インタビュー

TC楽器×攻殻機動隊S.A.C. コラボレーション・ギター「TACHIKOMA -GT」開発秘話

Behind The Scene

富田 道彦

TC楽器 企画室・メンテナンス

 東京・新大久保の中古楽器専門店「TC楽器」より、同店初のオリジナル・ギター「TACHIKOMA GT」が発売された。このギターは、海外でも人気の高いアニメ「攻殻機動隊S.A.C.」に登場する「タチコマ」を再現したものである。このギターは単なるキャラクター・アイテムではなく、日本国内で完全ハンドメイドで製作され、随所にこだわりが込められた高いクオリティを誇るモデルである。このギターの開発秘話について、TC楽器の富田氏に訊いた。

A_IMG_1357.jpg▲TC楽器 富田 道彦氏と同店1FのTACHIKOMA-GT展示コーナー

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TC-GAKKI TACHIKOMA-GT

価格=700,000円(税抜/ハードケース付)※受注生産品
問い合わせ:TC楽器
Tel.03-5386-4560
http://www.tcgakki.com/(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

 このギターの具体的な製作コンセプトを教えてください

 このモデルを製作するに至ったきっかけは弊社WEBでも楽しいストーリーがご覧できますのでそちらをご参照いただくとして、製作コンセプトは、"一からデザインする完全なオリジナルギターであること"、"作品の世界観である近未来を表現すること"、"メイド・イン・ジャパン であること"にこだわりました。既存のモデルにペイントするだけのギターではなく、キャラクターとギターとの融合により、これまでにない新しいスタイルのインパクトを生み出すことができればと。アニメを含めて、日本のサブカルチャーは海外で高い人気を誇っています。同時に日本製ギターのクラフト技術も海外から高く評価をされて当店でもそのニーズは高いです。そうした日本のサブカルチャーとクラフトをコラボレートして、"メイド・イン・ジャパン"を強く打ち出すギターを目指しました。

E_tachikoma.jpg▲アタッシュケース風の付属ハードケースにも作品の世界観が表現されている。

 オリジナル・ギターをデザイン/開発するノウハウはあったのでしょうか?

 私たちは中古/ヴィンテージの専門店として数多くのギターを販売/リペア/調整してきた中で、良いギターに関する知識を得てきました。そうした専門店が作るのですから、あらゆるギタリストが、さらにはアニメ作品を知らない人でも納得していただけるようなギターにしたかったのです。やはりTC楽器の記念すべきオリジナルギター第一号ですので、その点は妥協なく貫きました。

 デザインやスペックはどのように決めていったのですか?

 まず、近未来感とインパクトを出すためにヘッドレスとスルーネックという点は一番最初に決めました。そして世界初の試みとなる、有機ELネオンを使用した光る指板。これは作品の世界観を再現するためには絶対に必要な部分でした。このためのフレット1本1本の特殊加工など、多くの技術が必要となりました。後に最も心血を注ぐことになる部分と言っても過言ではありません。

 タチコマのデザインをギターに置き換えるのに苦労した点は?

 ひとつはタチコマの目をモチーフにしたコントロールノブです。これはオリジナルで製作したパーツなのですが、球状のノブに入れるドットの大きさなどで表情が変わりますので、実に多くのサンプルを作りました。さらにノブを普通に取り付けるとギターとノブの間に隙間ができてしまい、タチコマの愛らしい表情が再現できません。そこでアルミ削り出しのブルーのリングをわざわざ特注で作り、まるでボディからノブが飛び出しているような雰囲気を作り出しました。この他にも本体のブルーの色味、近未来的ながら少しレトロで愛らしいピックアップカバー、ピックアップエスカッションのカラーなど、誰も気がつかないような細かい部分にもこだわって、タチコマらしさをできるだけ忠実に再現しました。

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▲3つのドットの大きさや間隔にまでこだわったオリジナルで製作されたコントロールノブと、特注で製作したアルミ削り出しのブルーのリング。
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▲ピックアップ・スイッチもオリジナルで製作したパーツを採用している。穴のないピックアップ・カバーにも注目。

 ギターとしてのクオリティはどのような点にこだわりましたか?

 ギターの製作は都内屈指のハンドメイド工房にお願いしました。その製作技術の高さはもちろんですが、都内にあることもあってクラフトマンとはコミュニケーションがしやすく、楽しく作業を進められました。クラフトマンの方では、特にネック・グリップのフィーリングにこだわっていましたね。あとは重量と持った時のバランスの良さを追究し、軽量でクセのないバスウッドをボディ材にしました。光る指板の特殊性から、フレットには耐久性の高いステレンス製を採用しました。さらに指板に有機ELネオンを仕込んでいるので、それを傷つけないようにするため硬いフレットを手作業で加工しています。ブリッジ/チューナーにはチューニング精度の高いドイツ製のABMを搭載しました。ギター完成後に分かったのですが、ドイツのABMのスタッフがこの作品の大ファンだそうで、本国のABMトップページにこのギターを一時期掲載していただきました。改めてこのアニメの世界への影響力の高さを感じました。

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▲指板の有機ELネオンを傷つけないように、硬いステンレスフレットの足の部分を手作業で加工されているなど、手間を惜しまずに丁寧に製作されていることが分かる。

 サウンド面での特徴は?

 やはりスルーネックであることがポイントになっています。ネック材には豪華なフレイムメイプルを惜しみなく使っています。ヘッドレスなので可愛くコンパクトに見えますが、25 1/2インチ・スケールとスルーネックにより、豊かなサステインとパワフルさに加えて、空気感もあるサウンドに仕上げることができました。

 このTACHIKOMA GT はどこでチェックできますか?

 このギターは当店の他、渋谷マルイ7階のI.Gストアにて展示しています。またギターの製作過程の秘話や、ギタリストの西川進さんによるデモンストレーション動画をWEBにアップしていますので、ぜひ多くのギタリストに見ていただきたいですね。

 このギターを開発したことを通じて伝えたいことは?

 夢があったということ、そしてそれは形にできるということを学びま した。「夢のギターを作ろう」という無謀とも言える試みから始まっ て、完成したのがこのギターです。やればできるじゃないか、という達成感があります。もちろん、これで終わりではなく、第2、第3の夢がこれから始まります。夢のない話を聞かされることの多い昨今ですが、TC楽器はまだまだ元気です(笑)。今後も私たちが何をしでかして行くのか、当店のWEBを随時チェックしていただき、ご期待して見守っていただければ何よりです。 

 本稿は月刊『Player』2016年11月号「Behind The Scene」にテキストを加筆、写真を追加したものです。

製品情報

TC GAKKI TACHIKOMA GT

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Player

2017年12月号

定価760円(本体704円)A4判

2017年11月2日(木)発売

お求めは全国の楽器店、書店、またはWebで!

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