特集

ギタリスト、ジョシュ・スミスを迎えたVintage Salonの番外編

GIBSON
・1959年製 Flying V sn:9 1713
・1956年製 Les Paul Custom sn:612365

FENDER
・1956年製 Telecaster sn:12649
・1959年製 Stratocaster sn:35038

 東京・渋谷にある“ESPミュージアム”で2016年7月10日(日)に「Vintage Salon vol.4 番外編」が開催された。これはESPミュージアム所蔵の貴重なヴィンテージ・ギターを、アンプで鳴らして、そのサウンドの素晴らしさを体験するという有料予約制の公開視聴会だ。今回はESPミュージアムとベムラムのエフェクターで知られるトライサウンドの合同企画として、次世代の名ブルースギタリストと期待されているジョシュ・スミス(JOSH SMITH)がESPミュージアム所蔵のギターをプレイするスペシャル・バージョン。 今回登場する4本は「ギブソン・フライングV 1959年」「ギブソン・レスポール・カスタム 1956年」「フェンダー・テレキャスター 1956年」「フェンダー・ストラトキャスター 1959年」だ。極めてレアなフライングVはもちろんのこと、他の3本は所蔵ギターの中でも弾き込まれた風格のあるギターが登場した。

■超希少価値を誇るフライングV

[1959年製 GIBSON Flying V sn:9 1713]

 ギブソンのフライング Vとエクスプローラは、これまでのギターとは全く異なるシェイプを備えた未来的なギターとして1958年に発売された。当時のアメリカは空前の"宇宙開発ブーム"が起こっており、これまでの伝統的なイメージを一新するデザインは、流行の最先端のイメージをギターに取り入れたものだった。ところが、フライングVは思うようには売れず、翌59年にかけて合計98本のギターが出荷された時点で製造を終了した。当時のギタリストがこのギターを受け入れるには、あと10年以上の時間が必要だったようだ。その意味で、時代を先取りしすぎたデザインと言える。

ESP_FV58-100

▲1959年製 GIBSON Flying V sn:9 1713

 ヴィンテージ・ギターの中でもレア・モデルとして知られるフライング V。ボディ/ネックに使用されているのは、マホガニーに似た特性を持つホワイト・リンバウッド(通称コリーナ)材である。これは、一部のスティール・ギターを除き、他のギターに使われることはなかった。ボディ・デザインに合わせた尖ったヘッドストック・シェイプはもちろん専用で、表面にはブラックの塗装が施されている。プラスティック製のギブソンのプレートは当時のアンプやスティール・ギターから転用されたものである。22フレット仕様のネックはローズウッド/ホワイト・リンバウッド製。ほぼ最終フレット付近でボディとネックが接合されているネック・ジョイント部分の複雑な構造は、その後のSGシリーズへと受け継がれている。約39ミリ厚のリンバウッドを使用したボディは、2ピースの木材をV型に接合するという手間のかかる方法で作られている。これは、V型のデザイン同様に木目もV方向に合わせたかったのだろう。 ピックアップは、フライングVが誕生する前年(1957年)に開発されたPAFの呼び名がつけられた初期型ハムバッカー。チューン・O・マティック・ブリッジなど、多くのハードウェアは、同年代のレスポール・モデルと共通の物が使われている。また、弦はボディの裏側から張るデザインで、表側には弦を通すためのV型プレートが取り付けられている。

ESP_FV58-107

▲ホワイト・リンバウッド(コリーナ)材の杢目

ESP_FV58-102

▲ボディデザイン同様に尖った形状のヘッドストック

ESP_FV58-106

▲複雑な構造のネック・ジョイント

ESP_FV58-105

▲V型に木材を接合したボディ

ESP_FV58-104image2

▲ピックアップはPAF。

ESP_FV58-101

▲バック

■ジャジーなトーンが特徴のレスポール・カスタム

[1956年製 GIBSON Les Paul Custom sn:612365]

ESP_LP54-100

▲1956年製 GIBSON Les Paul Custom sn:612365

 レスポール・モデルの上級モデルとして1954年に発売されたのがレスポール・カスタムである。ゴールド・トップのモデルがメイプルとマホガニーを積み重ねたレイヤード・ボディなのに対して、ジャズ・トーンを狙ったカスタムのボディには1ピースのマホガニー材が使われている点が大きな違いだ。 50年代のカスタムは2つのシングルコイル・ピックアップが搭載された1954~57年の前期モデルと3個のハムバッカーが搭載された1957~60年の後期モデルに分けられる。ヘッドストックは、バウンド加工に加えて、マザー・オブ・パールを使ったスプリット・ダイヤモンド・インレイが施されており、これはアーチトップ・ギターの最上級モデルのスーパー400から受け継がれた装飾である。パール・ブロック・インレイが施されたフィンガーボードはエボニー製。そしてカスタムの特徴は"フレットレス・ワンダー"の呼ばれる細く、低いフレットである。これはベンド(チョーキング)を使用しないジャズ・ギタリストが滑らかな運指をしやすくするためと言われている。ネックは1ピースのマホガニー製で、やや厚みのあるラウンド・グリップへと加工されている。 1ピースのマホガニー材から削り出されたボディには7層のマルティプル・バインディングが施されている。また、カスタムには他モデルに先立って登場した54年時点で、すでにチューン・オー・マティック・ブリッジ/ストップ・バー・テイルピースが採用されている。リア・ピックアップは通常のP-90だが、フロント・ピックアップはカスタムの発売に合わせるように登場したP-480が組み込まれている。別名"アルニコ・ピックアップ"とも呼ばれる、このピックアップはポールピースに6個のアルニコ・マグネットが使われたシングルコイル。おそらく、レス・ポール自身のギターのネック側に使われていたディアルモンド・ピックアップに似たテイストを備えたP-480が採用されたのだろう。

