ったものもあります。「アグヘータを訪ねて」と、「Al norte-Al sur[アル・ノルテ-アル・スール]」の2曲は40年代のミゲル・ロドリゲスを使いました。その微妙な違いは、弾き手本人にしかわからないものかもしれないけど、キレのある音、可愛らしい音、優雅な音、全て違うんです。

ーお子さんが生まれる直前に完成して、自宅で録音した曲「Esperando[エスペランド]〜まっているよ〜」は、とてもパーソナルで温かみのある音が印象に残りました。自宅ならではのリラックスした雰囲気と、即興的な演奏に沖さんの生々しい"息遣い"を感じました。

沖仁曲を録ったのは3年位前。家のプライベート・スタジオの雰囲気をそのまま録りたくて...。でも夜静かなのも違うから、生活音が混じる昼間にレコーディングしたんです。自分にとってパーソナルな曲なので、実は本作に入れるべきか悩んだのですが、締めのボーナストラック的な部分には丁度良いかなと。本当に"素"な僕が音に出ていましたから。

ー即興性はフラメンコの醍醐味ですが、その部分がとても出ていますよね。一筆書きのような鮮明さが音に宿っているというか...。

沖仁そう言って頂けるとこの曲を入れた意味を再認識できて嬉しいです。スタジオとは違って、よく聴くと"スーッ"というノイズが入っているけど、それも生活の中で生まれる音だと前向きに捉えてもらえれば(笑)。マイクは4本立てで、メインはオーディオテクニカのAT4060のコンデンサーです。このマイクにはちょっと拘りがあって、知り合いに内部のハンダ付けを300箇所やり直してもらったんですよ。

ー300箇所もですか!?

沖仁マイクに詳しい知人曰く、「近年のマイクはハンダ付けが盲点だ」って言うんです。

ーエレキ・ギターやエフェクターでもそういう発想はあるので、不思議ではありませんね。

沖仁実際、ビフォーアフターでそれぞれ録音したら、確かに違ったので影響はあるのだと。しっかりと奥行きが現れて、より色気のある音なんです。あとダイナミック・マイクと、アースワークスというメーカーのアンビエンス・マイクも立てました。

FCX-STDは自分の望む音が出せる

ーメインで使用しているヤマハFCX-STDモデルについてお訊かせ下さい。

沖仁他のアコースティック・ギタリストもそうだと思いますが、僕はレコーディングとライブで使うギターを分けています。このFCX-STDは僕のメインなんだけど、本当にシビアなライブでも自分の望む音が出せるんです。マイクのシステムが素晴らしくて、本当に生音のようなサウンドです。今回は、このギターがレコーディングでも大活躍しました。「乱れ咲きフローレス」や「Spain」もそうだけど、ラインで録った音が重要だったんです。ライブ感をしっかり録るためにどうしてもラインは必要だったし、ライブではFCX-STDが相棒ですから。本当に僕の期待に応えてくれる素晴らしいギターです。ラインの成分って、本来アコースティック・ギターの生音とは遠いものだけど、ハウリングの問題もあって、ライブでは選択せざるを得ないんです。アコギでもオベーションのピエゾ・サウンドがスタンダードですよね。やはりそうなんだと思うんですよ。ラインという制限の中で、オベーションはスタンダードになれる魅力的な音だから。ライン録りは芯がある音なんだけど、そこが一般的に受け入れられない理由なんでしょうね。でも、今回はその部分も必要だったんです。"かき鳴らした音"も良いですからね。

ーなるほど。

沖仁パコ・デ・ルシアやビセンテ・アミーゴといったソロ・フラメンコの大家は、ソロ作品ではあまりかき鳴らしを前面に出しません。それがソリストとしての美学なんですね。でも、僕はそういうフラメンコ・ギターの歴史を踏まえた上で、ソロ奏者として敢えて伴奏を大事にしたい。フラメンコ・ギターという楽器は、伴奏楽器からスタートしたものですからね。ソロのセンシティブな音と、伴奏のかき鳴らしを両立できるのが大切なんですが、このギターはそのバランスも良いです。

ーたしかに、沖さんのMVを見ると"ジャジャーン"と伴奏でギターをかき鳴らした光景が目に浮かびます。

沖仁やはりギターの伝統ですからね。そこは大事にしていきたいです。クラシック・ギターもそうだけど、繊細で音は良くても、強くかき鳴らすのをイヤがるギターって少なくないです。でも、僕はいつでもどこでもギターを弾いていたいし、そういうタフな部分も魅力ですね。浜辺のフェスでもいけちゃうようなね。

ーもう1本持って来て頂いた、40年代のミゲル・ロドリゲスは?

