製品レビュー

洗練され、高次元なエフェクトを比類なき使いやすさで実現したZOOM G5n

ZOOM G5n

価格 30,000円 (税抜)

 高いコストパフォーマンと高性能な製品で定評のあるズームから、ハイエンドに位置付けられるマルチ・エフェクターのニューモデル、G5nが登場した。
 プロギタリストにも好評だった先代G5の後継機として、さらに熟成された操作性とサウンドを備え、早くも注目されている。ズームが満を持して送り出した最新鋭機のG5n。その実態を探ってみよう。

G5n_1280-2▲ZOOM G5n メーカー希望価格:30,000円(税別)

■ZOOM G5nとは?

 外観でまず特徴的なのは、筐体のカラーが先代のG5のシルバーから、落ち着いたつや消しのブラックになったことだ。サイズ的にはフット・スイッチとディスプレイが追加されたため奥行きは若干増しているが、逆に幅と高さは抑えられている。ずっしりとした重量感のあるボディと相まって、ステージでのハードな使用にも十分に耐えられる安定性と堅牢さを備えている。ギグバッグのポケットに収まるサイズではないが、専用ソフトケースはショルダー・タイプにもなる。スイッチャーや電源の入ったエフェクトボードとは比べものにならないほど、様々な可搬性を備えたズームらしい仕上がりになっている。

 本機には、厳選され磨き上げられた68種類のエフェクトと、実用性が高くポピュラーなタイプに絞り込んだ高品位なアンプ・モデル×5種類、スピーカー・キャビネット・モデル×5種類が装備されている。これらを9種類、またはアンプ・モデルとキャビネット・モデルを各1つ使用した場合は8種類が同時使用可能となる。
 エフェクトボードでは手間がかかる、エフェクトの順番の入れ替えも自由自在。例えば、ワウペダルを使う場合は歪み系エフェクトの手前に配置したり、スピーカー・モデルの手前にイコライザーを繋ぐなど、ユーザーの思いどおりのセッティングが可能。

 ズーム製品ならではの"ストンプ"モードでは、4種類のエフェクトをストンプ・ボックス感覚でフット・スイッチによりON/OFFが可能。そして"メモリー"モードでは、エフェクトの並び順や細かいパラメータの設定、ON/OFFの組み合わせなどをメモリーし、フット・スイッチで瞬時に切り替えが可能となる。出荷時には実用性の高いプリセットが100種類搭載されている。ユーザープリセット100を含めて最大200パッチまで保存可能。必要かつ十分な機能を備えた"究極の1台"と言えるだろう。

■厳選され磨き上げられたエフェクト

 エフェクトのバリエーションだけを見ると、先代G5の123種類に対してG5nは68種類とかなり減った印象を受ける。しかし実際に音を出してその内容をひとつひとつ確認してみると、本当に実用性の高い厳選されたものに絞り込まれていることが判る。好評だった先代よりもさらに磨き上げられ、熟成された上質で高品位なエフェクトだけが揃っている。更に専用アプリケーションのギターラボを使用して、今後ズームから追加のアンプ/エフェクトモデルをオンラインで入手可能。サウンドバリエーションの拡充が可能だ。

 例えば"TSドライバー"というアイバニーズのチューブ・スクリーマー TS808をモデリングしたエフェクトを実機と比較してみると、そのこだわりがよく判る。歪みの質感やトーン・コントロールの効き方、残留ノイズの雰囲気までもが忠実に再現されている。さらに実機には無いブーストのON/OFFが装備されているあたりは、実用性を考慮した嬉しいモディファイと言える。

 定番のMXR ダイナ・コンプも同様で、ボスのメタル・ゾーン MT-2のモデリングもハイゲイン・ディストーションと中低音域の雰囲気がみごとに再現されている。ペダルでコントロールするエフェクトも、"ブラック・ワウ"と名付けられたクライベイビーのモデリングは、ヴォックスのモデル 826を彷彿とさせる。ボリュームのカーブを切り替えられるフット・ボリュームや、ワミーペダルとしても使えるが、この場合エフェクトの接続順を自由に変えられることも大きなメリットと言える。

 さらに現在では入手困難な"ヴィンテージ・エフェクト"のラインナップも充実した。ジミ・ヘンドリックスが使用したことで広く知られるオクタヴィアや、アナログ・ディレイ、テープ・エコー、アナログ・フランジャーなどが豊富に用意されている。ズームならではの"オリジナル・エフェクト"も秀逸で、オクターバーからアコースティック・シミュレーターまで装備されており、この68種類は必要にして十分なバリエーションと言える。

