インタビュー

"今後の改革の礎を築いたギブソンの今" ギブソンCEO JAMES"JC"CURLEIGHインタビュー

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ジェームズ“JC”カーレイ / James "JC" Curleigh

GIBSON PRESIDENT & CEO

2018年ギブソン社は、破産法を申請し、経営刷新を行った。その際、新たなるCEOとして白羽の矢が当たったのが、JAMES“JC”CURLEIGH(ジェームス“JC”カーレイ)氏だ。『Player』誌では7月号で日本の楽器誌初となる電話インタビューを掲載し、新CEOのプロフィールや経緯を訊いた。

jc-001-100.jpg▲JAMES"JC"CURLEIGH(ジェームス"JC"カーレイ) GIBSON PRESIDENT & CEO

 月刊『Player』/ 『GAKKIソムリエ』では、JAMES"JC"CURLEIGH(ジェームス"JC"カーレイ)氏に電話インタビューを掲載している。(James "JC" Curleigh(GIBSON PRESIDENT & CEO INTERVIEWでご覧ください。)今回は東京でJAMES"JC"CURLEIGH氏(以下、カーレイ氏)を対面取材できた。我々が取材現場に入るまでの、わずかの合間にもその場に居合わせたスタッフとギターセッションを楽しむほどのギター好き。それでいて、就任して数ヶ月の間に製品ラインナップの整備、工場への設備投資、アーチスト・リレーションの強化などの改革を次々と繰り出す有能なリーダーでもある。"今後の改革の礎を築いたギブソンの今"を、2回目の取材だからこそ訊ける本誌の濃いインタビューをお届けしよう。


■常に「次って何だろう?」(What's Next)を考えていますが、それを実行したところ、早くも成果が出始めています。

-あなたがギブソンに携わってもうじき1年です。日本市場でもあの"ギブソンショック"から平穏を取り戻してきています。現在のギブソンの状況について教えて下さい?

 ギブソンは125年の歴史がありますが、いつも新しいサウンドを生み出してきました。私は約1年前にCEOに就任しました。私のミッションは、ギブソンが未来に向けてどのようにやっていくか、だと考えています。それは新しい製品や新しいアーチストと出会ったり・・常に「次って何だろう?」(What's Next)を考えていますが、それを実行したところ、早くも成果が出始めています。

-その変化の分かりやすい部分はどの辺でしょうか?

 CEOに就任して、最初に大事だと思ったのは、"ギブソンが自信を取り戻すこと"でした。ギブソンがこれほど有名なギターブランドになったのは、レスポール、SG、ES、数々のアコースティック・ギターなどを生み出したからです。それらに回帰して、それぞれのギターの質の高さやサウンドなどを研究してリリースしたのが『オリジナル・コレクション』です。

 次に、ギブソンの歴史やオリジナリティを大事にしつつ、もっとモダンなバージョンもほしいよね、と考えたのが『モダン・コレクション』です。これは現代的なギタリスト向けのシリーズです。  以前は方向性が異なるモデルが乱立していましたが、『オリジナル』と『モダン』のふたつなので大変分かりやすくなったと思います。

-モダン・コレクションはこれから日本に本格的に入荷しますが、先行して販売されているアメリカでの評判はいかがでしょうか?  

 市場の反響は大変良いですね。サウンドの良さも、もちろんですが、搭載されているパーツの良さや軽さも評価されています。「これもギブソンのギターだ!」と言っていただけています。

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▲オリジナル・コレクションの60年モデル。赤から木目へ美しいグラテーションが特徴。ソムリエのレビュー「GIBSON Les Paul Standard '50s /'50s P-90 Gold Top / '60s」を参照。

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▲モダン・コレクションの中で、すでに日本でも発売されているGIBSON Les Paul Special Tribute DC。こちらはシンプルながら実用性が高い仕様で作られており、サウンドの良さや軽量さ、そしてコストパフォーマンスの高さが人気となっている。「進化したデザインのレスポール・スペシャル GIBSON Les Paul Special Tribute DC」を参照。

-日本の印象はいかがですか?すでに日本の楽器店をご覧になったようですが?

