▲T.S FACTORY 151A-SA (Prototype #0)
▲T.S FACTORY 151A-SA (Prototype #00)
■独自デザインのセンターブロックと穴加工
151A-SAは、セミアコースティック・ギターの代表モデルに比べて、ボディのアウトラインがわずかに小ぶりになっている。注目すべきは内部構造で、センターブロックのブリッジ下付近にホロー加工とブロック側面に穴加工が施されている。この仕様が一層のアコースティックな鳴りを生み出すとともに軽量化にも一役買っている。またトップとバックはフルアコースティック・ギターに使われるパラレル・ブレイシングが採用されている。
#0のボディはトップ材にハードメイプル / スプルースの5プライ、サイドがマホガニー / スプルースの3プライ、バックは5プライ。センターブロック材にはホロー加工されたマホガニー、ブレイシングもマホガニーが使われている。プロトタイプ#00は、トップとバックがインディアンローズウッド/スプルースの5プライ、サイドがインディアン・ローズウッドの3プライ、センターブロックはホロー加工されたスプルース、ブレイシングもスプルースとなっている。
フィニッシュは、サイドとバックに5回の下地塗装を施し、極薄のウレタンのサテン仕上げ。杢目がかすかに見える。また、トップは音の広がりを出すため、木地着色した後、クリアラッカーを薄く10回吹き、#0はグロス仕上げ、#00はサテン仕上げとなっている。
▲製作中のカット。オリジナリティが溢れるセンターブロック。特に、大型のホロー加工とサイド部分に穴加工が施されている点に注目。
▲#0のfホール部分。トップはハードメイプルとスプルースの5プライ。
▲#0のサイドとバックはマホガニーとスプルースの3プライ。またバックもトップ同様の5プライだ。 トップのアーチはやや起伏が大きく、グラマラスなのも特徴だ。#0のトップは、クリアラッカーを10回吹いたグロス仕上げが美しい。
▲#00のfホール部分。トップとバックがインディアンローズウッド/スプルースの5プライ。サイドは3プライ。
▲バックもややグラマラスな起伏がある。そして、塗装はごく薄のウレタン・サテン仕上げ。
■リペアの経験から生まれた狭めで厚めのネック
ネックはホンジュラス・マホガニーの1ピース、インディアン・ローズウッド指板、22フレット仕様。ポジションマークは#0がディッシュ、#00がドットだ。
特にこだわったポイントはグリップだ。ナット部の幅を狭めの約41mmに設定し、ネックの厚みは1フレット部で約22mm、12フレット部で約24mmとやや厚めに設定している。また、フィンガーボードはコンパウンド・ラジアス加工されており、ローポジションが約280R、ハイポジションが約350Rに設定されている。これはT.Sファクトリーが無数のリペアの経験から生み出した数字だという。
▲ナット幅は狭めの約41mm。ネックの厚みは1フレットで約22mm、12フレットで約24mmという厚めの設定。長年の経験から生み出されたグリップだ。
■#00にはハンドワイアリングのオリジナル・ピックアップを搭載
ピックアップは#0がギブソン57クラシック。#00はT.Sファクトリーでハンドワイアリングしたオリジナルで、マグネットはフロントがアルニコ2、リアにはアルニコ5を使用。
どちらのモデルも一般のセミアコースティック・ギターよりも、ややアコースティック感があり、ロック系からジャズ系まで幅広く対応するオールラウンドなサウンド。際立っているのはネック幅に比べて肉厚なネック・グリップで、特にローポジションのフィット感は日本人を想定しただけあって、手に馴染みやすい。
▲T.S.ファクトリーでは、ギターに合わせ、ピックアップをチョイス、またはハンドワイアリングしている。写真の#0の場合は、ギブソンの57クラシックを採用した。
▲#00は自社でハンドワイアリングしたオリジナル・ピックアップを搭載。マグネットはフロントにアルニコ2、リアにアルニコ5を使用している。
2つのモデルは「一期一会」をテーマとしており、モデル名の"151A"は"一期一会"を品番に置き換えたネーミングだ。今後もモデルに相応しい材の入手などに応じて生産される予定で、その際ボディ材はローズウッド/マホガニー/ブビンガ/コア/メイプルなどから、その都度材を選択する。ブレイシング、センターブロックなどの木材変更、ピックアップやパーツ類も、サウンドや操作性を考慮して、仕様が変更される。他にもソリッド・ギターのオリジナル・モデルも開発中で、このブランドの今後の動向にも注目したい。
※本記事は2015年12月時点の情報です。