インタビュー

Living with Martin Guitar vol.11

リビング・ウィズ・マーティンギター

前田 法利

『GAKKIソムリエ』のオリジナル企画、【Living with Martin Guitar】は、マーティン・ユーザーのギターライフを語ってもらうインタビュー・コーナー。音楽とギターとの出会い、マーティン・ギターの魅力、そして日々の生活におけるマーティン・ギターの存在・・・。憧れのマーティンを手にした喜びをインタビュー!

Martin_Top_banner_Maeda_.jpg 今回ご登場いただいたのは、大阪府にお住いの前田法利さん。アコースティック・ギターのファンサイト『5th Street』を設立、同サイトのオフ会やアコースティック・ギター関連イベントの主催、さらにアコースティック・ミュージックに特化したライブスペースを経営するなど、国内のアコースティック・ギター・シーンを影で支えてきた立役者であり、コアなアコギ・ファンにとっては知る人ぞ知るという存在である。今回は縁の深いドルフィンギターズの武田雅史社長のご紹介により前田さんへのインタビューが実現した。

"あなたにとってマーティン・ギターはどんな存在ですか?"

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写真左より武田雅史さんと前田法利さん

マーティンの音は自分の中に刷り込まれてますよね

ー音楽に目覚めたきっかけは?

前田:兄貴が6歳上やったので、グループ・サウンズとかビートルズが元やったんです。それが中学生ぐらいでモダンフォークにいっちゃったんですよ。ブラザース・フォーやキングストン・トリオとか。

ーその頃に周りでモダンフォークを聴いているのって...?

前田:あまりいてなかったですよね。だからみんなが"かぐや姫"やるからってギター始めて。そこから石川(鷹彦)さんの音に取り憑かれて、さらにナターシャー・セブンにいっちゃうんですよ。で、ブルーグラスとか古い音楽が好きになって。

ー最初に入手したギターは?

前田:トーカイのハミングバードっていうマーティン・タイプの(笑)。それが中学1年ですね。

ーその頃にはマーティンの存在はご存知でしたか?

前田:当時は正やん(伊勢正三)の28がええんやって思い込んでて。それにブラフォーとかキングストンやから、それ自体がマーティンの音じゃないですか。高校生の頃はドク・ワトソンとかサイモン&ガーファンクルが好きで、どちらも使っているのはマーティンだし。あとは石川さんのリードの音がD-18って知ったりとか。その頃はもうアコースティック・ギターの音にどっぷりでしたからね。だからマーティンの音は自分の中に刷り込まれてますよね。

ー10代の頃からマーティンに憧れてたんですね。

前田:うちの近所にある井村楽器さんにD-28が飾ってあって"うわあ高いなあ"って(笑)。あと梅田ナカイ楽器さんのお母ちゃん(前社長夫人)がまだお元気な頃で、ショーウィンドに貼り付いてマーティンを見てたら、"あんたらもうちょっと大きくなったらおいでや"とかいわれたり(笑)。高校卒業が76年で、D-76欲しいなって文集に書いてる自分がおるっていう(笑)。

ー初めてマーティンを手に入れたのは?

前田就職して最初の給料を頭金にしてローンで買ったのが、79年製のグローバーが付いてたD-28。22歳の時ですよね。その時に思ったのが、それまで一生懸命リードの練習して、なんであのスライドさした時に残る"トゥ〜ン"が出えへんのやって。それでマーティン初めて弾いた時に、スライドさしてフッと止めただけで、"あっ、鳴ったこの音!"って、レコードと同じ音がしたんです。"楽器やったんや"っていう発見があってから、もう...マーティンギター人生の始まりですよね。

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マホガニーの音の広がり感が好きですね

ー実際のマーティンの音に目覚めたわけですね。

前田:それまではアリアドレッドノートの28タイプを使ってて、それはそれでいい音やったんですけど、なんぼやっても出えへん音ってあるんですよ。それは上手い人が弾くからって思ってたんですけど、ギターの違いもそこにあるんやってことに気が付いて。その頃は野外のコンサートをいろいろ観に行ったり、ブルーグラスの集まりに行ってギター弾いたりして。そこにはおっちゃんらが持ってきた古いマーティンがゴロゴロ転がってる環境で(笑)。でも当時はただの中古ですし、ブラジリアンローズやアディロンダックがどうやとか、そういう話は全然してなかったですから。その頃にブラジリアンのええやつとか、18の音のすごくふくよかなやつとか知ってしまったんです。

ーそれは貴重な体験ですね。

前田:それまでマーティンって材によって値段が違うぐらいのイメージやったわけですよ。ところが色々と弾くうちに18はこういう音作りなんやなってことに気が付いてしまうんですね。95年に一番最初のゴールデンエラのD-18が出て、それを弾いた時に音の出方が違ったんで、さらにいろんなことに気が付いて。当時はまだシトカ(・スプルース)ですけども、作り方とかセットアップがいわゆる黄金期からフィードバックして作った一本やったんですね。

ーそれでスタイル18の魅力を再認識したんですね。

前田:それまでにも18は買ってるんですけど、それからどっぷり(笑)。

ーマホガニー・サウンドの特徴や魅力は?

