製品レビュー

BOSS "技 WAZA CRAFT"シリーズを再検証 Part.1〜ボスSD-1W/DM-2W

BOSS SD-1W Super Over Drive
BOSS DM-2W Delay

価格 オープンプライス

 ボスは創業から40年、常にエフェクターの世界をリードしてきた紛れもないトップ・ブランドだ。特にコンパクト・ペダルにおいては、他の追随を許さず、これまでに数多くのヒット商品を生み出し、音楽シーンに多大な影響を及ぼしてきた。そのボスが長年に亘り積み重ねてきた高い技術力とノウハウを惜しみなく注ぎ込み、エンジニアリングの結晶として登場したのが“技 WAZA CRAFT”シリーズである。

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 現行商品のグレードアップ版となると、「オリジナルのメーカーが自らモディファイ?」と思われるかも知れないが、決してそういう類ではない。一般的に量産品を設計する場合、どうしてもコストの制約があり、高価なパーツを使うことは叶わない。また開発に費やす時間も限られる。"技 WAZA CRAFT"シリーズは、このような"制約"から解放された状況下で、徹底的に"良いサウンド"にこだわり、じっくりと作り上げられた商品なのだ。

 しかもオリジナル商品を開発したのと同じ、つまりそれらを知り尽くしたエンジニア陣が、全てのノウハウと経験をつぎ込んでいるのだから、いわゆるモディファイ系とは一線を画す。厳選されたパーツからアナログ回路の入念な見直しまで、細部に亘りクラフトマンシップが注ぎ込まれている。開発エンジニアにとっては、それこそ量産品の開発時には実現不可能だったことの全てが叶ったと言えるだろう。 ボス本来の技術力の真価が発揮された、至極のサウンドがそこにはある。

 今回は"技 WAZA CRAFT"シリーズの再検証レビュー第一弾として、オーバードライブの「SD-1W」とディレイの「DM-2W」を紹介しよう。

SD-1W_review

BOSS SD-1W Super Over Drive 価格=オープンプライス

■こだわりの回路設計で磨き上げられたSD-1

 SD-1がデビューしたのは、伝説のOD-1オーバードライブのデビューから4年後の1981年。以来、現在でもレギュラー・モデルとして35年にも亘るロングセラーとなっている。そのSD-1を"技 WAZA CRAFT"シリーズとしてカスタマイズしたのがSD-1Wである。あくまでもオリジナルのSD-1を基本にグレードアップしており、現在でもSD-1を愛用しているファンもにとっては、非常に興味深い商品だ。

■SD-1ストーリー  

 現在では入手困難で高値で取り引きされているボスの名器「OD-1」は、"オーバードライブ"という名を冠したコンパクト・エフェクターの草分け的な存在である。大ヒットしたモデルなのだが、多くのユーザーからトーン・コントロールを装備して欲しいという要望があった。そこでボスではトーン・コントロールを備えたモデルを、後継機の"OD-2"として置き換え商品にするのではなく、OD-1と同じ黄色のボディ・カラーを継承しながらも、"SD-1"スーパー・オーバードライブとして、2つのモデルを両立させようとした。 このSD-1の発売から4年後の1985年に、OD-1は後継機の「OD-2ターボ・オーバードライブ」へとバトンタッチした。その後「OD-2R」から「OD-3」へと進化して今日に至るのだが、SD-1はそのまま現行モデルとして現在でも高い人気を博している。これはOD-1のサウンドを求めるギタリストが今でも数多く、そのニーズに応える商品がSD-1しか存在しないためだろう。両者の回路図を見ると、非対称の歪み波形を生み出す特徴的な回路を始め、基本的な回路構成がOD-1そのものに近いことが判る。ボスの"オーバードライブ"が初代モデルにして高い完成度を備えていたことになるし、ユーザーの求めるギター・サウンドが普遍であると言うことかも知れない。

■SD-1本来の姿?  

 本機には"S"と表記された、オリジナルのSD-1そのままのサウンドを再現したスタンダード・モードと、それを進化させたカスタム・サウンドの"C"というモードが、スイッチで切り替えられる。スタンダード・モードをオリジナルのSD-1を並べてチェックしてみたのだが、総じて基本的にオリジナル・モデルを見事に継承している。ただしそこには歪みサウンドのキャラクターと言うよりも、むしろ"質"という面で明かな違いが存在した。サウンドの"しっかり感"とか"元気の良さ"といった部分において、一段と上質な感じを受ける。これはオペ・アンプなどのICではなく、ディスクリート回路を採用していることや、厳選されたパーツ類による恩恵だろう。トーン・コントロールは一般的な歪み系エフェクターで使われているハイ・カット式とは異なる特徴的な回路だ。しかしこれも効き方はオリジナルと同様でありながらも、絞った時の音痩せが少ないように感じた。SD-1のトーン・コントロールは、10~11時の位置にした時に、最もOD-1に近いサウンドになるというのは定説である。

■さらに"スーパー"に?  

