インタビュー

Living with Martin Guitar Vol.14

リビング・ウィズ・マーティンギター

本保 和之

『GAKKIソムリエ』のオリジナル企画、【Living with Martin Guitar】は、マーティン・ユーザーのギターライフを語ってもらうインタビュー・コーナー。音楽とギターとの出会い、マーティン・ギターの魅力、そして日々の生活におけるマーティン・ギターの存在・・・。憧れのマーティンを手にした喜びをインタビュー!

Martin_Honbo_Top_banner.jpg

 今回ご登場いただいたのは、石川県白山市にお住いの本保和之さん。家業の建築業を長年営んでいたが、現在は同市内に「ライブスポット夕焼け」の他、音楽スクールを運営し地元の音楽シーンを支えている。そんな本保さんと、アコースティック・ギター/ウクレレ専門店の「楽器の店ポンポロプー♪」の島崎克宏代表にお話を伺った。

"あなたにとってマーティン・ギターはどんな存在ですか?"

IMG_8609.jpg写真左より、楽器の店ポンポロプー♪代表の島崎克宏さんと本保和之さん

建設業の方をバッサリ止めて、全然儲からない音楽の世界に

ー音楽に目覚めたきっかけは?

本保:中学生の頃は、ラジオの深夜放送の音楽番組とレコード以外になくて。その頃はジャンル問わず流れてきたものを聴いてたから、アリスやちょうど登場してきた松山千春さん、解散するかせんかだったグレープでしたね。どちらかと言うと洋楽の方が好きで、アース・ウィンド&ファイヤーとか、カーペンターズがトップ3に入ってたりとか、そういう時代ですわ。洋楽邦楽問わずで広く浅くでしたね。

ーギターを始めたの何歳頃ですか?

本保:買ってもらったのは中学3年ですね。フレッシャーのエレキギターで、38,000円ぐらいのストラト・タイプ。

ー当時は憧れのギタリストはいましたか?

本保:割とハードロックが好きで、レッド・ツェッペリンもまだ現役の頃でしたし、あとはレインボーとか。その後にメタルとか出てきたんだけど、ジューダス・プリーストあたりからその先は、もう僕らの聴ける範囲じゃないなって言う感じ(笑)。

ーその頃バンドは組んでいましたか?

本保:バンド活動って40歳ぐらいまでしたことなかったんです。家にギターはありましたけど、ずっと一人で弾いてました。自分でバンド組んでやろうって全然思ってなくて。そういう機会も自信もなかったですし(笑)。

ーせっかくギターが弾けたのにもったいないですね。

本保:高校生の頃はバスケ部でそこそこ強豪校だったんで、朝早くから夜遅くまで毎日練習だったから、バンドにハマる暇がなかったんです。

ー当時はアコースティック・ギターに興味はありましたか?

本保:6歳上の姉が中学に入ると同時にクラシック・ギターとフォーク・ギターを買ったので、僕が小学校1年の時にはありました。それで3コード程度を教えてもらいました。

ー高校を卒業されてからは?

本保:家業の建設業を45歳までやってました。

ーその間の音楽活動は?

本保:15年ぐらい前にオヤジバンドのブームがあったじゃないですか。あの頃ってあんまりクオリティに関係なく、たくさんバンドが出てたんで僕も大丈夫かなって(笑)。40歳の時に中学からの憧れだったバンド・デビューを果たしました(笑)。

ーそのバンドではどんな音楽を?

