製品レビュー

「全く新しいアナログ技術」によるヴォックス・ギターアンプ『 VOX MV50』シリーズ

VOX MV50 Clean / MV50 AC / MV50 Rock

価格 各税抜25,000円

 電気・電子楽器の世界で“最新の技術”というと、モデリングなどのデジタル技術を思い浮かべるだろう。しかしバリバリのアナログ技術でも、“これまでに無かった全く新しい”技術が存在する。それは“Nutube”という新しいタイプの真空管で、これを採用したギターアンプがVOXから登場したMV50シリーズだ。新しいコンセプトにより誕生した、ユニークな新製品を紹介する。

《POINT》
◇革新的な新技術によるプリ真空管Nutube搭載
◇クラスDパワーアンプ回路によりエフェクター並の軽量・コンパクトさを実現
◇負荷変動特性の再現などこだわりの回路設計
◇充分なパワーの50ワット出力
◇Clean/AC/Rockの3つのキャラクターをラインアップ

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■革新的な最新のアナログ・テクノロジー!?

 真空管ギターアンプの人気はギタリストの間では不動のもので、現在でも様々な新製品が多くのブランドから次々と発売されており、そのサウンドはエレクトリック・ギターにとって重要な意味を持つ。

 真空管アンプの欠点は寿命が短く壊れ易かったり、高電圧と大電力を必要とするため電源が大型で重くなることだ。これを全く新しい技術で解決したのが"Nutube"という新しいタイプの真空管だ。プリ真空管の定番である12AX7(ECC83)管と同様の動作をするのだが、従来の真空管アンプの欠点をクリアできる、夢のような仕様を備えている。

 Nutubeは、VOX製品を取り扱うコルグと、蛍光表示管のトップ・メーカーであるノリタケ伊勢電子社との共同開発から生まれた技術で、これを初めてVOX製品に採用したのがMV50シリーズだ。12AX7真空管をまともに動作させるには300ボルトもの高い電圧が必要だが、Nutubeは僅か15ボルト程度で充分に動作する。サイズも小さく軽量で、ギターアンプの大幅な小型化を実現可能だ。発熱が少なく、信頼性や耐久性が高いなどと良いことずくめの真空管である。

D_Nutube_Front.jpg▲VOX MV50のプリ管に採用された新真空管「Nutube」

■超軽量コンパクトなアンプ・ヘッド

 実機を前にして誰もがまず驚くのがMV50の大きさだ。軽量・コンパクトな"手のひらサイズ"で、50ワット出力のギターアンプ・ヘッドだとは信じられないほどだ。大きめのストンプ・ボックスと変わらないサイズで、重量はボスのコンパクト・シリーズより100グラムほど重い540グラム。手軽に持ち運べるアンプ・ヘッドである。軽量ではあるが、スラント設計によりケーブルを挿した時でも転倒しにくい仕様になっている。

 電源トランスを内蔵していない点も軽量さの要因で、専用のDC19ボルトのACアダプターが付属する。リアパネルの電源スイッチを"STANDBY(OFF)"から"ON"にすると、パワーアンプの出力を表示するVUメーターのイルミネーションが点灯し、電源がONになったことを表示する。アナログ感溢れる凝った演出だ。 

 本シリーズにはキャラクターが異なる、"Clean"/"AC"/"Rock"という3つのモデルをラインアップしている。プリ真空管の12AX7双三極管に匹敵するNutube 6P1を搭載している。パワーアンプ部には効率が良く低発熱なクラスD回路を採用し、4Ω50ワット/8Ω25ワットを発生する。各モデルはゲインの違いによる歪み方が異なるのは勿論だが、音色的なキャラクターもそれぞれ特徴があり、自分に合ったモデルを選べば良い。

