インタビュー

MARTIN & FISHMANによる新たなピックアップ・システム

Behind The Scene

IAIN WILSON

フィッシュマン社 海外営業マネージャー

 マーティン新商品発表会が2016年4月1日に恵比寿ガーデンホールにて開催された。この日は、マーティンクラブジャパンが主催する恒例のマーティンギターショウ&コンサートの前日にあたり、マーティン社の海外営業部長のリック・フォレロ氏に加えて、ピックアップ・ブランドのフィッシュマン社からイアン・ウィルソン氏が来日した。

 そしてマーティン・ギターを取り扱う株式会社黒澤楽器店が、今年5月からフィッシュマン製品の輸入代理業務をスタートすることが発表された。さらに今年のNAMMショウで発表されたマーティンの新たなエレアコ・モデル、それに搭載された「オーラVTエンハンス」「マトリックスVTエンハンス」という新たなピックアップ・システムのプロモーションが行われた。
 オーラVTエンハンスは、18/28/35シリーズの合計9つのカッタウェイ・モデルに搭載されており、アンダーサドル・ピックアップとオーラ・イメージ(マイキングされた音に変換するシステム)を内蔵したプリアンプ、ボディ・トップ裏のブリッジ・プレート下に取り付けられたトランスデューサーによる2つのサウンドがブレンドできるピックアップ・システムである。

 両ブランドの関わりから、このピックアップ・システムのコンセプトや開発の経緯について、イアン氏の発表会でのコメントとメールインタビューの回答を編集してお届けしよう。

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▲フィッシュマン社 イアン・ウィルソン氏

 フィッシュマン社とマーティン社は30年以上に亘ってリレーションシップを築いてきたきっかけは?

 1985年にマーティン社のプロダクト・マネージャからラリー・フィッシュマンの元に電話があったことがはじまりです。当時マーティン社で使用していたシンライン・ピックアップは品質や供給面で問題があり、それに代わる製品を探していたそうです。次の年には早速マーティン社より10,000個ものオーダーを受注していただきました。これをきっかけにフィッシュマン社もマサチューセッツに拠点を移しました。そして現在に至るまで両社の強い関係性は続いています。また我が社が1991年にアコースティック・マトリックスというアクティブ・ピックアップの販売を始めた時も、マーティン社はゴールド+を搭載したギターを発売して、修理などのアフターケアサービスも始めました。30年以上が経た今でも、我が社にとってマーティン社は非常に大きな取引先として関係が続いています。

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▲左からイアン氏、株式会社黒澤楽器店 黒澤友広社長、マーティン社リック・フォレロ氏、
デモンストレーションを担当したスティーブ・フェアクロー氏。

 オーラVTエンハンスを開発した経緯は?

 従来のマーティン・ギターに搭載されていたオーラVTシステムの延長線上に開発されたのがオーラVTエンハンスです。マーティン社はギター用木材が枯渇している現状下で、その確保に長年努めています。そうした状況において、プリアンプを取り付けるためにボディ・サイドに穴を空けることは非常に苦痛だったそうです。そこでサウンドホール内に搭載できるシンプルなシステムを採用して、ギターに手を加えることを極力減らしたいというマーティン社の希望から開発に取り掛かりました。このコンセプトが出てから、マーティン社のギター・デザイナーと協議を重ね、VTエンハンスに最適な音のレンジや、オーラVTのイメージが上手くブレンド出来るように開発を進めました。オーラVTの良さは活かしながら、さらなるサウンドの幅と使い勝手の良さを追求する事は、我々にとって大きな挑戦でした。完成までに約1年かかりましたが、結果として豊かな音量やタッチが伝わりやすい音色を作ることに成功しました。また、このピックアップ・システムを完成させたことによって、従来のオーラでは実現出来なかった、より低価格帯製品での提供が可能になりました。

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            ▲オーラVTエンハンスを搭載したMARTIN DC-28E。
             カッタウェイを施したボディも特徴である。

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              ▲サウンドホール裏に取り付けられた各コントロール。
              ギター全体の見た目もスマートになることも特徴である。


 アンダーサドル・ピックアップとプリアンプは、搭載する各ギターの性質を考えて設計されたのですか?

 もちろんです。約12年もの間、我が社のスタジオで様々な楽器のサウンドをレコーディングしてその音色を研究してきました。その蓄積からマイクやレコーディング方法の違い、例えばドレッドノートとOM、ローズウッドとシトカ・スプルースといったように、ボディ・サイズの違いや、木材の組み合わせによる特性など、様々な音色のパターンを熟知しています。今回は、最低でも6つのオーラ・イメージを各ギターで録音し、マーティン・チームと確認を繰り返して最適なイメージを選びました。

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                ▲バッテリースペースはエンドピン付近に設置。
                ここも木材の加工を最小限にとどめたデザインとなっている。

 ブリッジプレートに搭載されているのはコンデンサ・タイプのマイクですか?

 いいえ。ボディ・トップの振動を拾うトランスデューサーです。このトランスデューサーを使用して、アンダーサドル・ピックアップにさらなる音のレンジや響きを加えることが目標でした。ギターのダイナミックでパーカッシブな要素を引き出すために、機械的および電子的に最適化された機能です。しかし、弦のきしみや雑音などは拾わないようになっています。

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              ▲ピックアップ・システムの設置箇所がわかるサンプル。
              ブリッジプレートに搭載されているのがエンハンス・トランスデューサー。

 最後に、この新たなピックアップ・システムについて、両社のトップからのコメントをお伝えしよう。 

 クリス・マーティン4世(マーティン社CEO):「マーティンは182年にわたって素晴らしいギターを作り続け、最高の資材や機材を採用しています。これらのピックアップ・システムもまたマーティン社の音へのこだわりを表しています。」

 ラリー・フィッシュマン(フィッシュマン社 社長):「100年以上も受け継がれてきた価値のあるギターに、思いつきでピックアップを取り付けたくはないでしょう? アーティストに道具を作る際に、彼らが刺激を受けてクリエイティブになるようなものを作らなくてはなりません。テクノロジーを使いすぎず、操作しやすいものでなければなりません。そのバランスが大事なのです。」



       

本稿は月刊『Player』2016年6月号「Behind The Scene」にテキストを加筆、写真を追加したものです。

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