本保:ローリング・ストーンズとかリンダ・ロンシュタット、あとビートルズですかね。僕はリード・ギターでした。

島崎:本保くんの場合、めんたんぴん(1970年代に活躍した石川県小松市出身のブルースロック・バンド)の飛田(一男)さんとの出会いがギターにのめり込むきっかけでしたよね。その飛田さんが、夕焼けコンサートって形でいろんなライブをしとったんですよ。それが発端で彼は今のライブハウス(ライブスポット夕焼け)を始めたわけだし。

本保:飛田さんとは少し懇意にさせてもらって、レッスンってほどでもないけどギターをちょっと指南していただいたんです。晩年の音楽活動でも少しお手伝いさせていただいて。2005~6年から08年のことですね。実は今のライブハウスは、飛田さんが自由に使える店があるといいかなって思って始めたんです。そしたら飛田さんは08年にお亡くなりになって...。自分でがっつり店をやるつもりはなかったから、すごい躊躇したんですけど、飛田さんの周りのアーティストの皆さんが「みんな応援するから、やれやれ」みたいな感じで。最初は建設業と両立できると思ったんですけど、半年ぐらいしたら全然できなくて(笑)。普通だったらライブハウスを止めるんだけど、僕は25年間続けた建設業の方をバッサリ止めて、全然儲からない音楽の世界に(笑)。

島崎:公共工事まで請け負う建設会社だったんですよ。

ー飛田さんから受けた影響が本当に大きかったんですね...。

本保:だから最初の頃は飛田さんの店だと思ってくれて、ムッシュ(かまやつ)さんやまさやん(桑名正博)も毎年来てくれてたし、あとは日本のブルース系の人たち、金子マリさんや近藤房之助さんとか、そんな人たちに来てもらってます。

IMG_8591.jpg

僕自身のスタイルにはマーティンが一番合っている

ーエレキ・ギターからアコースティック・ギターに興味が移ったきっかけは?

本保:どっちかっていうと僕はロックな人だったんだけど、一緒に演ろうって言ってくれたおっちゃんがフォークな人で、僕にアコギで参加してくれと。最初はその人がアコギを貸してくれたんですが、自分のアコギも必要かなって思って。そんな時に島崎さんが前に勤めとった楽器店に、ガラスケースの中に下がっとったギターがあって。それがマーティンの000-28のカスタムでした。

ーその000-28カスタムが本保さんの最初のアコギですか?

本保:自分で買ったのはね。40歳過ぎてからやから、大人買いやね(笑)。やっぱり今まで使って来たギターや姉貴のアコギとは全く違う音で、あれは典型的なマーティンの音やったね、鈴音も出て。それで初めてマーティンの音を知ったのかもしれない。

ー000を入手したのは、エリック・クラプトンの『アンプラグド』からの影響ですか?

本保:それはあんまりなかったですね。飛田さんが木村充揮さんやムッシュさんと二人でツアー廻ったりしてアコースティック・ギターを使ってたんですよね。その時も「原曲にとらわれずに自分の弾き方と自分の音出せばいいんや」ってことを教えられましたね。

島崎:自分自身もドレッドノートよりスモール・サイズのギターが好きやから、前のお店でもそういうギターを仕入れることが多かったんです。それで彼が出会ったマーティンがたまたま小さいサイズやったってことだと思います。体でかいからドレッドノートでも全然イケると思うんだけど。

本保:でも小さいサイズに慣れたら、ドレッドノートって弾きづらいです。ボディが少し厚いし、くびれが少ないからなんかしっくりこないですね。

ーマーティンはフィンガースタイルで弾くことが多いですか?

本保:ピックは持たないですね。リードのソロ弾きが担当やったんで、ガッツリとコード弾いて歌う人がいて、その横でオブリやオクターヴ違いのコード入れたりするプレイやったから、やっぱり輪郭のある音が良かったのかな。

ー初めてマーティンを弾いた時は、聴き慣れている音っていう印象でしたか?

