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ブラックガードからペイズリーまで『ESPミュージアム』所蔵のテレキャスターを4本一挙レビュー

FENDER
・1954年 Telecaster sn : 2721
・1957年 Telecaster sn : -21037
・1965年 Telecaster Custom sn : L90348
・1968年 Telecaster (ペイズリー) sn : 240283

 東京・渋谷にある“ESPミュージアム”で、2016年5月8日(日)に「Vintage Salon vol.3 Fender Telecaster編」が開催された。これはミュージアムが所蔵する貴重なヴィンテージ・ギターを、アンプで鳴らしてそのサウンドの素晴らしさを体験するという有料予約制の公開視聴会だ。今回はテレキャスターを4本フィーチャーし、「1954年製」、「1957年製」「1965年製テレキャスター・カスタム」「1968年製(ペイズリー)」のサウンドを、ギタリスト横内“TAKE”健亨の演奏で体験。ここでは4本のヴィンテージ・テレキャスターを紹介しよう。

■バター・スコッチとブラックガードのコントラストが美しい初期型
[1954年製 Telecaster sn : 2721]

 史上初の量産型ソリッド・ギターとして1950年に発売されたフェンダーのブロードキャスター、翌年からはテレキャスターへと改名された。驚くことにテレキャスターは、66年も経過した現在もほぼ同じ形のまま生産が続けられている。中でも初期型とされる1954年末まで生産されたモデルは、黒いベークライト製ピックガードが使われていることから、通称"ブラックガード"と呼ばれている。

ESPM_TL-1▲1954年製 Telecaster (sn : 2721)

 初期型の大きな特徴となるのが、1ピース・メイプル・ネック、ホワイトアッシュを使ったボディ、そしてバタースコッチ・ブロンドと呼ばれる色に黄ばんでゆくフィニッシュである。外周が丸く面取りされたヘッドストックには、レオ・フェンダーのサインを元に作られたスパゲティ・ロゴのデカールが貼られ、1/2弦にはボタン型のリテイナーが取り付けられている。手作業部分の多いこの時期のネック・グリップは、個体ごとにばらつきがあるが、厚めのUシェイプからソフトVシェイプへと加工されているものが多い。ボディ材のホワイトアッシュは、軽量で木目が大きなものが多く、これがテレキャスター・トーンのひとつの要因ともなっている。

 スティール・プレートからプレス加工されたブリッジは現在までほぼ変わらない形状を保ち、この時期はプレート上にシリアル・ナンバーが打刻されている。また、ブリッジ・サドルには5/16インチ径のブラス材が使われている。1955年までのリア・ピックアップには、不純物の多いアルニコ(もしくはアルニ)製で、ポールピースの高さが均一になるよう表面が平らに仕上げられている。この時期のピックアップは特に磁力が弱く、歴代のテレキャスターの中でも特にファットなトーンとして知られている。ドーム型のコントロール・ノブもまたこの時期の特徴である。

ESPM_TL-8▲ベークライト製の黒いピックガード。写真には弾きキズが見えるが、この部分はピックガードに施されたトップのコーティングが剥がれた跡である。

ESPM_TL-12▲塗装は黄ばみやすく、バタースコッチ・ブロンドと呼ばれる独特のカラーに変色しており、ホワイトアッシュの杢目が透けて見える。

ESPM_TL-10▲この時期のフェンダーの特徴である外周が丸く面取られたヘッド。スパゲティ・ロゴの「r」の上、3弦と4弦のストリングポストの間に丸型のストリング・リテイナーが取り付けられている。

ESPM_TL-6▲5/16インチ径のブラス製のブリッジ・サドル。

ESPM_TL-11▲現在までほぼ形が変わらないスティール・プレート。初期型はシリアルナンバーがプレート上に打刻されている。

ESPM_TL-7▲リア・ピックアップは弱めのアルニコ・マグネットが使われ、ファットなトーンが特徴。ポールピースの高さが均一に整えられている。

ESPM_TL-9▲コントロール・ノブは先端がドーム型、ピックアップ・セレクターは丸型のトップのパーツを採用している。

ESPM_TL-100▲バック

■メイプル1ピース、ホワイトブロンドの1957年製
[1957年 Telecaster sn : -21037]

ESPM_TL-2▲1957年製 Telecaster (sn : -21037)

