特集

EMERALD GUITARS アイルランドの風、エメラルド・ギター

ボディ、ネック、ヘッド、全てが1ピースのカーボンファイバーで作られているエメラルド・ギターが、いよいよ日本に上陸した。驚異のプレイアビリティとナチュラルなアコースティック・サウンド、そして自由度の高い斬新なデザインと優れた耐久性を誇るこのニューカマーを、徹底的にレポート。フラットトップからアーチトップ、ナイロン弦モデル、ダブルネック、ハープ・ギター、12弦マンドリン・ギター、アコースティック・ベースに至まで、次世代アコースティックの最先端に迫る。環境破壊やCITESの問題が何かと話題となる昨今のシーンに登場したエメラルド・ギターとは、一体どのようなギターなのだろう。

HARDWARE SPECIAL EMERALD GUITARS

アイルランドの風、エメラルド・ギター

F  Fanad head Light House.jpg 炭素繊維であるカーボンファイバーは、軽くて強度にすぐれ自由な形状に加工できるため、近年ゴルフ用品や釣り具をはじめ、レーシングカー、自転車、飛行機、玩具など、あらゆる日常品や工業製品に広く使用され、我々の生活をより豊かなものにしている。そんなカーボン素材の特性を最大限に活かすことで、新たな楽器作りを目指すブランド、エメラルド・ギターが日本に上陸した。アイルランドのドニゴール州で誕生したこのブランドは、アメリカやヨーロッパでは既に知られた存在だが、この春から日本でも販売が開始された。画期的な構造と独自な製造方法、そして驚異的なプレイアビリティとナチュラルなサウンドが高い評価を受け、その個性的なデザインも含めコアなギタリスト達に注目されている。今回はそんな新たなギター作りを提案するエメラルド・ギターを紹介しよう。  カーボンファイバー素材が誕生したのはちょうど60年前。以来カーボンファイバーはその優れた特性が広く認められ、今や我々の生活になくてはならない素材の一つとなっている。カーボンファイバーというと「強度に優れ、軽量で、あらゆる形状に加工できる」というイメージがある。実際に鉄と比較すると、比強度が10倍であるのに対して比重は1/4と極めて軽い。その他の特性として、温度や湿度の影響を受けず腐食しないことなども知られるが、実は弾性や振動減衰特性に優れた素材でもある。これらの特徴はアコースティック・ギターの素材としても適しており、90年代以降いくつかのブランドからカーボンファイバーを全面的、もしくは一部のパーツに使用したギターが発売されている。

 製品の写真をご覧頂きたい。個性的なボディ形状を見ただけで、このギターが木製ではないことが大方想像できるだろう。ボディ左肩の部分に大きく口を開けたサウンドホールは、このブランドの個性を象徴している。このデザインはボディトップの振動面積をより大きくすることで、豊かなサウンドを得ると同時に、生音が演奏者の耳にダイレクトに届くという画期的なデザインでもある。ハイポジションのカッタウェイ部分や右腕の肘があたる部分、さらにボディサイドからバックにかけてプレイヤーの体に上手くフィットするように、コンターがデザインされている。これによりジャンボモデルのX30(ボディ最大幅17インチ、重量:2.2kg前後)でも驚くほど抱えやすく、その大きさを感じさせない。ネックはややワイド(ナット幅:44.5mm)ながら、薄めのUグリップに成型され、ヒールレス・ジョイントの採用により24フレットまでのアクセスが良好で、エレキギター感覚での演奏が可能となる。また軽量なボディに対して特殊な構造のネックを採用しており、ウェイトバランスと音響特性に優れている。

