製品レビュー

音楽的なバランスを追求した5弦ベース MIKE LULL M5V

MIKE LULL M5V

価格 オープンプライス

 アメリカ・ワシントン州に工房を構えるマイク・ルル・カスタム・ギターズは、1976年にマイク・ルルが設立したリペア/カスタムメイド・ブランド。当初はリペアの技術の高さが定評となり、そこから得たノウハウを元に徐々にオリジナル楽器の製作も開始していった。マイク・ルル本人がベーシストということもあってか、特にそのオリジナルベースは音と弾きやすさにこだわるプロ・ベーシスト達から高い評価を得ている。今回はマイク・ルルの代表モデルである5弦ベースのM5Vを紹介しよう。

<POINT>
◇1976年に設立されたリペア/オリジナル楽器ブランド
◇設立者のマイク・ルル自身がベーシスト
◇ヴィンテージ・ベースの弱点を克服した仕様
◇ネックの強度とデッドポイントの解消を目指したグラファイト補強
◇35インチスケール/21フレットが標準仕様
◇5弦ベースながら軽量化とバランスの良さを実現
◇バルトリーニ/セイモア・ダンカンを標準としたピックアップ・システム
◇プリアンプとピックアップはアギュラー、ノードストランドも特注可能

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■40年もの歴史を持つリペアとオリジナル楽器のブランド

 アメリカ西海岸の最北部に位置するワシントン州の州都シアトルにほど近い、ベルヴューに本拠を置くマイク・ルル・カスタム・ギターズは、16歳で地元のギター・ショップのリペアマンとして仕事を始めたマイク・ルルが、その丁寧な仕事ぶりによって地元のミュージシャンたちの間で高まった評判を追い風に、弱冠21歳で1976年に設立した、リペアとオリジナル楽器のブランドだ。オリジナル楽器は主にフェンダー系の流れを汲むソリッド・ボディのエレクトリック・ギターとベースだが、近年ではギブソンのファイヤーバードやサンダーバードを基にしたボルト・オンの楽器も製作している。リペアに関しては、アコースティック・ギターも手がけているようだ。

CIMG9959.jpg▲設立者のマイク・ルル氏。

lull1.jpgCIMG3014.jpg▲工房の様子

 マイク・ルルのベースは、フェンダーのジャズ・ベースとプレシジョン・ベース、ギブソンのサンダーバード(リバースおよびノン・リバース)をそれぞれ基にした4弦と5弦のモデルが基本で、サンダーバード・スタイルのベースと一緒に開発されたオリジナルのハムバッキング・ピックアップを、フェンダー・スタイルのボディに搭載したモデルもある。また、ジャズ・ベース・スタイルのボディを基にした24フレット仕様のモデルも用意されている。

CIMG8196.jpg▲ショールームの様子

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▲MIKE LULL M5V -Natural-
価格=オープンプライス(販売価格464,400円税込)
Scale:35inch Scale/Body:Ash/Preamp:Bartolini NTMB/Pickup:Seymour Duncan

■様々なメリットを生むグラファイト補強されたネックと21フレット仕様

 フェンダー・スタイルのボルト・オン構造を持つカスタム・ベースを作っている工房は数多いが、マイク・ルルのベースの特徴としてはまず、ネックがグラファイトで補強されているという点が挙げられる。これによって1弦のデッドスポットの軽減や、とくに5弦の楽器で問題となるねじれの防止、季候の変化に対する安定性といった効果が期待できる。また、24フレットではない通常のモデルでは、フレット数が21となっている。ビンテージ楽器のフレット数はフェンダーもギブソンも20だが、実際にいろいろな音楽を演奏していると、G弦でもう半音高いEが欲しいと思うことがある。その意味で、標準仕様が21フレットというのは有難い。指板材はメイプルまたはインディアン・ローズウッドで、マダガスカル・ローズウッドのオプションもある。スケールは4弦モデルが34インチで、5弦モデルは34と35インチが選択できる。なお、工房にはプレック(PLEK)が備えられ、フレット面は出荷時に理想的な状態に調節されている。

CIMG3032.jpg ▲組み上げ前のネック。最終フレット付近が鍔(つば)出し加工されている。

CIMG8170.jpgm_lulu-108_fret-PLEK.jpg ▲フレットはPLEKで理想的な高さに調節され、端末(エッジ)も丁寧に処理されている。

■軽量化を追求したボディ

 ボディ材は、フェンダー・スタイルのモデルはヴィンテージ・フェンダーで使われたアッシュとアルダー、ギブソンに使われたマホガニーの3種類が選択できる。ギブソン・スタイルのモデルはマホガニーのみとなっている。また、フェンダー・スタイルのボディはチェンバードが基本のようである。近年では楽器に使えるクオリティでしかも軽量な材を確保するのが難しくなっている。とはいえ、リハーサルやステージで長時間演奏することを考えると、音が良ければ重くても構わないと言われても、納得しがたい部分もある。この矛盾の解決策として、良材にチェンバー加工を施す仕様になっていると思われるが、これは21フレットと同様、ベーシストとしての経験も持つマイク・ルルならではの判断と言えるだろう。

