インタビュー

"アイランド・ジャズ"を追求した西藤ヒロノブ、新作『Sweet Dreams』と愛用楽器に迫る Part.1

Open The TREASURE BOX 【File#7】

西藤ヒロノブ

 毎回そのミュージシャンにとって特別なこの1本という楽器をクローズアップする「Open The TREASURE BOX」。今回は実力派コンテンポラリー・ジャズ・ギタリストとして幅広く活躍する西藤ヒロノブをクローズアップ。Part.1では彼の独自の音楽スタイルである“アイランド・ジャズ”と新作のコンセプトなどについて語ってもらった。

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 1999年にバークリー音大に入学、ニューヨークを拠点に活動し、04年にはスペインの名門レーベル「フレッシュサウンドレコード」より、初の日本人アーティストとしてデビュー。ヨーロッパ、アメリカ、日本でワールド・ツアーを行う。10年には、ジャズに加えて、サーフィンやワールド・ミュージック、アンビエント・ミュージック、ダンス・ミュージックなどの様々な音楽を融合した音楽スタイル"アイランド・ジャズ"を提唱したアルバム『Reflection』をリリース、独自の音楽性を追求する。これまでに6つのアルバムをリリース、様々なライブ活動を世界に中で展開している。この度リリースされた7作目となる最新作『Sweet Dreams』は、メジャー移籍のアルバムとして、これまでの活動の集大成とも言える充実した内容に仕上がっている。

まずは、曲のメロデイや世界観、メッセージを第一に表現したいですね

ー"アイランド・ジャズ"という音楽スタイルを始めたきっかけは?

西藤:ニューヨーク/ヨーロッパのコンテンポラリー・ジャズと、ハワイのオープンチューニングによるスラッキー・ギター、ウクレレサウンド、あとは西海岸的なサウンドなどを組み合わせたものを自分なりに解釈し、"アイランド・ジャズ"と呼ぶようにしました。カルチャー面ではサーフィンも大きく影響しています。これまで、世界中の島々(ハワイ、タヒチ、ジャマイカ、キューバ、地中海の島々、日本の島々など)を旅してきて、その島々でよく聞かれている音楽、発展してきた音楽に出会いましたが、自然でオーガニックなテイストだけではなく、都会的な要素も取り入れました。例えば、ニューヨークもマンハッタン島ですしね。曲のコードや解釈は、都会的なコンテンポラリーサウンドなんだけど、オーガニックなサウンドとしてオープンチューニングのスラッキーギターやウクレレが同時にコラボして鳴っていたりするような、都会と自然の情景を融合させたような音楽...。島々の旅の経験から自分のフィルターを通して、誰もやっていないような音楽を制作することに興味があります。

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西藤ヒロノブ 『Sweet Dreams』
◇キング
◇KICJ770 
◇発売中
◇2,778円(税抜)

ー新作の『Sweet Dreams』では、ピアノやサックスもフィーチャーされていて、ギターだけでなくトータルな音楽性を提示しているように感じました。

西藤:ギターという楽器のみにこだわらず、まずは曲ありきで作りたいという思いは常々持っています。楽器の手癖に頼らず、ときにはそこからいったん離れて、頭の中で鳴っている音をピアノで作曲することもあります。自分の好きな音楽は様々で、境界はなくたくさんあります。表現手段の一つとして、ギターのテクニックを生かしたような手法で生まれてくる曲も好きですが、まずは、曲のメロデイや世界観、メッセージを第一に表現したいですね。

ーこの新作では、テッド・ジェンセン(ニューヨークのスターリング・サウンドに所属する、世界最高峰と評されるマスタリング・エンジニア)の存在は大きいようですね。

西藤:セッション自体も4箇所ほど(NY, Tokyo, Fukuoka, Hawaii)あったので、参加したミュージシャンも曲調もセッションごとに違う中、最後にテッドさんにマスタリングしてもらって本当に良かったですね。それらを、やわらかいアナログサウンドかつパンチのあるボトムのある音でまとめてくれたのは、やはり流石だなと思いました。ミックス段階からは聞こえてこないような広がりのある音も聞こえてきたり。全然違うセッションを一つのカラーにしてくれましたね。

ーあと、独特のエコー感とか音の広がり方も全体的に特徴がありますね。

西藤:ミックスでは前々作からお世話になっている、ブルックリンのシステムズ・トゥースタジオのマイク・マルシアーノさんというエンジニアが今回も担当してくれました。前作がアコースティック・アンビエントというテーマで作ったので、今作も、ダビーな感じやアナログっぽいサウンドで響かせることにトライしました。

ー3曲目の『Moving』は打ち込みのトラックを使いつつも、オーセンティックなジャズの演奏が組み合わされていて、とても印象的でした。

西藤:の曲は数年前に録ったんですけど、それこそ80-90年代後期のマイルス・デイヴィスがやっていた感じのイメージで作曲しました。テーマ(メロディ・モチーフ)の小節の区切りは、例えば4小節や8小節など、割り切れるものに限らず、モチーフの断片として自由に配置しました。1つのモチーフから次のモチーフにいくタイミングは、まさにマイルス自身がキューを出しているようなイメージで、メロディー間のスペースを重視して作りました。ベーシックなアイデアは、僕がまずLogicでトラックを作って、それと生演奏を同期させた曲にしました。曲の後半で、バンド・メンバーはヘッドフォンを外して、クリック無しの状態でフリーダムに演奏したものです。この曲は、"マンハッタン島"の都会のアイランドジャズをイメージしたもので、こうした曲もアルバムにミックスさせるとどうなるだろうかと、アルバムの中で際立つ存在になればいいと思って入れました。