 アコースティック・サウンドはモデルによってその特性が異なるが、クリーンなトーンと長いサステイン、そして立ち上がりの良さは、どのモデルにも共通している。トラディショナルなギターとは異なるものの、ダイナミックな低音域から美しい高音域まで各弦のバランスも良好で、そのアコースティックなサウンドはカーボンファイバー製であることを意識させないナチュラルな響きが感じられる。ヘッドストックからネック、ボディまでが一体化した構造で、ギター全体が一つのアコースティックボックスとなることで豊かな鳴りを実現。ボディ内部には一般的なブレイシングにあたるパーツは見られず、特殊な積層構造によってトーンと鳴りをコントロールしている。精度の高い製作技術が安定したピッチを実現するとともに、素材の均質性によりむらのない、どのポジションにおいても最適なトーンが得られ、アコースティック楽器として極めて使いやすい製品といえる。多くのモデルはエレクトリック仕様であるが、生音の素直なキャラクターがそのままラインでも得られ、またエフェクターの乗りが良いこともエメラルド・ギターの特徴と言える。

 ブランドのもう一つの特徴は、豊富な製品ラインナップ。フラットトップの標準となるX10、X20、X30を中心に、トラベル・ギター(X7)、2種類のハープ・ギター(シナジーX7、シナジーX20)やハープ・ウクレレ(シナジー・ウーク)、ダブルネック・モデル(キマエラ)、12弦モデル(X20-12)、小型12弦マンドリン・ギター(アミカス)、アーチトップ・モデル(ケストレル)、ナイロン弦モデル(X20 ナイロン)、アコースティック・ベース(バロー・ベース)など、10数種類の興味深いモデルがラインナップ。さらに、それらのボディトップに数種類の天然銘木の突き板を貼った美しいウッドトップ・モデルや、カラーバリエーション、ファンフレット仕様など、様々なオプションなどもあり、それらを含めると驚くほどのバリエーションとなる。

 ギターの歴史を遡ると、1800年代後半から1900年代初頭には、ギブソンを含むいくつものブランドからハープ・ギターが発売されていた。しかし現在は、需要も少なく極限られた工房によるカスタムオーダーによって少数製作されているに過ぎない。ハープ・ギターは多くの弦をセットするため、一般的なギターとは比較にならないほどトップに弦の強いテンションが掛かっている。それを木製のアコースティック構造で実現することは色々な意味で限界があり、メーカーとしても手を出しづらいのが現実だろう。カーボンファイバーという軽量で強度に優れた素材の特性を活かすことで、一般の人たちでも手の届く価格帯と優れたプレイアビリティを実現している事実は、極めて興味深い。

 プレイヤーにとって、数多く売れるギターが良いギターの定義だろうか? 演奏意欲を掻き立てつい手にしたくなるギター、多弦やハープ、ダブルネックなど、新たな演奏スタイルに挑戦したくなるギター。新しい価値観とメーカーのオリジナリティを提案するギター。それらも良いギターの定義に当てはまるのではないだろうか...。

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【PRODUCTS】

 エメラルド・ギターでは、15種類以上の様々なモデルとカスタム・ギターをラインナップしているが、ここではその中から人気のある9モデル紹介する。各モデルはブラック、ブルー、グリーン、レッド、アンバーの5色から選べ、また美しい銘木の突板をトップにあしらった上位モデルや、カスタムペイントなどもリクエストが可能である。


■X30 価格 : 295,000円(税抜)

パワフルなジャンボモデル

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 大型で深胴のジャンボボディを採用したX30は、豊かな低音域と圧巻のボリュームが大きな特徴となる。ボディ幅は17インチと大きいが、トップとバックのエッジ部分にはコンターがデザインされ、イメージ以上に抱えやすく、その大きさを感じさせない。また12フレットジョイント仕様だがヒールレス・カッタウェイであるため、ハイポジションでの演奏性も極めて優れている。歌のバッキングのストロークやオープンチューニングによるソロギターなどにも最適。このジャンボサイズで、重量約2.2kgは驚異的と言える。

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Scale Length : 25-1/2" Body Width :17" Nut Width : 1 3/4"(44.5mm) Weight : 2.2kg Frets : 22 frets, medium Stainless Steel frets Pickup : LR Baggs Element Active System™VTC or LR Baggs Anthem™


X20 価格 : 285,000円(税抜)