 1950年代後半のテレキャスターは、メイプル・1ピース・ネックとホワイト・ブロンド・フィニッシュ、そして明るくアコースティックなカントリー・トーンを備えた時期として知られている。
 1956年からはバタフライ・タイプのリテイナーが採用されると共に、取り付け位置が5弦近くに変更された。ロゴのデカールはスパゲティ・タイプが継続されているが、取り付け位置が変更されている。人気の高いVグリップのネックは1957~58年に集中して存在し、写真のギターも僅かにスリムになったVグリップである。ボディは初期型と同様のホワイトアッシュ材だが、エッジが尖った形状となり、約60年が経過した現在でも黄ばみにくいブロンド・フィニッシュに変更されている。

 1954年末にはストラトキャスター等とシリアル・ナンバーが統合され、刻印される位置もブリッジからネック・プレートへと移されている。ブリッジ形状に変化はないが、サドルは1/4インチ径のスティール材へと変更された。ピックアップも音量バランスを考慮し、各弦ごとに高さを変えたランダム・ポールピース仕様となった。また、この時期からは磁力の強いアルニコVが常に使用されるようになり、エッジの効いたトゥワンギング・トーンがテレキャスター・サウンドの代名詞となった。1952~67年にかけてのピックアップ・セレクターはブリッジ側よりブリッジ/ネック/ネック(ベーストーン)と切り替わる。

 テレキャスターは、本来出荷時にスナップオン・タイプのブリッジ・カバーが取り付けられており、カバーをつけた際にリアとフロントのピックアップの外観がマッチする。

ESPM_TL-17▲この時期は外周が角ばった面取り加工に変わり、バタフライ・タイプのリテイナーがロゴ「F」の前、5弦のストリング・ポストの下に変更されている。

ESPM_TL-36▲ネックはVグリップ。

ESPM_TL-13▲ブリッジのサドルがスティール製に変更。また、シリアルナンバーはブリッジ・プレートではなく、ネック・プレートに刻印されるようになった。

ESPM_TL-14▲ポールピースの高さが均一ではなく、3弦と4弦が高いランダム・ポールピースになった。

ESPM_TL-15▲コントロール・ノブのトップがほぼ平坦になり、セレクターの形状も変更された。セレクターもブリッジ側よりブリッジ/ネック/ネック(ベーストーン)の配線となった。

ESPM_TL-4▲ブリッジ・カバーを取り付けた状態。フロント・ピックアップとブリッジカバーが外観上マッチしている。

ESPM_TL-101▲バック

■装飾が施されたテレキャスター・カスタム
[1965年製 Telecaster Custom sn : L90348]

ESPM_TL-3▲1965年 Telecaster Custom (sn : L90348)

 1959年に発売されたテレキャスターのバリエーション・モデルが、テレキャスター・カスタム。このモデルにはレギュラーのテレキャスターよりもひと足早くローズウッド・フィンガーボードが採用された。また、ボディの表/裏にバウンド加工が施され、それに合わせたサンバースト・フィニッシュを採用している点が特徴となる。

 レオ・フェンダーがデザインしたギターはインレイなどの装飾に該当する要素がほとんど無いことが特徴だ。しかし、テレキャスター・カスタムだけは当時、例外的な存在だった。これは、保守的なカントリー・ウェスタン市場へ食い込むためのセールス・サイドからの提案があったと言われている。また、レギュラーのテレキャスターに採用されていたブロンド・フィニッシュのモデルにはホワイトアッシュ材が使われているのに対して、サンバースト・フィニッシュのカスタムにはアルダー材が使われている。そのため、レギュラー・モデルとはサウンド的にも異なり、軽さと固有のサウンドが感じられる。

 写真のギターは1965年製で、トランディション・ロゴと呼ばれる大型のゴールド・ロゴが使われ、フィンガーボードには薄くラウンド加工されたローズウッド材が使われている。ピックアップ等に大きな変化はないが、ブリッジ・サドルにはタッピング溝が付いている。ピックガードは3プライのホワイト・プラスティック製である。

ESPM_TL-18▲ボディのトップとバックに施されたバインディング。

ESPM_TL-22▲ボディのバックもサンバースト。アルダー材の杢目が見える。

ESPM_TL-20▲ピックガードは3プライ・ホワイト・プラスティック製。

ESPM_TL-21▲フィンガーボードにはラウンド加工されたローズウッド材が使われている

ESPM_TL-19▲ブリッジ・プレートの「FENDER」の刻印は、ピックアップの下からサドル側に移動された。スティール製のブリッジ・サドルにはネジ状のタッピング溝が入れられている。

