インタビュー

James "JC" Curleigh(GIBSON PRESIDENT & CEO INTERVIEW)

ジェームズ“JC”カーレイ / James "JC" Curleigh

GIBSON PRESIDENT & CEO

 ギブソンフリークなら2018年晩秋にギブソンのCEOが替わったことはご存知かと思うが、現在ギブソン社のトップはジェームズ“JC”カーレイ(James "JC" Curleigh)氏。アメリカの老舗ジーンズメーカーであるリーバイスの再建でもその実力が買われ、ギブソン社の代表者として白羽の矢が立った。実はカーレイ氏、幼い頃から音楽と楽器に親しみ、若い頃はバンド活動もしていたというギブソンフリークでもある。そんなCEOに、誰しもが気になる現在のギブソン、そして将来のギブソンに関して話を伺った。音楽好きのカーレイ氏とあって、B'zやTak Matsumotoに関してもかなり明るく、日本のギター市場もしっかりと把握している。そんなカーレイ氏が、ギブソンの未来を語る!

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■一体どうしてそんなことに...

ー貴方はギターがお好きだそうですが、何歳頃からプレイをされていましたか?

 私が小さな頃から家にはたくさんの楽器がありました。母はギター、父はバンジョーを弾いていて、ピアノもありました。私が本格的にギターを弾き始めたのは19歳の時です。20代になってからバンドも組みました。

ーどのような音楽を聴かれていましたか?

 若い頃は、ローリング・ストーンズ、ボブ・ディラン、ポリス、レッド・ツェッペリンなど、いわゆるロックやフォークなら何でも聴いてました。

ーではギブソンのCEOになられるずっと前からロックのファンだったのですね。

 ええ。ロック以外のジャンルでも、古いものから新しいものまで、どんな音楽も好きです。

ー何のギターを所有されていますか?

 プレイするのはエレクトリックよりアコースティックの方が得意でして、一番好きなギターは1960年代のJ-45です。エレクトリックでは、フー・ファイターズのデイヴ・グロールと同じブルーのDG-335も持っています。あとサンバーストのレスポールもありますし、ピーター・フランプトンと同じエピフォンのテキサンも持っています。今探しているのは、1959年製のレスポール・スタンダードとヴィンテージのフライングVです。私はずっと昔からギブソン・ギターの大ファンでした。母がエピフォンを持っていて、エピフォンも大好きです。

ーギブソンのCEOになられる以前は、ギブソンにどのようなイメージを?

 ギブソンに対するイメージは、昔も今も変わっていません。音楽のアイコニックであり、世界中のミュージシャンたちに愛用され、オリジナリティに溢れた最高品質のエレクトリックとアコースティック・ギターを生産している、アメリカを代表する楽器メーカーということです。

ー破産法申請のニュースをお聞きになったとき、あなたは何を思いましたか?

 正直「一体どうしてそんなことになったんだ...」って思いました。ですが、ギブソン・ブランドが消えてなくなってしまうとは考えませんでした。「会社を立て直すにはどうしたら良いのか、誰がそれをやるのか...」ということに興味を持ち始めました。そしていろいろな人とその話をしたり、ギブソン社の人々とも話をしているうちに、彼らから「ギブソンのCEOにならないか?」と打診されたんです。もちろん私はすぐにOKしましたよ。そして誰がギブソンを立て直すのかが、ハッキリしました(笑)。私にはその方法も見えていました。なぜなら、私はギブソンと同じくアメリカを代表する老舗ブランドのリーバイスを立て直した経験がありましたから。

ーギブソンは1894年創業、リーバイスは1853年設立で、共に長い歴史を持つブランドですね。また現在まで続いている不変のデザインという共通項もあります。その伝統を引き継ぐヴィンテージ・スペック製品の開発について、どのようにお考えですか?

