製品レビュー

知られざる電源ケーブルの世界 / SUNSHINE SAC REFERENCE1.8

SUNSHINE SAC REFERENCE1.8

価格 16,800円 (税抜)

 いつものようにギターアンプの電源ケーブルをコンセントに挿し、いつものようにギターを弾く。お気に入りのギターとアンプから流れ出るサウンドは今日も心地よく、至福のひと時が始まる…。これはギタリストにとって日常のことだが、そのサウンドをとても手軽にグレードアップできるとしたら…。
 今回の特集は、アンプに使用する「電源ケーブル」のお話。「ケーブルを交換するだけで驚くほどギターサウンドがグレードアップする」という、嘘みたいな本当の話。その「理論と試奏レポート」をお届けしよう。
 今回試奏した製品は、サンシャインという国産ブランドから発売されている「SAC REFEREN
CE1.8」というオーディオ用に開発された電源ケーブル(2019年度 全国オーディオ販売店売り上げランキング 電源ケーブル部門“1位”)。さて、その実力やいかに…。

SUNSHINE_893-569.jpg■電源ケーブルでギターの音が変わる?
 普段あなたはギターアンプの電源ケーブルを、何気なくコンセントに挿してはいないだろうか。しかし実は、電源ケーブルは楽器やオーディオなどの機器が正常に動作するための電気を供給する重要な部品なのだ。だからこそ、ギターとアンプの接続に使うシールドケーブルと同じく、いやそれ以上に注意を払って高品質な電源ケーブルを使うことが、良い音を出すための重要な条件のひとつということを覚えておこう。実際、元々の製品に付いているケーブルは、超高級品を除いてコスト面から余り高品質なものではないことが多い。もちろん、そのケーブル込みで設計や音作りをしている製品もあるので一概にケーブルを換えれば(リプレイスすれば)良いというわけではないが、多くの場合より良いケーブルに換えることで音質も改善される可能性が高い。その効果は信じられないほど大きい場合もあり、それだけに高額なケーブルも売られているのである。

■3Pインレット式とは?
 そもそも電源ケーブルは、日本の家庭用電源である単相交流100Vに接続するための電線なので、安全性や耐久性に優れたものでなくてはならない。基本的な構造は、単線もしくは何本もの細線を束ねたプラス/マイナス用の銅線をそれぞれビニールもしくはポリエチレンなどの絶縁体で覆い、ビニールなどのシース(被膜)でまとめて1本の太いケーブルにしている。さらにノイズを防ぐ意味で、シースの内側にシールドを施す場合もある。この電線の先に2P(2本ブレード)のプラグを付けたものが、所謂我々がいつも使っている電源ケーブルということになる。
 ここで注意したいのは、コンセントとプラグの関係だ。日本の一般的なコンセントは右側プラス/左側マイナス(やや長い)の2口すなわち2Pで、アースは左側に落とされている。そのためケーブル側のプラグも2本ブレードになっているわけだ。しかし、水回りで使う白物家電すなわち冷蔵庫や洗濯機、電子レンジ、トイレなどのコンセントにはアース端子が義務付けられているため、それらの電源ケーブルにもアース線が付けられている。また海外製の機材などはアースが独立した3Pプラグ(2本ブレード+アースピン)が使用されており、日本でも3Pコンセントがあればそのまま挿し込めるが、2Pコンセントの場合には変換アダプターを併用しなければならない。もしくは3Pプラグのアースピンを引き抜くか折るかして、強制的に2Pとして挿し込むこともできる。レンタルスタジオなどに置いてある海外製アンプでも、よく見掛ける手法だ。なお、ギターやベースのアンプに使う電源ケーブルは(基本的に家電も同様だが)、機器本体側から直出しと、3Pのインレット(差し込み口)式がある。前者は比較的安価なアンプやヴィンテージアンプなど、後者は高級コンボアンプやヘッドなどで採用されている。当然ケーブルを換えるには直出しよりも、差し替え自由なインレット式の方がベターなわけだが、そのためには前者を楽器店で改造してもらう必要がある。