本保:まず今までにない音で、マーティンのこの音を知ってしまったら他のギターは弾けないですね、自分のスタイルからしたらね。例えばギターをかき鳴らして歌う人や、バンドの中で弾く人って、別のギターを使うことが多かったりするじゃないですか。そういう使い道の中で、僕自身のスタイルにはマーティンが一番合っていると思います。

ー本日持って来ていただいたマーティンは、どちらも珍しいモデルですね。

本保:こっちのカッタウェイ・タイプは島崎さんが2010年にマーティンのファクトリーツアーで仕入れてきたものです。島崎さんは僕のプレイスタイルを良く知ってるんで、向こうで選んで仕入れる時に、僕んところに来るんやろなって思ってたんですが、ライブハウスをオープンしたばかりでお金がなくて。でもずっとお店にあって、欲しいなと思っていたけど売れちゃったので、逆に諦めがついたんです。でも悔しかったから、誰が買ったかは聞かなかった(笑)。

島崎:このカッタウェイ・モデルも曰く付きで、最初に購入したお客さんがここでオーセンティックに出会って、これを手放して買い換えたいって言い出して。それで売れてから3年後にこのギターが戻って来たんですよ。それで本保君にすぐ電話したもん(笑)。

ーもう一本のスロープショルダー・タイプの特徴は?

本保:こっちもすごくふくよかなんですけど、マーティンらしからぬ音なんですよね。マーティンらしい"シャリン"っていう鈴音でもないし、アタックが強いところもないし。これは世界で3本だよね。1本はスウェーデン、もう1本はアメリカ、そして残り1本がこんな片田舎にある(笑)。やっぱりでかい音するね。

ーこっちの方が全体的にボディの厚みがありますね。島崎さんはこうしたちょっと変わったマーティン・ギターを仕入れるようにしているんですか?

島崎:うん、そうやね。でも結果的にこうなってしまったというかね(笑)。自分はこんなギターを一本も持ってないのにね(笑)。

本保:ファクトリーツアーはそういう機会やもんね。まあ、人によってはレギュラー以外に興味ない人もおるしね。でも仕入れる時に俺の顔を思い浮かべとるわけやろ、買い手をまず想定して(笑)。

島崎:それが商売の基本でしょう(笑)。

IMG_8603.jpg

エレキ・ギターからアコースティック・ギターに"転向"するきっかけを作ってくれたのがマーティン

ー島崎さんが珍しいマーティンを仕入れてくると欲しくなっちゃいますか?

本保:もうしょうがないな~って感じで(笑)。ここは古い田舎なので、音楽やってる人って共通の友達ばっかりなんですよ。だから自分がマーティンを買わなくても、この周りにいるだれかがオーナーになってくれればいいなって思いがあるんですよね。だから自分は買えなくても人に勧めたりね(笑)。なんとなくこの地域の財産のように思うんですよね。珍しいギターがせっかくここにあるんだから、ここの人たちが使ってくれたらいいのになって。島崎さんがせっかく仕入れてくれたしね。

島崎:うちでマーティンとかの高価なギターを買われたお客さんたちで『ポンポロプー被害者の会』が結成されたんですよ。まあ、それは幸せになる被害者なんやけど(笑)。黒澤楽器店さんで『【ぼくらのマーチン君!】別名「第一回ポンポロプー被害者の会」』っていうイベントを企画してくれて、そこでみんながご自慢のマイ・マーティンを持って集まって。あの時40人ぐらい集まったかな。それもまさに彼が言うように、この界隈にこれだけすごいマーティン・ギターを持ってる人たちがいるんだっていうね。それは言ってみれば、180年以上の歴史あるマーティンの中でも、世界に一本しかないギターを持ってる人もいるわけで、それはやっぱり文化的な財産なんですよ。

ーこの地域ならではの盛んな音楽シーンはあるんですか?

本保:アコースティック・ギターの文化に関しては、やっぱり島崎さんですよ。この辺にも総合的な楽器屋さんはありますけど、アコギに特化してるのは島崎さんのお店だけだし、その影響は大きいと思いますよ。

ーライブスポット夕焼けもアコースティック音楽に特化したお店なんですか?