 長い歴史を持つブランドの場合、まず最初に伝統的な製品のことを考えなくてはなりません。リーバイスの場合は、それが501でした。501がリーバイスを有名にしたわけですからね。その原点に戻り、オリジナルのスペック、オリジナルの生地を使い、徹底的に伝統的なことにこだわりました。将来の計画を立てるのに必要なのは、まず自分たちの歴史を知ること、そして伝統を重んじることです。それはギブソンでも同じことだと思います。

ーそれが貴方がギブソンのCEOに就任されて先ず行ったことであり、今もそして今後もすべきことだとお考えですね。

 その通りです。

ー破産法申請のニュースは、日本のギター・ファンを動揺させました。しかし、日本で最も長い歴史を持つ「プレイヤー」誌は、常に「ギブソンは健在なんだ!」というメッセージを誌面を通じて読者に送り続けてきました。そんな読者に向けて、現在のギブソンの再建状況を教えて下さい。

 それはありがたい話です。我々は今年、1950年代、60年代の黄金期の復刻モデルとなる"オリジナル・コレクション"を発表します。同時に革新的な精神に基づいた"モダン・コレクション"も発表します。こちらは新たな世代に向けて開発したイノベーティブなスペックとスタイルを持つ製品です。

ーヴィンテージ・スペックの製品とイノベーティブな製品とのバランスは?

 それはそれぞれの需要を見ながら決めていかなければなりません。50年代、60年代のオリジナル・スペックのギターを求めるファンが多くいることは良く理解しています。そのために我々は"オリジナル・コレクション"を生産するわけですが、ファンの方々は完成を楽しみにされていることでしょう。また現代的なトーンとプレイアビリティを考慮した"モダン・コレクション"もNAMMショーで良い手ごたえでしたので、どちらの製品にもファンがいることがよく分かりました。

■大事なのはユーザーの信頼を得ること

3R1A0506 JC Standing guitarsmall.jpgー日本には40〜60歳の長年のギブソン・ファンが多くいます。彼らを維持していくための取り組みは?

 その世代の熱心なファンの方々が、これまでのギブソンを支えてくれました。60年代以降、ギブソンは多くのギター・ヒーローを生み出しました。重要なのは、カスタム・ギターや、ヴィンテージに忠実なハイエンド・ギターを好む彼らの声に、きちんと耳を傾けることだと思います。実際この数か月間は、彼らのようなコアなファンやギター・ディーラーの方々と話し合いを重ねて、長年のファンが望む製品は何かをじっくりとリサーチしてきました。

ーでは、10〜30歳の若年層や新たなファンをとりこむには?

 これは若い世代に限らないことですが、一番大事なのはユーザーの方々の信頼を得ることです。ギブソンは世界で最も信頼されている楽器メーカーだと思っています。これまで偉大なプレイヤーたちに選ばれてきたことでそれは十分に証明されていますが、若い世代に対してもその信頼関係を引き継いで行くことが重要です。彼らに対してはより新しい製品を提供していきますが、手の届く価格に設定しなければならないため、レスポール・ジュニア・トリビュート等のローエンド・モデルを近日発売する予定です。我々は若いユーザーが個性的で本物のプレイヤーになれるように、彼らの背中を押していくことが大切で、積極的に若いアーティストのサポートをしていきます。グラミー賞を受賞したグレタ・ヴァン・フリートやポスト・マローンなどが、ギブソンを使っているのを見た方もおられるでしょう。

■Takは、本物のギブソン・ファンだ!

ーメンフィス工場が閉鎖されましたが、現在ESシリーズはどこで生産されていますか? 工場閉鎖によりそれらのシリーズの生産は縮小されるのでしょうか?

 メンフィスには約20年間工場がありましたが、その建物が売却されるため退去せざるをえなくなりました。新しくメンフィスに工場を建てるよりも、すべての製品をナッシュビルの工場で生産することを選びました。ナッシュビルはメンフィス工場よりも広くて機能的で、縮小どころか以前より良い仕事ができています。現在ナッシュビルにはメイン工場とカスタムショップがありますが、ハイエンドのESはカスタムショップで生産します。

ー近年ローズウッド、エボニー、マホガニーなど、伝統的なギター作りに必要な木材の入手が難しくなっています。ギブソンではどのような対策をされていますか?

 これは我々楽器業界だけの問題ではありません。楽器業界よりもずっと大規模な家具などのメーカーに比べると、ギターに必要な木材はまだ入手しやすい状況と言えるでしょう。他のメーカーとも話し合い、最良の方法で良い木材が入手できるようにしていますし、他の木材の可能性も探っているので、我々としてはそれほど心配していません。

ー日本には、マニアックでディテールにまでこだわるギブソン・ファンが沢山います。日本の市場の地域性と嗜好をどう分析されていますか?