 昨日と今日で20軒ぐらい回りましたよ!!

-印象に残った楽器店はありますか?

 どのお店も!。中でもビル1棟がギブソンだけという楽器店が都心にあることには驚きました。そういう楽器店のスタッフたちはナッシュビルにも来てくれて、ディナーを一緒に食べたり、カスタムショップを回りましたが彼らの情熱はすごい。日本にはそういう楽器店が多くて感謝しています。

■この1年の間で、ギター工場の設備などに投資した金額は、直前の10年にかけた投資よりも大きいです。

-現在の生産拠点はナッシュビルとモンタナの2ヶ所ですよね?

 現在は2ヶ所に3つの大きな工場があります。まずナッシュビルにあるエレクトリック・ギター工場です。主にギブソンUSAを作る工場ですが、ESも現在、ナッシュビルで作っています。そして、カスタムショップは同じナッシュビルですが、別の場所にあります。そして、もう1ヶ所の拠点はモンタナで、そこはアコースティック・ギター工場です。

-ナッシュビルには現在、何人ぐらいのスタッフがいますか?

 ナッシュビルには300人、カスタムショップには80人、本社(ヘッドクオーター)には100人ぐらい、合計で500人ぐらいです。

-ソリッドとESは異なるラインで作られているのでしょうか?  

 基本的にはレスポール、SG、ESなど、シェイプ別に、同じラインで作っています。メンフィスから移転させたESシリーズのボディの製造ラインはキープ出来ましたので、その後のネックやヘッド、エレクトロニクスなどとの組み立てを、これまでより賢いやり方で工夫していくつもりです。

-モンタナ工場ではこの1年で何か改革したことはありますか?

 まず、ニュー・コレクションとしてG-45などの『Gシリーズ』が誕生しました。が、(日本での)発売はまだです。また『カスタム・アコースティック・シリーズ』が登場しました。今、アコースティック・ギターの注文が増えていて、生産量を増やします。

-ここ10年ほど、ギブソンのアコースティック・ギターのクオリティが高くなったと感じています。トラディショナルな製品ながら、そのクオリティが高められるのはなぜですか?

 魔法です!!(一同笑)。

 ギブソンでは今、質に関わる全てのステップを見直しています。これはモンタナに限らず、ナッシュビルでも行っています。例えば照明の質を高めました。工場の照明が良ければ、今までよりも美しい色をギターに与えられます。そして、工場でのほこりや(木材の)削りカスなどを減らす努力を徹底しました。さらに、これまでは製作過程で職人さんたちがギターに75回から80回ぐらい手で触れていたのを30回になるよう工程を調整しました。この1年の間で、これらに投資した金額は、直前の10年にかけた投資よりも大きいのです。

-ユーザーから見てギターのブランドが投資してほしい部分に投資していますね!一方で、ギブソンの新しいテクノロジーへの取り組みも盛んにしていますが。

 ギブソンは木材の要素が大きいので、時間をかけて木材の研究をしています。時間を過去に戻すことは出来ませんが、現代はテクノロジーの力で本物らしさを蘇らせることができる時代です。サーマリーウッドの加熱処理がそれですね。他にも、ハイドグルーでの接着や配線、木の耐久性、トーンなども研究しています。エイジド加工もトム・マーフィーと研究していますし、サスティナビリティなども。かなり色々と研究しています。

■今はアーチストの方々との繋がりが増えて、私達のキャパを越えるほどです。ですが、これからもオープンなアーチスト・リレーションは継続していきます。

-エリック・クラプトンスラッシュ、シェリル・クロウ、クリス・コーネルなどのアーチスト・モデルがこの数ヶ月の間に次々と発売されました。これはカーレイさんの指示によることでしょうか?

 「はい!」というのは簡単ですが(笑)。私はアーチストの方と今、再び繋がることを非常に重要視しています。(以前の)ギブソンは、その繋がり方を見失っていたように思いました。そこで、私は繋がり方を見直しました。自分のモデルとしてシグネチャーのギターを持っていただくだけでなく、アーチストにワクワクしていただけるように、さらに(ギブソン社に)アイデアを持ち込んでいただけるような関係を求めています。今はアーチストの方々との繋がりが増えて、私達のキャパを越えるほどになっています。ですが、これからもオープンなアーチスト・リレーションは継続します。そして、次世代のギタリストたちとも繋がっていくための"G3プログラム"(Gibson Generation Group)を考えています。  

-G3プログラムとはどのようなものでしょうか?

