インタビュー

G'CLUB TOKYO ROUND TABLE ~新たなギター作りを提案するショップ・オーダー・モデル

インタビュー

藤川忠宏 / 池戸久幸 / 池森洋介

G'CLUB TOKYO

お茶の水「G’Club Tokyo」は、ギブソンに特化したギターショップとして広く知られている。エレクトリック、フル/セミアコースティック、フラットトップなどフロアごとにテーマを分けたラインナップは世界でもトップクラス。数やバリエーションもさることながら、特に注目したいのはオーダーメイド製品の充実だ。そんな魅力的なオリジナル製品を企画する3人のギブソン・スペシャリスト達に話を伺った。

 G'Club Tokyoがオープンしたのは2007年ですが、いつ頃からショップオーダーをされるようになりました?

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藤川忠宏 / スペシャリスト

藤川:ここができてかなり最初の段階から、選定会という形でギブソンに出向いて、自分たちで選んだ材を使ったギターをオーダーしていました。それから2年ほどしてからかな、ネックのプロファイルをアレンジするようになりましたね。58年スタイルのレスポールに59年のネックを付けて欲しいとかね。そのうちにレスポールをホロー構造にしてfホールを空けて欲しいだとか、だんだん内容がエスカレートして...。

池森:フラットトップの場合は、最初は日本の有名ミュージシャンが愛用していたヴィンテージのJ-45と同じカラーリングや仕様にバージョンアップしたモデルを6本単位でオーダーするという比較的シンプルな内容でした。その後欲が出て来て「エレキのカスタムショップでやっているコレクターズチョイスのアコースティック・バージョンができないか...」ということで、「自分が持っている59年製のJ-45のリイシュー・モデルをオーダーしてみようか?」という話になったんです。エレキの場合は59年仕様のネックと言えばマニアの方にはすぐにご理解いただけますが、アコギの場合"59ネック"といっても過去に再現されたことがないので知らない方が大半です。だったらもっとアコギユーザーに59ネックを知ってもらう意味でもこの企画を実現すべきだ、ということで...。でも開発当初、ギブソン・モンタナ工場はエレキ部門のようには色々なデータが揃っていなかったようで、59年のJ-45のネック・データに関してはこちらでCADデータを用意して進めました。

 59年スタイルのJ-45を何本オーダーを?

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池森洋介 / フロア長

池森:企画の段階では50本作って大丈夫かな...、という不安もあったのですが、モンタナに行ってスタッフと熱心に話を詰めて行く中でまだ見ぬJ-45"The 59"の魅力に憑りつかれ...、ん〜100本行けるかも...。ということで100本オーダーしました(笑)。いわゆるモンタナハイですね(笑)。

 J-45のカスタムモデルを100本って...、凄いですね!

池森:最初の100本は確かに勇気がいりましたね(笑)。でも凄く納得のいく良い仕上がりで、あっという間に完売したんです。すぐに追加注文しましたよ。それ以上に冒険したのは、次にリリースした1964年製J-200の復刻版となる"The 64"です。この時は僕のJ-200を3カ月程モンタナ工場に預けてデータを採取しました。完成度が予想以上に素晴らしくて、その3年後にブラッシュアップした2ndバージョンも含めて自分でも2本購入してライブでも使っています(笑)。"The 64"2ndバージョンは、ギブソンが当時世界初で採用した激薄のラッカーフィニッシュ仕上げで、キズは入り易いですが振動効率が良くて鳴ります!(笑)

 塗装がかなり薄くて、ヴィンテージライクな仕上がりですね...。

池森:ルックスがたまらないですよね! J-45"The 59"は4回オーダーしていますので、既に400本近く販売しています。もちろん我々も真剣に企画に取り組んでいますが、ギブソン社が製品としてしっかり応えてくれているので、ありがたいですね。正直言えば、最初はかなりギブソン側の腰が重いと言うか、なかなかスムーズには進みませんでしたが、熱意をもって諦めずにギブソンに向き合って、言うべきこと、言わなきゃいけないことをしっかりと伝えて来たので、今は強い信頼関係が構築されていると思います。ネックプロファイルは凄くリアルだし、やや低めのサウンドホールの位置や、サンバーストのカラーリングなどもサンプルにした1959年製にかなり近づいた最高の仕上がりになっています。サンバーストカラー("The 59"Genesis)は完売したので少量ですが少し手を加えた仕様のものを7月に出張した際にオーダー済です。

 フルアコ、セミアコに関しては?

