インタビュー

グルーヴィかつ独創的なプレイで魅了するレフティギタリストがこだわる2本のギター

Open The TREASURE BOX 【File#1】

タカハシヒョウリ

(オワリカラ)

 毎回ミュージシャンにとって“特別なこの1本”という楽器をクローズアップし、その楽器に出会うまでのストーリー、拘りの部分を撮り下ろし写真と共にレポートするOpen The TREASURE BOX。記念すべき初回を飾るのは2年振りとなる新作『ついに秘密はあばかれた』でメジャーデビューを果たすオワリカラのギター&ヴォーカル、タカハシヒョウリ。グルーヴィかつ独創的なプレイで魅了するレフティギタリストがこだわるストラトキャスター、そして昨年よりサブギターとして使用しているアイバニーズのロードコア・シリーズのカスタムモデルも紹介しよう。

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タカハシヒョウリ(オワリカラ) / with FENDER Stratocaster TAKUTO Special & IBANEZ Roadcore RC330T-WH Custom

■ギターを弾かない人でも 楽しめるものしたかった

 約2年3ヶ月のリリース・スパンはオワリカラとして最長ですよね。  

 そうですね。とは言え、収録されている曲の中には前作『サイハテソングス』のリリースから半年後には完成しているものもあって、1年半前からレコーディングは始めていたんですよ。だから僕らの感覚としては、ようやく世に送り出すことができたっていう。  

 通算5枚目のアルバムであると同時に、メジャー1stアルバムであるということは意識しましたか?  

 今回のアルバムはアナログ・レコードで言うA面とB面のような構成になっていて、前半6曲が今年に入ってからのレコーディング、後半6曲が先ほど話した1年半前からのレコーディングなんです。前半の6曲はメジャー・デビューが決まってからの制作だったので初めてオワリからに触れる人への外向きな内容になっています。特に2曲目の「今夜のまもの」に関しては、収録されている各楽曲の要素を集約させたことでオワリカラらしい、改めましての名刺変わりとなる曲ですね。アレンジにはかなり時間を掛けました。1曲目の「へんげの時間」は最近のライブでもオープニング・ナンバーとして定着しつつあるので、ライブのままのアレンジでレコーディングしたんですけど。  

 2コーラス目からはギターもかなりカオティックですが(笑)。  

 でも、本当はこの3倍近くギターもキーボードも入れていたんですよ。とにかく足せるだけ足して、そこから余分なものを削いでいく形を取りました。過不足のない、理想的なバランスにまとまったと思います。後半の6曲が比較的隙間を活かしたアンサンブルが肝になっているので、前半の6曲はゴージャスになるよう意識しました。アルバムを聴き進めていくほど、ソリッドかつディープになる流れも面白いと思いましたし。  

 1曲目から感じたのは全体のサウンドが前4作と変わったことです。  

 今回からベースとドラムはアナログ・テープを回して録ったんです。ただ、それだけで完結してしまうと単なる懐古主義なサウンドになってしまうので、Pro Toolsに流し込んでからエディットしています。アナログとデジタルの良さが上手く調和できましたね。アナログ・レコーディングのエンジニアさんはGO GO KING RECORDERの加納尚樹さん、デジタル・レコーディングの方は神聖かまってちゃんのサポートも務めている萩谷真紀夫くんです。アナログでレコーディングしたテイクを真紀夫くんのスタジオでPro Toolsに流し込み、エディットしたものを更に自宅へ持ち帰って僕が更に編集するという流れです。ミックスもこれまではエンジニアさんにお任せしていたんですが、可能な限り僕も立ち会うようにしました。  

 「世界灯(ワールドライト)」は冒頭で右から聴こえるクリーン・トーンの刻みが素晴らしいです。  

 自分でもかなり満足の音が録れました。ああいうブリッジ・ミュートのサウンドにグッと来るんですよね。自分の嗜好としてはクリーンでありながらも、しっかりとドライブ感のあるトーンが大好きで。  

 アコギも鳴らしていますよね?  

