インタビュー

Living with Martin Guitar vol.2

リビング・ウィズ・マーティンギター

浦岡 良夫

『GAKKIソムリエ』のオリジナル企画、【Living with Martin Guitar】は、マーティン・ユーザーのギターライフを語ってもらうインタビュー・コーナー。音楽とギターとの出会い、マーティン・ギターの魅力、そして日々の生活でのマーティン・ギターの存在・・・。憧れのマーティンを手にした喜びをインタビュー!

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 今回ご登場いただいた浦岡良夫さんは、サイモン&ガーファンクルに影響を受けてギターを始め、大学時代にはプロ・デビューのチャンスを得るも就職を期に音楽活動を断念。しかし還暦を目前に再び音楽活動を開始、その背景にはマーティン・ギターの存在があった...。今回は池部楽器店ハートマンギターズの石河太陽主任にもご同席いただき、インタビューを実施した。

 "あなたにとってマーティン・ギターはどんな存在ですか?"

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(写真左より、池部楽器店ハートマンギターズ 石河太陽さん、浦岡良夫さん)

一番印象に残ったのが「スカボロー・フェアー」のアルペジオの音

ー音楽に目覚めたきっかけは?

浦岡:中学2年の時に映画『卒業』を観たのですが、その中のサイモン&ガーファンクルの音楽を聴いて身体中が痺れるような衝撃を受けました。とにかく心がウズウズして、またあの音楽が聴きたくなって何度も映画を観に行きました。後から考えたらレコードを買って聴けばいいのに、かれこれ8回ぐらい観ましたよ(笑)。その後サウンドトラックを買って聴き込むうちに"これはとにかくギターを始めなきゃいけない"と思いました。

ー音楽を聴き始めてすぐにギターにも興味が湧いたのですか?

浦岡:一番印象に残ったのが「スカボロー・フェアー」のアルペジオの音と二人のコーラスで、これをギターで演奏したくなったんです。ただ当時は"ギターを弾くのは不良"という時代だったので親は反対したのですが、クラシック・ギターは許してくれたので、6,500円のギターを買って「禁じられた遊び」や知っている曲を弾き始めるようになりました。目標だったサイモン&ガーファンクルにたどり着くのはもっと後のことで、あの頃はまだ遠い存在でしたね。

ースティール弦のギターを買ったのはいつ頃ですか?

浦岡:高校に入って初めて自分のお金で買ったヤマハFG-180です。同じ頃にサイモン&ガーファンクルのアルバムもお小遣いで全て揃えて。「水曜の朝、午前3時」のジャケットで、ニューヨークの地下鉄のホームでポール・サイモンがマーティンD-18を持って柱に寄りかかっている写真を見て、"これがギターなんだ"って思いました。うちの田舎だとマーティンは売ってなかったので(笑)。それに一番近かったのがヤマハだったんです。

ーFG-180を買ってからはどんな曲を演奏しましたか?

浦岡:ちょうどガロのデビュー・アルバム「ガロ1」が出て、それを一生懸命コピーして初めての文化祭で演奏しました。あとは加藤和彦さんの「スーパー・ガス」を聴いてアルペジオを練習したり、C,S,N & Yなどもイメージしてギターを弾いていました。

ーマーティンの存在を意識し始めたのは?

浦岡:サイモン&ガーファンクルのギターだけで録音されたアルバムの「水曜の朝、午前3時」と、ポール・サイモンのソロの「ポール・サイモン・ソングブック」のギターの音や、加藤和彦さんやガロの二人が弾いていたD-45の煌びやかな音、五つの赤い風船の中川イサトさんのプレイを聴いて、ずっとマーティンの音に憧れていました。

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ヴィンテージのマーティンにのめり込むようになりました

ーヤマハの次に手に入れたギターは?

浦岡:大学に入学するときもまだマーティンは買えなかったので、トーカイのキャッツアイCE-1500という、ブラジリアン・ローズウッドのD-28タイプを頑張って購入しました。その頃、現在も一緒に音楽活動している相棒と出会って、ようやくサイモン&ガーファンクルをプレイできるようになりました。あとはオリジナルをやりつつ、ピーター・ポール&マリーなどもカバーしました。そして大学4年の時に卒業記念で某大手レコード会社のオーディションに参加したら受かっちゃって。デビューの話もあったのですが自信もなかったし、相棒とも話し合って潔く音楽は辞めて就職しました。そこから30数年間は人前で演奏することはなかったです。

ー就職されて以降のギターとの付き合い方は?

