製品レビュー

2016年のギブソン・メンフィスのニュー・モデル

ES-275F

 フル・アコースティック/セミアコースティックを生産しているギブソン・メンフィス。その製品開発担当のマイク・ヴォルツ氏が11月に来日した。発売に先立ち彼が手がけているES-275Fをはじめとする、2016年のニュー・プロジェクトについて話を訊いた。

gibson_mvoltz1511_1280-18ギブソン・メンフィス R&D ディレクター:Mike Voltz(マイク・ヴォルツ)

■日本の楽器店の要望取り入れて開発されたES-275

 2016年のギブソン・メンフィスについて教えて下さい。

 ニュー・モデルの「ES-275F」を例に、新しい仕様の特徴をご説明しましょう。このギターは日本の楽器店からの要望がきっかけとなったモデルです。ギブソンらしさを保ちつつ、現代の音楽にマッチするコンパクトなジャズ・ギターです。

gibson_mvoltz1511_1280-9▲ES-275F

 まるで50年代にデザインされたような雰囲気ですね。

 伝統的なギブソン・スタイルです。ネックは1959年のレスポール・モデルをベースとして少し厚みを落としています。多くのミュージシャン達が好むネックは似ているので、2016年の主要モデルに反映しました。

 フレットはどうですか?

 今までと同じように、4名のワーカー達で弾き込まれたギターのような感触に加工しました。実は、60年代スタイルのワイド・フレット・モデルも計画しています。幅が2.54mmで、高さが約0.9mmのフレットです。

 内部構造の特徴は?

 ボディの表/裏は、ES-175と同様のプレス成型です。2本のパラレル・ブレイスにはアディロンダック・スプルースを使っています。ES-175より薄くES-335より厚い2インチ厚のボディです。

 MHSハムバッカーについて教えて下さい。

 マグネットはネック側がアルニコ III、ブリッジ側にはアルニコ IIを使っています。2つのボビンのコイルターン数を変え、パワーは少し抑え気味にしています。ポッティングはしていません。ES用にアレンジされたPAFトーンで、メンフィス製品専用のピックアップです。そして、550kΩのポットを使っています。

gibson_mvoltz1511_1280-8 何故500kΩではなく550kΩに?

 製造物には誤差の許容範囲があります。これでは500KΩでオーダーすると許容誤差の範囲で500KΩに満たないポットが混じってしまうのです。そのため550kΩでオーダーすることで、常にサウンド的に良好な500kΩ以上のポットを手に入れられるのです。

 「ES-275F」と「ES-275」の基本的な違いは?

 ES-275Fはフレイム・トップとES-355タイプの装飾にリッチライト・フィンガーボード。ES-275はES-345の装飾、そしてローズウッド・フィンガーボードです。

gibson_mvoltz1511_1280-12▲ES-275

 ここ数年のESモデルは特にアコースティックに感じられます。また50年代のようにプライウッド・メイプルの間にポプラが挟み込まれるようになったのはいつ頃からなんですか。

 私がギブソンに入った1984年には既にポプラが使われていたと思います。私は元々アコースティック・ビルダーですから、私がメンフィスに来たことが関係しているかもしれませんね。

 ボディ・サイドに使われている材は、トップ材よりも少し薄いようですが?

 その通りです。トップ/バック材は、62/100/62mil(「ミル」は1mil=1/1000インチ表記。つまり1.6mm/2.5mm/1.6mm)で、サイドは曲げやすくするために、僅かに薄い62/50/62mil(1.6mm/1.3mm/1.6mm)のプライウッドを使っています。

■サーマリーエイジド加工された木材をセンターブロックに使用したモデルも登場

 他にも2016年モデルの特徴があれば教えて下さい。

gibson_mvoltz1511_1280-6 一部のモデルに"サーマリー・エンジニアリング"という加工をした木材を使います。これは、ギブソンとミネソタの大学エンジニア達とで共同開発したもので、木材を乾燥させた後に、減圧炉による熱処理を加えます(写真右/やや色が濃いサンプル材を指差して)。これはレッド・スプルースではなく、元の色はホワイトなんですよ。現在はセンターブロックとブレイシングにサーマリー・エンジニアリング加工をしています。仕上がりは細かく調整することもできます。

 具体的な変化を教えて下さい。

gibson_mvoltz1511_1280-100 (サンプル材をタッピングしながら。加工した木材は、甲高く硬質な音がする)ハードになりますね。ヴィンテージ・ギターは何十年もかけて、木材の細胞が固く変化していきます。それと同様のエイジド状態をサーマリー・エンジニアリング加工で作りだそうという目的です。

 スペックシートには"メイプル・ライト・センターブロック"という表記がありますが?

 メンフィス・ファクトリーでは、センター・ブロックを3種類に仕分けしています。ハイエンドとヒストリック・タイプには2.7ポンド(1.22kg)以下のライト・ウェイトを使っています。

 センター・ブロックのサイズは、どれも同じなんですか?