 今回は全編を通して飾り程度ではあるんですけど「世界灯(ワールドライト)」「ホモサピエンスは躍る」「ペヨーテ」、あとは「new music from big pink」でも使用していますね。レコーディングで使用しているのはK.YAIRIに特別に製作して頂いたモデルです。レギュラーのラインナップにはレフティ仕様のモデルが無いんですよね。すべての弦が均等に鳴ってくれて、すべての音域がバランス良く録れるのでレコーディングでは本当に重宝しています。一応、エレアコ仕様ですがマイク録りですね。  

 「世界灯(ワールドライト)」はベースラインが超絶的で(笑)。  

 こういったタイプの楽曲にも関わらず、ベースが攻めまくるというのもオワリカラらしさなんですよね(笑)。この曲は弾き語りで歌詞、メロディもできた段階でバンドに持ち込みました。8ビートや4つ打ち、アレンジに関しては試行錯誤を重ねて、ギリギリのタイミングで"これだな"と思える形に仕上りました。  

 「すごいコンサート」はベースリフが主役ですね。

 とにかく全曲振り切ったものにしたかったので、仰るようにツダフミヒコのファンキーなベースが最大のポイントですね。僕はとにかく"すごいコンサート"というフレーズを連呼したかっただけという(笑)。歌詞に関しては深く考えてもらう必要は無いので、ボーカルにもかなりエフェクトを掛けて楽器の一部のような感覚です。ボーカル・マイクは3種類を使い分けていて、メインで使用しているのは艶が出る、ローミッドが溜まる感じのマイクです。「ペヨーテ」のようにブレスや息遣いまで出したい曲はハイが明るく抜けてくるモデルを、反してローファイなサウンドを目指した「new music from big pink」ではかなりハイ落ちしたような、言い方を変えれば少しデモテープのようなニュアンスが出るマイクを使用しました。

■自分が求めている音楽ができた という手応えがありました。

 「どうくつぐらしのススメ」は往年のHR的なサウンド。  

 ギターに関しては相当苦戦しました。何度も録り直したんですが、スタジオで決着を付けることができずに家に持ち帰ってフェンダーのベースマンで録りました。イメージ的にはAC/DCやDOORSのHR調の曲で鳴っているようなギターサウンドを目指しましたね。  

 いわゆるA面のラストを飾るのはかなりストレンジな「ホモサピエンスは躍る」ですが...。  

 実は弾き語りで原型を作りました。幼児退行じゃないですけど、童謡や「みんなのうた」のような曲を半分悪ふざけで狙って。アレンジに関してはノープランでバンドに持ち込んだんですが、まさかこんなダンスチューンに仕上がるとは自分でも予想外でしたね(笑)。個人的にはハンバート・ハンバートのようにフォーキーな方向に進めるしかないと思っていたので。  

 タカハシさんとカメダさんのソロ回しも面白い。  

 漠然としたイメージとしては50年代のキャバレーで演奏している箱バン、更には『スター・ウォーズ』に登場するカンティーナ・バンドが浮かんだんです。そこでソロ前には"人類代表、タカハシヒョウリ"という名乗りが入って、どこかSF感みたいなものも感じさせる曲になりましたね。

  「ペヨーテ」も弾き語りですか?

 そうですね。この曲のファズ・トーンは凄く気に入っていて。使っているエフェクターはエンジニアさんに作って頂いたハンドメイドです。アビーターのファズ・フェイスが音色的には大好きなんですが、あまり音が大きくならないのが個人的にウィークポイントに感じていたので、そこを解消したようなエフェクターにしてもらいました。ソロに関しては敢えて上手く弾かないことを心掛けましたね。往年のファズの掛かったギターソロって途切れ途切れのものが多いですけど、だからこそのカッコ良さがあるので。  

 最も新鮮に感じたのは「装備解除 in BED」です。  

 ある意味、自分たちの趣味全開なんですよね(笑)。それこそ80年代のディスコ・サウンド、あるいはデヴィッド・ボウイの「レッツ・ダンス」、最近で言えばナイル・ロジャースとダフト・パンクが示したようなものを、オワリカラでチャレンジしたかったんです。「sign! sign! sign!」もそうですが、8年間やってきた中で段々と年齢的にもアダルトなバンドになってきたので、しっかりとミドル・テンポでヒリヒリとしたものを伝えられるようにしたいなと。  

 ラストは先行シングルとしてもリリースされた「new music from big pink」。  

 この曲ができた瞬間は売れる、売れない、他人の評価も一切関係無く、自分が求めている音楽ができたという手応えがありました。そのときからアルバムのコアになるような予感はありましたね。最近のライブでもラストに演奏することが多いんですけど、ステージでもバンドの魂の入り方に凄さを感じます。今回のアルバムは段々とソリッド、ディープになっていって最後に「new music from big pink」へ到着する...ライブでもこのままの曲順が最高なんじゃないかと思いますね。

■FENDER Stratocaster TAKUTO Special

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▲FENDER Stratocaster TAKUTO Special

