特集

case15:フェンダー独自のビグスビー・トレモロを搭載した1968年製テレキャスター

ちょっとマニアックなヴィンテージ・ギター推論

1967年にフェンダー・テレキャスターのオプション仕様として加わったビグスビー・トレモロ・ユニット。そこには当時のセールスやメーカーの事情が関係していたようです。

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 1965年初頭にレオ・フェンダーがフェンダー社をCBSへと売却した後、ひと目でわかるような大きなヘッドストックの採用といった、幾つかのモデルチェンジが行われた。1967年からオプションでテレキャスターに採用されたビグスビー・ヴィブラートもそのひとつである。それまで発売されてきたギターの多くにはレオ・フェンダーが開発したトレモロ・ユニット(フェンダーではヴィブラート・ユニットのことをトレモロ・ユニットと呼んでいる)が搭載されており、トレモロはフェンダー・ギターの大きなセールス・ポイントとなっていた。ストラトキャスター、ジャズマスター/ジャガー、そしてマスタングと、当時の主だったフェンダー・ギターには、いずれも専用にデザインされたトレモロ・ユニットが組み込まれていたが、唯一の例外といえるのがテレキャスターだった(テレキャスターは、まだトレモロ・ユニットの人気が高まる以前にデザインされたモデル)。

TAVG_15.jpg そして、テレキャスターにもトレモロ・オプションがあれば、その分売上が上がると考えるのは、ごく自然なことだったのだろう。第一線を退いてしまったレオに新たに開発を依頼するよりも、当時リプレイスメント・ヴィブラートとして人気が高まりつつあったビグスビー・ヴィブラートを採用すれば、短期間で発売できるし、小売店にあるビグスビー・ヴィブラートの付いた他社ギターに対抗して、テレキャスターを売り込むこともできるだろう。

 ビグスビー・ヴィブラートがテレキャスターに採用された背景には、ビグスビー側の事情も関係していた。このユニットを開発したポール・ビグスビーは、ほぼハンドメイドでオリジナルのギターやヴィブラートを製作していたが、ビグスビー・ヴィブラートがグレッチやギブソンに採用されたことで需要が増え、60年代半ばにはバックオーダーに対処できないほどになってしまった。そこで、ポールはビグスビー社をもっと大きくするか、もしくは手放すべきかを、友人だったギブソン社長のテッド・マッカーティに相談する。

 最終的には、1965年末にテッド・マッカーティがギブソンを退社して、ビグスビーを買い取ることになった。この時期、ギブソンでは納期が遅れがちなビグスビーだけに頼るのではなく、ギブソン専用となるヴァイブローラ・ユニットの生産も開始されており、一方のグレッチでもイギリスのバーンズ社のヴィブラートを導入しつつあった。それに対して、ギルド、マーティン、ケイといった大手ブランドのギターに専用のロゴをあしらったビグスビー・ヴィブラートが登場するのがちょうどこの時期であることから、ビグスビーのセールスがフェンダーに対しても積極的なアプローチを行い、1967年に"F"マークの入ったB5 ヴィブラート付きテレキャスターが誕生したのではないだろうか。

Text by JUN SEKINO

製品情報

FENDER Telecaster w/Fender Bigsby Tremolo

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