沖仁"もう1本のメイン"と言っても過言ではない僕の大切なギターです。ライブに来てくださったお客さんなら、間違いなくこのギターの音を聴いているはずですし、このギターも今回活躍してくれました。

ー本作は沖さんにとってどんなアルバムになったのでしょうか?

沖仁時間を掛けてアルバムを作ったので、聞き返すと"詰め込み過ぎたかな?"と、感じる部分もあるんですよ(笑)。でも、この15周年でそれだけ詰め込める自分になれたという自負もあるし、"今の僕"をピュアに詰め込んだ作品です。演奏、アレンジ、プロデュース、全てに自分の拘りが詰まっていますから。伝統とオリジナリティのバランスはいつも僕らのテーマですが、誰の真似でもない沖仁の"今の答え"が、『Clásico[クラシコ]』だと思っています。11月にスタートする『DEBUT 15th ANNIVERSARY 沖仁 CONCERT TOUR 2017 Clásico』は、新作を軸にライブならではの構成とアレンジで臨みます。今も色々な音が聴こえていて、もっと先の可能性を突き進めていたいです!

<DEBUT 15th ANNIVERSARY 沖仁 CONCERT TOUR 2017 Clásico>
11.10(金)宮城・電力ホール
11.16(木)北海道・札幌市教育文化会館 大ホール
11.24(金)大阪・サンケイホールブリーゼ
11.29(水)愛知・名古屋市芸術創造センター
12.09(土)神奈川・鎌倉芸術館 大ホール
12.16(土)福岡・電気ビルみらいホール
12.23(土)東京・渋谷区文化総合センター 大和田さくらホール

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YAMAHA FCX-STD

 沖が現在メインで愛用しているのがヤマハFCX-STD 。ヤマハは1966年から手工ギターの研究開発を行なっており、伝統的なクラシック・ギターの演奏感覚を備えたNCXやNTXなど、優れたエレクトリック・ナイロン弦ギターをラインナップしている。そんなヤマハと沖の密接なリレーションによって完成したエレクトリック・フラメンコ・ギターがFCX-STDである。スペイン伝統の製法や技術指導をベースに研究を重ね、澄み切って明確で歯切れの良い音色を実現している。
 写真は05年製のプロトタイプ。ボディ・トップにエゾ松単板、バック&サイドにシープレス単板、ネックにマホガニー、フィンガーボードにエボニーを使用。国内のヤマハ・ミュージック・クラフトのギター職人によって丁寧に製作され、フラメンコのスタンダードとして高い完成度を追求したモデル。
 最大の特徴が、ピエゾとコンデンサー・マイクをミックスしたシステム49。これによりアンプやPAシステムを通しても自然なアコースティック・サウンドを実現する。沖は「色々なジャンルの方々と演奏する機会のあるライブではやはりラインがベストだと思うのですが、このPUシステムは本当に魅力的なアコースティックの音がします」と語っていた。

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MIGUEL RODRIGUEZ 1940's

 沖のもう1本の愛機ミゲル・ロドリゲス。1888年、スペインのコルトバで生まれ
たミゲル・ロドリゲス1世は、当初ホセ・ラミレス工房のラファエル・カサーナ
に影響を受け、独自の技術を発展させ多くの名器を生み出していった。沖のミゲ
ル・ロドリゲスは1940年代のもので、ボディ・トップにスプルース単板、バック
にシープレス単板を使用。本作で、沖はこのギターを、伝統的なフラメンコ・ス
タイルを追求した、「アグヘータを訪ねて」や「Al norte-Al sur[アル・ノルテ
-アル・スール]」で使用。沖は「落ち着きがありながら、音にこの楽器にしかな
い"説得力"がある。レコーディングではよく使用するお気に入りの1本です」と
語っていた。

Interview & Photo by TAKAHIRO HOSOE

製品情報

YAMAHA FCX-STD

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2017年9月号

定価760円
(本体704円)A4判

2017年8月2日(水)発売

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ハマ・オカモト

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