前田:やっぱり音の広がりが、ローズウッドと比べると少しフワって暖かくてブライトで。ローズウッドだとアタマに"カツン"って感じじゃないですか。それはそれで音楽シーンには合うんでしょうけど、自分で弾く時にはマホガニーの音の広がり感が好きですね。リードの切り込みとかは、ブラジリアンとかローズ系の目の詰まった硬めの材の方が音は際立ちますよね。でもポーンと入ってくるアタマの音は、やっぱマホガニーの方が好きなんですよ。

ースタイル18の中でも特に好みの年代は?

前田:39から41年が好きなので、それを再現したモデルを塩崎(雅亮)さんのシーガル弦楽器工房で作っていただいて。当然素晴らしい楽器やし、それをずっと弾いてた時期もあったんです。そうするとやっぱりその時期の本物のマーティンが欲しくなるじゃないですか。で、このD-18にたどり着いたんです。

ー今日持って来ていただいたギターですね。

前田:このD-18は1939年製で、ドルフィンギターズさんが仕入れはったギターで。綺麗な状態やったんですけど、トップが替わってたんです。その時は普通のシトカだったんですが、塩崎さんが39年のブレイシングのトレースと、当時と同様の木材をお持ちだったので、貼り替えてくれたんですよ。だからほぼ39年のスペックそのままですよね。39年の半ばからネックの幅が細くなって、なおかつTバーが入ってるのは41年までの2年余りの間だけなんで。この時期のD-18が欲しくてしょうがなかったんです。

武田:どうせリトップならと、マーティンと言えば塩崎さんですので、完璧に仕上げてもらいました。

ーもう一本のマーティンは?

前田:ローレンス・ジュバー・モデルの初期ロットですね。で、ローレンス・ジュバーが来日した時にドルフィンさんが主催でうちでライブやってくれはったんです。これはこれでレアな一本なんでね。

武田:このギターは当店もすごく好きなモデルですね。

ーマーティンは新品も含めて、一番多くて何本ぐらい所有していましたか?

前田:27本ありましたね。今は...7本ですね。でもそんだけ持ってるのか(笑)。

ー以前所有していたヴィンテージのマーティンは?

前田:34年の0-17とか、51年と63年のD-28、64年の00-18、やら結構年代ごとにいろいろ。

ースマホの中のリストを拝見すると、いろんなマーティンをお持ちだったんですね。

前田:41と45も持っていたし、例に漏れずD-76も(笑)。『アンプラグド』をきっかけに90年代にアコギ・ブームがあって、みんな30〜40年代のマーティンとかを買い出した時代なんですよ。当時はまだ安かったし、そういうギターを持ってくるのが『5th Street』の中でもブームになったんです。そんな中でブレイシングやトップ、サイド/バックの違いの話をするようになったんですよ。

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マーティンはどの年代を見てもワクワクさせられることばっかり

ードルフィンギターズとはどんなご縁が?

武田:前田さんは私が梅田ナカイ楽器時代からのお客さんで、不動産屋さんということもあり、物件紹介などでお世話になりました。オープン時には前田さんのギター好き仲間をたくさん紹介してもらいましたね。

前田:僕がちょうど『5th Street』を始める前からの付き合いで。それで彼が店を探しているというので、物件を紹介したんです。そしてドルフィンギターズのオープンを、うちのオフ会をやるタイミングに合わせてもらって。そしたらオフ会のみんなをお店に連れていけるやんとか。だから武ちゃん"うち20周年ですやん!"って言うけど、"うちも20周年やで"って(笑)。

ーそんな繋がりがあったんですね。ライブスペースの「Acoustic Live COFFEE HOUSE 5th Street」をオープンしたきっかけは?

前田:オープンは03年ですね。先ほどの『Open Street』を始めた時に、ギター持って集まっただけではしゃあないので誰かにライブをしてもらおうって。その時に岸部(眞明)さんにやってもらって、そこから必ず誰かミュージシャンを呼ぼうってなって。ライブをやりつつギターの話をするっていうのを年2回続けていました。それで01年に手工作家を集めた『アコースティックフェスティバル』っていう展示会を始めたんですよ。そんなのをやりつつ、どんどんアコースティック・ギターの狭い路地に入っていったんですけどね(笑)。その頃ライブを観に行くと、僕の中ですごいストレスがあったんですよね。アコギの音やのに、なんであんな音にして出さなアカンねん、マイクで採れよってね。それやったらピックアップ使おうと何しようと、アコースティックの音をちゃんと出せるスペース作りたいって思って。住出(勝則)さんも"50人ぐらいが入って、アコースティック・ギターの音がちゃんと出せるハコが欲しいよね"ってずっと言ってて。いろんな人との付き合いがある中で、03年にお袋が亡くなったんですよ。お袋が"あんた、ライブとか料理するの好きやったら、コーヒーとカレーできる店でライブやったらええやん"ってよう言ってたんですよ。その前の年にうちのバンドのマンドリン弾きも亡くなって、さらに坂庭(省悟)さんが闘病中で元気になって欲しい。そういう思いが重なって、なんか自分がやらなアカンみたいな使命感がどっかにあったんでしょうね。それで、たまたま家の近所でええ物件があって店を始めたんです。