バランスの良いサウンドと驚異的な演奏性

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 X20は、エメラルド・ギターの中核となるミディアムサイズ・ボディを採用した人気モデル。エメラルド・ギターならではの1ピースのカーボンファイバー・ボディが豊かな響きを作り出す。ボディトップとバックにはコンターがデザインされ、ネックジョイント部分もヒールレスのためハイポジションへのアクセスは極めて良い。低音域から高音域までトーンバランスが良く、ストロークからフィンガーピッキングまでどんなスタイルにもマッチするオールマイティーなモデル。12弦、7弦、バリトン、レフティモデルも製作。


X20 Nylon Strings 価格 : 380,000円(税抜)

新世代に向けたナイロン弦モデル

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 ナイロン弦の暖かみのあるサウンドとフラットトップの演奏性とを見事に融合させたハイブリッド・モデル。ナット幅1-7/8インチのナローネック、アールのついたフィンガーボード、14フレット・ジョイントの24フレット仕様、ハイポジションまでストレスなく演奏可能なヒールレスのカッタウェイなど、従来のクラシック・ギターとはまったく異なる機能性を誇る。硬質なカーボンファイバーのボディからは、クリアで腰のある高音域と豊かなベースがバランスよく鳴り響き、新たなアコースティックワールドを演出する。


Kestrel Archtop 価格 : 530,000円(税抜)

待望のニューモデル完成

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 先日発表されたケストレル・アーチトップは、待望のニューモデル。アーチトップの暖かみのある豊かでクリアなサウンドが心地よい。全てが一体化したカーボンファイバー・ボディのトップとバックにはコンターがデザインされ、軽量で抱えやすく最高の演奏性を約束する。トラディショナルなFホールデザイン、アーチトップでは極めて珍しいスロッテッドヘッド、ハンドカーブされたカーボンファイバー・テールピースなど、ディテールがエレガントな仕上がりになっている。ピックアップはクリボーのハムバッカーを搭載。


X10 価格 : 285,000円(税抜)

アコとエレキのハイブリッドモデル

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 エレクトリック・ギターを思わせるのコンパクトなボディを採用したX10は、アコースティックとエレクトリック・ギターを融合させたハイブリッド・モデル。スリムでヒールレスなネックは24フレットまでエレキ感覚で演奏できる。ピックアップは3パターンの中から選択が可能で、レベル1はサドル・ピックアップ。レベル2はレベル1+ハムバッカー。レベル3はレベル2にさらにMidiシステムの追加したトリプルバージョン。アコースティックからギターシンセまで、あらゆる音作りが可能。しかも1.8kgという重量も驚異的。


X7 価格 : 245,000円(税抜)

小さなボディから溢れる豊かなサウンド

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 パーラーサイズのX7は、14-1/4インチワイドのコンパクトボディに24インチスケールのヒールレスネックが採用され、深いカッタウェイにより20フレットまで無理なく演奏が可能。小さなボディからは想像できないほど豊かな生音が堪能でき、旅行先でも本格的なサウンドが楽しめる。環境を気にせずアウトドアに持ち出すにも最適なトラベルギター。


Amicus 価格 : 260,000円(税抜)

マンドリン・サウンドのミニ12弦

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 カスタムオーダーから誕生したユニークなミニサイズの12弦ギター。15インチという極端に短いスケールを採用し、10フレットにカポタストを付けた時と同じDにチューニング。同じゲージの復弦を張ることでマンドリンのサウンドが堪能できる。ソロ演奏はもちろん、アンサンブルに取り入れるなど、アイディアしだいでいろいろな使い方ができる。


Synerge X20 Harpguitar 価格:430,000円(税抜)

新世代のハープギター

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 強固で軽量なカーボンファイバーの特性を最大限に引き出したモデル、ハープ・ギター。X20をベースに製作されており、抱えやすく演奏性に富み、ストレスなくハープ・ギターの演奏が可能。しかもこのサイズで総重量がわずか3kg前後。その他、X7の小型ボディを採用したコンパクトなミニハープ・ギター、ハープ・ウクレレも製作している。


Baylor Bass 価格 : 430,000円(税抜)