 68のリズム・パターンを備えたリズム・ボックスも用意されている。最長80秒までレコーディング可能なルーパーと組み合わせれば、個人練習時は勿論、ソロパフォーマンなどでも絶大な威力を発揮するだろう。

 さらに特筆すべきは"ZNR"というズーム独自のノイズ・リダクション。忠実なモデリングにより、ゲインを上げた状態ではそのエフェクトならではのノイズもそのまま再現される。しかしこのノイズ・リダクションは、自然な音質のままノイズ・フリーを実現する優れモノである。

 高音域をカット/ブーストできるトーン・コントロールを備えた"アウトプット・ブースター"は、演奏環境の違いやバンド・アンサンブルの中で、自分のギター・サウンドが埋もれてしまうような際に、存在感や音のヌケを補正するのに役立つ機能である。

■新開発のアルゴリズムによるモデリング

 アンプ・モデルについても、先代の22種類×22種類という数字に比べると5種類+5種類とバリエーションが減ったように思える。しかし、アンプ部とキャビネット部 を自由に組み合わせが可能なので、実際には5×5=25のバリエーションとなっている。さらにそれぞれのキャビネットはマイキングについても2種類のマイ クを使い、そのレベル・バランスも自由に変えられ、今後(後述の)ギターラボを通じてアンプモデル及びエフェクトが追加されることを考えると、選択の幅は無限大と言えるだろう。

 アンプのモデリング技術には新開発のアルゴリズムを採用し、これまでとは一線を画すレベルでオリジナルを忠実に再現している。キャビネット・モデリングについてもインパルス信号を用いたテクノロジーにより、周波数特性だけでなく後面解放と密閉型のキャビネットの違いを含めた鳴りまでもサンプリングし、総合的にギター・アンプの"動的なふるまい"をリアルに再現している。

 アンプ部はマーシャル、フェンダー、ヴォックス、メサブギー、ボグナーの5種類が用意され、それぞれに対応したキャビネットも揃っている。アンプとキャビネットは自由に組み合わせが可能なので、メサブギーのヘッドをマーシャルのキャビネットで鳴らしたサウンドなども手軽に再現できる。

 通称ブラック・パネルと呼ばれる'65 フェンダー・ツインリバーブのアンプ・モデルである"FD TWNR"を例に採れば、まず6L6GCパワー管のパラレル・プッシュプルで発生される余裕の100ワットのパワーと、それでドライブされるアルニコ・マグネットのジェンセン 12インチ・スピーカー2本という構成になっている。クリーンながらもチューブならではのウォームさを備えた気持ちの良いサウンドだ。そして回路上の特徴として、3バンドのトーン・コントロールを全部絞ると音が出なくなるという特性もしっかりと再現。ボリュームをフルにするとブライト・スイッチの効き方が悪くなる点なども、オリジナルと同様である。エフェクターではなかなか再現できないアンプ内蔵のトレモロもリアルで、スプリング・リバーブのシミュレーションと組み合わせれば往年のサーフィン・サウンドも思いのままだ。オリジナルには無いゲイン・コントロールを備えている点も実用的なモディファイと言える。

 "UK 30A"は名器ヴィックス AC30のモデリング。クラスA動作のEL84パワー・チューブと、セレッションのアルニコブルー・スピーカーの組み合わせによるサウンドは、決して耳障りでなくそれでいて伸びのある高音域が特徴だが、パワー回路の特性も含めてしっかりと再現されている。"カット"という独特のコントロールもオリジナルと同様に機能する。オリジナルには無い"ゲイン"コントロールが追加されているのは、クィーンのギタリスト、ブライアン・メイのモディファイと同様で、マッチレス DC30のような使い方も可能となる。

 マーシャル JCM800のモデリングでは、EL34パワー管とセレッション G12Tスピーカーというように、アンプとキャビネットそれぞれが、弾き心地や雰囲気までも含めて忠実に再現されている。

 特にレコーディングなどでライン接続をしたり、ヘッドホンでモニターする際に威力を発揮するのが"マイク・モデル"。ギター・アンプの集音で定番のシュアー SM57と、通称クジラと呼ばれるゼンハイザー MD421の2種類のマイク・タイプが用意されている。しかもプロのレコーディング現場さながらに、そのミックス・バランスの調節も可能。キャビネット・モデルをトータル的に高音域と低音域で補正する、"Lo"と"Hi"のコントロールを装備しているのも実践的な仕様である。