 学生時代に働いていたライブハウス、新宿Motionの店長である鶉野拓人(world's end girlfriendやツイン・ギター+ツイン・ベース+ツイン・ドラムの変則6人編成バンドabout tessのギタリストとしても活動)から譲り受けた1本。鶉野への感謝と敬意を込め"タクト・スペシャル"の愛称が付けられている。オリジナルはピックアップ・ブランドとして知られるセイモアダンカンが手掛けたSTタイプのDSシリーズだったが、現在はラージ・ヘッドストック及びCBSロゴ期を再現した22フレット仕様ローズウッド指板のメイプル・ネックをセット(ネックジョイント・プレートはFマーク入りの4点式を使用)。本来であれば1〜4弦に対応する2つのバタフライ型ストリング・リテイナーだが、本機は左利き用に張弦される為に3〜6弦に対応している。   

 ボディに目を移すと、レフティ・スタイルでのプレイを考慮し、ストラップピンが通常モデルにおける1弦側ホーンへ移設されていることをはじめ、ピッキングする左腕が当たり易いトーン・ノブとピックアップ・セレクター・ノブを取り外し、不用意にセッティングが変わることを防いでいる。また、正面からでは分からないもののシンクロナイズド・トレモロ・ユニットは大きく音程をアップできるフローティング状態にセッティング。トレモロ・スプリングは一般的な3本、両側の2本を斜めに掛けている。  

 最新の改造はリア・ピックアップ。セラミック・マグネットを使用したセイモアダンカンのシングルコイル・サイズ・ハムバッカーにリプレイスされている。STモデルのノーマル・シングル・ピックアップに装着でき、ボディにザグリを入れなくてもノイズキャンセリング効果とパワフルなサウンドを実現。  

 フロント&センター・ピックアップのスタガード・ポールピースは各弦に適したバランスでポールピースの高さなどが設定されているが、本機の様に逆に張弦することで1弦用のポールピースが6弦を、2弦用のポールピースが5弦を...と設定とは異なる弦の振動を拾うことになる。しかし、注視するとタカハシのギターは通常の設定と同様に4弦に対応したポールピースの背が最も高いことから、適切な出力バランスを得るためにピックアップを反転させてマウントさせた可能性がある。ハムバッカーに交換されたリア・ピックアップはレール状のポールピースだが、通称"逆スラント"になることで中低音域が強調される。これら張弦とピックアップの関係性はジミ・ヘンドリックスの独特なギターサウンドを生み出した要因のひとつとしても著名だろう。

■IBANEZ Roadcore RC330T-WH Custom

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▲IBANEZ Roadcore RC330T-WH Custom

 サブで使用しているギターは、アイバニーズが2014年に発表したロードコア・シリーズのカスタムモデル。ボーカル、またはコーラスを兼任するギタリストに照準を定めて開発されており、ヘッド落ちのしない重量バランスやアルダー・ボディには抱え易いコンター処理などが施されている。現在、日本国内ではシングルコイルを2基搭載したRC1720S(メイプル・ネック/ローズウッド指板)、ハムバッカーを2基搭載したRC1720M(メイプル・ネック/メイプル指板)、ローズウッド指板上のポジション・インレイやロータリー・スイッチを搭載した上位機種RC2720がラインナップされているが、本機は日本では販売されていない海外モデルRC330T(シングルコイル3基&トレモロ搭載)をベースに製作。アイバニーズ・スタッフ曰くコンセプトは"メインで使用しているストラトの代わりではなく、ストラトでは出せないやや甘く太いフロント・サウンドと、リアとミックスしたときの音のおもしろさを感じてもらえれば"とのこと。木材構成はバスウッド・ボディ、メイプル・ネック、ローズウッド指板。ピックアップはフロントにRC1720Sと同様にソープバー・ピックアップSuper9をマウント。リアには2016年から海外モデルのタルマンにマウントされているカスタム・ヴィンテージ。コントロールは1ボリューム、2トーン、3ウェイのレバースイッチ。メインのストラト同様、タカハシはリバースで使用する為、ストロークする左腕が当たり易いトーン・ノブは取り外されている。今回のレコーディングでは主にダビングで活躍した。

オワリカラ
『ついに秘密はあばかれた』
徳間ジャパン 発売中

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▲生産限定盤(CD+DVD) TKCA-74355 3,400円(税抜)

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▲通常盤(CD) TKCA-74359 2,900円(税抜)

Interview by KENTA TOGAWA Photo by KAZUTAKA KITAMURA

Player

2017年12月号

定価760円(本体704円)A4判

2017年11月2日(木)発売

お求めは全国の楽器店、書店、またはWebで!

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