本保:割とそうですよ。来るもの拒まずでやってますけど、雰囲気も木造でカフェっぽいところなんで。地元のアマチュアとツアー・ミュージシャンが中心です。ツアーで来るミュージシャンがみんなこのマーティンを打ち上げで弾いたりとかしてますから。うちに出入りしている人たちにはマーティンを自由に弾けるようにしてます。でもそういう人たちの方がもっといいギター持っとったりする。みんなここの被害者やから(笑)。

ーでは最後に本保さんにとってマーティン・ギターはどんな存在ですか?

本保:エレキ・ギターからアコースティック・ギターに"転向"するきっかけを作ってくれたのがマーティンですね。最初にちゃんと自分で買ったのがマーティンだったから。例えば5万円ぐらいのアコギを買ってたら、「やっぱりエレキの方がいいな」ってなってたかもしれないし。マーティンと出会わなかったら、今もアコースティック・ギターを弾いていなかったかもしれない。それでマーティンの中でも、やっぱり自分のマーティンが一番だなって思います(笑)。

本保和之:1964年生まれ・石川県出身。中学生の頃にギターを始め、高校卒業後は家業の建設業を45歳まで経営。ロックバンド「めんたんぴん 」のギタリスト、飛田一男との出会いをきっかけに、地元白山市に「ライブスポット夕焼け」(http://noppo.cu-tablet.com)を2009年にオープン。現在はK&Tミュージックスクールも開校し、地域の音楽文化の普及に貢献している。

Martin_Guitar_Layout_2_14.jpg

MARTIN JC-AB-CTM 2010:こちらもマーティン・ファクトリーツアーで選定したジャンボ・サイズ/カッタウェイ・モデルであるJCのカスタムショップ・モデル。アディロンダック・スプルース/イースト・インディアン・ローズウッド・ボディ、フレイム・マホガニー・ネックを採用。落ち着いた印象のアンバートーンの1933サンバースト・フィニッシュと、スタイル42のスノーフレイク・インレイやキルト・ブビンガのバインディング、ヘッドストックの縦ロゴとのマッチングも絶妙な一本。ゆっくりしたアルペジオでも低音などがしっかり出るところがお気に入りとのこと。

Martin_Guitar_Layout_1_14.jpg

MARTIN D-CTM 2012:マーティン・ファクトリーツアーで選定した、世界で3本のみのカスタムショップ・モデル。スロープショルダー・ドレッドノートと名付けられたボディ・シェイプが特徴で、アディロダック・スプルース/ワイルド・グレイン・イースト・インディアンローズウッドを採用。接着には全てハイドグルーを使用。スケールは000と同じ24.9インチとやや短く、一般的なドレッドノート・サウンドとは一味異なるトーンで、ふくよかで大きな音と、弾きやすい薄めのネック・グリップが特徴。

 
<取材協力ショップ>
IMG_8501.jpg楽器の店ポンポロプー♪
〒924-0877 石川県白山市中町30
TEL.076-214-6236
https://www.pon-polo-pooh.com

 石川県内の楽器店にて長年勤務してきたベテラン・スタッフが2010年にオープンしたアコースティック・ギター/ウクレレを中心とした専門ショップ。国内外の老舗ブランドのギター/ウクレレの品揃えは北陸随一を誇る。練習用スタジオを完備し、豊富な内容の音楽教室にも定評がある。また、有名ミュージシャンのライブも企画運営している。マーティンはファクトリーツアーの買い付け品など、厳選されたギターを取り扱い、随時フェアやイベントも開催している。

IMG_8627.jpg

楽器の店ポンポロプー♪のMARTINの在庫は→こちらをクリック!

Martin_Archive_banner.jpg

Interview by TOSHIHIRO KAKUTA

製品情報

MARTIN D-CTM

もっと見る

製品情報

MARTIN JC-AB-CTM

もっと見る

Player

2019年6月号

定価890円(本体824円)A4判

2019年5月2日(木)発売

お求めは全国の楽器店、書店、またはWebで!

SANTANA

サンタナの奇蹟/ギターシーンに衝撃を与えるAFRICA SPEAKS

J-guitar

厳選されたギターが集まる!国内最大級のギター専門情報サイト!