浦岡:実はその間にマーティンを購入していたんです。音楽を辞めたことで後ろ髪を引かれる思いがあって、1984年に結婚する際に「やっぱり音楽は諦めてはいけない」と、憧れだったカワセ楽器で1979年製のD-28を買いました。そして40代後半の頃に自分のバースデー・イヤー(1955年)のマーティンを集めるようになりました。ちょうどヒットしたエリック・クラプトンのアンプラグドもきっかけだったと思います。そんな時、ふらりと立ち寄った御茶ノ水の楽器店で1957年製の000-21を弾いたら、ものすごく音が良かったんですよ!それこそ初めてポール・サイモンのギターを聴いた時のような衝撃を受けました。「これがヴィンテージの音なんだ!」と衝動買いをして、そこからヴィンテージのマーティンにのめり込むようになりました。

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これがギターの病いに陥るきっかけになりました

ーそれから約10年後の2014年に大学時代のギター・デュオでの復活ライブをされたそうですが、その時に使用したギターは?

浦岡:マーティンの他にテイラーも持っていたので、最初はそれを使うつもりでした。テイラーも良いギターですけど、当然ながらマーティンとは違う鳴り方なんですよね。その復活ライブ以降は音楽活動は一切やらないつもりだったので、やっぱりマーティンを使おうと思って、ハートマンギターズで石河さんと相談して買ったのがマーティンのOMJM(ジョン・メイヤーのシグネチャー・モデル)です。

ー弾き慣れたヴィンテージと比べて、近年のマーティンの印象はいかがでしたか?

浦岡:実はそれまで新品のマーティンは鳴らない、という偏見を持っていたんです。OMJMを買ったのは復活ライブの1ヶ月前だったのですが、ピックアップも付いていて、ネックも細くて弾きやすいし、音も思ったより全然良くて。これがギターの病いに陥るきっかけになりました(笑)。

ーその後はどんなマーティンを入手しましたか?

浦岡:運良く復活ライブ以降も音楽活動が続けられて、毎月予定が入るぐらいお誘いをいただけるようになりました。ただOMJMをずっと使い続けていたら、キズや色焼け、シミ、フレットの減りが気になるようになって、やっぱりプレイヤーズ・ギターをもう一本買った方が良いかなって思って。そこで石河さんが以前オーダーしたオーストラリアン・ブラックウッドという...。

石河:オーストラリア版のコアのような木材ですね。

浦岡:ちょっとハワイアン・コアみたいな材で、トップがアディロンダックの000-28です。女性的でエレガントな珍しい音だったので、79年製D-28を下取りに出して購入して、これとOMJMを交互にライブで使うようになりました。

このOM-42はオールマイティですね

_MG_4213.JPGー本日持って来たのは還暦記念でオーダーしたギターとのことですが?

浦岡:ギターを買う時っていろいろ理由を付けたがるじゃないですか(笑)。自分の還暦のプレゼントにギターを作りたくなって、石河さんにカスタムオーダーについて相談したんです。そしたら年一回マーティン社に行っていて、木材も選んでオーダーできると言うので、事前に材料や作り方、シェイプ、ペグの仕様などの詳細なリクエストをお渡しして見積もりを出していただきました。予算内であれば、たとえ好みの音でなくても買いますからって(笑)。

ー気前が良いですね(笑)。

浦岡:そして石河さんがマーティンの工場でセレクトした木材を写真に撮ってLINEで送ってくれて。時差があるから真夜中に写真が届くのですが、そのやりとりがとても洒落てるな、と思いました。

ーオーダーする際に重視したポイントは?

浦岡:まずOMJMのネックが薄くて弾きやすいので、このグリップでいこうと。音については、現在の技術で作って良い音がする木材は何かを石河さんに訊いてみたところ、プレミアム・グレードのアディロンダック・スプルースとマダガスカル・ローズウッドを使って、ニカワ接着で作るのが理屈的に一番良いとのことだったので、それでお願いしました。アディロンダックはできるだけ木目の詰んだものをリクエストしました。それとポール・サイモンの影響でOMにするのは決めていたんですが、ヴィンテージ好きなのでクラプトンの000-42のルックスはやっぱり究極だろうと(笑)。全体的にヴィンテージ風にまとめつつ、自分のプレイ・スタイルに最も合うギターにしました。

ー弾き心地やサウンドはいかがですか?

