インタビュー

スティングレイの誕生に関わってきた男/STERLING BALL Interview

Talk about…

スターリン・ボール

ERNIE BALL MUSIC MAN

 アーニーボール・ミュージックマンの会長であり、長年に渡って製品開発の指揮を取ってきたスターリン・ボールへのインタビューをお届けしよう。彼はベーシストとしても活躍しており、1974年のミュージックマンの設立当初から、テスト・プレイヤーとしてレオ・フェンダーと一緒に仕事をしてきた。スティングレイの開発にも深く関わっており、スターリンにとってスティングレイは非常に特別な製品だと言える。レオ・フェンダーとのエピソードや、製品作りの理念、現在の開発体制などについて話を伺った。

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私はミュージックマンの設立当初からレオのサポートをしていたんです

ーあなたとお父さんはミュージシャンで、世界で最初にライト・ゲージ弦を発売しました。アーニーボール弦はロックに最適なトーンを意識して開発したのですか? それともアーニーボール弦が普及したことで、70年代のロック・サウンドが形成されていったのでしょうか?

 私たちはロックンロール・ギター用のストリング・セットの製作とパッケージ化のアイデアを主に進めていましたが、私たちが新しいロック・プレイヤーに提供したのは、彼らが必要とする"フィール"だと考えています。チョーキングがしやすいのが私たちの弦の最大の魅力でしたが、細いゲージだとそれまでと少し異なるトーンが得られたことも副次的な産物でした。それが70年代のロック・サウンドを生み出したかどうかはわかりません。しかし、私たちアーニーボール・ファミリーが、ロック・ミュージックの歴史の中で最もレコーディングで使用された弦を生産したことは非常に誇りに思っています。もちろんプレイヤーはギブソンやフェンダー、アンプならばマーシャル、ヴォックス、フェンダーを使用したのでしょうが、ほとんどのプレイヤーはアーニーボール・ストリングを使用していたはずです。

ーあなたが所有していたプロトタイプを再現したスティングレイ40周年モデルのオールド・スムージーが発表された時、当時あれほど作り込まれたプロトタイプがあったことに大変驚きました。あなたは当時ミュージシャンという立場で、あのベースを受け取ったのですか?

 私はレオ・フェンダーと直接仕事をすることができてとても幸運でした。彼と深く関わった人はすでに亡くなっている方も多く、その中でも私は生きている最後の一人かもしれません。私はレギュラーのスティングレイと比べて、ややメロウなサウンドでもう少しバランスの良いものを求めていました。オールド・スムージーはそんな私のリクエストに応じてレオが製作してくれたものです。結局のところ、ほとんどのプレイヤーはレギュラーのスティングレイを好みましたが、私は今でもオールド・スムージーを所有していて、それがあのリイシュー・モデルの元になったのです。

Old Smoothie - Front.jpgスターリン・ボールが所有するスティングレイのプロトタイプ#26を再現した40周年記念モデルのERNIE BALL MUSIC MAN Old Smoothie

ープロトタイプ#26を演奏したとき、どんな印象を受けましたか? 

 本当に感動しましたし、こんなに素晴らしいベースを作ってもらえてとても光栄でした。実はまだインタビューなどで語っていないことがあって、私はオールド・スムージーの他に、プロトタイプの14番や最初に作られたフレットレス・ベースも持っているんです。でも、それらが今どこにあるのかわからないんですよ(笑)! それらのベースを弾いた印象は、まるで初めてHDテレビを見たときと非常によく似ていました。そのベースの広いコントロール幅や周波数特性が生み出すサウンドは、私がそれまで聞いたことがないものでした。

ーあなたはレオ・フェンダーにプロトタイプ#26についてどんな感想を伝えましたか? 

 とても気に入ったと伝えました。私は#26の前にも#1のベースもプレイしていたんですよ。私はミュージックマンの設立当初からレオのサポートをしていたんです。

ー以前からレオ・フェンダーとは知り合いだったそうですが、当時すでに伝説となっていたレオ・フェンダーとはどんな人物だったのですか?