ESPM_TL-23▲トランジション・ロゴのデカール。「Telecaster Custom」というモデル名ながらデカールは「Custom Telecaster」の文字となっている。

ESPM_TL-34▲ブリッジの左にブリッジ・カバーを裏返しの状態で置いた状態。カバーは軽くブリッジにはめるだけで簡単に固定できる。

ESPM_TL-102▲バック

■極上のコンディションを保ったペイズリー
[1968年製 Telecaster sn : 240283]

 フラワー・ムーヴメントが押し寄せていた1968年に、ピンクのペイズリー柄とブルーのフラワー柄をあしらったテレキャスターが発売された。また、この時期はビグスビー・ビブラート付き、チェンバード加工が施されたシンライン、そしてネックとボディにローズウッド材を使用したテレキャスターなどバリエーション・モデルも発売された。

ESPM_TL-5▲1968年 Telecaster (sn : 240283)

 ヒッピー文化を象徴するペイズリー柄が施されたボディ。この柄部分に使われている素材はペイズリー絵柄の壁紙であり、それをボディの表裏に貼りつけている。そしてサイドは、製造された当時はメタリック・ピンクに塗装されていたが、経年変化により赤味成分が退色し、現在はベースのカラーであるブラス・ゴールドへ変化したものも多い。ボディのペイズリー柄を活かすためにピックガードにはクリア素材が使われており、ネック・ピックアップ周辺部分はキャビティを隠すためピンク色に塗装されている。また、レギュラーのテレキャスターのボディがホワイトアッシュ製なのに対して、ペイズリーの多くはアルダー製である。

 60年代にオプションであったメイプル・フィンガーボードが標準的に使われているのも特徴のひとつ。フェンダーのロゴは1967年から登場したブラックの大型CBSタイプが使われている。ピックアップ・セレクターは一般的なブリッジ/ミックス/ネックとなり、同時に高音域を強調するようにサーキットが変更された。

ESPM_TL-24

ESPM_TL-25▲クリアの塗装は経年変化によりひび割れたものが多い中で、写真のギターは塗装の割れが少なく、コンディションは良好だ。

ESPM_TL-30▲サイドに塗装した元来の塗色であるメタリック・ピンクが残っている。

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ESPM_TL-27▲ピックガードはクリア素材が使われている。横から見るとかなり厚みがある。また、フロント・ピックアップの周辺部分にはピンク色の塗装が施されている。

ESPM_TL-28▲メイプル材のネックにメイプル材を貼ったネック。

ESPM_TL-29▲ロゴのデカールは黒の大型CBSタイプ。

ESPM_TL-26
▲スティール・プレートとスティール材のブリッジ・サドル。

ESPM_TL-103▲バック

テキスト:JUN SEKINO
写真:GAKKIソムリエ
取材協力: ESP Museum
http://www.espguitars.co.jp/museum/
東京都渋谷区神南1-20-16 高山ランドビル3F
開館時間 11:00~19:00 入場無料

ESP Museum 『Vintage Salon VOL.3』

2016年5月8日(日)渋谷のESPMuseumにて、本記事で紹介した4本のテレキャスターの公聴会が行われた。 今回はスペシャルゲストとしてギタリストの横内"TAKE"健亨が登場。横内氏が、これら4本のデモンストレーションを披露してくれた。 【GAKKI ソムリエ試奏動画】ESP Museum 所蔵のTelecaster '54、'57、'65、'68 ギターのサウンドは画面左のヴァイブロ・キングから、バッキングのループ音は画面右のトーン・マスターから出力。足下にはエレクトロハーモニックスのソウル・プリーチャーとケンタウロスのディストーションが使われている。音声はズームQ8を2台のアンプの前に置き、XYマイクで収録した。4本のギターを1カット通しで収録した。 協賛 : ダダリオ http://www.kcmusic.jp/daddario/nyxl_story.html http://www.kcmusic.jp/daddario/


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製品情報

FENDER
・1954年製 Telecaster sn : 2721
・1957年 Telecaster sn : -21037
・1965年 Telecaster Custom sn : L90348
・1968年 Telecaster (ペイズリー) sn : 240283

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