MG_3531.jpg■SUNSHINE SAC REFERENCE1.8とは?
 今回試奏を行ったサンシャイン製の電源ケーブル「SAC REFE
RENCE1.8」も、元々国産や海外製の高級オーディオに対応した3Pインレット式で、言うまでもなく同方式の楽器アンプにも問題なく挿し込める。「価格に関係なくそのカテゴリーの最高レベルまで達しなければ製品化しない」といったサンシャイン社のポリシーにより、着想から10年余りを費やして完成した "理想の電源ケーブル" である。その結果、他社の1本数十万円の高級ケーブルと比べてもほとんどの面で優る自信があるという。長さ1.8m、色はブラックのごく普通のシースのように見える。3Pプラグも一般的なプラスチックのモールド。同社が他社の高級ケーブルに勝てないのは見た目ぐらい、という所以だ。モールドの3Pプラグを採用している理由は、高級ケーブルは所謂ホスピタルグレードやMILスペックの高価なネジ留めプラグを採用している例が多いが、モールドなら一体型で安価な上、実はHSE処理が良く掛かってプラグの持つクセを消し去ってくれるとのこと。高級なプラグは接点ロスは少なくなるが、反面強烈な色付けがなされており、逆に安物のケーブルの方が品質が良いという逆転現象が起こっているというのが、サンシャイン社の主張だ。なお、2Pコンセントに挿す場合は、前述のようにアースピンをペンチで簡単に折って2Pプラグとして使えるようになっている。アダプターが要らないという点では、余計な接点が増えず音質に有利なことと、アダプターを持ち歩かないで済む。
 では「SAC REFERENCE1.8」の優位性とは何だろうか。それはケーブル本体に使われている素材にある。まず、DIP FORMING(ディップフォーミング)無酸素銅線という非常に純度の高い高価な銅線を使っていること。音響関係のケーブルには無酸素銅線が最適というのは常識だが、その中でも高い品質を誇る導体素材だ。詳しい製造方法は割愛するが、要するに結晶が極めて緊密に構成され、電気が通りやすく、曲げやねじりにも強い銅。米国のGE社が開発した方式で、高度な製造技術と施設が必要なため、現在製造しているのは日本の1社のみという貴重な銅線でもある。特に音の良い素材として高評価を得ているPCOCCやPC-Triple Cといった単結晶状高純度無酸素銅線に優るとも劣らない、素晴らしい素材といえる。
 次に、このDIP FORMING無酸素銅線にさらに最新のHSE処理を施していることが注目される。HSEとはハイパー・サチュレーテッド・エナジャイザーの略で、これも詳細は割愛するが、ケーブルに強力かつ様々な電流を流して短時間でバーンインつまりエージングを完成させる技術だ。ややニュアンスは異なるが、アコースティックギターの経年変化を再現するエージングを人工的に行うVTS(ヴィンテージ・トーン・システム)加工のようなものと思えばいいだろう。実は、このDIP FORMINGやHSEを採用している高級ケーブルは他にもあるが、サンシャインではその最高品質の導体をできるだけ細くし、表面積を増やしてHSEを掛けることで、それらを凌駕する奇跡とも言うべき結果を得ることに成功したという。
 こうした処理によって、本来優秀なDIP FORMING無酸素銅線の特性が、さらに発揮されるようになり、そのため金や銀などの高価な金属を使って整音する必要がなく、コストパフォーマンスも高めることができた。しかも素材そのものの特性が優れているのでシールドをしなくても良くなり、「SAC REFERENCE1.8」はノンシールド仕様の電源ケーブルとしている。高性能ケーブルにしては柔軟性が高く取り回しがしやすいのは、素材とシースの特性、硬い金属材を使わないノンシールドによるものと推測できるが、特に移動したり持ち運ぶことの多いコンボアンプなどでは大きなメリットとなるはずだ。

■音の色ではなく音の質を改善
 この電源ケーブルを使った実際の詳しい試奏レポートに関しては対談を参照して頂くとして、結論から言うとまさに驚くべき効果が得られたということをお伝えしておこう。比較的安価なアンプでも高価なアンプでも、それなりの音質改善や向上が見られたのだ。電源ケーブルは大元の電気の供給に関する部分なので、アンプの個性やギターの音色を大きく変えずに全体のクォリティを上げることができる。電気の流れが良くなることで、例えばアンプから出るギター本来のトーンを残しながら、よりレスポンスを良くしたり高音域のノイズ感が減少してより滑らかになる。リヴァーブの残響成分が綺麗に響き、なおかつコアの音が埋没することなくエコーが自然なバランスで掛かるようになる。しかも必要以上に帯域を拡げたり余計な音色を付け加えることなく、楽器の持つ帯域に対して有効というのが、また興味深い。ある意味、状態の良い真空管のヴィンテージアンプを鳴らしているような感覚でもある。それでも元の付属ケーブルによる "粗い" 音の方を好む人もいるはずで、それは音作りの面でいえば決して悪いことではなく、継続してお使いになれば良いだろう。あくまでサンシャインの電源ケーブルは、音の色ではなく音の質を改善してくれるものだからだ。

■一番大本の電源を見直す
 電源ケーブルの差し換えによる音の変化は、オーディオ機材に関しては日常的に経験している現象ではあったが、楽器アンプでも同じ様な効果が得られるとは、正直申し上げて予想していたものの驚きだった。やはり、電気がアンプへ充分に淀みなく供給され、アンプが正しく動作し、そしてアンプが本来持つ性能を発揮させることができるというセオリーが、今回の電源ケーブルの試奏によって確認できた意義は大きい。最初に述べたように、電源ケーブルひいては電源の大切さを改めて認識した次第である。個人的な話で恐縮だが、愛用のアンプは電源ケーブル直出しなのでインレット式に改造し、この「SAC REFERENCE1.8」で鳴らしてみたい衝動に駆られている。音質を改善するためにアンプそのものをグレードアップしたり、エフェクターを買い揃えたりするとなれば、最低でも数万円は掛かるだろう。しかも、それらを換えると元々の音色が大きく変わってしまう可能性もある。シールドケーブルを換えるという手もあるが、高級ケーブルであっても意外にクセの強いものが多く、音の質を良くするという意味ではなかなか本題に辿り着かない。一番大本の電源を見直し、16,800円の電源ケーブルで根本的な音質を改善できるのなら、実に合理的でお買い得と言えるのではないだろうか。

Text by YASUKAZU OTSUKA

※本記事は月刊Player 2020年10月号からの転載です。

村田善行氏(フーチーズ 渋谷店 店長)& 大塚康一氏(音楽/オーディオ評論家)による試奏対談はこちら→『SUNSHINE SAC REFERENCE1.8 試奏レポート対談』

製品情報

SUNSHINE SAC REFERENCE1.8

価格 16,800 円(税抜)

サンシャイン ☎03-6273-4623 http://sunsha-jp.com

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Player

2020年11月号

定価1,620円(本体1,500円)A4判

2020年10月2日(金)発売

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