ーあと、印象的なのがアルバム表題曲の『Sweet Dreams』で、日本的なメロディで異色な存在でした。

西藤:わかりやすい曲ですね。これはグルーブとしてはシンプルに作りたかった曲で、ドラムがあまりシンバルを叩かずに、どっしりとボトムのグルーブ中心にプレイしてメロディをシンプルに聴かせるというイメージですね。寝る前の「おやすみ」や「お疲れ様」だったり、一日の締めくくりに感謝の気持ちをつぶやくような感じで。そういうことを言い合える家族や相手がいることは大切なことだな、と思いながら書いた曲です。シンプルなメロディから始まって、ソロも入れずにワンコーラスで終わるような感じで録音しました。

"マジカルな瞬間"、"夢のような世界" のイメージをタイトルにしました

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ー最初からこの曲を新作のタイトルにするつもりでしたか?

西藤:いいえ、実はタイトルを決めたのは、曲を録り終えてからでした。この新作は僕にとって7枚目になりますが、海にとってはゆかりのある特別なナンバーである"7"、"SEVEN SEAS(七つの海)"という言葉にもあるように、"世界中の海" は1つでつながっているというコンセプトでスタートしました。様々な案が浮かびましたが、最終的には、"マジカルな瞬間"、"夢のような世界" のイメージをタイトルにしました。

ー9曲目の『Shinkirou』はちょっとソウル風な感じも受けました。

西藤:そうですね、あの曲はソウル&ハウスっぽい感じですね。僕はダンス・ミュージックが好きで、ニューヨークでは、クラブやパーティーなどにいったりして、影響を受けています。あるお気に入りのパーティーでは、オールドスクールのサウンドシステム環境の中、アナログレコードを曲をつながずに様々な"良い音楽"を聴かせるコンセプトで楽しませてくれます。僕もいつかそういう所で流れるような、世界につながれるような音楽を作りたいと思っています。日常ではなかなか出会えないおもしろい音楽は世界中にまだまだいっぱいありますので! いろんな音楽を知りたい欲求がありますね。

ー新作では10曲中2曲でピアニストのミルトン・フレッチャーさんの作った曲が入っています。彼はどのようなミュージシャンですか?

西藤:彼は僕の1枚目のアルバムからずっと参加してくれているミュージシャンで『Reflection』では、共同プロデューサーでもあります。今回は彼が自然をテーマにした曲を書いてくれたので、ライブでやってみてレコーディングしようか、ということになりました。彼の音楽性やセンスは大好きで、音楽のパートナーとして信頼している存在です。

ーあとベースでは、今度のツアー・メンバーでもある日野"JINO"賢二さんも数曲でレコーディングに参加していますが、日野さんも確かサーフィンをしていますよね?

西藤:はい、彼とはツアーの合間などは、タイミングで一緒にサーフィンしています。海からの自然のリズムが演奏にも反映されて、それをメンバー間でシェアしてライブできるというのは僕にとってはとても大きいことです。最近一緒によくやっている、音の波に一緒に乗らせてもらっていた気心の知れたメンバーにはなるべく声をかけました。そんなこともあり、参加メンバーも全部で20~25人くらいとたくさんになりました。曲によっては2ドラム、2ベース、2キーボードとチャレンジした曲もありました。

ーアルバム・ジャケットも印象的ですね。

西藤:カウアイ島に住むスティーブ・ヴァレリーというアーティストに描いてもらったものです。僕がサーフボードの上でウクレレを弾きながら満月の夜の海をサーフするという、夢のようなマジカルな瞬間を僕をモデルにして書いてもらいました。「フルムーン・ナイト・サーフ・ウクレレ」というタイトルの絵画です。スティーブさんは、カウアイ在住のサーフフォトグラファー、佐藤傳次郎さん(前作のジャケ写と今作はインナーの写真を使用)から紹介してもらったのがきっかけです。カウアイ島の画廊で作品をみては"いい絵だなー"と。今回7枚目のアルバムだったので、海にゆかりのあるナンバー7のこのタイミングに書いてもらえたことはとても大きかったです。この2人のアーティストとコラボできたのは、ユニヴァーサルエナジーで繋がらせていただいたと思っています。

<西藤ヒロノブ "SWEET DREAMS" TOUR 2017 情報>

11月1日(水)熊本・八代Bar Z
11月2日(木)福岡ROOMS
11月4日(土)宮崎NEW RETRO CLUB
11月5日(日)宮崎・三股町立文化ホール
11月7日(火)大阪Mr.Kelly's
11月8日(水)京都RAG
11月10日(金)愛知・岡崎泉龍寺本堂
11月11日(土)名古屋Star Eyes
11月13日(月)東京・南青山Body& Soul
11月14日(火)横浜モーションブルーヨコハマ

ツアーメンバー:西藤ヒロノブ(g,uku)、ハタヤテツヤ(p,key)、日野"JINO"賢二(b)、ラジブ・ジャヤウィーラ(ds)

※ギターなどの機材に関するインタビューは11月末のアップ予定です。

Interview by TOSHIHIRO KAKUTA

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定価760円(本体704円)A4判

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