 ギブソンでは今後の音楽シーンを担う若いギタリストたちのアイデアも積極的に受け入れたいのです。若い世代のギタリスト達が自分のサウンドを形づくること(※)、未来へのイノベーディヴな創作活動を応援しようとするプログラムです。

(※ : 原文では"Shape of Sound"。インタビューの同日夜に開かれたパーティーで、カーレイ氏は「(CEOとなった)1年前の時点ではギブソンは"SOS"を発信し、助けを求めていたが、これからはギブソンは"別のSOS"を発信する。それは"Shape of Sound"だ。」というスピーチを披露している。)

 ところで、先ほど、ひとりだけ言って下さらなかったアーチスト・モデルがありますよね?

-失礼しました。それは誰のモデルでしょうか?

 チャック・ベリーの「Chuck Berry 1955 ES-350T」です。このギターはチャック・ベリーの奥様など、ご家族にご協力いただきました。ギブソン・チームも「チャックのために正しいものをもう一回作ろう」とがんばりました。これにはご家族の方も大変喜んでくれました。やはり、良い人間関係を築くことで、より良いパートナーシップが生まれ、素晴らしい製品が生まれます。

-現在、開発中のモデルや2020年の新製品など予定されていることをお教えください。

 この9ヶ月間ぐらいやってきたことが、そのまま今後の指標になります。何より『オリジナル』と『モダン』というギブソンの新しい核となるコア・コレクションの基本を作りました。そして、今後も、この両方をさらに進めて行くつもりです。

 ここで新しいアイデアの全て言うことはできませんが、ヒントを少しだけお教えしましょう・・・これは私自身の考えでもありますが、アーチスト・モデルは一人のアーチストに一つというのだけでなく、アーチストのコレクション・モデルのような形で複数の製品として出すのも面白いと考えています。

■もし、世界がつらくなってしまった時には、世界中に数多くのギターを置いておけば良いのです。必ず良い世界となりますよ。

-カーレイCEOご自身がお気に入りのギターはありますか?

 全部好きなんです(笑)。でも、エレクトリックよりもアコースティック派です。特に60年代のJ-45、黒ボディに白のピックガードのギターは気に入っています。それと私の母はエピフォンのギターを弾いていました。だから、子供の頃から「エピフォンってホントにすごいなあ」って思っていました。エピフォンにもギブソンと同様にストーリーがあり、オーセンティックで素晴らしい。来年はエピフォンにもフォーカスするつもりです。 

-最後の質問です。貴方が理想とするギターはどのようなものですか?

 (しばらく考えて)・・・"どこに行ってもあるギター"・・・。

-え?それは?

 1本の特定のギターではありません。"どこに行ってもギターがある"、そういうシチュエーションが私の理想です。  というのも、人々が集まり、その場所にギターがあると、その場がすごく良くなります。皆さんも友達と学び、思い出を作ったり、そんな中にギターがあった、そういう経験がありますよね?。だから「人が繋がっていないぞ」と思う場面があれば、そこにギターをポンと置いておいておけば良いのです。皆んなが気軽にギターを弾いて、楽しく繋がる。そこにギターがあれば、文化や宗教、言葉、年齢の違いに関係なく、繋がっているはずです。もし、世界がつらくなってしまった時には、世界中に数多くのギターを置いておけば良いのです。必ず良い世界となりますよ。そう心から信じているんです。

Interview by MASANORI MORIHIRO Question Seat by MINORU TANAKA & KAZUTAKA KITAMURA ,MASANORI MORIHIRO Photo by MASANORI MORIHIRO

※本記事は、2019年10月上旬に東京で対面取材し、月刊『Player』2019年12月号に掲載された内容に加筆修正を行ったものです。

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定価1,620円(本体1,500円)A4判

2020年4月2日(木)発売

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