ーそのお店は閉めるつもりだったそうですが、堀江に移転して継続されてますね。

前田:『戦う親父の応援団』のメンバーの方が、店を閉める事を聞いて「それならうちのテナントでやらないか?」と声をかけていただいたのがきっかけで、今の場所で店を続ける話が進みました。これも人と人との繋がりですよね。これからも、ギター1本持ってきてもうたら、何なりとしまっせっていうことは言える店にしていきたいですね。

ー最後に前田さんにとってマーティン・ギターってどんな存在ですか?

前田:うわぁ〜、なんやろ...? ずっと憧れ続けているものですかね。よく"今のマーティンはアカン"って言う人おるじゃないですか?何を言うてんねん、今ある材料で今できる範囲で、こんだけのギターをこんだけの数作ってるメーカーってどこにある?って話でね。それこそ、どの時代と比べても今ある材でより品質の高いものを作ってるわけですから。新しいやつでも古いやつでも、マーティンはどの年代を見てもワクワクさせられることばっかりです。D-18レトロを持っていたのですけど、あのピックアップ・システムなんてすごく良くできてますよ! ピックアップを通すとスピーカーからちゃんとマイクで拾ったような音が出るんですから。あとマーティンは0、00、000、ドレッドノートのそれぞれの材質や質量に対してそれぞれの音の出方があるわけで、それに応じた弾き方もあるんですよね。それは音楽発展の歴史が語ってるし、それが時代の流れと共に培われてきて今のマーティン・サウンドがあるわけです。それは絶対無視できないので、そこに敬意を払わないはずはないんです。

前田 法利:1958年生まれ・大阪府出身。中学1年でギターを始めて、モダンフォークなどを通じて10代の頃からマーティンの音に憧れる。98年にアコースティックギターのファンサイト『5th Street』(http://www.5th-street.com)を開設。さらに手工ギター関連イベントの先駆けと言える『アコースティックフェスティバルin大阪』を01年から開催。また03年に大阪府吹田市にアコースティック専門ライブスペース『Acoustic Live COFFEE HOUSE 5th Street』をオープン、昨年から西区南堀江に移転し営業している。自身がこよなく愛するマーティンのスタイル18に特化したWEBサイト『We Love C.F.Martin Style18』(http://www.5th-street.com/18/indx.html)も開設している。

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MARTIN D-18 1939:42.9ミリのナット幅のスリム・ネックとTバーロッド、リアシフトのスキャロップ・ブレイシングを採用し、マーティン・ファンの間では黄金期のモデルと称され人気の高い1939年製モデル。ドルフィンギターズから購入し、その際にはトップ材が貼り替えられていた。それをギタールシアーの塩崎雅亮の手により、同年式のブレイシング・パターンと当時と同様の木材を採用し、さらにリトップを施している。前田さん曰く、そのサウンドは同年式のギターと遜色なく、トップが新しい分、ややウェットな響きが特徴とのこと。スタイル18を愛する前田さんの自慢の一本。

Martin_Guitar_Layout_11_2.jpgMARTIN OMC-18VLJ:67/133:かつてウィングスのリード・ギタリストであり、現在はフィンガーピッカーとして高い評価を得ているローレンス・ジュバーのシグネチャー・モデル。木材違いで様々なバリエーションがリリースされたマーティンの人気モデルの一つである。写真のギターはアディロンダックスプルース・トップにマホガニー・サイド/バックのボディで、ローレンス・ジュバー・モデルの中でも特に人気の高い初期仕様モデル。シリアルは67/133という希少なギター。ヘッド裏には本人直筆のサインが入っている。

<取材協力ショップ>ドルフィンギターズ大阪 江坂店
〒564-0063 大阪府吹田市江坂町1-23-34 第2梓ビル5F
TEL.06-6310-6180
営業時間 11:00〜20:00(毎週水曜定休)
https://www.dolphin-gt.co.jp/

 1998年にオープンしたアコースティック・ギター専門ショップ。有名ブランドから国内外のルシアーメイド・ギター、さらに近年はエレクトリック・ギターや、オリジナル・ブランド製品にも力を注いでいる。マーティンは新品やカスタムショップ・モデル、ヴィンテージ、中古まで取り揃えており、ウクレレの品揃えの多さも特徴である。

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Interview by TOSHIHIRO KAKUTA

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MARTIN D-18

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定価890円(本体824円)A4判

2018年12月1日(土)発売

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