製品レビュー

ボディ形状やパーツの細部まで再現した真実のヒストリック、ギブソン トゥルー・ヒストリック

True Historic 1959 Les Paul Reissue Vintage Cherry Sunburst

価格 1,065,000円 (税抜)

■まさに"真実"のヴィンテージを目指した究極のヒストリック・シリーズ。それがTrue Histolic

 ギブソンのヒストリック・シリーズは、特にヴィンテージ・レスポール・ギターの中でも、黄金期と呼ばれる1950年代のモデルを忠実に再現する点において、まるで考古学者のような研究の深さとその完成度の高さを誇っている。その動向はプレイヤー層はもとよりコアなギブソン・フリーク、そしてヴィンテージ・ギター・コレクターを含めた多くのギター・ファンから注目されている。そのヒストリック・シリーズを製作しているのは、特別生産品を担当するギブソン・カスタム。このディビジョンでは、ミュージシャンのオーダー・ギター、リミテッド・モデル、そしてヴィンテージ・リイシュー・モデルなどが特別に用意された素材、手間や時間をかけて製作されている。

 中でもカスタム・ショップのヒストリック・プログラム・マネージャーを務めるエドウィン・ウィルソンが主導するヒストリック・シリーズはカスタム・ショップの中でも特に人気のプロジェクトとして知られている。ヴィンテージ・ギターの頂点として知られる1958-60年にかけて生産されたレス・ポールの再現では、選別された木材を使い、専用のハードウェアや塗料を使って製作されてきた。更に近年では、高い精度の3Dスキャナーを使って実際のヴィンテージ・ギターを測定し、その平均値をNCルーターのプログラミングに反映させる再現する作業が進められてきた。

 毎年のように手が加えられてきたヒストリック・シリーズだが、2015年5月から生産されるモデルに関して、ヴィンテージ・モデルに極限まで近づけるために、選抜されたクラフツマン達が、使用する素材から製作手順までに渡り、量産される一般的なヒストリック・シリーズと更に一線を画した特別な製作ラインで生産されるシリーズが登場した。"トゥルー・ヒストリック"(True Historic)と名づけられたこのシリーズでは、エドウィン・ウィルソン自身が買い付けた上、彼の目利きで選別されたメイプル材が使用されている。各モデルあたり数百本という2015年度の製作台数があらかじめ告知されているという意味でも特別なシリーズなのだ。そして、それは、ボディ/ネックの形状もヴィンテージ・ギターをこれまで以上に正確に再現したものに変更。加工方法でも従来の製作手順を見直し、粗加工と仕上げという2度のCNCルータ工程を行うことで、より正確な形状の再現を実現した。

 トーンの要となるボディ/ネックのジョイントからボディの接着には、手間のかかるハイド・グルー(ニカワ)を使用し、トラスロッドに関しては、形状、サイズ、そして設置位置までを当時に基いてセットしている。数年前から採用されたアニリン・ダイを使ったカラーリングに加えて、当皮膜の厚み、そして仕上げ方といったヴィンテージらしさをつかさどる部分も当時に基づく手順が再現されている。

 ピックアップをはじめとするハードウェア類の多くがトゥルー・ヒストリック専用のものへと改められた。今回のプロジェクトに応えるために、数百万円分のヴィンテージ・パーツを購入し、個体差までを踏まえた形状、そして工業試験場での成分分析結果に基づく専用パーツが作られている。 今回はヴィンテージ・ギターのファンの間でも人気の高い1959年モデル、True Historic 1959 Les Paul Reissueをメインに解説してゆこう。

■True Historic 1959 Les Paul Reissue

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▲True Historic 1959 Les Paul Reissue Vintage Cherry Sunburst 価格=1,065,000円(税別)

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 2015バージョンでは、エドウィン・ウィルソンが自ら買い付け、選別したフレイム・メイプル材が使用され、2度のCNCルータ加工によってエッジ部分の反り返りが鋭い形状が生み出される。

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 ボディ/ネックのジョイント、ボディのメイプル/マホガニー等、主要部分の接着には特殊な技術と手間のかかるハイドグルー(ニカワ)が使われている。ボディの接着までハイドグルーが使用されたことは今回の大きなトピックだ。

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 ヘッドストック・フェイスのホリーウッドは厚みが見直され、外周部分に手研磨を施すことで、僅かにエッジを丸めたヴィンテージ特有の形状が再現されている。

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 やや黄ばませたセルロース素材を使ったインレイはエッジ部分が尖った形状。バインディングの加工も見直されており、手作業で、丸めるように仕上げることで、ヴィンテージ同様の弾き心地が生み出される。

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 グリップは、ボディ・トップ同様に2度のNCルーター加工を行い、ハイ/ローの落差が大きく肉付きの多い形状へと加工されている。9から始まるインク・スタンプ・シリアルが本シリーズの証となる。

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 ネック及びボディ裏側には、ヴィンテージ同様のアニリン・ダイを使ったチェリー・レッド・カラーで仕上げられる。今回からラッカー塗膜の厚みが見直され、僅かに木目が浮き出ている。