 レオ・フェンダーはカントリー・ミュージックを愛するラジオ修理工で、発明家であり製作者でした。レオ・フェンダーに関する最も初期の記憶は、おそらく私が1960年、5歳の時でした。私の父のアーニーボールは最初のフェンダー・ディーラーの一人であり、エンドースメント・アーティストでもありました。父はレオのためにベータテスト(製品を市場に出す前の最終チェック)を行なっていました。

ーレオ・フェンダーに関する印象深いエピソードを教えてください。

 まず、彼は非常にユーモアのセンスを持った人物でした。そしてレオは難聴だったので、ストラトキャスターやテレキャスターのように、彼の作る楽器は少しブライトなサウンドになる傾向がありました。レオの研究室に行くと、よく彼は台の上にギターを載せて、ブリッジのネジにドライバーの先端を当てていました。それからドライバーの持ち手のグリップの端に耳の軟骨に当てて弦を弾いて、その振動をチェックしている様子を見たことがあります。アンプに接続していない状態で、ギターの弦がどのように振動するかをまず確認していたのです。それが彼にとって好ましい振動を生み出していたならば、アンプに接続しても素晴らしい音になることを分かっていたのです。あと、レオは頑固な人だったと思います。例えば、私の意見をレオに伝えたとしても、彼は私の考えていることなどとっくにお見通しだったでしょう。でも私は、彼が偉大なるレオ・フェンダーだからといって特別扱いすることはありませんでした。レオはミュージックマン時代のビジネス・パートナーだったトミー・ウォーカーに対して、私が提案したいくつかのアイディアがかなり良いと語っていたそうです。

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すべての楽器には、カスタムショップに並ぶ高い品質を目指しています

ースティングレイには、まるでベース・アンプのトーン・コントロールをベース本体に搭載したような、とても自然な効き方をするアクティヴ・トーン・コントロールは特徴です。スティングレイが発売された当時、このようなコントロールは、他にもあったのでしょうか?

 アレンビックのベースは機能的なコントロールを備えていましたが、それは私たちが求めるものとは異なるスタイルの音楽のためのものでした。

ースティングレイはスラップ奏法を始めとするベースのプレイ・スタイルと共に、70年代以降の新たな音楽を切り開いたベースだと思います。しかし、一時期はブランドとしてやや停滞していた時期もあったように感じられます。1984年にあなたがミュージックマンを買い取ったとき、会社はどのような状態だったのですか?

 私はミュージックマンのブランドと一部の部品を購入しましたが、工場はありませんでした。ギターとベースの新しいモデルを作ることと共に、それらを作る方法を学ばなければなりませんでした。当時、ベースのスラップ・プレイのブームは落ち着いていましたが、ミュージックマンの製品は常に安定した支持を得ていたので、人気が停滞してはいなかったと思います。

ー新しいミュージックマンをスタートするにあたって、アーニーボールにはギターを製作できる職人がいなかったと思うのですが、どのようにして職人が集まったのですか? 70年代初頭にジョージ・フラートンとコラボレーションしたアースウッドとは違いますよね?ミュージックマンの製品は、アーニーボールの傘下になってから急に品質が高くなったと思うのですが、どこから優秀な職人を集めたのですか?

 前の質問でも答えたように、私たちはまずギター/ベースの製作方法を学ぶ必要がありました。当時のスタッフは3人で、一人はミュージックマンのギター/ベースの大半をデザインした私のパートナーであったダッドリー・ギンペルです。そしてもう一人が、元々は私の父親の右腕的存在だったダン・ノートンという人物で、彼は製作チームを構築してエンジニアリングのプラットフォームを作成しました。ダンはミュージシャンであり、小売店でのセールスの経歴もあったので、より良い楽器を作り出すことができました。ですので、美しく組み立てられて見事にセットアップされた楽器を供給すれば、ディーラーが高く評価してくれるということを、私たちは当初から知り抜いていたのです。

ーアーニーボール・ミュージックマンからシルエットや新しいスティングレイが発売されたときは、まるで大手ギター・メーカーのカスタムショップ部門を独立させたような、品質の高い木材や製作精度の高さに驚かさせられました。当時と現在のファクトリーの規模はどのように変化しましたか?

