インタビュー

Fred Greene / MARTIN SC-13E開発者インタビュー

Interview

フレッド・グリーン

C.F.MARTIN Vice President of Product

 マーティンの革新的モデル、SC-13Eを開発したマーティン社のフレッド・グリーン氏(製品担当/副社長)へのインタビューから、SC-13Eに秘められた斬新なデザインの真意について語ってもらった。

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●あなたのこれまでの経歴と現在のマーティン社での役職などを教えてください。

 私は、1988年にギブソン社に入社してギター製作のキャリアを歩み始めました。最初の役職は管理人で、私の仕事は工場の床を掃除することでした。その後、ギター工場の職人に昇進し、ギブソンのエレクトリック・ギター製造の工場長、最終的にはギブソンの最高執行責任者に昇進しました。そして2003年にギブソン社を去り、製造担当副社長としてマーティン社に採用されました。私はこの役職を2017年まで務め、現在は製品担当副社長としてすべての製品開発、設計、および方向性を監督しています。また、マーティン・カスタムショップとマーティン・ストリングスも担当しています。

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●SC-13Eの開発コンセプトは?

 "エレクトリック・アコースティック楽器"に焦点を絞って設計/製作することが基本コンセプトでした。エレクトリック・ギターをプレイする多くのギタリストが、同じような感覚で演奏できるアコースティック・ギター...。エレクトリック・アコースティック・ギターの多くは、トラディショナルなアコースティック・ギターに後からピックアップやプリアンプを加えたもので、最初からプラグインして使用することを目的に設計されておらず、12フレットより高いポジションで演奏がしづらいといった面があります。これらの問題をクリアしたギターを設計することが最大の目標でした。

●ブレイシング・パターンは、SC-13E専用に開発されたものですか?

 そうです。プラグインして鳴らした時にバランスの良いトーンを生み出すために新たに開発しました。高音が明るくしたり低音を重くするのではなく、元々バランスの良いトーンをプラグインして増幅した方がはるかに望ましい成果が得られると思ったからです。

●ブレイシングを部分的にストレートとスキャロップとで使い分けている理由は?

 SC-13Eは伝統的でも対称的でもないボディ・シェイプですので、私たちが求めるバランスの良いトーンを実現するためには、さまざまなブレイスを使用する必要があったからです。

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●ボディ・バック側のブレイシングを一般的なラダーではなく、Xブレイシングを採用にした理由は?

 マーティンがXブレイシングを最初に採用したギター・ブランドであることを改めて世界に示したかったのです。同時に、先代へのリスペクトとこれからも常に改革を続けていく覚悟とを表しました。それに、サウンドホールからXブレイスが見えるのが魅力的です。内側の丸いラベルも古いレコードのラベルのように見えるところがいいですね。これをデザインするのはすごく楽しかったですよ。


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●シムの交換方法を教えてください。

 今後、シムの交換方法は動画で公開します。シムの交換は正規ディーラーの楽器店で行うことをお勧めします。

●シムを取り入れた目的は?

 シムを使用すると、ギターの弦の高さが変更できます。すべてのギタリストが同じ弦高を望んでいるわけではありません。シムを交換することで、ギタリストの好みに完璧な応じた弦高に簡単かつ迅速に調整することができます。
あとは湿度の影響などによるボディとネックのバランスが乱れたときの調整にも役立ちます。

●左右非対称のボディ・シェイプが非常に斬新ですね。

 私たちはよりモダンで次世代に向けたボディ・シェイプを数年間に渡って研究してきました。それは年齢やキャリアを問わず幅広いギタリストにアピールできるシェイプです。左右非対称にすることで、まずハイ・ポジションの弾きづらさを解消しました。また、ボディ上部が小さくてボディ厚が薄いので、肩への負担が少なく長時間に渡って弾きやすいことも特徴です。

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●ボルトオンジョイントにしたことによって、どんな効果が得られますか?

 SC-13Eのネックジョイントは従来のボルトジョイントとは異なり、非常にユニークで革新的なデザインです。ギターの裏側から入れられた2本のボルトは、ネックに直接触れることなく、フローティングさせたダブテイル形状の金属パーツに取り付けて固定する設計になっています。ネックはそのありつぎパーツを介してスライドし、さらにネック・ポケットに取り付けた2つの固定用ピンをネックに空けられた穴にはめることでボディとジョイントするようになっています。この構造によって、ネックはセットネックジョイント同様にボディの鳴りに反応できるようになっているのです。

●ボルトオンジョイントを採用したことで、トーンにどんな影響をもたらしますか?

 ギターの構造を変えることは、すなわちトーンを変化させることです。でも、このギターには多くの新しい要素がありますので、ネックジョイントだけに起因するトーンの変化を説明するのは難しいですね。でもこのギターには、マーティンらしいトーンを生み出していると思いますよ。

●13フレットジョイントにした理由は?

 設計プロセスの一環として、25.4インチスケールのトーンはそのままに、24.9インチスケールの弾きやすさを備えたギターを作ろうと考えていました。一般的な14フレットではなく13フレットでジョイントすることによって、25.4インチスケールのまま、ボディからナットまでの距離を短くすることができました。これにより、トーンを犠牲にすることなく、快適な弾き心地が実現できました。

●サイドとバックをベニア材にしたのは、鳴りを抑えてフィードバックを起こりにくくするためですか?

 いいえ。現在エキゾチック・ウッドは不足しており、現在では驚くほど価格が高騰しています。マーティンでは環境保護の観点から、希少で美しい木材のコストを抑えて使えないかと考えてきました。上質なベニアならば価格も手頃ですし、希少な木材でもより多くのギターで使うことができます。SC-13Eには木目が美しいハワイアン・コアのベニアを使っていますが、この品質の木材を単板で使用するとベニアと比べて4倍もの費用がかかります。

●ネックポケットにある3つのピンはそれぞれどんな役割を持っていますか?

 前方にある2つのピンは、ネックを固定するためのものです。もう一本のピンは、サウンドホール側からレンチでボルトを回してネックを前後に動かすことでネック角度を調整したときに乱れるピッチを調整するためのものです。

※本製品の詳細なレビュー<革新的デザインのマーティン・ギター「MARTIN SC-13E」>こちら

※本インタビューは月刊『Player』2020年6月号からの転載です。

製品情報

MARTIN SC-13E

問い合わせ:株式会社黒澤楽器店
Tel.03-5911-0611
http://www.martinclubjp.com/

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