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 出荷時にはTRUE HITORIC 2015と記されたメダル・プレートが取りつけられているが、ケースに同梱されている交換用リア・プレートの形状も見直されている。プレートの埋め込み部分からも塗装の薄さがわかるだろう。

gibson_th_1505-51 カスタム・バッカーはこれまで同様、アルニコⅢ・アンマッチド構造のヴィンテージ・スペックのピックアップ。ジャーマン・シルバー製のカバーは上面がやや潰れ気味の形状となっているのが特徴。また、今回はヴィンテージのピックアップ・カバーを工業試験場で検査し、その成分までを分析。素材成分までもが正確に再現されている。

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 ピックアップ・リングと共にピックガードに施された面取り加工のサイズが大きなものへと見直され、やや明るめの色合い、板材から切削加工された跡までが再現されている。

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 ズウィンク製ブリッジ、ブラス製サドル、サム・ナット、スタッド、アルミニウム製テイルピース、スティール・スタッド/アンカー等、ヴィンテージ・パーツ同様の素材成分から作られている。

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 オリジナル同様に、やや明るい色合いの薄い板材から、エッジ部分の尖った形状へと加工されたジャック・プレート。リア・プレートを含めた止めネジの形状も見直されている。

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 コントロール・ノブは、上面が少し痩せ、サイドが直線的な形状へと改められた。裏側から塗布されるゴールドはやや荒いタイプ。取付角度がボディ・トップ面に合わせるように変化している。

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 セレクタ・チップは、オリジナル同様に色ムラのあるアンバー・カラーで仕上げられている。明るい色合いのプレートには、やや粗めのゴールド・プリントが施されている。

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 ギブソン専用となるキーストーン型ツマミを使って作られていたクルーソン・チューナー。 ツマミの装飾リングは1つ、ギヤ・カバーには一列に刻印が入れられている。

■製造途中のパーツなども解説

 今回のトゥルー・ヒストリックのセミナーではトム・ファール氏が製造途中のトゥルー・ヒストリックのボディ、ネック、そしてパーツ類をセミナー会場に持ち込んだ。その際に撮影できた写真でさらに詳しく説明しよう。

■粗加工と仕上げ。2回のCNCルーター加工

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▲粗加工のためにCNCルーターで最初の加工をされた状態のボディ

 裏側からコントロール・キャビティ等が加工され、マホガニーとトップのメイプルが接着されたボディは、CNCルーターを使ってトップと外周が加工され、その後、バインディング用の溝加工が施される。

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▲バインディングを装着した状態のボディ  

 ボディ外周に掘られた溝にバインディングを接着したところ。トップ面はまだ荒く小さなささくれが見える。ネック・ポケットのサイズはまだ小さい。

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▲仕上げとなる2回目のCNCルーターによる加工が済んだボディ

 2度目のCNCルーター加工でトップ面は滑らかに仕上げられる。これは、サンディング作業によるダレを最小限へと押さえるためで、同時にネック・ポケットも正確に仕上げられる。

ヘッド・ストックとネック
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 ヘッドストック・フェイス貼られたホリーウッド・ベニアの厚みが薄く改められた。ロゴは埋め込まれたパール板にマスキング加工が施された状態で、この後全体が黒く塗装される。

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 フィンガーボードは、エッジ部分を手作業で丸めて仕上げられる。トラスロッドは、直径やチューブを廃した埋め込み方法等、ヴィンテージ・ギターと同様の仕様に基づいて製作されている。

■コントロール・ノブ、ピックガード、ピックアップ・リング、ピックアップ・カバー
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 コントロール・ノブは、トップ面が少し凹み、サイドが直線的な形状へと改められた。ノブの裏側から、やや荒く、厚みのあるヴィンテージ同様のゴールド塗料が塗られている。

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 今回、ノブを含めた殆どのプラスティック・パーツ類が見直された。クリーム・カラーの色合い、厚み、そして面取りサイズや表面の印刷といった細部までリアルに再現されている。

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 ピックアップ・リングは、表側のネジ用面取りが大きくなり、裏側の形状までもが再現されている。ヒューズ・プラスチック・インコーポレイテッドのマークとパーツ・ナンバーが記されている。

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 ヴィンテージ・パーツからトップ面の潰れた形状を復元したピックアップ・カバー。素材となるジャーマン・シルバーは、オリジナルを工業試験場へと持ち込んで成分分析された。

 同じレスポールでありながら、今では58年、59年、60年とファンの間では細かく区分されている。今回のトゥルー・ヒストリックでも58年リイシュー、60年リイシューというようにネックシェイプ、ボディトップの形状などのニュアンスの違いを再現したモデルもラインナップされている。

■True Historic 1958 Les Paul Reissue

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▲True Historic 1958 Les Paul Reissue Vintage Lemon Burst 価格=847,000円(税別)