 私はカスタムショップが必要だとは特に考えていませんでした。メーカーがカスタムショップ部門を持つこと自体は問題ないのです。しかし、自分たちが作るすべての楽器には、カスタムショップに並ぶ高い品質を目指しています。そのために先ほどのダッドリーとダンから始まり、必要なチームを一つずつ作っていきました。品質を損なうことなく生産を拡大することはできません。

ー現在のスティングレイは、ネックの強度や、ジョイント、弾きやすさなど、様々な箇所が進化しています。あなた達がミュージックマンを引き継いでからスティングレイに施した主な改良点を教えて下さい。

 まず手をつけたのは、ボディにコンターを加えることでした。その次に、ネックの動きを改善することでした。レオは3点止めのネックプレートを採用しましたが、私たちは6つのボルトによるネックプレートに変更しました。次に、EQに3番目のバンドとしてミッドレンジ・コントロールを加えることで、よりオールラウンドに使えるベースになりました。

StingraySpecial.jpgStingray5Special.jpg弾きやすさ、サウンド、軽量化を追求した最新バージョンのStingRay Special(上)、StingRay5 Special(下)

ースティングレイはアクティヴ・エレクトロニクスを搭載しており、そのトーンは"新しいスタイルのトラディショナルなエレクトリック・ベース"と形容できるキャラクターを備えています。そうしたベース・トーンを最終的に判断するのはあなたですか? または、開発における特別なリーダー的な存在がいるのですか?

 長年、私はすべての楽器に対して最終的な判断をしてきましたが、今では息子のスコット・ボールとアーニーボール・ミュージックマンのチームを含めて、さらに開発チームを拡張しています。また、非常に親しいプロ・ミュージシャン達から意見を聞くことも大好きで参考にしています。

ーミュージックマンのベースは、特にロック・バンドに最適なトーンだと思うのですが、特定の音楽スタイルを意識してデザインしているのですか?

 ミュージックマンのアクティヴ・プリアンプはレオが手がけたと言われていますが、実際はトミー・ウォーカーが設計したものです。(私たちが特定の音楽スタイルを意識したというよりも)ロック・ミュージックの方が私たちのベースを取り入れていったのです。

ー現在、ベースのラインナップにはスティングレイの他に、スターリンとボンゴがありますが、それぞれのベースのキャラクターの違いは?

 スターリンは、セラミックマグネットピックアップと特殊なエレクトロニクスが特徴です。それと一般的な34インチ・スケールながらもネック・プロファイルが小さく、コンパクトで軽いオフセット・シェイプ・ボディを追求しました。ボンゴの開発は、BMWのデザイン・チームと共に始めたプロジェクトで、ダドリーが設計した素晴らしいエレクトロニクスを中心にデザインしていきました。 4バンドのプリアンプと18ボルトのバッテリー電源とネオジム・マグネットのピックアップが特徴です。

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スターリン(上)、ボンゴ5(下)

ージョー・ダート シグネチャー・ベースは、レギュラー・モデルとは異なるキャラクターを持つスティングレイという印象ですが、何か特別な仕様が採用されているのですか?

 ジョー・ダートのベースを生み出したことを私たちは非常に誇りに思っています。このベースは、私のもう一人の息子でアーニーボール ミュージックマン CEOであるブライアン・ボールが率いるプロジェクトがデザインしたものです。まず、ジョーはシグネチャー・ベースの出発点としてスターリンのボディとネックを選んだくれたのですが、このことも大変光栄に思っています。私は開発には参加しませんでしたが、このベースがジョーとブライアン、およびミュージックマンのチームとの特別な関係によって生み出されたことを大変誇りに思っています。

BallFamily.jpg左からスコット・ボール副社長、スターリン・ボール、ブライアン・ボールCEO

ー以前、東京でアルバート・リーのバンドであなたがベースを弾いていたのを観た事があります。現在も音楽活動をしているのですか?

 ええ、ベースとギター、あとはウクレレとマンドリンも演奏しますよ。ちょうど3枚目のアルバムを仕上げているところなので、もうすぐ曲が聴けるはずですよ。このアルバムにはアルバート・リー、スティーヴ・モーズ、スティーヴ・ヴァイ、ジョン・ペトルーシ、スティーヴ・ルカサー、ジェイ・グレイドンが参加してくれました。アルバムには『Mutual Admiration Society』というタイトルを付けました。東京でのライヴを観てくれた人がいてとても嬉しいです! あの時の演奏はとてもワイルドでした。もう一人のギタリストはスティーヴ・モーズだったんですよ! あのライヴを素敵な思い出として、いつまでも心に残していてもらえると嬉しいですね。日本のオーディエンスはとても素晴らしいので、また日本で演奏できることを楽しみにしています。

Interview by JUN SEKINO

※本記事は月刊Player 2020年9月号からの転載です。

製品情報

ERNIE BALL MUSIC MAN StingRay

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定価1,620円(本体1,500円)A4判

2021年11月2日(火)発売

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