 真空管パワーアンプではないので出力トランスは無いのだが、リアパネルには接続するキャビネットに合わせて4/8/16Ωのインピーダンス切替スイッチが装備されている。これはインピーダンスのマッチングというよりも、むしろ負荷変動特性を変化させるもの。これにより真空管ギターアンプらしい、動的な音質変化を再現可能にするという非常に凝った作りとなっている。パーツの細部まで徹底的にこだわった回路設計で、ギターアンプにとって必要不可欠な動的な特性までも再現している。それでは各モデルを紹介しよう。

VOX_mv1280-108.jpg▲電源スイッチ、EQスイッチ、インピーダンス切り替えスイッチなどが配置されたリアパネル

■MV50 Clean

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 自然なクリーン・サウンドを生み出すモデル。他の2機種はゲインとボリュームの2ボリューム/1トーン構成なのに対して、本モデルは1ボリューム/2バンド・トーン・コントロールとなっている。

 クリーン・アンプの代名詞とも言えるローランドJC-120とは全く異なり、どちらかと言うとビートルズが愛用したことで有名な、1ボリュームのオリジナルVOX AC30に近い感じだ。ハムバッカー・ピックアップを搭載したギターで使用した場合、ボリューム・ツマミが12時の辺りから気持ち良くクランチに歪み始める。

VOX_mv1280-106.jpg このモデルはクラスDパワーアンプ部の回路設計も素晴らしく、ヴィンテージ・チューブ・アンプを彷彿とさせる。ボリュームをフルアップにしても気持ちの良い、自然なクランチ・サウンドで、耳障りな部分は皆無である。2バンドのトーン・コントロールはヴィンテージ・フェンダー・アンプなどに通じる効き方で、ファイン・チューニングが施されており使い易い。トレブルを上げても耳に痛いサウンドにはならず、真空管アンプらしさを感じる。

 ブルースやストレートなロックンロールに最適だし、ギター/ボーカルでオープン・コードをかき鳴らすような使い方も気持ち良いだろう。チューブ・スクリーマ-やブースターを使っても、Nutubeクリップにより自然なオーバードライブ・サウンドが得られる。

【GAKKIソムリエ試奏動画/VOX MV50 Clean】

■MV50 AC

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 ゲインとボリュームのコントロールを備えたAC30を彷彿とさせるモデル。ゲイン・コントロールの可変幅はかなり広く、クリーン~クランチだけでなくかなり歪んだオーバードライブ・サウンドまで得られる。総じてストレートで素直な歪み方で、NutubeによるプリアンプとクラスDのパワーアンプ部の素性の良さを感じる。VOXらしくブリティッシュ系の味付けはされているものの、過度な脚色は無く気持ちの良いサウンドだ。

VOX_mv1280-105.jpg ギター側のボリューム操作やピッキング・ニュアンスなども忠実に再現し、フルアップにしてもコンプレッション感のあるチューブ・アンプらしさが感じられる。

 トーン・コントロールはヴィンテージ・アンプに見られる単純なハイカット・フィルターではなく、イメージ通りに効いてくれる。AC30の"CUT"コントロールに近いものである。クラスDパワーアンプの優れたキャラクターにより、ブライトに設定してもトレブリーになることは無い。ストレートなブルース・ロック系ギタリスト向けと言えるだろう。

【GAKKIソムリエ試奏動画/VOX MV50 AC】

■MV50 Rock

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 ゲイン・コントロールはクランチからハイゲインまでをカバーする。ボリュームを絞って小音量にして、プリアンプ部だけで歪ませた場合でも、Nutubeによる気持ちの良いロック・サウンドが得られる。ボリュームを上げていくとパワーアンプでのクリップが加わるため、一段と心地良い歪みサウンドとなる。まさにロック・アンプと呼ぶに相応しいキャラクターだ。

VOX_mv1280-107.jpg マーシャル・アンプに通じるロック・テイストさはあるものの、こちらも過度の脚色ではなくストレートで素直な特性だ。スタック・アンプのような低音域の息継ぎ感を備えた迫力あるサウンドとなっている。ゲインを高めにしてもギター側のボリューム操作にしっかり追随するので、かなり幅広いサウンドが得られる。トーン・コントロールは中高音域のカット/ブーストといった感じで、本機のトータルなサウンドと合わせて効きが良く使い易い。