 カスタム・モードの方は明らかにオリジナルSD-1の進化形・発展形だ。長年に亘り積み上げられたボスの高い技術力をフルに活かし、まさにオーバードライブ・エフェクターの"理想型"となっている感じだ。 オリジナルのキャラクターはそのままに、ゲインは若干高くなり一段とハードな歪みまでをカバーする。またワイドレンジ化されたサウンドは、ギター側のボリュームを絞っても音痩せしないし、ピッキングのニュアンスも忠実に再現してくれる。粘りのあるサステインも魅力的で、全てに渉り実に気持ちの良い弾き心地だ。最近ではモデリング・アンプなどを始めとして、ギターアンプで歪ませた自然なサウンドが主流となっており、エフェクターもその方向性を打ち出したモデルが多いようだ。しかし本機はあくまでも本来の"オーバードライブ・エフェクター"にこだわった、つまりミッドレンジが強調された味付けで、その意味では"脚色されたサウンド"が基本となっている。実用上の使い勝手を考えると、この脚色されたオーバードライブ・サウンドの方が使い易いとも感じられる。それがオリジナルのSD-1がロングセラーを続けている理由であり、それをさらに磨き上げた本機は、とても魅力的な1台だ。

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▲カスタムモードでのセッティング例。OD-1に近いサウンドになるようトーンを10〜11時に設定し、ややドライブを効かせてSD-1らしいミッドレンジの強調したオーバードライブ・サウンドを再現。

SDDM1280-106▲アンプやエフェクターで歪ませた状態で、ブースターとして使用するためのセッティング例。レベルをフル、ドライブをゼロ、トーンを10〜11時にそれぞれ設定。音圧と張りが程良く加わり、クリーン・ブースターとして効果を発揮する。

DM-2W_review

BOSS DM-2W Delay 価格=オープンプライス

■アナログ・ディレイの名器が現代に甦る!

 ボスのアナログ・ディレイの名器、DM-2が生産終了になって30年以上が経過するが、その人気は衰えることがない。中古市場では、発売時の価格(24,800円)と同等かそれ以上の値段で取り引きされているほどだ。その"幻の名器"が、"技 WAZA CRAFT"シリーズとして復活した。当然ながら本シリーズならではの、こだわりの回路設計とクラフトマンシップを注ぎ込んだ上質なものに仕上がっている。音楽的な暖か味を備えた最新のアナログ・ディレイとは...?

■アナログ・ディレイとは?  

 1960年代から70年代、当時のギタリストが"ディレイ"効果を得るには、高価なテープ・エコーに頼るしかなかった。それがエフェクターとして軽量・コンパクトで、しかも手の届く価格で登場したのだから、ギタリストは驚愕し飛び付いた。それがアナログ・ディレイだ。 ところが、より高音質・高性能なデジタル・ディレイの登場と、アナログ・ディレイの主要パーツであるBBDの供給が危ぶまれたこともあり、やがて姿を消していくこととなる。それでもアナログならではウォームなサウンドが、音楽的で気持ちが良いということで、中古市場ではプレミアムが付くほどの人気がある。この"ウォームなサウンド"は、ディレイとしての性能がデジタル方式に比べてアナログの方が劣っていることが起因している。ディレイを発生させている主要パーツは遅延素子のBBD(Bucket Brigade Device/バケツ・リレー素子)で、言葉の通り大勢でバケツ・リレーをすることで信号を遅らせるものだ。人数が多いほど遅れる時間、つまりディレイ・タイムは長くなるが、リレーしている間に溢れる水の量も増える。それが音質の劣化となって表れる。バケツに入れられる水の量に限りがあるように、音の全帯域やダイナミック・レンジの全てを扱うことはできない。このために信号を圧縮(コンパンド)して遅らせてから、最後にそれを伸張(エクスパンド)する方法を取るが、これも音質劣化の要因となる。そして"やまびこ"のように、反響音では"遅れた音の繰り返し"が必要となる。これには遅れた音を再度遅らせることよって"繰り返し"を発生させるのだが、繰り返す度に音質劣化も繰り返されることとなり、どんどん"ナマった"音になってしまう。これがディレイ機能の性能ということになる。