 サイズは2種類です。59年スタイル(58~61年頃)と64年スタイル(62年頃~、ヴァリトーン用)で、ハードメイプルよりも軽いソフトメイプルを使います。ESシリーズは木材の組み合わせや全体のバランスがとても重要なので、そのマッチングにより、狙ったトーンやウエイトに仕上げています。

■よりコンテンポラリーなモデルとして開発されたES-335 Premire Figured

 コンテンポラリー・シリーズのハイエンド・モデルが「ES-335プレミア・フィギュアド」です。これには、クリアで豊かなトーンを生むチタニウム製サドルを使っています。

 どのようなサウンドですか?

 ヴィンテージとはひと味違ったテイストでのES-335のベスト・トーンだと思います。ヴィンテージ・モデルはかなり突き詰めたので、別の方向からも良いES-335を作れないか、と考えたのです。

gibson_mvoltz1511_1280-14▲ES-335 Premiere Figured

■ハイドグルーやアニリンダイを使用した1958 ES-335

 1958 ES-335が発売されましたが、これは1959年モデルとどのように違いますか?

 1958年の初期型をレプリカしたモデルでは、ネックにバインディングがありません。1959年の接着剤はオール・ハイドグルーですが、1958年はトーンに最も影響するブレイシングとネック・フィット部分にハイドグルーを使っています。また、ブレイシングにはアディロンダック・スプルース材を使います。私はES-335トーンの重要なポイントはアディロンダック・スプルースのブレイシングだと考えています。

 ネックはファットな1958年スタイルでしょうか?

 いえ、弾きやすさを考慮した新しいグリップです。1959年を少しアレンジしたもので、ハイポジションは少し太めかもしれません。塗装にはアニリンダイを調合したブラウン・カラーを使っています。

gibson_mvoltz1511_1280-15▲1958 ES-335

■米国でES-335より好セールスを記録したES Les Paul

gibson_mvoltz1511_1280-101▲ES-Les Paul Standard  11月19日に行われた発表会のデモンストレーションから。演奏はkubota氏(JiLL-Decoy association)

 ESレスポールのボディ・トップは335と同じプライウッド材ですか?

gibson_mvoltz1511_1280-3 そうです。これが中の様子です。テイルピースとブリッジの部分のみにブロックがあり、ピックアップ部分には何もありません。センターブロックの木材は、レスポール・テイストを残すため、マホガニーを使っています。

 ここをメイプルにすると、ESっぽくなるわけですね。

 その通りです。このモデルは、アディロンダック・スプルースのブレイシングとマホガニー・ブロックにサーマリー・エンジニアリング加工を施しています。そして、「ES レスポール・ホロウ」は、センター・ブロックが無く、ES-330のようにトップ裏にはスプルースのブレイシングのみが貼ってあります。「ES レスポール・スタンダード」もホロウ構造で、やはりセンターブロックは無く、更にFホールもありません。これまではES-335がメンフィスのトップセラー・モデルでしたが、昨年からは、トータルではES レスポールが既にES-335を上回る人気モデルになっています。

■いよいよメンフィスでもスタートするハンドセレクト・プロジェクト

 新しく始まったハンドセレクト・プロジェクトについて教えて下さい。

 ディーラーの皆様をファクトリーに招いて、プレイン、フィギュアド、ブリスターといった様々な材の中から、気に入ったものを選んでもらおうというプロジェクトです。

 他にオーダーできる部分は?

 ネックを含めた59年、63年、64年などのベースとなるモデルを選んでもらい、ご希望のカラーに仕上げます。これから色々と試していこうと思っています。

 それは楽しみですね。

■新企画!ライフ・タイム・エクスペリエンス

gibson_mvoltz1511_1280-11 もう1つ、来年から「ライフ・タイム・エクスペリエンス」がスタートします。これは1年に6本のギターを作るプロジェクトです。

 世界中で6本のみですか?

 そうです。最高の材料を使った究極のカスタムオーダー・プログラムです。価格は3~4万ドル位ですが、これには2度の旅行代金も含まれています。その1度目の体験はオーダー時で、空港までの旅費はお客様の負担になりますが、空港からのリムジン、食事、ホテルの宿泊、メンフィス観光までが価格に含まれていて、私がエスコートします。2回めの体験はギターが出来上がった時で、その時の費用もメンフィスで負担いたします。そして、プレスリーも使ったサン・スタジオにお連れして、レコーディング体験もしてもらおうと思っています。

インタビュー / Jun Sekino

※本記事は月刊『Player』「ビハインド・ザ・シーン」で行われたインタビューにテキスト、写真を追加した記事です。

製品情報

GIBSON
ES-275 Figured Montreux Burst

価格 553,000 円(税抜)

問い合わせ:GIBSON GUITAR CORPORATION JAPAN カスタマーサービス http://www.gibson.com/jp-jp

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定価890円(本体824円)A4判

2019年4月2日(火)発売

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