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池戸久幸 / 副店長

池戸:3階のハコものもけっこうカスタムオーダーモデルを作っています。カスタムショップの中に、カスタムクリムゾンというセクションがありまして、これは完全な1本ものや特別なモデルを作るところで、数人のルシアーが時間をかけてハンドメイドしています。以前トップにアディロンダック・スプルースを使ったL-5も作りました。最初「そんな厚いアディロンダックなんてないよ」って断られましたが、何度かしつこくお願いしていたら作ってくれました(笑)。このL-5は太くて良いサウンドでしたね。他にもいろいろなアイデアを盛り込んだカスタムオーダーをしております。

 そのオーダーモデルはいつ頃完成しますか?

池戸:いや、分からないです(笑)。一応納期は設定していますが、なにしろ2〜3人でやっている小さなセクションなので、順次製作待ちです。以前スーパー400 フローレンタインのヴィンテージ・リイシューをお願いしたら、1年以上掛かりましたね。

藤川:そう言えば、8月の出張時に、直前で思いついたオーダーを入れてしまいました。内容はまだ秘密ですが(笑)。この店ももう10年やっているので、カタログ・モデルばかりでは面白くないし、お客さんからも、こういうモデルないの? ああいうモデルは? と言われているうちに、自分たちもだんだん悪ノリがエスカレートして今に至っております。でも結果的に、お客さんに興味を持っていただけてどうにかここまで来られたことはラッキーだと思います。ジャズ系のギターに関して言えば、ロックを長年やっているユーザーの中にも、隠れジャズファンは意外に多いんですね。みんなどこかでジャズやフルアコに憧れがある。そう言う意味では、アーチトップの需要はまだまだあると思います。ということは我々が悪ノリできる余地もあると...(笑)。以前うちのお店で「L-5でジェフ・ベック」というイベントをやりましたが、かなり好評でした。その後も「天国へのL-5」なんていうイベントも行いました。(笑)。そうしてお客さんを巻き込んだ楽しい悪ノリができたらと思っています。そういうまだ眠っている需要層を掘り起こしたいですね。

 ソリッド・モデルで注目されるのは?

藤川:そうですね、レスポールの場合どうしてもリイシュー・モデルが中心になりますが、最近入荷したモデルですと、68年の再生産スタンダード(ゴールドトップ)とカスタム(エボニーフィニッシュ)のリイシューが68本限定で発売されたんですが、これは評判が良いですね。スタンダードはヘヴィエイジドで、もう緑青が噴いていてかなりリアルです。

 新しい仕様のオーダー・モデルは?

藤川:新しいといっても、ロボットチューナーとかの方向ではなくて、ホローボディのレスポールなどは注目されています。伝統的な仕様と別の伝統的な仕様をうまくミックスしたものは、お客さんにも受け入れやすいみたいです。新しいけどどこか懐かしいというモデルは好調ですよ。それとは真逆ですが、近々ラスタカラーのレスポール・カスタムというのが来ます(笑)。

池戸:そう言えば、以前センター2ピーストップを垂直ではなく、斜めに継いだレスポールを悪ノリして作りましたよね(笑)。

藤川:あったあった、女性のお客さんがそのギターの前に立って首をこう斜めにしてジ〜ッと見てましたよ。結局その方が買いましたけど(笑)。

 年間にどれくらいの種類のショップオーダーをされていますか?

池戸:ハコものはカスタムクリムゾンで10モデルは作っています。その他メンフィスのセミアコが15モデルはオーダーしています。

藤川:2階のソリッドは年に10数モデル以上はオーダーしていますね。その他、材の選定モデルを含めたら、もう数えきれない。

池森:アコギは今オーダーしているのが5モデル、その他に見積待ちが3モデルあります。

 それらのオーダー・モデルはG'ClubTokyo以外のクロサワ楽器店でも購入できますか?

