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『ESPミュージアム』所蔵の1959年レスポールを3本一挙にレビュー

GIBSON
・1959年製 Les Paul Standard sn : 9 1167
・1959年製 Les Paul Standard sn : 9 0611
・1959年製 Les Paul Standard sn : 9 1974

 2015年秋、渋谷にオープンした『ESPミュージアム』は、ESPがエンドースしているミュージシャンの愛用するギター/ベースと約30年という時間をかけてESPグループがコレクションしてきたヴィンテージ・ギターを展示している常設のギター・ミュージアムだ。
 そこで2016年1月24日(日)に「Vintage Salon Vol.1」というイベントが開催された。これは本来は展示のみとなっているヴィンテージ・ギターのサウンドをプロ・ギタリストの演奏で聴く視聴会イベント。今回はその第一回に相応しく、1959年製ギブソン・レスポール・スタンダードが登場した。
 「GAKKI ソムリエ」では、1959年製レスポール・スタンダード、シリアルナンバー“9 1167”、“9 0611”、“9 1974”の3本を取材した。いずれもコンディションが良いのはもちろん、細部には製造時の個体差があり、半世紀以上の時間を経た風格もそれぞれ。「GAKKI ソムリエ」が得意とする詳細な解説とポイントを得た写真で、その魅力と3本の違いをご覧いただきたい。

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■レスポール・モデルの開発ストーリー

 レスポール・モデルは、ギブソン初のソリッド・ギターとして1952年に発売された。当時ギブソン社の社長だったテッド・マッカーティを中心とした開発チームによって、ES-175スタイルのアーチトップ・ギターを小型化したデザインが作り出された。一方、当時人気ギタリストだったレス・ポールは、当時自らの手で改造したエレクトリック・アーチトップを使用し、過去にはギブソンにソリッド・ギターのアイディアを持ち込んだこともあった。そこで、ギブソンはレス・ポールの元にプロトタイプを持参し、色々なアドバイスを求める中で、最終的にレス・ポールのシグネチャー・モデルとしてレスポール・モデルが発売されることになった。

 発売当初のレスポール・モデルは、ゴールドトップ・フィニッシュにP-90 ピックアップを搭載していたが、幾度ものモデルチェンジが行われた後、1957年に新開発のハムバッキング・ピックアップが搭載され、1958年にフレイムメイプル・トップ、チェリー・サンバーストに塗装された"サンバースト・レスポール"へと進化した。

 しかし、ギブソンは進化を止めることはなく、クラシックなデザインで生産効率の低かったサンバースト・レスポールを、1961年初頭に鋭角的なダブル・カッタウェイ、軽量かつ斬新なボディ・シェイプを採り入れたSGスタイルへとモデルチェンジしてしまう。SGはサンバースト・レスポールに替わる人気モデルとなったが、60年代半ばにイギリスで巻き起こったブルースロックのムーブメントの中、よりソリッドで力強いドライブトーンを備えたオリジナル・レスポール・モデルを望む声が高まった。その人気に後押しされる形で、ギブソンでは1968年にオリジナル・レスポール・モデルの再生産に踏みきった。

 1958~60年にかけて製造された約1,500本あまりのサンバースト・レスポールは、やがて圧倒的な存在感と個性なトーン、希少性などから、ギタリストやコレクター達が探し求める究極のヴィンテージ・ギターと呼ばれるようになった。

 1958~60年にかけて生産されたオリジナル・サンバースト・レスポールは、ローズウッド/マホガニー・ネックにメイプル/マホガニー・ボディ、そしてハムバッキング・ピックアップというスペックを持つ。しかし、ボディ・トップのアーチやネック・グリップ等、個体ごとにばらついている部分も少なくない。また、製造された際には鮮やかなチェリー・サンバーストが施されているが、それらは年を重ねるごとに淡いブラウン系のサンバーストへと経年変化し、弾き込まれたギターはトーンもまた変化する。こうしたエイジングが加わることで、現在のサンバースト・レスポールは各々が特有の表情や個性を感じさせる。

■"9 1167" 最良のコンディションを保持し、浅めのセット角とほぼオリジナル状態のヘッド形状に注目

9-1167-1▲1959年製 Les Paul Standard sn.9 1167

 シリアルナンバー"9 1167″ は、驚くほど良いコンディションが保たれており、長らくコレクターによって管理されていたものだろう。エッジの尖ったヘッドストック周りや、僅かに覗くホリーウッドのヘッドストック・ベニア、そして特徴的なギブソン・ロゴ・インレイ、シルクプリントされたレス・ポール・モデルの文字が、オリジナル同様の状態で残されている。

 ボディトップ全体に浮かび上がる幅の広いフレイムは珍しく、人気も高い。ギブソンのグリップは58年/59年/60年と順に薄く移行していく傾向が見られるが、このギターはややスリムなラウンド・グリップで、現在のギターと比べると太めといったところだろうか。ネックのセット角度が浅めのギターが多く見られる50年代のレスポール・モデルの中でも、十分なジョイント角がつけられていることも特徴となる。

 レッド、ブラウン、ブラック等で作られたチェリー・サンバースト・カラーは、特に赤味成分の退色が進むことで、淡いブラウン・カラーへと変化している。

 ギターのシリアル・ナンバーはビリー・ギボンズが愛用するレスポール、通称"パーリー・ゲイツ"に非常に近い。ピックガードの下側には、レス・ポール本人のサインが書き込まれている。