■自然でウォームなサウンド  

 デジタル方式ではこの音質劣化が飛躍的に改善されており、ディレイ音が生々しいほど原音に忠実だ。しかし自然界の現象のような自然な反響音としては、このリアルさが不自然に感じることもある。ディレイ音が繰り返す度にナマっていく方が、結果的に自然で気持ち良い。それがアナログ・ディレイの魅力だ。本機はBBDを用いたアナログ方式で、名器DM-2がしっかりと再現されている。ディレイ・タイムを遅くして注意深くディレイ音を聞くと、この自然な音質劣化が顕著に判る。"S"と表記されたスタンダード・モードでは、最長ディレイ・タイムからディレイ音の減衰の仕方まで、全てに渉りオリジナルのDM-2と同じだ。ただし他の本シリーズと同様に、厳選されたパーツ類の採用により全体の"しっかり感"や"安定感"といった要素が向上している。ディレイ音の"尻尾"の部分には、圧縮・伸張やノイズ・リダクション的な回路の影響により、僅かではあるがノイズが発生する。このレベルもオリジナル・モデルとは一線を画すもので、だからと言ってアナログならではのウォームさが損なわれることは無い。むしろピュアなディレイ効果が得られる。カスタム・モードの"C"では、最長ディレイ・タイムが2倍以上、つまりデジタル・ディレイのDD-3と同等の800ミリ秒となる。暖か味溢れるディレイ・サウンドを使った、より幅広いサウンド・メイキングが可能だ。さらにステレオでの使用ができる上に、リピート・レイト(ディレイ・タイム)を外部のエクスプレッション・ペダルでコントロール可能。音を出した状態でペダルを操作すれば、アナログならではの特殊エフェクトが得られる。 中古市場を探してオリジナル・モデルを求めるのも良いが、長期5年保証が付いた"技 WAZA CRAFT"シリーズを選択することも現実的だろう。

SDDM1280-108▲アナログ・ディレイらしい自然でウォームなディレイ音と減衰感をカスタムモードで再現。

SDDM1280-112▲カスタムモードでのショート・ディレイ・セッティング。曲のテンポに合うよう効果を設定することで、リズム・カッティングでの音の広がり感を加える。

※本記事は2016年7月時点の情報です。

『BOSS "技 WAZA CRAFT"シリーズを再検証 Part.2〜ボスBD-2W/VB-2W』

【試奏動画】BOSS WAZA CRAFT SD-1W/DM-2W

デモンストレーション / 笹本健介 7才からギターを弾き始め、高校の軽音楽部にて自身のバンド「Pesante」を結成。以来、神奈川を拠点に多方面で活動を展開し続けている。 今までにラゾーナ川崎プラザソルや川崎H&Bシアター、地元のライブハウス等での幾多の単独公演の実績を持つ。エレキギターを稲葉政裕氏に、クラシックギターを河野智美氏に師事。2014年4月”Pesante”でグラミー賞受賞ドラマーYonrico Scott氏の来日公演でオープニングアクトを務める。昭和音楽大学卒。 http://kensuke-guitar.jimdo.com/

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BOSS SD-1W Super Over Drive

価格 オープンプライス

SD-1がデビューしたのは、伝説のOD-1オーバードライブのデビューから4年後の1981年。以来、現在でもレギュラー・モデルとして35年にも亘るロングセラーとなっている。そのSD-1を“技 WAZA CRAFT”シリーズとしてカスタマイズしたのがSD-1Wである。あくまでもオリジナルのSD-1を基本にグレードアップしており、現在でもSD-1を愛用しているファンもにとっては、非常に興味深い商品だ。

問い合わせ:ローランド株式会社お客様相談センター 

Tel.050-3101-2555

http://jp.boss.info 

※記事に掲載されている価格/仕様などは2016年7月時点の情報です。

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BOSS DM-2W Delay

価格 オープンプライス

ボスのアナログ・ディレイの名器、DM-2が生産終了になって30年以上が経過するが、その人気は衰えることがない。中古市場では、発売時の価格(24,800円)と同等かそれ以上の値段で取り引きされているほどだ。その“幻の名器”が、“技 WAZA CRAFT”シリーズとして復活した。当然ながら本シリーズならではの、こだわりの回路設計とクラフトマンシップを注ぎ込んだ上質なものに仕上がっている。音楽的な暖か味を備えた最新のアナログ・ディレイとは…?

問い合わせ:ローランド株式会社お客様相談センター 

Tel.050-3101-255 

http://jp.boss.info

※記事に掲載されている価格/仕様などは2016年9月時点の情報です。

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