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『ESPミュージアム』所蔵のレオ・フェンダー在籍時ストラトキャスター4本一挙レビュー

FENDER
1954年製 Stratocaster sn : 0483
1957年製 Stratocaster sn : 15195
1962年製 Stratocaster sn : 71770
1965年製 Stratocaster sn : L86976

東京・渋谷にある“ESP ミュージアム”で、2016年3月20日に『Vintage Salon Vol.2』が開催された。これは、ミュージアムが所蔵する貴重なヴィンテージ・ギターを、アンプで鳴らしてそのサウンドの素晴らしさを体験するという有料予約制の公開試聴会。しかも、同じモデルの年代違いを同じ条件で試奏することで、仕様や年代の違いによるトーンの違いが明確になる。今回はレオ・フェンダーがフェンダー社に在籍していた時期に生産されたストラトキャスターをテーマに「1954年製」「1957年製」「1962年製」「1965年製」の4本のギターを試奏された。

■レオ・フェンダーがデザインしたエレクトリック・ギターの金字塔、ストラトキャスター

 ブロードキャスター(テレキャスター)に続く2本目のフェンダー・エレクトリック・ギターとして、1954年に発売されたストラトキャスター。片側に6個のチューナーが並ぶ個性的な専用ヘッドストック、当時はまだ一般的ではなかった3ピックアップ仕様、そして専用のヴィブラート・ユニットを搭載した先進的なモデルとして登場した。また、機能性を最優先させ、一切の装飾類を持たないという潔い姿は、正しくレオ・フェンダーのデザイン・コンセプトを象徴している。

■後年生産された製品とは、様々な部分で仕様が異なる初年度の1954年製。
[1954年製 sn : 0483]

ST54-1280-1▲1954年製 Stratocster sn : 0483

 54年に発売されたストラトキャスターは、テレキャスター譲りの1ピース・メイプル・ネックに、ホワイト・アッシュ製のボディ、そしてシンプルなシングルコイル・ピックアップに象徴される。ボディに施されたサンバースト・フィニッシュもフェンダーでは初めて採用されたカラーだった。スティール製のブリッジ・サドル、ブリッジ、ブロックからなるシンクロナイズド・トレモロは、ソリッドでサステインに優れたストラトキャスターのトーン・キャラクターを決定づけた。スティール・プレートを介して4本のボルトでジョイントされたネックは、フィンガーボードを兼用した1ピース・メイプル製。ややトライアングルがかったスリムなグリップは、この時期特有の特徴と言える。ボディの表/裏には、右肘や体が接する部分を斜めからに削り落としたコンター加工が施されている。テレキャスターにも似たピックアップは、各弦に対応した6個のアルニコ製ポールピースを使用したシングルコイル・タイプ。54~55年にかけて生産された初期型は、3弦ポールピースが4弦よりも短いのが特徴となる。ピックガード及びトレモロ・プレートには、1/16インチ厚(約1.6ミリ)のホワイト・プラスティック・プレートが使用されている。弦を通す穴が正円であるのも54年製の特徴となる。

 54年春に発売が告知されたストラトキャスターだが、本格的な量産体制が整ったのは同年の夏だった。それまでの数ヶ月間に作られた最初期モデルは、まだ仕様が安定しない部分も見受けられる。ナットの上部には、トラスロッドを埋め込んだ穴を塞いだ跡が見える、初期モデルでは写真のギターのようにマスキング跡が残っているものも見受けられる。ヘッドストック外周がやや丸く仕上げられているのも54年製の特徴。通常とは異なる形状のボリューム/トーンノブは、初期の数十台のギターにのみ見られる特徴である。

ST54-1280-3▲チューナーが片側に6連並んだ個性的なデザイン。エッジ部分が他の年代の製品と比べ、やや丸味を帯びているのが初年度の特徴。

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▲テレキャスターと共通するホワイト・アッシュ・ボディ、フィンガーボードを兼用する1ピース・メイプル・ネックを採用。
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▲最初期の製品に使用されたコントロール・ノブは、サイド部分のテーパーが弱く、円柱形に近い特徴的なデザインで、破損しやすい。

ST54-1280-9▲初期型のピックアップは、3弦/Gのポールピースが4弦/Dより低いのが特徴となる。

ESP_ST1280-5▲弦を交換するためのスプリングカバーの穴が円形なのは、初年度の特徴。

ST54-1280-14▲ボディ・サイドの塗装は、ブラックではなく濃いブラウン・カラー。

ST54-1280-22▲ネックの裏には、スカンクストライプと呼ばれるトラスロッドを仕込んだ溝に埋木した跡が残っている。

ESP_ST1280-6▲初期の製品は、テレキャスターから流用された円盤形のストリング・リテイナーが使用されている。

ST54-1280-19▲スティール製のブリッジ・サドル、ブリッジ、ブロックからなるシンクロナイズド・トレモロは、トーン・キャラクターを作り出す。

ST54-1280-2

■トライアングル・グリップと2トーン・タバコサンバースト。特に人気がある57年製。
[1957年製 sn : 15195]