浦岡:私のプレイ・スタイルは9割以上がフィンガー・ピッキングなんで、このOMサイズのボディの大きさが一番良いです。ポール・サイモンは、ベース・ランニングをしながらすごく上のフレーズを入れるスリー・フィンガーやアルペジオが多くて、そのベースの音が印象深いのですが、このOMは000よりも中低音域がものすごく出るので満足しています。あと5や7とかの高いポジションにカポタストを付けることが多いんですが、そのセッティングでもバランス良く鳴ってくれます。

ー理想のギターに仕上がったようですね。

浦岡:音が大きすぎず、強い個性があるわけでもないんですけど、品が良くてポール・サイモンやPP&Mが出していた60年代のノスタルジックなフィンガーピッキングの音が体感できます。そしてマホガニーやブラジリアンローズウッドと比べて、このマダガスカル・ローズウッドの方がいろんな音楽に合いやすい気がします。その点からも、このOM-42はオールマイティですね。

ーカスタムオーダーもだいぶ細かい部分まで対応できるようになったそうですね。

石河:ここ数年でカスタムショップ部門の作業できる幅がどんどん広がっていて、だいぶフレキシブルに対応してくれるようになってきました。以前は無理だったことも通るようになっています。

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マーティンにはずっと素敵な"憧れのギター"であり続けてほしい

ーこのギターについて、周囲からの感想はいかがでしたか?

浦岡:ライブを聴いてくれたお客さんや共演したプレイヤーの方からも良い音だと言われます。さらに私のマーティンの音を聴いて、(ギター・デュオの)相棒も我慢ができなくなったようでして(笑)。

ー相棒の方もマーティンを?

浦岡:私もいろんなマーティンの音が聴きたいから、相棒にも強く勧めてこのお店でマーティンを買って貰いました。それこそ彼が持っていた高価なギターを下取りに出し、今や彼もマーティンだらけです(笑)。学生の頃と比べると、考えられないほど良い音で演奏ができるようになりました。

ーいろいろと面白いお話をありがとうございました。最後に浦岡さんにとってマーティンはどんな存在ですか?

浦岡:私にとってマーティンは"永遠の憧れ"です。中学時代に聴いたサイモン&ガーファンクルの「スカボロー・フェアー」の音色に魅せられて音楽を始めて、若い頃は高価なマーティンはずっと"高嶺の花"、"憧れ"でした。やっと手に入れることが出来るようになった今でも、あの頃に聴いたサイモン&ガーファンクルとマーティンは今も"憧れ"です。なのでマーティンにはずっと素敵な"憧れ"のギターであり続けてほしいと願っています。

浦岡 良夫/1955年生まれ・高知県出身:中学2年の時に観た映画「卒業」で流れていたサイモン&ガーファンクルの音楽に影響を受けてギターを始める。就職を期に音楽活動を休止していたが、還暦を記念したライブをきっかけに再開。現在は高級時計/宝飾品の販売会社役員を務める傍ら、学生時代からの友人とのデュオでライブ活動を展開中。

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MARTIN Custom OM Style42 2015

 ハートマンギターズを通じてカスタムオーダーし、2016年春に入手したOM-42。敬愛するポール・サイモンのOMと、エリック・クラプトンの1939年製000-42を融合したスペックで仕上げられている。ネック・シェイプ以外はほぼオーセンティン仕様となる。また、より良い音を追究した結果、ブリッジ裏に取り付けるマイク・システムのL.R.バグス・リリックをチョイス。浦岡さんがインタビュー中に何度も発言していた"品の良い"センシティブなギターに仕上がっている。

<撮影協力ショップ>:ハートマンギターズ

_MG_4418.jpg 渋谷エリアの池部楽器店のアコースティック・ギター/ウクレレ専門店。2フロア構成で、マーティンは2Fのハイエンドアコースティックのフロアで展開し、常時60本以上をストック。マーティン社から直接買い付けたモデルや、木材を選定したオーダーモデルなど、贅を尽くしたカスタムショップ・モデルも豊富に取り揃えている。

〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町2-3 富士商事ビル1F-2F
TEL:03-6415-4169
http://www.ikebe-gakki.com/realshop/heartman-g/index.html

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Interview by TOSHIHIRO KAKUTA

製品情報

MARTIN OM-42

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2017年12月1日(金)発売

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