G5n_1280-6▲プリセットパッチのリスト。001~100までがプリセット、101から200までがユーザー・エリアとなっている。

■新次元の使い易さ

 トータル・ディスプレイと5個のフット・スイッチが追加されたことが、総合的な操作性を別次元と言えるほど飛躍的に向上させた。ズームは以前から、マルチ・エフェクターでありながらストンプ・ボックス感覚で操作できることに重点を置いたデザインを採用してきた。このG5nはその集大成とも言える製品で、その使い易さには驚くばかり。通常の操作だけであれば、人によっては取扱説明書を参照する必要がないだろう。

 「9個のエフェクトのどれが選択され、どのような接続順になっているか?」また「4つのフット・スイッチでON/OFFできるのはどのエフェクトか?」などを一目で視認可能とするのが、本機に追加された"トータル・ディスプレイ"。フット・スイッチでコントロール可能なエフェクトは白く表示される。その4つを選択するには、新たに装備された5つのフラットのペダル・スイッチのうちの2つを使い、左右にスクロールするだけ。実に簡単な操作である。

 4つのストンプボックス・ユニットはノブが4個となり、一段と直感的で詳細な操作が可能になった。また、先代はチューナー・モードにするには2個のスイッチを同時に押したり、パッチ・メモリーとストンプ・モードの切り替えもスイッチの長押しが必要だったが、G5nは追加された5つのスイッチによりワンタッチに行える。メモリー・モードでパッチを切り替えて使用している時に、どれかのエフェクトのON/OFFを行う場合も、フット・スイッチで瞬時に行える。また右端のスイッチにより、ディレイ・タイムなどのタップ入力が常にできる点も実践的で使い易くなっている。

■これからも進化し続ける!?

 リアパネルはシンプルながら必要かつ十分な端子群が機能的に装備されている。高いインピーダンスを備えたギター入力ジャックの隣には、"ミニ・ステレオジャックの外部入力端子"がある。MP3プレイヤーやスマートフォンで音楽を再生しながらギター・サウンドとミックスすることが可能だ。

 ステレオ/モノラルでの出力ができるアウトプット・ジャックの横にはミニ・ステレオジャックのヘッドホン端子。自宅でパッチを作り込んだり、ライブのステージでサウンドの確認をする際に使うと便利だろう。外部のフット・スイッチやペダル・コントローラーを接続するための"コントロール・イン端子"も装備。リアルタイムでのコントロールの自由度を広げてくれる。

 PCと接続するための"USB端子"を備えており、ステレオのオーディオ信号の入出力が可能。これによりA/D変換やアナログ回路を介さないデジタル・ドメインによる、高品位なレコーディングが可能となる。PC側の再生音は本機のヘッドホン端子でモニターできるので、煩わしい接続の変更も必要無い。

G5n_1280-1▲リアパネル

 さらに、プロミュージシャンの間でもファンの多いDAWソフトウェアである、スタインバーグ社のキューベースLEが無償でダウンロードできる"ダウンロード・ライセンス"がバンドルされている。USBオーディオ・インターフェイス機能を使い、簡単に本格的な音楽制作が可能となる。

 また、USBケーブルでPCと接続することにより、ズームのウェブサイトからダウンロード可能な専用アプリケーション、ギターラボを使用できる。これによりエフェクト・パッチの並び替えが画面上で容易に行えるので、曲毎にで整理したバンクとパッチをセットリストの変更に合わせて曲順に従って並び替えるという操作も簡単だ。言うまでもなく、本体にメモリーされたパッチのバックアップも可能。ギターラボを通じて、今後アンプモデル及びエフェクトを随時追加可能。現時点での内蔵アンプモデル5種類、エフェクト68種だが、PCがインターネットに繋がっていればこのギターラボがバージョン・アップデートの有無の通知を自動的にしてくれる。つまり本機は、これからも益々進化していくことになる。