ST57-1280-1▲1957年製 Stratocaster sn : 15195

 50年代のストラトキャスターの中でも、特に人気の高い年代として知られるのが57年製。50年代のモデルに時折見られるトライアングル・グリップは、57~58年に生産されたモデルで最も顕著に表れ、これ以降は薄いラウンド・グリップへと変化していく。"スパゲティ・ロゴ"の名称でも知られる細いブランド・デカールも50年代の特徴となる。これは、レオ・フェンダーのサインを元にデザインしたもので、60年代のギターのようなパテントナンバーは見られない。ボディ材が前年にホワイト・アッシュからアルダーへと変更されたことで、ややエッジを抑えたトーン・ニュアンスへと変化した。また、ブリッジ/ミドル・ピックアップを併用する"フェイズ・トーン"は、メイプル・ネック/アルダー・ボディを備えたこの時期のサウンドを好むギタリストが多い。フィニッシュは初期の2トーン・タバコサンバーストが継続されているが、翌年にレッドを加えた華やかな3トーン・サンバーストへと変更された。クルーソン社のデラックス・チューナーを搭載し、フェンダーの6連スタイルへ合わせてベース・プレートが再加工されている。ストリング・ポストにスロット加工が施されたセイフティ・チューナーは、クルーソン社のアイデア。この時期のギアカバーは、プレーンなタイプから一列に"KLUSON DELUXE"と打刻されたタイプへと変更された。

ST57-1280-3▲54年製と比べると、エッジ部分のRがだいぶ小さく加工されている。

ST57-1280-18▲ボディ材は56年にホワイト・アッシュからアルダーへと変更されたが、1ピース・メイプル・ネックは継続している。

ST57-1280-8▲弦毎に高さが異なるスタガード・タイプのポールピースを採用したシングルコイル・ピックアップ。マグネットにはアルニコVを使用。

ST57-1280-10▲56年から採用されたナイロン製のコントロール・ノブは破損しにくいが、経年でやや黄色く変色しやすい。

ESP_ST1280-7▲56年からプレス成型されたウィング型のストリング・ガイドが使用されている。

ST57-1280-14▲56年から、写真では分からないが、サステインブロックの弦のボールエンドを収める穴が深くなった。

ESP_ST1280-8▲スプリングカバーの穴は、55年から円形ではなく縦長となり、使いやすくなった。

ST57-1280-18▲57年頃からコンターのエッジ部分がやや角張ってくる。

ST57-1280-19▲写真では分かりにくいが57年製は、ネックの断面が三角形に近づくVシェイプのグリップが多い。

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■スラブボード、グリーンガード。しかもバーガンディミスト・メタリックの62年製。
[1962年製 sn : 71770]

ST62-1280-1▲1962年製 Stratocster sn : 71770

 ストラトキャスターをはじめとするフェンダー・ギターの大きな転換期となったのが59年に採用されたローズウッド・フィンガーボードである。特に62年までのギターには、接着面が平面に加工された厚いローズウッドが使用されたことから"スラブボード"とも呼ばれている。スラブボード期は、50年代タイプのピックアップと、ローズウッド・フィンガーボードの特徴となるレンジの広さ、はっきりとした輪郭のトーンが組み合わさった年代としても知られ、ブルース・ミュージシャンを筆頭にこの年代の製品にこだわるギタリストも少なくない。ローズウッド・フィンガーボードと同時期に採用されたのが、ホワイト/ブラック/ホワイトの3プライ・ピックガード。これはセルロイド製で、ややダークな色合いから"グリーンガード"とも呼ばれている。また、黄ばみやすいナイロン製ピックアップカバーやコントロール・ノブといったパーツ類との組み合わせにより、ヴィンテージならではの風格が漂っている。カスタム・カラーが量産されたのもこの頃からで、中でも写真のバーガンディミスト・メタリックは、特にレアなカスタム・カラーである。ジャズマスター等では比較的多く見られるカスタム・カラーだが、ストラトキャスターにおいては、おそらく5%未満だろう。