【GAKKIソムリエ試奏動画/VOX MV50 Rock】

ac_marshall-102.jpg▲リハーサルスタジオで実際にMV50とマーシャル・キャビネットを組み合わせた様子。

 練習スタジオやライブハウスで定番として常設されている、マーシャルの1960スピーカー・キャビネットに接続し、4Ωに設定して使用するとさらに真価を発揮し、王道のブリティッシュ・ロック・サウンドを生み出す。さらにリアパネルのEQスイッチを"DEEP"側にすれば、シングル・スタックでもダブル・スタックのような"面で鳴る"感じとなり、迫力のあるロー・エンドが得られる。

■スピーカー・キャビネット

MV50AC_BC108_set.jpg▲MV50とBC108のセット(価格=32,500円税抜)もラインナップされている。

 MV50シリーズにベストマッチなスピーカー・キャビネットBC108も登場した。アンプ・ヘッドのポテンシャルをフルに発揮できるように、セミ・オープン・バック構造にするなど、随所にこだわった設計となっている。

 BC108は8インチ・スピーカー×1を搭載したコンパクトなデザイン。キャビネットの構造などにより、EQスイッチを"DEEP"側にすれば小さいながらも迫力あるサウンドが楽しめる。アンプ・ヘッドとのセットも用意されている。

 オリジナルのVOX AC30やヴィンテージ・マーシャルにはセレッション社のG12Mグリーンバック・スピーカーが搭載されている。それと似たキャラクターを持つ、V-Type12インチ・スピーカーを搭載したのがBC112キャビネットだ。MV50 ACなどと組み合わせれば、伝統的なVOXサウンドが再現できる。2台接続すれば4Ω/50ワットとなり、王道のAC30の雰囲気を再現できる。

 自宅ではMV50シリーズとBC108を組み合わせてリハーサル・アンプとして使用するか、または自然なサウンドを生み出すキャビネット・シミュレータ回路を搭載したヘッドホン/ライン出力によるパーソナル・モニターやレコーディングに活用するのも良いだろう。

 そしてリハーサル・スタジオやライブハウスでは、マーシャルなどの常設のスピーカー・キャビネットに接続すれば、充分な音量で自分のサウンドを再現できる。そんな使い方を楽しめる新しいギターアンプ・ヘッドである。

デモンストレーター/仲 比呂志:大手楽器店、ヴィンテージギターショップ店長を経て、Crossed Pairs代表としてオリジナルギター「Current Kathy Guitar」の製造/販売の他、ミュージシャンとして西荻窪Terraを中心にライブ活動を行う。ヴィンテージ・ギターはもとより古今東西のギター/機材に精通し、表情豊かな演奏に定評がある。


動画撮影・編集/AUSTIN Studio

<MV50 Specifications>
・入出力端子:INPUT×1、LINE/PHONES×1、SPEAKER OUT×1
・プリアンプ:Nutube 6P1 ・パワーアンプ出力:最大 50W RMS@4Ω、25W RMS@8Ω、12.5W RMS@16Ω
・電源:AC アダプター DC19V
・消費電力:3.43A ・外形寸法:135(W) x 74.5(D) x 100(H)mm
・質量:0.6kg
・付属品:AC アダプター

製品情報

VOX MV50 Clean

価格 25,000 円(税抜)

株式会社コルグお客様相談窓口
TEL: 0570-666-569
http://www.voxamps.com

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製品情報

VOX MV50 AC

価格 25,000 円(税抜)

株式会社コルグお客様相談窓口
TEL: 0570-666-569
http://www.voxamps.com

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製品情報

VOX MV50 Rock

価格 25,000 円(税抜)

株式会社コルグお客様相談窓口
TEL: 0570-666-569
http://www.voxamps.com

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