デモンストレーター/渡辺キョータ Twitter @w_keshigomu Facebook https://www.facebook.com/KyotaW 音色ポスト http://www.neiropost.com |
■基本性能が優れ、幅広いサウンドメイクにも対応
真空管にはEGC83を4本、6L6を4本使ったクラスA/Bの120ワット出力。真空管の構成そのものは非常にオーソドックスだ。チャンネルはクリーン/リズム/リードという3チャンネルとなっており、これにプリ・ブーストとパッシブ3バンドEQで基本的なサウンドメイクを行う。その上で、ディープベース、ミッドシフト、トレブルシフトにより、より個性的なサウンドを構築していく。
3チャンネルの歪みの切替レンジは大変幅広い音作りが可能。クリーン・チャンネル時のサウンドで、あまりクセがないアンプであることが分かる。その上で、リズム・チャンネルやリード・チャンネルに切替えると、リズム・チャンネル時では、幅広い歪みを生み出し、中間的なクランチ系のサウンドが様々に表情が変っていく。リード・チャンネルは非常に歪むチャンネル。ヘヴィなソロでのサウンドに最適と言える。
アンプのキャラクターとして、あまりクセがないサウンド。それに幅広い歪みを与え、さらにEQでコントロールする、といった理路整然としたロジックでデザインされたアンプである。サウンドメイクはかなりしやすい。
▲パネル左側には、歪みを生み出すボリューム類とEQなどを配置。機能が非常にわかりやすい配置となっている。
■ダイナミクスとトーン、WATTの3つのノブが生み出すサウンドと使い勝手の良さ
IRT120Hには便利な独特の機能がある。オーバーオール・ダイナミクスとオーバーオール・トーン・コントロールである。
オーバーオール・ダイナミクスはノブを右に回すにつれて音に深みが加わっていく。小さな音量では効果が分かりにくいかもしれないが、大きな音量で鳴らした場合には、音の深みは一層大きく感じられる。
オーバーオール・トーンは、ノブの中央部に0ポジションがあるタイプ。通常はトーンノブを0ポジションにして、パネル左側のサウンドメイクを行う。このトーンを左に回すと高音域が絞られ、右に回すとトレブリーになる。具体的な使い方としてだが、ライブなどのリハーサル(無観客)で作ったアンプ音が、本番で観客が入るとハイ落ちしてリハーサルと音が変わってしまったなどの経験がある人もいるだろう。そんな時に、このトーン・ノブを必要なだけ右に回すことで(パネル左側のコントロールはそのままで)高音域を上げられる。非常に実戦的なコントロールである。
これに加えて、一番右にワッツ・ノブを装備。これは、パワー管に十分なパワーを与え、ホットな音を作り、実際にスピーカーへの出力は抑えるというアッテーネータ機能だ。今回の動画でもこのワッツは活躍した。というのも、動画は一般的なリハーサルスタジオで収録したが、その際のワッツ・ノブは「4」程度の位置だ。部屋が狭いリハーサルスタジオやアンプ用ブースがないレコーディングスタジオ、そして、自宅などでも、パワー管まで使ったホットな音をその時に必要なボリュームで簡単に使用できる。
また、シンプルで使いやすいデジタルリバーブを装備。専用フットスイッチのFS4-IRTも付属している。
IRT120Hは、基本的なサウンドの良さ、サウンドメイクの豊富さ、実戦的な仕様を備え、しかも95,800円(税抜)という価格を実現している。この価格帯であれば、初めてセパレート・タイプのアンプを買うギタリストにも購入しやすく、特にヘヴィメタルなどの多彩で幅広い歪みを使用する音楽には向いたアンプ・ヘッドといえるだろう。
■対応スピーカー・キャビネットでの音の違いを検証
今回は、試奏動画の撮影にあたり、輸入元のサウンドハウスからIRT120Hにベストマッチするスピーカー・キャビネットを同時に3機種用意した。 使用モデルはIRT412A(価格=45,800円/税抜)、IRT212(価格=27,800円/税抜)、IRT112(価格=19,800円/税抜)。それぞれ12インチ・スピーカーが4発/2発/1発という仕様である。異なるキャビネットを同一条件で比較した貴重な動画といえるだろう。
なお、動画ではIRT412を基準にアンプのサウンドメイクをし、録音はズームQ8の内蔵ステレオマイク(XYタイプ)を使用して、スピーカーの中心をやや外したポイントで収録している。 (動画は途中で歪みを切替えているが、それらは付属している専用フットスイッチのFS4-IRTで行っている。ただし、楽曲の都合上、エフェクト・ループにデジタルディレイを接続、動画の全編で常時ONで使用した)
■IRT120H with IRT412A
IRT412(許容入力230w)は、多くの有名プロが愛用する4発のスピーカーを搭載したタイプのキャビネット。クリーンでは低音部分が豊富なため、全ての音域で余裕のあるサウンド、歪ませてもプレイヤーが意図していないような音のつぶれなどは感じられない。動画では、この412を基準にサウンドメイクを行っているため、他の2つより音が良く聴こえるかもしれないが、それを差し引いても、ヘッドが持つサウンドを最も魅力的にアウトプットしているキャビネットである。大型な筐体と32kgの重量でデリバリーにはそれなりの負担がかかる。しかし、余裕と迫力を兼ね備えたダイナミックなサウンドには、何者にも代え難い魅力がある。
また、前面がストレートのIRT412S(価格=45,800円/税別)もラインナップされており、412Aと組み合わせて3段のスタックにも対応する。
■IRT120H with IRT212
IRT212(許容入力160w)はIRT120Hの幅とほぼマッチした横幅。乗用車などがあればライブハウスやスタジオなどに持ち運ぶこともできる大きさと重量(21kg)が特徴だ。サウンドは412ほどリッチではないが、このキャビネットを前提にサウンドメイクをすれば、ライブやレコーディングで、充分迫力のあるサウンドを体感できる。ポータブルさとサウンドのバランスが整った万能型のキャビネットである。
■IRT120H with IRT112
IRT112(許容入力80w)は、写真のようにヘッドよりも幅が狭いコンパクトさがメリットのキャビネット。このキャビネットでは、自宅でサウンドメイクやトレーニングのみを行い、ライブやスタジオにはヘッドだけを持って行くというタイプのギタリストに向いている。今回は3つのキャビネットを同一条件で試奏する前提なので112が最も不利な条件だが、12インチ・スピーカー1発という構成はコンボ・アンプでは一般的な仕様。特にIRT120Hが装備するダイナミックを多めに設定するなど、112を前提としたサウンドメイクをすることで、サウンド、実用性、そして、低価格を兼ね備えたリーズナブルなキャビネットとなるだろう。
※本記事は2015年10月時点の情報です。