製品レビュー

ギブソンから、画期的なヴィンテージ・リイシュー・モデル登場!

J-45 Vintage
Hummingbird Vintage
1932 L-OO ヴィンテージ

価格 546,000円 (税抜)

 ギブソン、フェンダー、マーティンなど、トラディショナルなギターメーカーは、ヴィンテージ・リイシュー・モデルを数多く発売している。同じモデルでありながらも、製造・発売された年代毎に異なる表情を持つヴィンテージをリアルに再現したリイシュー・モデルは、コアなギターユーザーに根強く指示されている。近年は、特定の年代の仕様を再現したリイシュー・モデルはもちろんのこと、エイジド加工を施したよりリアルなカスタム・モデルも珍しくはなくなった。また、アコースティック・ギターではアディロンダック・スプルースの採用やラッカー塗装など、ヴンテージと同じ木材や素材、パーツを使用したり、ニカワを使った接着など、製作工程までも昔と同じやり方に倣うブランドやモデルが相継いで登場し、ギターフリーク達に話題を提供している。そんな中、ギブソン・アコースティックからヴィンテージ・ギターに迫るべく新たなアプローチを行ったニュー・モデルが登場して話題となっている。

■木材の経年変化を再現?!

 今回紹介するのは"J-45 ヴィンテージ"という名称の2016年版ヴィンテージ・リイシュー・モデル。J-45の他にも"ハミングバード・ヴィンテージ"や"1932 L-OO ヴィンテージ"といった3つの2016年モデルがラインナップされ、いずれもモデル名の最後に"ヴィンテージ"という語尾が付いている。これまでギブソン・アコースティックではいくつものヴィンテージ・モデルを発売して来たが、今回のシリーズは、基本的なところでこれまでとは異なり、ヴィンテージ・サウンドまで意識した新たな試みがなされている。

 その試みとは、ボディトップに"サーマリー・エイジド加工"を施した木材が採用されていること。サーマリーとは"熱容量"といった意味で、これは単にヴィンテージに似せた外観に加工するいわゆるエイジドとは根本的に異なり、数十年経年した木材と同じような特性に変質させる加工である。

■サーマリー・エイジドとは

 実は、この方法論はギブソンが初めて採用したものではない。全く同じ方法ではないが、ヤマハが1990年代後半からヴィンテージ・ヴァイオリンのサウンドを新しいヴァイオリンで再現するための技術として研究開発し、A.R.E.という名称で現在も一部の弦楽器製造に応用されている木材改質技術がある。マーティンも、VTS(ヴィンテージ・トーン・システム)と呼ばれる高温による熱加工を施し、ヴィンテージ・マーティンが持つトーンをイメージさせる製品を発売している。ギブソン・アコースティックのサーマリー・エイジドは、基本的に同じ方向性のコンセプトと考えて良いだろう。また、エレクトリック・ギターでは、ミュージックマンやシャーベル、サゴ、サーなどを始めとするいくつかのメーカーが近年積極的に導入しているローステッド・メイプル(クックド・メイプルなど呼び名はメーカーによって異なる)・ネックも、広い意味で近いコンセプトと言える。

 サーマリー・エイジド、A.R.E.、ローステッド・メイプル、VSTなどの加工には、いくつかの共通点が見られる。それは、木材を加熱、加圧、湿度をコントロールした条件の下で加工するということ。大きな金属釜の中に新しい木材を入れ、それらを特定の時間の中で様々な条件を総合的にコントロールしながら、加工が行われる。加工に関するデーターはメーカーや使用目的、加工する木材の種類などによって異なり、各メーカーが独自に研究開発を行いほとんど公表されていない。