アコベースをパワーアップ

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 強固で軽量な1ピース・カーボンファイバーボディの採用により、従来のアコースティック・ベースより大幅にボリュームがアップ。クリアで力強いトーンを兼ね備え、演奏性に富んだモデルとして完成。トップとバックのコンターにより抱えやすく、ヒールレスのネックは24フレットまでストレスなくプレーできる。5弦、フレットレス仕様も製作。


【IMPRESSION】

小沼ようすけ

「驚くほどナチュラルで、違和感がありません」

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 日本の新しいジャズ・シーンを切り開く実力派ギタリスト、小沼ようすけ。あらゆる音楽スタイルを内包し、しなやかな感性で型にはまらない新たなシーンを創造する。フルアコースティックからセミアコースティック、ナイロン弦モデルなど様々なタイプのギターを愛用する小沼だが、彼の目にこのモダンなエメラルドはどのように映るのだろう。小沼は初めて弾くエメラルドを手にするやいなや、なんの躊躇もなくどんどん試奏していく。まるで初めてのオモチャを手にする子供のように、その表情は実に楽しげだ。試奏した4モデルのサウンドは動画として収録しているので、ぜひそちらもご覧頂きたい。そして試奏後に、各モデルに関するインプレッションを語ってもらった。

[Yosuke Onuma Jam Ka Japan tour]

Yosuke Onuma(gt)/Grégory Privat(p)/Reggie Washington(ba)/Sonny Troupé(dr,ka)

8/18 日 静岡・掛川 かねもティーカルチャーホール
8/20 火 福岡・小倉 井筒屋新館9F パステルホール
8/21 水 秋田・秋田 Catwalk 
8/22 木 愛知・名古屋 NAGOYA Blue Note
8/23 金 大阪・梅田 Mr.Kelly's
8/24 土 岡山・岡山 蔭凉寺 
8/25 日 東京・青山 Blue Note TOKYO

[ 試奏動画 ]

 この特集では、小沼ようすけに4本のエメラルド・ギターを試奏してもらい、オリジナルの動画を製作しました。

■X30

 エメラルド・ギターの存在は知ってましたけど、弾いたのは今日が初めてで、すごく楽しい試奏でした。弾いた第一印象は、カーボンファイバーで作られていながら、サウンドがナチュラルで驚きましたね、違和感がありません。モダンで斬新なこの外観からは考えられないほど自然で、不思議な気がします。X30はボディが大きいですが、反応は早いというかとてもダイレクトな印象です。トーンもすごく芳醇で豊かです。自分で弾いたサウンドがホールからダイレクトに聴こえるというのは、初めての体験ですね(笑)。生音とラインの音があまり変わらないところも良いです。かなり近い音です。カーボンファイバー製なので、家ではなくて森の中とかで弾いてみたいな(笑)。環境に左右されないでしょうから、ツアーや海外へ持っていくにも最適ですね、軽いし。ネックのグリップも僕にはちょうど良い感じです、太すぎず、細過ぎずで。音の反応が速い分、弾き手の気持ちや感情をダイレクトに表現できると思います。

■X20

 X20は低音域から高音域まですごくバランスが良いですね。立ち上がりも速いし、今日弾いた中でも一番音が前に出る感じです。大型のX30ほど低音域は出ないけど、ドレッドノートと000みたいなもので、音の好みの問題だと思います。僕みたいにフィンガースタイルで弾く人は、X20の方が良いかもしれないですね。他のモデルもそうですけど、ボディには大きなコンターがデザインされているので、ギターを構えた時に体との一体感があってとても馴染みます。ヒールがないのでハイポジションはとにかく弾きやすいです。

■Kestrel Archtop

 僕がフルアコやセミアコに慣れていることもあると思いますけど、弾いたとたんに手に馴染むというか、収まりやすいですね。それとこの軽さは驚異的ですよ、とにかく軽い。サウンドはアーチトップとしてはシンプルでダイレクトな印象です。ありのまま出てくる感じ。今はラウンドワウンド弦ですけど、フラットワウンドを張っても良いかもしれませんね。フルアコだけどかなり幅広い使い方ができるんじゃないかな、色々な方向に行けると思います。もしかしたら、ジャンゴ(・ラインハルト)みたいなマヌーシュジャズ要素を含む音楽にも向いているかもしれない。日頃一般的なアーチトップを弾いている人には、かなり楽しめるギターだと思います。このモデルは時間をかけてじっくり研究してみたいな。ガッシリしたスロットヘッドだけど、素材が軽いのでヘッド落ちはしないですね。チューニングの安定感もあるし、ピックアップとのマッチングも良い。