USBオーディオ出力USBオーディオ入力▲「USBオーディオ出力」と「USBオーディオ入力」

PC側(この場合はMacOS)でZOOM G5nがオーディオ・インターフェイスとして認識されている状態。

G5n_1280-3
▲「GuitarLabエフェクト画面」
配信予定の新規のエフェクトの追加や使用頻度に応じ本体から削除する場合などに使われる。

G5n_1280-4▲「GuitarLabパッチ画面」

ユーザーがパッチを作る際にエフェクトの並び順を変更するなどの作業をPC画面上で行える。また、ドラッグアンドドロップの簡単な作業でできる。

G5n_1280-5◆「GuitarLab自動更新画面」

PCがインターネットに接続されていれば、自動的にGuitarLab最新バージョンを確認し、通知してくれる。

■実用上の可能性

 本機はライブ・ステージから自宅録音を含めたレコーディングまで、幅広く対応する。ライブの場合最も多いのは、その会場やリハーサル・スタジオに常設されているギター・アンプを使うケースだろう。アンプ・モデルとスピーカー・モデルは使わずに、あくまでもマルチ・エフェクターとして使用することになるが、その際にはストンプ・ボックス感覚の操作性に加え、新たに装備された5つのフット・スイッチが威力を発揮する。アンプ・モデルについては歪み系エフェクターの一つとして使うこともできる。

 ライブの場合クリーン・アンプの定番であるローランドのJC-120を使う際には、アンプ・モデルをフルに活用してJCをマーシャル化したような使い方も面白い。この場合キャビネット・モデルは好みに応じてということになるが、アンプのインプットではなく、エフェクト・ループのリターン端子に接続することも試す価値がありそうだ。

 自宅でヘッドホンによりギターの練習をするのであれば、アンプ・モデルとキャビネット・モデルを活かして気持ち良いアンプ・サウンドが楽しめる。さらにレコーディングであれば、それに加えてUSBオーディオ・インターフェイス機能が威力を発揮する。デジタル・ドメインによる高品位なサウンドでの音楽制作が可能だ。
 やはりズーム製品ならではのコストパフォーマンスの高さは、この最新モデルについても顕著に表れている。

Text by IKE UENO
※本記事は2016年3月時点の情報です。

G5n試奏動画

この動画では、本文に沿って、"プリセットパッチを使用した演奏"をはじめとして、"アンプモデル(MS800)を固定したままキャビネットを変更した演奏"、"ループ&ドラム機能を使用した演奏"などを収録。



デモンストレーター/渡辺キョータ 
ギタリストコンテスト(GIT MASTERS)でグランプリを受賞し、キャリアをスタートさせる。
音楽雑誌での連載や楽器デモンストレーターなどをおこなう反面、MI JAPAN東京校、EMS東京校GIT講師としての顔も持っている。
ギター&ボーカルとしての活動も多く、ジャンルを問わないスタイルが特徴。
テクニカルなプレイはもとより、そのギターがもつ魅力を瞬時に引き出す多彩な表現力を持つ新世代ギタリストだ。
近年では大橋彩香など、数多くのアーティストのサポートをはじめ、テレビや各メディアで使うテーマソングの制作も手掛けている。
大切な人へ宛てた手紙を歌詞にして世界に一つだけの歌を作る音色ポストプロジェクトにも参加している。



Twitter @w_keshigomu


Facebook https://www.facebook.com/KyotaW



音色ポスト http://www.neiropost.com


〈 主な仕様 〉 ●エフェクトタイプ:68●アンプモデリング:5●キャビネットモデリング:5●同時使用エフェクト:9●パッチユーザーエリア:200●プリセットパッチ:100●リズムパターン:68●サンプリング周波数:44.1 kHz●周波数特性:20Hz~20kHz+1dB-3dB●入力INPUT:標準モノラルフォーンジャック●入力AUTIN:ステレオミニジャック●出力端子:(L/R):標準モノラルフォーンジャック×2PHONE端子:ステレオミニジャック●電源: ACアダプターDC9Vセンターマイナス●外形寸法:225mm(D)×454mm(W)×75mm(H)●USB:USB Audio●重量:3.4kg

製品情報

ZOOM G5n

価格 30,000 円(税抜)

ZOOM G5n

問い合わせ:株式会社ズーム
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台4-4-3
https://www.zoom.co.jp
カスタマーサポート TEL 0570-078-206

もっと見る

Player

2017年8月号

定価760円
(本体704円)A4判

2017年7月1日(土)発売

お求めは全国の楽器店、書店、またはWebで!

GLAY

Player初登場!待望の新作「SUMMERDELICS」を引っ提げて、TAKURO&HISASHIへのロングインタビュー&ギターレポート

J-guitar

厳選されたギターが集まる!国内最大級のギター専門情報サイト!