■木材を細胞レベルで変質

 サーマリー・エイジドは、ギブソンのモンタナ・ディビジョンとミネソタ大学との共同研究を経て商品化された技術で、50年間程度経過した木材のコンディションを再現することを目標としている。加工の方法は、摂氏160°に加熱し、低酸素状態で加圧しながら、湿度をコントロールした特別な環境の中に木材を一定時間入れて行われる。そうすることで、木材を細胞レベルで変質させるというプロセスである。したがって、乾燥室などで含水率を減らすための強制乾燥とは根本的に異なる。もともとは家具や建築などに使用される木材の強度を高める目的で研究がスタートしたそうで、その技術をギター作りに応用しているというわけだ。ボディ・トップのスプルース材をサーマリー・エイジド加工することで、細胞や木材に含まれる樹脂、セルロースなどが変質して硬化し、木材は弾性を増し、軽量になる。これらの変質はアコースティック、特にトップ材における条件としては、ある意味理想的とも言える。現在のところ、サーマリー・エイジド加工を施しているのはトップ材のみで、バック&サイドやネック材には採用されていない。

■試奏、J-45V vs J-45 Vintage

 では、サーマリー・エイジド加工されたボディトップを採用することで、ギターのトーンはどのように変化するのだろう? 今回はそれを体感するために、2本のJ-45を用意し、サウンドを比較した。1本はこの秋発売されたサーマリー・エイジド・アディロンダック・スプルース・トップを採用したJ-45 ヴィンテージ。そしてもう1本は、トップ材に加工されていないアディロンダック・スプルースを使用し、それ以外はJ-45ヴィンテージと基本的に同じ仕様のJ-45Vである(ピックガードレス)。

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▲左がJ-45サーマル・ヴィンテージ、右がJ-45V

 どちらもいわゆるヴィンテージ仕様で、ネックグリップは程良いカマボコ型で安定感があり、どちらも薄いラッカーによるヴィンテージ・サンバーストが採用されている。しかし、J-45ヴィンテージの方が明らかにボディトップがダークで、よりヴィンテージライクな印象を受ける。これは、サーマリー・エイジド加工による影響で、この加工を施すと変質と同時に材がやや褐色がかった色に変化するので、よりヴィンテージらしく見えるが、フィニッシュの色合いは同じである。

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▲左が従来のトップ材、右がサーマリー・エイジド加工がされた木材。板材の段階で色が異なることがわかる。

 最初に試奏したのはJ-45V。J-45は1942年に登場したラウンドショルダー・モデルだが、製作された年代によってトーンは異なる。試奏したモデルは1940年代の製品を再現した仕様で、ヴィンテージならではの仕様をサウンドをうまく再現している。40年代のギブソン・アコースティック・ギターは、驚くほど音域が広く、音量も充分ありサステインも長い。マーティンのリッチなトーンとは異なるが、ハイファイなイメージで、素朴さを感じさせながらも豊かなサウンドである。試奏したJ-45Vもオリジナルのヴィンテージに迫るバランスの良い仕上がりで、驚くほど音量がある。その一方で、近年のギブソンらしい丁寧な作りがトーンの繊細さや弾きやすさにも表れており、ギブソン・ギターの醍醐味と共に現代音楽にも対応する弾きやすさを感じる。

 続いてJ-45ヴィンテージ。弾き心地は全くと言えるほどよく似ている。また、トーンの核になっている音色は共通しており、どちらも40年代のJ-45のニュアンスをうまく表現してる。しかし、トーンの表情やトータル的な印象はやや異なる。J-45ヴィンテージの方がより周波数帯域が広く、高音域はキラビヤカに、中音域はタイトに、低音域は力強く締まって感じられる。音の立ち上がりが良く、メリハリのついたアタック感のあるトーンと言える。そのせいか、強く弾いたときの音量がよりダイナミックに感じられる。また、弾き手の強弱にも申し分なくセンシティブに対応し、フィンガーピッキングではより表情を付けやすい。このトーンの違いは、ギターを弾いている人にしか分からない程度の微妙なものではなく、日頃ギターに親しんでいる人であれば、他人が弾いてもその違いに気づくハズだ。しかも、J-45Vの方はピックガードを取り付けていない状況であることを考えると、その差は確かにある。