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 ボディを軽量化すると、相対的にヘッドが重くなり、楽器を構えた時にネックが下がる、ネック・ダイブと呼ばれる現象が起こりやすくなるが、マイク・ルルのベースではペグにヒップショットのウルトラライトを採用することで、この問題を解消している。ブリッジもヒップショットのAスタイルで、5弦モデルはローB弦のテンション不足という問題に対応するために、裏通しも可能になっている。ボディのカラーに関しては、かなり幅広い注文に応じている。なお、電装関係はピックアップがマイク・ルルのオリジナル・デザインで、基本仕様は4弦用がリンディ・フレーリン、5弦用がセイモア・ダンカンである。プリアンプはバルトリーニで、基本仕様は4弦がNTBTで5弦がNTMBだが、ピックアップはアギュラーとバルトリーニとノードストランド、プリアンプもアギュラーとノードストランドのものが特注可能である。

m_lulu-115_machinehead.jpg ▲マイク・ルルの直筆サインはクオリティの証。ペグはヒップショットのウルトラライト。

m_lulu-106_bridge-pickup.jpg ▲ブリッジはヒップショットのAスタイル。試奏機ではローB弦のみ裏通しになっている。

m_lulu-121_string-through.jpg ▲5弦モデルのローB弦は、裏通しも可能になっている。

■高いプレイヤビリティを実現

 今回試奏したのはどれもアッシュ・ボディの5弦モデルM5Vで、仕様はナチュラル仕上げのものが35インチ・スケールのバーズアイ・メイプル指板、セイモア・ダンカン・ピックアップ、バルトリーニNTMBプリアンプ、ハニー・バースト仕上げのものが35インチ、ローズウッド指板、セイモア・ダンカン・ピックアップ、アギュラーOPB-3プリアンプ、2トーン・サンバースト仕上げのものは34インチ、ローズウッド指板、リンディ・フレーリン・ピックアップにバルトリーニNTMBとなっている。ネックはナット幅が約47.6mmと5弦としてはスリムに仕上げられ、グリップの感覚がロー・ポジションからハイ・ポジションまで均一なので、どの音域でもストレスなく押弦できる。チェンバード・ボディとウルトラライト・ペグの効果による軽さとバランスの良さ、フレットの端末(エッジ)処理、ギグバッグから取り出した状態での弦高やネックの適切な調整具合なども相まって、演奏性は良好だ。

m_lulu-118_neck-grip.jpg ▲5弦としては薄めでスリムに仕上げられたネック。サテン仕上げでポジション移動も滑らか。

m_lulu-120_joint.jpg ▲ボルト・オン・ネックは、プレートを使わないダイレクト・ジョイント方式。ボディ裏のジョイント部分は、ネックに向かってなだらかなテーパー加工が施されている。

■"音楽的"なバランスが良い5弦ベース

 基本的なサウンドはやはりどれもジャズ・ベースを彷彿とさせるが、5弦ベースの場合はボディ、ネック、ブリッジのサイズやペグの数の関係で、通常のジャズ・ベースに比べて振動系の重量が増える分、より落ち着いた印象がある。サステインは35インチ・スケールのほうがやや豊かだが、あくまでも強いて言えばという程度の違いで、ローB弦の鳴りや音程感も含めて、34インチ・スケールのサウンドが特に劣っている感じはしない。ジャズ・ベース・スタイルの楽器の常として、ピックアップ・バランサーはセンターを12時とすれば11時半から1時半にかけての範囲が最もサウンドの変化が大きい。スラッピングならセンターが王道だが、ツー・フィンガ―だとややフロント寄りの1時あたりの設定すると、より重量感のあるサウンドになり、音程感も向上する。動画の試奏もこの設定で、プリアンプのベース・コントロールも、わずかにブーストする1時あたりの設定になっている。アンサンブルの中でグルーブを出すことを考えると、ベースのサステインは長ければ良いというものではなく、むしろアタックの後で音が適度に減衰してくれるほうが好ましい。その意味でマイク・ルルのM5Vは、アタックとサステインとサウンドの"音楽的"なバランスが上手く取れた楽器だと言えるだろう。

m_lulu-107_control.jpg ▲コントロールはフロント側から、マスター・ボリューム(写真はアクティブの状態。プルでパッシブ)、ピックアップ・バランサー、ミドル・コントロール(プッシュ/プルで周波数ポイントを選択可能)、スタック・ポットは下がベースで上がトレブル。

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▲MIKE LULL M5V -2 Tone Sunburst-
価格=オープンプライス(販売価格486,000円税込)
Scale:34inch Scale/Body:Ash/Preamp:Bartolini NTMB/Pickup:Lindy Fralin

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▲MIKE LULL M5V -Honey Burst-
価格=オープンプライス(販売価格486,000円税込)
Scale:35inch Scale/Body:Ash/Preamp:Aguilar OBP-3/Pickup:Seymour Duncan

【GAKKIソムリエ試奏動画】MIKE LULL M5V

・スペックの異なる3モデルのベストセッティングでの演奏。
・フロント/リア/ミックスの各ピックアップ・ポジションのサウンドを、2フィンガー/スラップ/ピックの各奏法で演奏。
・トレブル/ミドル×2/ベースの各トーンコントロールを、1弦と4弦を鳴らしてその効き方を再現。

製品情報

MIKE LULL

ベースプラネット
Tel.03-5577-9711
http://www.guitarplanet.co.jp

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