インタビュー

ドラムテックの社会普及を目指す協会が設立

Behind The Scene

谷本 成輝

一般社団法人日本ドラムテック協会理事/代官山音楽院ドラム・パーカッション総合科主任講師

 2015年8月に一般社団法人日本ドラムテック協会が設立された。ドラムやパーカッションの整備や修理、チューニングに関する専門的な技術者(ドラムテック)が少ない日本において、その技術や知識、ノウハウを共有し、ドラムテックの普及と音楽文化の発展を目指している。この協会は、全国に150以上もの拠点を持つ島村楽器株式会社を運営母体とする代官山音楽院の職員・講師とで設立された。今回は同学院ドラムパーカッション総合科主任講師であり、日本ドラムテック協会理事の一人である谷本成輝氏にドラムテックの現状や同協会の概要についてお話を伺った。

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                     ▲谷本 成輝氏

 谷本さんはアメリカのThe Collective(ニューヨークにある名門ドラムスクール)を卒業されましたが、そこでドラムテックの技術を学ばれたのでしょうか?

 いいえ、The Collectiveはプレイヤーとして学ぶ場所で、修理などに関する教育プログラムはありません。ですが、学内にある全てのドラムセットを毎日チェックする専任のドラムテックがいました。授業が終わった夜中に彼に付き従って、当時20台近くあった大小様々なドラムセットの調整や修理の様子を間近で学ぶことができました。ちなみにThe Collectiveでは歴代3名の優秀な日本人ドラムテックがいました。そしてその中の一人が、代官山音楽院のドラムパーカッション総合科講師と日本ドラムテック協会で共に理事を務めている田村賢作氏です。

 日本でドラムテックの仕事を始めたきっかけは?

 10年ほど前に帰国してプロ・ドラマーの活動を始めると共に、ドラムテックの仕事も自然と行うようになりました。ライブハウスやスタジオ、学校などで様々なドラムセットを見てきましたが、その多くは必ずしも状態が良いものではありませんでした。それらをThe Collectiveでの経験を元に、自分なりに修理や調整をするようになりました。

 修理などの依頼元はどのようなところが多いですか?

 プロの現場を専門に活躍されているドラムテックの方々に対して、私の場合は音楽学校や大学のサークル、練習スタジオといった一般の方がドラムを利用するところに多くのニーズがあります。

 修理などの依頼があるとどのように対応しているのでしょうか?

 私は工房などは持たずに、一つの手持ちバッグに収納できる工具類を揃えて、町医者のような感じで現場へ向かうスタイルをとっています。ドラムセットの運搬には時間や費用もかかりますから、ドラムがある所まで出向くことが一番の方法です。ドラムの演奏の仕事と合わせて、ドラムテックのオファーをいただく事が多いです。

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               ▲谷本氏が選定したドラムテックのための工具一式。

 ギターやベースは一般の方でもある程度の修理や調整が行えますが、ドラムは難しいのでしょうか?

 例えば音のチューニングですと、ギターやピアノはそれぞれ決まった音程や専用のチューナーがあります。しかしドラムは音の高さやヘッドのテンションなどを明確に数値で表す手段があまり普及しておらず、感覚で行っているドラマーが多いと思います。また、ドラムセットは機材の点数も多いので、セッティングに時間がかかります。それにサイズも大きいので、トラブルがあった際にすぐに別のものに取り替えるということが現実的に難しいのです。

 海外と比べて、日本国内のドラムテックの人数は少ないのでしょうか?

 それはアメリカやヨーロッパの方が多いです。それもドラムの未経験者が最初から修理や調整を手がけることはほぼ皆無で、プロ・ドラマーがテックやビルダーとなる場合が一般的です。少なくとも私がアメリカで見てきた大半のプロ・ドラマーは、ドラムテックの技術も同時に持ち合わせていました。ですので、ドラムテックの数が多いというよりも、プレイヤーの層が厚く、普段からドラムセットを自分でケアできる環境が整っていることが日本と違うのだと思います。

 日本では海外と比べて、環境的にも個人でドラムセットを所有している人は少ないようですね。

 ドラムテックの認知度が低いことも大きな理由ひとつだと思います。

 代官山音楽院の講師となった経緯は?

 プロ・ドラマーと並行してドラムテックを続けていく過程で代官山音楽院から講師として声をかけていただき、前身となる学科からドラムパーカッション総合科へと移行し、演奏に加えて、ドラムセットの歴史や各部の構造、そして整備や修理までを指導するようになりました。学生たちにとって、2年間で学ぶには膨大な量のカリキュラムなのですが、在学中よりプロの現場に多くを送り出しています。現在では在学生や卒業生に私のドラムテックの仕事や演奏の仕事の一部を代行してキャリアを積むことで、音楽文化の貢献をしてもらっています。

 日本ドラムテック協会を設立した経緯と具体的な活動内容を教えてください。

 音楽院の大嶋学院長より、ドラム・シーンの活性化と音楽文化の発展を目的とした、ドラムテックの技術やノウハウを集約できる団体を作れないか、とのご提案をいただいたことがきっかけです。この協会ではドラムテックやプロ・ドラマーの他、楽器店やスタジオ、ライブハウスで働く方など、ドラムテックの経験や技術を有する方々を会員として募り、理事会の承認を経て入会していただきます。そして研究会や講演、啓蒙指導や資料収集などを行って、会員がお互いにフォローアップができる環境作りを目指しています。また、大手メーカーだけでなく、個人でドラムを製作している方々の技術やアイディアも共有できることも望んでいます。今後は各メーカー様や楽器店様など、ドラムを扱う企業からの協賛をいただいて、ドラムの修理に関する一般向けのセミナーなども開催出来る様に準備をしております。今年からは会員の募集、二ヶ月に一回(奇数月の第3土曜)程度で代官山音楽院にて研究会を行う予定です。研究会はドラムヘッドやシェル、シンバルなど各部の修理や音の実験など、毎回異なるテーマで開催します。一般の方でも有料で参加可能ですので、詳細は本協会のホームページをご覧ください。

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▲ドラムヘッドの種類と音の実験や、最も作業過程の多いドラムセットのオーバーホールなど、様々な研究会を予定している。

問い合わせ:一般社団法人日本ドラムテック協会
TEL.03-5459-0055/FAX.03-3462-7050 (代官山音楽院)
ホームページ:http://drumtechkyoukai.com
メールアドレス:drumtechjimukyoku@drumtechkyoukai.com 

本稿は月刊『Player』2016年3月号「Behind The Scene」にテキストを加筆、写真を追加したものです。

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