 しかし、これが1940年代に生産されたJ-45のトーンだ、言い切ることは難しい。というのは、ヴィンテージ・ギターは、例え同じ年代に生産された同じモデルであってもそれぞれ異なるトーンとキャラクターを持っている。個人的には、ヴィンテージのトーンよりもっと張りのある現代的ギターらしい力強さを持っている。また、ヴィンテージ・ギターに通じる艶やかさや色気、またセンシティブな表現力があり、確かにトーンの中にヴィンテージ・トーンを彷彿とさせる要素が多いことも確かだ。

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▲J-45 Vintage 価格=546,000円(税抜)

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■ハミングバード・ヴィンテージ

 J-45ヴィンテージと同じタイミングで、"ハミングバード・ヴィンテージ"というモデルも発売された。1960年代の仕様を意識したヴィンテージ・リイシュー・モデルにサーマリー・エイジド・シトカスプルース・トップを採用したモデルで、こちらも注目の新製品だ。写真でも分かるように、サーマリー・エイジド・トップはレギュラー・トップよりかなりダークな外観になる。そのため、トップは本来のチェリーレッドよりかなりダークでヴィンテージライクな印象となる。この外観は好みのハッキリするところだが、ヴィンテージライクなトーンであることを合わせて考えると、さほど違和感はないだろう。ハミングバードは1960年に登場したモデルだが、"もしも1940年代に製作されていたら..."。というユニークな設定で製作されたモデルとも言える。60年代のギブソン・ギターというと、ガツガツと弾いたときのアタック感の強いロックっぽいトーンをイメージする人も少なくないが、このモデルのトーンはそれとは全く異なる味わいだ。硬質で軽量化したトップは、弾性に優れ、立ち上がりの良い、アタック感の強いトーンを作りだすが、写真のモデルは、明らかにサーマリー・エイジド加工されたギターの特性が感じられる。

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▲Hummingbird Vintage 価格=577,000円(税抜)

■1932 L-OO ヴィンテージ

 そしてもう一つ。こちらは"1932 L-OO ヴィンテージ"。L-OOは、1931年に登場したギブソンで最も歴史のあるモデルのひとつ。細長いひょうたん型の小型ボディ(14-3/4インチ幅)を採用し、ブルース・キングの名称でブルースマン達に愛用された。このモデルには、サーマリー・エイジド・アディロンダックスプルース・トップが採用され、これまでのリイシュー・モデルとは明らかに鳴りと音量が異なっている。この年代のギブソン・ギターはかなり特徴的なトライアングル・ネックグリップを採用しているが、写真のモデルには演奏性を考慮してUグリップとトライアングルの中間的なグリップが採用されている。

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▲1932 L-OO ヴィンテージ 価格=746,000円(税抜)

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※本記事は2015年9月時点の情報です。

【GAKKI ソムリエ / 試奏動画】 GIBSON ACOUSTIC 2016 Model J-45 Vintage 他

この動画ではJ-45 True Vintage (2015 Model)とJ-45 Vintage (2016 Model)のサウンド比較の他、Hummingbird Vintage、1932 L-OO Vintageの試奏を行っています。 記事に併せてご覧ください。

製品情報

Gibson J-45 Vintage

価格 546,000 円(税抜)

問い合わせ/製品情報 :
GIBSON GUITAR CORPORATION JAPAN カスタマーサービス
http://www.gibson.com/Products/Acoustic-Instruments.aspx

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製品情報

Gibson Hummingbird Vintage

価格 577,000 円(税抜)

問い合わせ/製品情報 :
GIBSON GUITAR CORPORATION JAPAN カスタマーサービス
http://www.gibson.com/Products/Acoustic-Instruments.aspx

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製品情報

Gibson 1932 L-00 Vintage

価格 746,000 円(税抜)

問い合わせ/製品情報 :
GIBSON GUITAR CORPORATION JAPAN カスタマーサービス
http://www.gibson.com/Products/Acoustic-Instruments.aspx

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