■X20 Nylon Strings

 いろいろな意味で、すごく個性的なギターですね。オベーションやゴダンのナイロン弦ともまったく違うキャラクターです。すごくサステインが長くて、しかもトーンのバランスが良い。でもエレキ臭くはなくて、明らかにアコギの音です。最近はナイロン弦のモデルでもエレキ感覚で弾けるようなギターもありますけど、このナイロン弦はそれとは全く違うタイプのもので、ナイロン弦ギターとしての誇りが感じられます。すごく上手いところに落としどころを見つけてますね。このギターは海に持っていきたいな(笑)。僕よく持っていくんです(笑)。これ電気系統を外して完全なアコースティック・モデルだったら、洗えるんですかね?(笑)。必要以上に売らんかな、という姿勢が感じられないところも良いですね。売れるギターというより、自分たちが作りたいギターを作っている印象です。しかも絶対に木では作れないギターを作ってますね。


【INTERVIEW】

ALITAIR HAY

「クリエイティブなマインドを持つことが大切」

 メーカーの創始者であり、全てのモデルをデザインしたブランドの中核、アリスター・ヘイ カーボンファイバーのスペシャリストからギター製作の世界へと身を投じた若きパイオニアが、エメラルド・ギターのコンセプトを語る

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●貴方のバックグラウンドを教えて下さい。

○大学でポリマー・エンジニアリングを学び、1994年にアメリカのセントルイスに渡りレーシングチームでボートを作る仕事を通してカーボン素材について深く学びました。帰国後父とゴーカートや滑り台など子供の遊具をカーボン素材で製作する会社を設立しました。昔からギターが好きで自分のパッションをビジネスに採り入れたいと考え、99年にエメラルド・ギターを設立し現在に至ります。

●最初何からトライしましたか?

○ギター製作の知識はまったく持っていませんでしたが、カーボン素材に関しては熟知していたので自然に製作に入れました。カーボン素材は耐久性に優れ様々なデザインが可能なので、ギターの素材としても最適です。まず自分のギターを徹底的に研究して構造を調べました。ギターには数百年という長い歴史がありますが、カーボンファイバー・ギターはデザインから製作工程まですべて自分で考えなければならず、試行錯誤と失敗の連続でしたね。最初は一般的なギターのデザインでしたが、徐々に独自なデザインを採り入れ現在のエメラルドが完成しました。ブランドネームは、アイルランドのヘリテージとカーボンファイバーの両方を反映させたものです。美しい緑の島エメラルド・アイルは、アイルランドの愛称です。またカーボンはダイヤモンドと同じ炭素素材なので、エメラルドという宝石の名称は最適だと思います。

●ギターの成形方法を教えてください。

○とてもユニークな構造と製法です。特別なモールドにカーボンファイバーを入れてレジンを注入し、ネック、ボディ、ブリッジなど全てを一体化して成形します。完全な1ピースなので耐久性に優れ、共鳴しやすい構造です。ネックのぐらつきやブリッジの剥がれもなく、ネックヒールもないのでハイポジションでの演奏性は驚異的です。

●ボディ材の厚みは?

○トップの厚さは均一ではなく、振動しやすいようにエッジ近くを薄くしています。エリアによって2〜6層のカーボンを重ねています。トップ中央に特別なハニカム材が入っていて、ブレイシングはないですが必要に応じてカーボンファイバーを何層にも重ねることでサウンドをコントロールしています。

●サウンドホールが大きな特徴ですね

○サウンドホールはエメラルド・ギターの重要なデザインポイントです。初期はセンターにホールがありましたが、アコースティック・ベースを製作するにあたり、トップをより軽量にしてレスポンスを高め、さらにプレイヤー自身に音が返ってくるように考えました。またホールが上部にあることでトップがより強固になります。エメラルド・ギターのデザインポイントですね。ウッドトップ・モデルもやはりカーボンファイバー製で、表面に0.6mm厚の突き板を重ねて一体化させています。突き板の種類によって微妙にサウンドが異なります。

●ネックのトラスロッドは?