ST62-1280-3▲スパゲティ・ロゴだが、その下にパテントナンバー3個書かれているデカールを使用。

ESP_ST1280-9▲ローズウッド・フィンガーボードが採用された59年から、ポジションマークもクレイドットと呼ばれる白いドットが採用された。

ST62-1280-4▲59年からホワイト/ブラック/ホワイトのセルロイド製3プライ・ピックガードを採用。そのダークな色合いから、グリーンガードと呼ばれる。

ST62-1280-7▲59年から採用されたローズウッド・フィンガーボード。厚みがあり、接着面が平らでスラブボードと呼ばれている。

ESP_ST1280-10▲スラブボードは、ギターの正面から見るとネックとの接着面がRを描いているが、ヘッド側から見るとフラットであることが分かる。

ESP_ST1280-11▲塗装の剥げた部分を見ると、バーガンディミスト・メタリックとアルダー材との間に、ホワイト・サーフェサーが確認できる。

ST62-1280-13▲60年代のネックは緩やかなラウンドネックを採用している。写真のギターには、バール状の特殊な木目が現れている。

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■ラウンド貼りのフィンガーボード。レイクプラシッド・ブルーが美しい65年製。
[1965年製 sn : L86976]

ST65-1280-1▲1965年製 Stratocaster sn : L86976

 62年半ばから65年に生産されたストラトキャスターは、レオ・フェンダーがフェンダー社に在籍した最終期の製品となる。ローズウッド・フィンガーボードは薄く、そして指板はアールに合わせて湾曲した形状に加工されている。また、64年からはアンプでお馴染みの大型ロゴが採用された。フェンダー・ロゴはデカール製で、雲型(透明)、ブラック、雲型、ゴールドと4段重ねになっている。そのため、特に上部のゴールド層は酸化して暗く変色し、剥がれやすい。チューナーは同じクルーソン社製だが、カバーに打刻された文字は2列になっている。65年にピックガードの素材がセルロイドからビニル系プラスティックへと変更された。65年製の写真のギターに使用されているのは、この年のみに見られる特殊なタイプで、3プライ・セルロイドの上側に薄いホワイトを足した4プライ仕様。ピックアップは、ややタイトでトレブリーなキャラクターへと変化していく。フィニッシュはカスタム・カラーとして用意されたレイクプラシッド・ブルー。デュポン社の車用アクリル・ラッカー塗料で、ブルーの塗料に細かなアルミニウム・パウダーを混合したものが使われている。カスタム・カラーの下地には、ホワイト・サーフェサーが使用されているが、稀に他のカラーが覗くこともある。ボディ材はアルダー材が使用されている。

ST65-1280-3▲64年から採用されたトランジション・ロゴが使用されている。サドルからチューナーポストまで、弦が真っ直ぐ張られるのがフェンダー・スタイル。

ESP_ST1280-12▲65年から白いパーロイドのドットポジションが使用された。この時期は、ドットとドッドの間がやや狭い。

ESP_ST1280-13▲ホワイト層を足した4層、12点止め仕様のピックガード。

ST65-1280-8▲62年から、薄ラウンド形状に加工されたラウンド・フィンガーボードが採用された。

ESP_ST1280-14▲本来64年からは、ストリング・ガイドの下にプラスティックのスぺーサーが入っている。

ESP_ST1280-15▲ラウンド・フィンガーボードをヘッド側から見ると薄いローズウッドがラウンド状に接着されていることが分かる。

ESP_ST1280-1▲アルダー・ボディとレイクプラシッド・ブルーの間に、ホワイト・サーフェサーの層が見える。

ST65-1280-2

▲バック
テキスト:JUN SEKINO
写真:GAKKIソムリエ
取材協力: ESP Museum
http://www.espguitars.co.jp/museum/
東京都渋谷区神南1-20-16 高山ランドビル3F
開館時間 11:00~19:00 入場無料

【GAKKI ソムリエ試奏動画】ESP Museum 所蔵のStratocaster '54、'57、'62、'65

ESP Museumでは、2016年3月20日(日)に本記事で紹介した4本のストラトキャスターの公聴会「Vintage Salon Vol.2」。その公聴会の後、あらためて藤岡幹大氏に4本のストラトキャスターをプレイしてもらった。  本動画は「1954年」「1957年」「1962年」「1965年」のそれぞれについて、3つのピックアップのクリーンサウンドとクランチサウンドでプレイしてもらっている ※クリーンはフェンダーのトーンマスターのみ。クランチはアンプはクリーンと同様でTレックスのモーラーを使用したもの。また、音声の収録はズームQ8のXYマイクでステレオ録音している。

協賛 : ダダリオ http://www.kcmusic.jp/daddario


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製品情報

FENDER
1954年製 Stratocster sn : 0483
1957年製 Stratocster sn : 15195
1962年製 Stratocster sn : 71770
1965年製 Stratocster sn : L86976

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2018年12月号

定価890円(本体824円)A4判

2018年11月2日(金)発売

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