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▲ロゴ・インレイ、シルクプリントがオリジナル状態で残っている。
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▲ヘッドストック・ベニアは大変薄く、ヘッドのエッジ部のコンディションが良い。
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▲複数のカットを繋いだ写真。杢目は特にネック側から見た時に、全体に浮かび上がってくる。
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9-1167-23▲ESPグループが入手した段階ですでにレス・ポールのサインは入っていた。
9-1167-24▲フロントPU付近には赤味が残っている。
9-1167-26▲バックにはほとんどキズも少なく、極めて良好なコンディションを保っている。
9-1167-22▲フレットも充分に残っている。
9-1167-4▲トラペゾイド・インレイ。
9-1167-3▲スイッチ・カバーには、状態によっては消えやすい「RHYTHM」「TREBLE」の文字が残っている。
9-1167-8▲グラマラスなトップのカーブ
9-1167-2▲バック

■"9 0611" リボン型のフレイムとフレックが入ったトップ。そして、ボディ形状に注目

9-0611-1▲1959年製 Les Paul Standard sn.9 0611

 個体によって、様々な表情を見せるサンバースト・レスポール。多くのギターは、現在のものより軽量であるが、シリアルナンバー"9 0611″のギターはその中でも驚くほど軽い。ネックは、典型的な1959年型グリップで、十分な厚みがあり、やや肉付きが少ないタイプ。ラウンド・グリップながら、2割ほどトライアングルがかった感触といえばわかりやすいだろうか。

 ボディ・トップには、美しいリボン型のフレイムが全体に入ったメイプル材が使われている。低音弦側のフレックと呼ばれるすじのような模様はサンバースト・レスポールに見られることが多く、常にボディの中心部分ではなく、濃く着色される外周側に配置されている。

 ボディ・トップに施されたアーチ加工はギター毎に異なるが、このギターではやや浅めのネック・セット角、フラット気味に仕上げられたボディ中心部分、そして深くえぐられた後に鋭く外周へと伸び、尖ったままに仕上げられた外周部分という、オリジナル・モデルならではの典型的な特徴が見られる。

 ピックアップ・セレクター周りが凹んで感じられるのもヴィンテージならではと言える。また、同じアイボリー・カラーながら、ピックアップリングが明るく、それに対してピックガードが暗く変色するものも多い。キャラメル・カラーのセレクタ・ノブは、フェノール樹脂のカタリン。裏側からゴールド・ペイントが施されたビュートレー樹脂のコントロール・ノブは、銅成分が酸化した緑青によって、グリーンがかった色合いへと変化している。

9-0611-11-2▲トップは全面にリボン型と呼ばれるフレイムが入っている。
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▲フレックと呼ばれているすじのような模様が特徴的。
9-0611-16▲トップは尖ったまま外周部で鋭く落ちる形状。
9-0611-10▲ボディはピックアップ・セレクター付近が凹んだ形状。
9-0611-4▲ピックアップ・リングとピックガードは同じ素材だが、アイボリーの色の変色は経年変化で異なった色に変色している。
9-0611-9▲コントロール・ノブは銅成分が酸化し、グリーンがかった色に変色している。
9-0611-2▲バック

■"9 1974" ワイドなフレイムトップ、ローズウッド指板。ヴィンテージならではの風格に注目

9-1974-1▲1959年製 Les Paul Standard sn.9 1974

 光を反射して光って見えるほど固いメイプル材が使われているのが、シリアルナンバー"9 1974″のギターである。明るい色合い、暴れ気味の幅広いフレイムが全体に広がるメイプルは、特に人気の高いヴィンテージ・モデルの特徴といえる。ラッカー塗装のクラックがもたらすヴィンテージならではの存在感、そして右手肘の当たる部分のくすみは、汗が染み込むことによって起こる。

 ネックはやや薄めのラウンド・グリップだが、60年には更にぐっとスリムな形状へと変化していく。そして、フィンガーボードには、固く木目の濃淡がはっきりとしたブラジル産のローズウッド材が使われている。

 上面がフラット気味のポールピース、エッジ部分が尖り、ばらついて感じられるピックアップ・カバーはPAFと呼ばれる初期型ハムバッカーの特徴でもある。

 ネックのセット角はやや浅めなこともあり、フロントが1/4インチ、リアが1/2インチの高さのリングからほとんど露出していない。

 ニッケルメッキが施されたブリッジサドルはブラス製、そしてブリッジ自体はズィンクダイキャスト、ストップ・バー・テイルピースはアルミニウムダイキャスト製。

9-1974-18-2▲ワイドなフレイムが美しいトップの杢目。
9-1974-5▲トップ全体に細かく入った塗装のクラック。
9-1974-15▲独特の杢目と色合いで、いかにもブラジリアン・ローズウッドらしいフィンガーボード。
9-1974-13▲上面がフラット気味のポールピース、エッジが尖ったピックアップカバーなどPAFの特徴がよくわかる。
9-1974-17▲やや浅めのセット角の個体。
9-1974-11▲ニッケルメッキが部分的に剥がれ、ブラスが露出したブリッジサドル。
9-1974-14▲ジャック部分とジャックプレート。
9-1974-2▲バック

(テキスト: Jun Sekino 写真: GAKKI ソムリエ)

取材協力 : ESP Museum
http://www.espguitars.co.jp/museum/
東京都渋谷区神南1-20-16 高山ランドビル3F
開館時間 11:00~19:00 入場無料
「Vintage Salon Vol.1」協賛 : ダダリオ
http://www.kcmusic.jp/daddario/nyxl_story.html
http://www.kcmusic.jp/daddario/

デモンストレーションby佐藤"GIN"克也氏


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製品情報

GIBSON
・1959年製 Les Paul Standard sn : 9 1167
・1959年製 Les Paul Standard sn : 9 0611
・1959年製 Les Paul Standard sn : 9 1974

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