○特別なエポキシフォームにロッドを仕込んだものをカーボン素材で包み、それをモールドに入れてネックと一体化させています。指板の表面はポリエステルですがその下はカーボンで、指板も接着ではなくネックと一体化させています。黒いナットはグラフテックのカーボンナットで、同じ素材なので相性が良く弦の滑りも良好です。

●ピックアップ・システムは?

○現在はL.R.バグスのエレメンツとアンセムを使っています。ボディに穴を空けたくないので、ホール部分でトーンとボリュームをコントロールするシンプルなデザインを選びました。X10はアコースティックからエレキまで幅広いプレイができるようにグラフテックのピエゾを搭載したレベル1、ピエゾにクリボーのカスタム・ハムバッカーを加えたレベル2、さらにMIDIシステムを加えたレベル3があり、PUとの相性も良いですよ。

●アミカスやハープ・ギター、ダブルネックなど、特殊な弦楽器にも意欲的ですね。

○アミカスは全て同じゲージの複弦なので、マンドリンのようなサウンドです。カーボン素材は、ハープ・ギターやダブルネックなどトップに強いテンションがかかる楽器にも最適です。しかも軽量でコストパフォーマンスも良い。アコースティック・ベースも軽量でレスポンスの良い製品に仕上がりました。カーボンファイバーならではの自由度の高いデザインは可能性が無限大です。私は常に新しいことにチャレンジするクリエイティブなマインドを持つことが大切だと信じています。

●現在工場のスタッフは何人ですか?

○全てのギター製作をこの自社工場で行っていて、スタッフは14人。年間700本ほど製作していて、15余りのモデルとカスタムギターを作っています。X20とX30が人気ですが、新しいX10やX7も人気が出ています。最近アーチトップもラインナップしました。

●これからの展望や夢は?

○嬉しいことに、エメラルドは近年50%以上の成長をとげています。しかし、日本のようにまだまだ我々の製品を知らないマーケットもたくさんあるので、積極的に市場を開拓していきたいです。常に新鮮なアイディアで新しいモデルを製作していきたいし、より良いサウンド、演奏性、デザインを目指し努力を続けていきたいです。明日できるギターが、常に最高のギターになるように...。

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Amicus Green (Lrb) Art_15 as Smart Object-1.jpg

X20 Royal Ebony (Ele) CS- 4840_5-1.jpg

X10 QM-VA (Lv2) Art - 4862_10-1.1.jpg

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製品に関する問い合わせ

■Blue-G Acoustic Guitars
 TEL 03-5283-7240 
https://www.blue-g.com/
■Acoustic Guitar Shop Hobo's 
TEL 03-3518-4249
http://hobos-g.com/

Text by TAKESHI HAYAKAWA , MINORU TANAKAPhoto by TOMUJI OHTANI , BLUE-G

本記事は月刊『Player』2019年9月号からの転載です。

製品情報

EMERALD GUITARS X30

価格 295,000 円(税抜)

■Blue-G Acoustic Guitars

 TEL 03-5283-7240 

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EMERALD GUITARS X20

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 TEL 03-5283-7240 

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TEL 03-3518-4249

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EMERALD GUITARS Kestrel Archtop

価格 530,000 円(税抜)

■Blue-G Acoustic Guitars

 TEL 03-5283-7240 

https://www.blue-g.com/

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TEL 03-3518-4249

http://hobos-g.com/

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EMERALD GUITARS X20 Nylon Strings

価格 380,000 円(税抜)

■Blue-G Acoustic Guitars

 TEL 03-5283-7240 

https://www.blue-g.com/

■Acoustic Guitar Shop Hobo's 

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Player

2019年10月号

定価1,620円(本体1,500円)A4判

2019年9月2日(月)発売

お求めは全国の楽器店、書店、またはWebで!

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