インタビュー

気鋭のベーシストが最新ジャズ・シーンについて語る

Behind The Scene

MILES MOSLEY

ミュージシャン,ベーシスト

 アメリカを中心としたクラブジャズ・シーンが近年注目を集めている。かつてジャズと様々な音楽が融合して、クロスオーバーやフュージョンといった新たなジャンルが誕生したように、現代ではヒップホップやテクノ、エレクトロ・ミュージックなどと融合した新たなジャズが生まれている。そのジャズ・シーンの代表的なミュージシャンの一人であるカマシ・ワシントンをはじめ、様々なジャズ・ユニットや、ドラムとのデュオ、ジャズ以外のミュージシャンとも共演するなど、幅広いシーンで活躍しているベーシストがマイルス・モズレーである。その卓越したテクニックと、アップライトベースとエフェクトを使用した刺激的なベース・サウンドで注目を集めている。今回はこの気鋭ベーシストに、独自の演奏スタイルや、現在のジャズ・シーンについて話を伺った。

A_Miles Mosley.jpg▲マイルス・モズレー Photo by Kristine Ambrose

 あなたはアップライトベースにワウなど様々なエフェクトを組み合わせ、さらに指弾き(ピチカート)と弓弾き(アルコ)を織り交ぜた非常に表現力の豊かなベース・サウンドを生み出しています。この演奏スタイルにたどり着くまでの経緯は?

 僕は13歳からクラシックとジャズのアップライトベースを学び始めた。その過程で、インパクトの強いベース・ソロを弾くためには、新しい要素を加える必要があることに気がついた。そこでアップライトベースにエフェクトを組み合わせて試行錯誤していたところに、ブラストカルトとMXRとチームを組むことになって、様々なエフェクトを実験できるようになった。その甲斐もあって、5年ほどかかって現在の自分のサウンドに辿り着いた。そしてベース/ヴォーカル&ドラムのデュオがやりがいがあって挑戦的であることに着目した。そこで10代からの知り合いであるドラマーのトニー・オースティンと「BFI」というデュオを結成して、どこにもないような革新的なサウンドを2つの楽器と自分の歌でクリエイトしている。

         ▲BFIのYouTubeチャンネルでは、多才な表現でアップライトベースを弾きこなし、
          さらにボーカルまでもこなす演奏が収められている。
 

 ジャズやフュージョンのベーシストは、広い音域を求めて5弦や6弦といった多弦ベースを使う傾向がありますが、エレクトリックベースと比べて制約の多いアップライトベースを使用している理由は?

 僕にとってアップライトベースは、例えるなら子供の鳴き声からライオンの吠え声まで生み出せる、多様性のある楽器だ。ピチカートでは使える音域は限られるけど、弓を使えば5〜6オクターブまで活用できる。さらにオクターバーを使えば音程が7〜8オクターブまで広がって、ピアノとほぼ同じレンジの音が得られるんだ。また弓を使えば、エレクトリックベースでは不可能な長いサステインも得られる。アップライトベースは習得することは多いけど、この楽器の秘密さえ知ってしまえばどんな色にも染められる。

 ブラストカルトのアップライトベースを使用している理由は?

 僕が使っているブラストカルト・ワン4ファイブは大音量でエフェクトをプレイできる。とても頑丈だし、さらに重要なのはフィードバックに強いことだ。スタジアムから小さなクラブまで、どこでも明確でいてウッディなサウンドを生み出してくれる。ブラストカルトのオーナー&ルシアー、ジェイソン・バーンズは天才だと思う。楽器への情熱を持った先駆者だ。もはや彼の楽器以外で今の僕のサウンドはプレイ出来ないね。もっとも重要なパズルのピースだ。アップライトベースをプレイする人には、ブラストカルトのベースを強くお勧めするよ。