 日本のファンやディーラーのみなさんは、特にハイクオリティなものを求める傾向があります。クオリティにこだわる日本のギブソン・ファンには感謝をしています。それは、リーバイス時代にも同じことを感じていました。その要求に応えるべく、我々は品質向上に努力を重ねていきます。ナッシュビルを訪問される日本ディーラーの方々は、自分たちで木材を選んだり、品質に関して担当者とじっくりミーティングをされています。3週間前にも日本のディーラーの方々とお会いしましたが、彼らから素晴らしい意見を聞けて、とてもエキサイティングでした。

ー日本以外のアジア市場の分析、戦略は?

 日本は昔からアジア市場をリードしており、我々のファンも多いです。近年は中国をはじめ、マレーシアやフィリピン、インドネシアなどの市場も拡大していますが、私たちのメインフォーカスはあくまで日本です。将来的には中国におけるパートナーを見つけることも視野に入れていますが。

ー中国市場の可能性は大きいですからね。

 確かにそのとおりです。しかし、音楽ファンやプレイヤーの人口に関してはまだ未知の世界と言えるでしょう。その点日本には、ギブソン製品を愛用している素晴らしいミュージシャンたちがたくさんいます。B'z のTak Matsumotoさん、斉藤和義さん、奥田民生さん、そして(Nothing's Carved In Stone、ELLEGARDENの)生形真一さんなどがシグネチャー・モデルを愛用されていますね。今後は彼らのようなアーティストを中国や他のアジア諸国でも探せたらと思っています。

ーこの20年でギブソンから日本人ミュージシャンのシグネチャー・モデルが複数リリースされています。日本人のシグネチャー・モデルの今後に関して、どのようにお考えですか?

 Tak Matsumotoは日本人シグネチャー・モデルのパイオニアで、これまでに10モデル以上リリースしたのではないでしょうか。どのモデルもとても評判がよく、彼は素晴らしいギブソンのアンバサダーになっています。将来的には、もっと多くのアーティストのシグネチャー・モデルを作っていきたいです。

ーこのインタビューが掲載されるのは、Tak Matsumotoの表紙、特集号です。

 本当に? それは素晴らしい!

ーTak Matsumotoというギタリストに、どんなイメージや期待がありますか?

 彼はバンド、ソロ、コラボレーションなど、すべての形態で成功している、とても才能があるギタリストだと思います。グラミーも受賞されていますね。制作した作品も実に素晴らしいですし、頼りになるギブソンのアンバサダーです。今後も彼といろいろなことを一緒にやっていきたいです。彼がステージでレスポール、フライングVといったギブソンの伝統的なギターを演奏しているのを見て「Takは、本物のギブソン・ファンだ!」と思いました。彼の将来、次のプロジェクトに大いに期待しています。

ー音楽雑誌「Player」は日本で最も歴史のある楽器誌で、ギブソン製品への深いリスペクトと造詣があります。例えば、我々のようなメディアとコラボしたモデルを開発するプロジェクトなどは、実現の可能性がありますか?

 もちろんです! 新生ギブソンでは新しい製品を発表し、新しいプロジェクト、新しいパートナーを大いに歓迎します。数か月後、数年後にはきっとそれが実現すると思います。歴史を重んじて、ファンの立場に立って仕事をしているパートナーとぜひ仕事をしたいですね。

ー最後にギブソンの代表者として、貴方の夢を教えて下さい。

 過去125年間、ギブソンはクリエイティヴなサウンドを作り、それを提供してきた会社です。それを継続し、多くのプレイヤーたちに愛されるブランドであり続けること。素晴らしいギターを作り、すべての音楽ファン、すべての世代のプレイヤーの共感を得、有名なギタリスト、新しいバンドとともにステージでギブソンのギターを弾いてもらえることが私の夢です。日本のギブソン・ファン全員に、心から感謝します!

Interview by MUTSUMI MAE Question Seat by MINORU TANAKA & KAZUTAKA KITAMURA

本記事は月刊『Player』2019年8月号に掲載されたものです。また、8月号掲載時にはギブソン社創業年の表記に誤りがありました。本記事にて訂正するとともに読者ならびに関係者に深くお詫びします。

Player

2019年12月号

定価1,620円(本体1,500円)A4判

2019年11月1日(土)発売

お求めは全国の楽器店、書店、またはWebで!

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