 サンバースト・フィニッシュが採用された1958年後半のギターを再現したこのモデルでは、やや落ち着いたフレイム・メイプル、57と同じくファットなグリップに仕上げられている。

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 フロント・ピックアップからセレクタ付近にかけてやや彫り込むように加工され、エッジ部分が尖った印象の仕上げへと、トップのアーチ形状が変更された。

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 ピックアップは、アルニコ III・マグネットを使いコイル・ターン数を少し押さえることで、豊かな表情が生み出される。プラスティック・パーツ類にはネジよりも大きな皿加工が施されている。

■True Historic 1960 Les Paul Reissue

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▲True Historic 1960 Les Paul Reissue Vintage Dark Burst 価格=1,065,000円(税別)

 サンバースト・レス・ポールの最終年となる1960年モデルでは、スィン・ネックへと移行する過渡期の59年よりも一回りスリムなグリップ形状へと加工されている。2リング・チューナーも同年からの仕様だ。

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 トゥルー・ヒストリック・シリーズでは、特に人気の高い1959年製ボディの形状を共通スタイルとして採用している。各年代の主な違いはネック・グリップに集約される。

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 ボディ・エッジ部分の形状が特徴となるアーチ形状。ネックのセット角は4°に設定されており、各ピックアップはリングから僅かに露出する高さにセットされている。

▼カラー・バリエーション

 今回、取材できたサンバースト系のモデルである58年、59年、60年モデルはそれぞれ異なるカラーが用意された。その色の違いをご覧いただきたい。 gibson_th_color

■(写真左)ヴィンテージ・レモン・バースト / 1958 Les Paul Reissue
■(写真中央)ヴィンテージ・チェリー・サンバースト / 1959 Les Paul Reissue
■(写真右)ヴィンテージ・ダーク・バースト / 1960 Les Paul Reissue

 トゥルー・ヒストリックには、レスポールでも様々なラインナップが予定されている。今回は57年ゴールドトップ、57年カスタムも取材できた。

■True Historic 1957 Les Paul Goldtop Reissue

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▲True Historic 1957 Les Paul Goldtop Reissue Vintage Antique Gold 価格=847,000円(税別)

 1957年後半にハムバッカーが採用された時の様子を再現したこのギターでは、57スタイルの厚みのあるグリップが採用されている。よりリアルになったボディ・トップ形状がよくわかる。
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 ボディ・トップに使われているゴールド塗料にはやや荒いメタリック・パウダーが使用され、黄ばんだトップコートが加わることで、沈んだ色合いが作られている。

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 ゴールド・トップ・モデルのネック/ボディ・バックは、マホガニーの導管をアニリン・ダイによってダークに埋めた明るいブラウン仕上げ。そして、プレート類はブラウン・カラーのものが組み合わされる。

■True Historic 1957 Les Paul Custom Reissue

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▲True Historic 1957 Les Paul Custom Reissue Vintage Ebony 価格= 945,000円(税別)

 ブラック・ビューティの呼び名で知られる1957年型のレスポール・カスタム。オール・マホガニー製のボディは、当時の標準だった3PUではなく、より実用性の高い2PU仕様で仕上げられている。

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 アルニコ III・マグネットを使った新しいカスタム・バッカー。リング形状に加えて、カスタム専用のワイド・ベベルに加工されたピックガードが使用されている。

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 コントロール・ノブやジャック・プレートといったパーツ類もスタンダード・モデル同様に一新された。ネックのセット角は4°。グリップは57年スタイルのファットな形状に仕上げられている。


 トゥルー・ヒストリックの登場によって、ヒストリック・シリーズが再編され、旧来の"R9"などはラインナップから姿を消した。その代わりに登場したのがCSシリーズである。CSシリーズは2014年までのリイシューを踏襲するモデルで、高い品質をキープしつつも少量ながらもロット生産が可能な使用で生産されるヒストリック・モデルだ。

■CS9 50's Style Les Paul Standard

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▲CS9 50's Style Les Paul Standard VOS Bourbon Burst(要確認) 価格=760,000円(税別)

 2014スタイルの流れを汲むモデルとして生産されるCS9は、高いカスタム・ショップ・グレードの基準となるギター。少数ロット生産を実現するためにエクスパンデッド・ネック・テノンが採用されている。

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 CS9シリーズには50年代末の人気の高い59グリップと表面がややくすんだVOS仕様のハードウェア類が採用されている。

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 CS9モデルには、CS9からはじまる専用のシリアル・ナンバーが、ヴィンテージ・ギター同様の油性スタンプを使って入れられている。

※本記事は2015年6月時点の情報です。

【試奏動画】GIBSON CUSTOM True Historic 1959 Reissue

演奏/平野真吾

製品情報

Gibson True Historic 1959 Les Paul Reissue Vintage Cherry Sunburst

価格 1,065,000 円(税抜)

問い合わせ :
GIBSON GUITAR CORPORATION JAPAN カスタマーサービス
http://www.gibsoncustom.com

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