藤川:もちろん50本とか100本作っているモデルは他の店舗でもご購入頂けます。しかし、カスタムクリムゾンのように1本や2本しか製作していないモデルは、G'Club Tokyoで販売します。

 日本からこのように拘った仕様のオーダーが来ることは、ギブソンにとっても良い刺激になりますね。

藤川:こちらの提案から実現に至ったモデルもたくさんあります。メンフィスのフレディ・キングのES-345とか。

 日本のように、重箱の隅を突いたような仕様でオーダーをする国はあまりないでしょう。

藤川:ちょっと前の話ですけど、以前は日本に対してヨーロッパのショップオーダーはかなり出遅れていたんです。しかし、我々のオーダーに刺激されて近年は積極的にマニアックなショップオーダーをするようになりましたね。元々ヨーロッパの人々はアメリカ人より日本に近い感覚があるようで、ディテールの細かな部分まで拘っているようです。ですから、色々な意味でギブソンのアイデアにプラスアルファを提供していると思います。

 今度ヨーロッパに行ったら、ラスタカラーのレスポール・カスタムが売られていたりして(笑)。

藤川:あ〜、ありえるね〜。全く同じじゃ能がないから、ポジションマークがハッパのデザインになってたりしてね(笑)。

全員:大爆笑!


【G'CLUB SHOP ORDER MODEL】

 ラウンドテーブルに続いて、2018年9月現在店頭で販売されているG'Club Tokyoが特注したモデル、選定会で選んだカスタムモデルを紹介しよう。どの製品も個性豊かで、ここでしか出会えないオリジナリティ溢れる1本だ。

▼CS Historic Collection 1958 Les Paul Standard 2018 Hand Select HRM Double Dirty Lemon VOS

01-G_club1811-111.jpg 新しくなったヒストリック・コレクションの1958モデル。58タイプは本来プレーントップ仕様だが、写真は59モデル用にストックされた1ランク上のトップ材から選んだハードロックメイプルを使用。もちろん、ニカワ接着やミントコンディションに加工されたライトエイジドの金属パーツなどはトゥルーヒストリック譲り。G'Club Tokyoのスタッフが現地で選定したオーダーモデルならではの特別仕様で製作されているが、材の関係で数が限られている。

▼CS Historic Collection 1958 Les Paul Standard 2018 Hand Select HRM BOTB P.8 VOS

02-G_club1811-113.jpg 「ザ・ビューティ・オブ・ザ・バースト」で最初に紹介されているスラッシュのレスポールのカラーを意識したオーダー・モデル。彼のシグネチャー・モデルと同じカラーリングで、赤みが微妙に残っているさまを見事に再現。ハードロック・メイプルをトップに使用し、58モデルながらヴィンテージライクな杢目が出ている。シグネチャー・モデルより大幅に安く設定され、プレーントップなみの価格で購入できるところも大きなポイントだ。

▼CS Historic Collection 1959 Les Paul Standard 2018 Hand Select Green Lemon Vintage Gloss

03-G_club1811-110.jpg グリーンレモンと呼ばれる赤みが抜けた59年製カラーを再現した新生ヒストリック・コレクション。新しいヒスコレは、究極と言われたトゥルーヒストリックの美味しい部分を引き継ぎながらも、より求めやすい価格設定を実現。これをベースにG'CLUB TOKYOのスタッフがナッシュビルのカスタムショップでセレクトした最上級のフィギュアド・メイプルを使用している。ハンドバフを特別に採用することで、1ランク上の仕上がりに。

▼CS Historic Collection 1959 Les Paul Standard 2018 Hand Select Vintage Cherry Sunburst Vintage Gloss

04-G_club1811-112.jpg ボディの赤みが残ったヴィンテージチェリーと呼ばれる50年代当時の出荷時のカラーを再現した新しい59ヒスコレをベースとしたオーダー・モデル。70年代のチェリーと比べるとかなり深みと貫禄がある。スタッフが現地でセレクトしたメイプルを使用し、時間をかけたハンドバフ仕上げにより一般的なグロス仕上げとは異なるリアルな質感が特徴。ボディの極薄塗膜もヴィンテージ・テイストをうまく醸し出している。

▼Custom Shop Les Paul Custom Figured Top Rasta

05-G_club1811-114.jpg "個性的なモデルを..."という思いが、ナッシュビルのカスタムショップで爆発してオーダーしたLPカスタムのラスタ・モデル。3色のカラーを通して美しいメイプルトップの杢目が確認できる。ヴィヴィッドなカラーはギブソンらしくないが、そこがこのモデルの魅力とも言える。ヒストリックで使用されるゼブラボビンのカスタムバッカー、クリームカラーのプラスティック・パーツ、ボディバックのナチュラルなど、全てが個性的。