ESP_LP54-103

▲このギターにはトップに弾きキズがあり、トップのマホガニー材が露出している。

ESP_LP54-104

▲外周部の凹みに特徴があるボディ・トップ形状と年季を感じさせるウェザーチェック。
ESP_LP54-106
▲スプリット・ダイヤモンド・インレイが施されたヘッドストック。
ESP_LP54-105
▲エボニーのフィンガーボードとフレットレス・ワンダーと呼ばれるフレット。
ESP_LP54-107
▲やや厚みのあるネック・グリップ。
ESP_LP54-102▲フロントPUのP-480とリアPUのP-90のコンビネーション。他のモデルに先駆けて採用されたチューン・O・マティック・ブリッジ/ストップ・バー・テイルピース。
ESP_LP54-101
▲バック

■テレキャスターの第2世代モデル

[1956年製 FENDER Telecaster sn:12649]

 ESP_TL56-100

▲1956年製 FENDER Telecaster sn:12649

 史上初の量産型ソリッド・ギターとして1950年に発売されたブロードキャスター/テレキャスターは、ボルトでジョイントされたネック、ホワイト・アッシュ材を使用したボディなど、その後のエレクトリック・ギター・シーンに大きな影響を与えている。

 1956年製のこのギターは、通称ブラックガードと呼ばれる初期型に続く、テレキャスターの第2世代と呼ばれる時期のギターだ。1ピースのメイプル製ネックは50年代の特徴だが、このギターでは56年後半~58年前半の特徴となるトライアングル・グリップに加工されている。これは個体差ではなく、当時の流行を反映したグリップだと言われている。軽量ボディは1ピースのホワイト・アッシュ製で、1ピース・ボディはこの時期に見受けられることが多い。また、ブロンド・フィニッシュはクリーム色へと経年変化しているが、この時期の塗料はバタースコッチ色まで黄ばむことはない。 薄い1Pホワイト・ピックガードは50年代後半の特徴で、これは同時期のストラトキャスターに使われているものと同じ素材である。この年代のランダムポールピース仕様のリア・ピックアップは、トレブリーでエッジが強く、テレキャスターならではのパンチの効いたトーンが生み出される。

ESP_TL56-103ESP_TL56-106▲1ピースのメイプル製ネックとトライアングル・グリップ。

ESP_TL56-105▲ホワイト・アッシュ製のボディとややクリーム色に経年変化したブロンド・フィニッシュ。

ESP_TL56-107▲1Pのホワイト・ピックガード。

ESP_TL56-102▲トレブリーでエッジの効いたリア・ピックアップ。

ESP_TL56-101▲バック

■メイプル1ピース・ネックの最終年

[1959年製 FENDER Stratocaster sn:35038]

 テレキャスターを大きく進化させたモデルとして知られるストラトキャスターは1954年に発売された。当初はテレキャスターと同じホワイトアッシュ材がボディに使用されていたが、50年代後半からアルダー材が使用されたことでストラトキャスター独自のキャラクターへと変化していった。ESP_ST59-100

▲1959年製 FENDER Stratocaster sn:35038

 写真のギターは1959年製で、3トーン・サンバーストにフィニッシュされたアルダー製ボディ、そして最終年となるメイプル・1ピース・ネックが使われている。 このネックは1ピース・メイプルの最終型で、1959年後半にはローズウッド・フィンガーボードへと変更される。グリップは既に60年タイプのローポジションが薄いラウンド・グリップへと変化している。ボディはアルダー製で、初期型となるこの時期の3トーン・サンバーストは赤味が退色していくものが多い。深いコンター加工、エッジの丸い仕上げ、そして経年変化によって細かなクラックが入ったラッカー塗料からはヴィンテージらしい風格が漂う。ピックアップは50年代スタイルのファットなランダム・ポールピース仕様が継続されているが、カバー等のプラスティック・パーツは経年変化で黄ばみやすいナイロン製へと変更されている。

ESP_ST59-102▲メイプルの1ピース・ネック

ESP_ST59-105▲このギターの場合、59年製ながらネックのグリップは早くも60年タイプのラウンド・グリップに移行している。

ESP_ST59-104▲バックはボディのアルダーの木地が露出しているが、3トーン・サンバーストの赤味はあまり退色しておらず、美しさと風格を兼ね備えている。

ESP_ST59-103▲ランダム・ポール仕様のピックアップ。ピックアップ・カバーやノブなどはやや退色している。

ESP_ST59-101▲バック

「Vintage Salon Vol.4」 ESP Musueum × Tri-sound JOSH SMITH Special Demonstration

デモンストレーター / Josh Smith (ジョシュ・スミス)  ジョシュ・スミスは主にLAで活動しているブルース・ギタリスト。マイケル・ランドゥやジョー・ボナマッサなどと同様にブルースだけに留まらない多様なスタイルのプレイが特徴。ピッキングのニュアンスのつけ方でダイナミックに、時に繊細に抑揚をつけ、フレーズに息吹を与えるプレイはこの動画だけでもわかる。次世代のブルースギターの世界を担うギタリストだ。 協賛 : トライサウンド

製品情報

GIBSON
・1959年製 Flying V sn:9 1713
・1956年製 Les Paul Custom sn:612365

FENDER
・1956年製 Telecaster sn:12649
・1959年製 Stratocaster sn:35038

もっと見る

Player

2018年6月号

定価890円(本体824円)A4判

2018年5月2日(水)発売

お求めは全国の楽器店、書店、またはWebで!

JOY-POPS 村越弘明+土屋公平

18年ぶりの再会、そして全国ツアー「Wrecking Ball」

J-guitar

厳選されたギターが集まる!国内最大級のギター専門情報サイト!