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Photo by Todd Mazer

 あなたはジェフ・ベックをはじめ、クリス・コーネル、ジョナサン・デイヴィス、アヴェンジド・セブン・フォールドといったヘヴィ・ミュージックのミュージシャンとも共演していますね。

 自分のマネージメントのおかげもあって数々の偉大なミュージシャン達と関わる事が出来た。共演したミュージシャンはそれぞれオリジナリティがあるけど、新しさと伝統を組み合わせた音作りという点では共通していた。僕はレイ・ブラウンのようなナチュラルな音から、ジミ・ヘンドリックスの叫ぶような音までアレンジできる。まず相手をリスペクトし、自分のエゴは出さずに、彼らのサウンドがどうすれば満たされるかを考えてプレイする。そうしてきたことで様々なジャンルのミュージシャンとプレイする機会が出来たと思っているよ。

 アメリカ国内のジャズシーンは、例えばニューヨークとロサンゼルスのように、エリアごとに違いがあるのでしょうか?

 この質問は答える人によって色々違った回答が出てくるだろう。僕の観点から言えば、もし自分がNYのような人口も多く狭い場所でタクシーと地下鉄を使って育っていれば、今のように大きい楽器を使って今の自分のサウンドも見つけ出す事はなかっただろう。それに対して、全てが広大なLAは基本的に車移動だから、楽器の運搬などの制約が少なくて新しいことにもチャレンジしやすい。また精神面でも、NYでは演奏力などにハイレベルを追求する傾向がある。一方でLAでは他の楽器を加えたりしてユニークで新しい方法で表現することが許される。こういう環境の違いが理由だと思う。

 近年ジャンルを超えて活躍するジャズ・ミュージシャンが増えており、新世代ジャズとして注目を集めています。その中でも注目すべき存在は?

 僕も参加している「West Coast Get Down」というウエストコーストのバンドだ。メンバーはみんなLA育ちで、トニー・オースティン (ds)、 ロナルド・ブルナーJr. (ds) 、キャメロン・グレヴス (p) 、ブランドン・コールマン (key) 、カマシ・ワシントン (t.sax) 、ライアン・ポーター(tbn)、そしてベースは僕だ。このバンドでは自分達のオリジナルを追求し、有名なミュージシャン達とも共演してきた。すでに僕たちを支持してくれるファンの他、世界中の若いジャズ初心者達にも僕たちの音が届き始めたと感じている。

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           Photo by Kristine Ambrose
        ▲インタビュー中で語られているウェストコースト・ゲットダウンのステージの様子


 レーベルやクラブ、イベント主催者など、ジャズを取り巻く環境にも何か新しい変化を感じますか?

 すべてが逆転した気がするよ。昔は自分の新譜を宣伝するためにツアーをしていたが、今はツアーに出るためにアルバムを作る。ライブ・ミュージックも以前よりも様々なビジネスモデルができている。一方でデジタル・ミュージックはファンを素早く掴めるようになったけど、楽曲から得られる収益は減った。そこでツアーやフェスに今まで以上の時間を使って、ファンの需要であるライブパフォーマンスに応えようとしている。音楽業界は常に変化している。ホログラムを使ったライブもすでに存在する。バーチャルリアリティが今後の音楽業界にどう関わって行くか、想像できるかい?

 今後のジャズのどのような点に注目して欲しいですか?

 ジャズはまるで日本のように、伝統や順応、革新を表現している。未来を作るために過去に敬意を払うことが後世に語り継がれていく方法だと考えている。だからジャズの境界線を超えて新しいことを試みているミュージシャンにぜひ注目して欲しい。あとは、4月にリリースされた僕のニューシングル「Abraham」がデジタル配信されているので聴いて欲しい。僕の新しい音とアップライト・ベースの進化を日本のみんなと共有できたら、と願っているよ。

Miles Mosleyホームページ:http://milesmosley.com

本稿は月刊『Player』2016年7月号「Behind The Scene」にテキストを加筆、写真を追加したものです。

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