▼Custom Shop Byrdland Medium Scale

06-G_club1811-102.jpg ミディアム・スケールを採用した特別仕様のバードランド(バードランドはショート・スケールを採用)。G'Glub Tokyoのスタッフが、たまたまナッシュビルのカスタムショップで某有名ギタリストがオーダーしたと思われるミディアム・スケールのバードランドを発見。それをヒントにショップオーダーした1本。ボディをミッドナイトブルーにフィニッシュし、ピックアップにはアルニコVをマウントすることで、ヴィンテージライクながらもモダンな仕上がりなっている。

▼Custom Shop L-5CES Quilt

07-G_club1811-103.jpg 2015年の選定会で選んだL-5CESで、1本のみオーダーで製作されたワンオフモデル。ボディバックとサイドには、カスタムショップでも数少ない7Aランクのキルト・メイプル材を贅沢に使用し、削りだしで製作されている。ピックアップカバーには、ブルース・カンケル氏による芸術的なエングレーブが施されているが、カスタムショップの中でも異例の仕様と言える。さらに、ピックガードもマーブルカラーの特別仕様になっている超ゴージャスな1本。

▼Custom Shop 1959 ES-335 Dot Brunswick Blue Sparkle

08-G_club1811-101.jpg 59年スタイルのES-335のヒストリック・コレクションをベースに、ネイビースパークルにフィニッシュしたユニークな仕様の現地選定品。クルーソン・チューナーではなく、シルバーボタンのグローバー・キーストーン・チューナーを採用。ヒストリックコレクション譲りの上品な335サウンドを受け継ぎながらも、ステージで華やかさを彩るモダンで斬新な外観に仕上がっている。ワンオフ・モデルで今回G'Club Tokyoが選定した1本。

▼Custom Shop ES-355 VOS Limited Run Antique Natural

09-G_club1811-104.jpg G'Club Tokyoのスタッフが、ナッシュビルでこの夏に選定した個性的なES-355。355といえばエボニーブラックかチェリーレッドが定番だが、こちらはカスタムカラーとなるアンティークナチュラル・フィニッシュ。春の選定会でも1本同じナチュラルの355を仕入れたが、瞬時に売れたため、新たに選定した。ブロンド・フィニッシュとゴールドパーツのマッチングが何とも言えないエレガントさとプレミアム感を演出している。

▼Kurosawa Custom J-200 "The 64"

10-G_club1811-106.jpg 池森氏の所有する64年製のJ-200を再現したショップオーダー・モデル。クロサワ楽器としてオーダーした50本はすぐに完売し、写真はセカンドバージョン。64年製のJ-200をモンタナ工場へと持ち込み、ネックグリップやホールの位置、7レイヤーのバインディングなどを正確に採寸してリアルに再現している。極薄のヴィンテージ・シンフィニッシュ、軽量材の使用、丁寧な作りが、うまくサウンドに反映されている。写真の進化版が5本限定で年内入荷予定。

▼Kurosawa Custom J-45 "The 59" Black

11-G_club1811-107.jpg 1959年製J-45のネックグリップ、ノンスキャロップド・ブレーシングを再現したオーダー・モデル。当時生産されていないブラック・フィニッシュ、ブラックタスク・サドルなど、ヴィンテージ・スタイルにモダンな一面をプラスした仕様でまとめている。写真のブラックが50本、サンバーストのジェネシスが60本生産された。このシリーズも池森氏の1959年製J-45のネックプロファイルをCADデータ化して製作。2012年から数回企画され累計400本近くリリースした。

▼Kurosawa × Miki Custom 1968 J-45 Black

12-G_club1811-108.jpg 60年代後半のヴィンテージのJ-45を改めて採寸し、当時のナローネックをリアルに再現したショップオーダー・モデル。ギブソン、クロサワ楽器、三木楽器の3社がコラボした人気モデルだ。何度かプロトタイプを確認することで、ようやく完成。67〜68年に存在した人気のレアカラー、エボニーブラックを再現したヴィンテージ仕様であるが、近年人気のカラーでもあり現代的なモデルにも見える。もちろん14度ヘッド角など細部にわたって60年代末の仕様を再現している。

インタビュー / 田中 稔 (月刊『Player』)

本記事は月刊『Player』2018年11月号特集「ギブソン・リスペクト Part.9」からの転載です。また、掲載内容は2018年8月~9月時点での情報です。 

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