特集

case20:ギブソン初のスルーネック構造によるファイアーバード

ちょっとマニアックなヴィンテージ・ギター推論

 ヴィンテージ・ギターの意外な一面にスポットを当てるコラム、今回はギブソン初のスルーネック構造を採用したファイアーバードの西方や仕上げにクローズアップします。

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 1963年に発売されたギブソンのファイアバードには、同社初のスルー・ネック構造が採用された。これは、特殊なボディ・シェイプを効率よく製造するためと、新しいボディ/ネックのジョイント方法を開発しようという試みだったといわれている。
 ギブソン・ギターにも使われていた一般的なセット・ネック・ジョイントでは、木部加工が終わったネックとボディをグルーでジョイントするのだが、その際にセット角度をとてもシビアに決めることが重要であり、難しいところでもあった。一方のスルー・ネック・ジョイントでは、ネックからボディ・エンドまでが一組の柱材で作られており、ネック加工の段階で既にボディ(ブリッジ)/ネックの位置関係(セット角)が作られる。
 一方で、ネックが取り付けられた状態でボディ外周等の加工を行うのは取り回しが悪い。そこでギブソンがとったのは、ボディ・ウィング部分を別個に加工して、外周部の加工が終わったウィングをネックに接着する方法だった。ここで問題になるのは、ネック・エンド部分とボディ・ウィングを張り合わせる際に、接着面が上下にずれないようにすること、そして左右のウィングを取り付けたボディ全体をフラットな形に仕上げることである。また、スルー・ネック構造では、接着不良が出たときにはボディ/ネック両方が使えなくなってしまうという問題もある。

TAVG_20_1.png そこでギブソンは、ファイアーバード/サンダーバードのデザインの一部に、ギターの加工効率を上げるための手順を巧妙に忍び込ませた。まずは、ボディ・ウィングとネックとの接着面をネック側に谷加工、ウィング側に山加工を施すことで、接着時にネック・エンド部分と両ウィングとの接着面がズレるのを防いだ。

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 更にネック部分よりも、ボディ・ウィング側の厚みをあらかじめ約2ミリ程薄くすることで、わずかなズレが生じても目立たなくし、そして、スルー・ネック構造を強調するボディ・デザインとして利用したのである。凹凸ジョイントによって、ボディの両ウィングはほぼ水平にジョイントされているが、ボディの表裏を完全な平面に仕上げると、ごくわずかな歪みも目立ってしまう。

TAVG_20_3.jpg そこで、ギブソンでは、ネック・エンド部分の厚みを約38ミリ、ウィング部分の接着面を約34ミリ、そして外周部分でのボディの厚みを約28ミリというように、ウィング部分にあらかじめテーパーを付けて仕上げたのである。その結果、ネック・エンド/ボディ・ウィングには常に段差があるので、接着誤差はその中に埋もれてわからなくなる。同時にボディの表裏のテーパー加工はギター全体にスリムな印象をもたらし、更にはプレイヤーの右手やボディが当たる低音弦側は、フェンダーのコンター加工と同じように滑らかな弾き心地をもたらすことになった。

Text by JUN SEKINO

製品情報

GIBSON Firebird

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2020年7月号

定価1,620円(本体1,500円)A4判

2020年6月2日(火)発売

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