1. HOME
  2. Vol.3 東京/渋谷「ブルージーコーポレーション」三上 久光 氏 (1979y)【マイギターストーリー | Jギター】

Vol.3 東京/渋谷「ブルージーコーポレーション」店長 三上 久光 氏 (1979y)  Orville by Gibson ES-175 1992年製

Vol.3 東京/渋谷「ブルージーコーポレーション」
店長 三上 久光 氏 (1979y)
Orville by Gibson ES-175 1992年製

Orville by Gibson ES-175 1992年製

――植木等氏にシビれた高校2年生

「ハナ肇とクレージーキャッツ」と言えば日本のコメディーバンドの草分けとして一定の年齢以上の方にはよく知られるところ。ジャズバンドとしても卓越した演奏技術を持ち、1960年代にはシャボン玉ホリデーなど、テレビ番組や映画に引っ張りだこであったが、このグループのメンバーである「植木等」のギターにシビれてしまったのがブルージーコーポレーションの店長、三上氏。

Orville by Gibson ES-175 1992年製

『実は中学生の頃に親戚にもらったクレイジーキャッツ の「スーダラ伝説」が私が初めて手にしたCDで(笑)。以来大ファンになり、高校2年生の時にはクレイジー観たさにレーザーディスクプレーヤーまで買い込んだほどなんです。
「クレージーキャッツ」の10周年記念コンサートの映像の中で、ザ・ピーナッツの「ウナ・セラ・ディ東京」をGibson ES-175D で気持ちよさそうに弾く植木さんの姿を見ていたら、それまでギターにはほとんど興味のなかった私がとにかくこの(形の)ギターが欲しくなりまして。 早速雑誌などでいろいろと調べていたところ、新宿のとある中古楽器屋さんの広告で中古で6万円の Orville by GibsonのES-175を見つけて、生まれて初めて父親にねだって買ってもらったんです。それまで親にねだった事なんかなかったので、もしかしたら当時中古だと20万ほどであったGibsonでも買ってもらえたかもしれないんですが、多分自分でも少し遠慮したんでしょうね(笑)。 このOrville製のES-175が私にとっての初めてのギターでした。』

Orville by Gibson ES-175 1992年製

――DとGだけで作ったオリジナル曲

『さて、ギターは手に入ったものの、弾き方がさっぱりわからない。そこで早速教則本を買い込みまして。実は最近になって気づいたんですが、この本の著者はあの打田十起夫さんでした。これでコードというものを知って。DとGコードの2つだけ覚えたところで早速曲作りです(笑)。 実は昔から歌を作るのが好きで歌詞を書くのが日課のようになっていたんです。 ギターがあれば曲が乗せられますので、それからというもの来る日も来る日も曲作りに明け暮れました。

このギターはアーチドトップですが、よくわからずにフォーク弦を張って、当時好きだった吉田拓郎さんみたいにハーモニカをセットして歌って。今思えば何をやりたいのか、ちょっと不思議な絵面ですよね(笑)。 でもそんな毎日が本当に楽しくて。。

作った曲はもっぱらWデッキラジカセにマイクをつけて宅録で楽しんでいました。全パート自分で重ねるのでドラムやベースも買い込んで。予備校時代も含め、大学に入るまでにアルバム何枚も作れるほどの曲を作っていたんです。大学では文芸部に入ったんですが、やがて皆が作った作品に私の曲を乗せるようになったため、部室にギターやらドラムセットやらを持ち込んで、しまいには文芸部のメンバーを巻き込んでバンド状態に (笑)。』

――ジョンレノンに憧れて

『この175にはそんな思い出が沢山詰まっているのですが、やがてビートルズのジョンレノンに憧れまして。サンバーストの175を彼のカジノみたいにNT仕様にしたくなり、自分で剥がし始めたんです。ところがいざ剥がそうとするとそう簡単にはいかなくて。。 この頃はスクレイパーなども知りませんからひたすらヤスリがけですよ。とにかく大変な思いをしましたがやり始めたら最後までやるしかなくて。それでも出来栄えには我ながら満足でした。 今思えばこのギター、裏面にステッカーを沢山貼ったりして、初心者がやりがちな事を全てやってしまいましたね(笑)。

Orville by Gibson ES-175 1992年製
Orville by Gibson ES-175 1992年製

でもやっぱり植木さんが弾いていたES-175Dはどうしても欲しかったので、結局その後Gibsonのものを手に入れて 今は手元に175が2台、いや、正確には3台あります(笑)。 やはり私にとって植木さんから受けたインパクトは強烈だったんですね。なくてはならないギターです。

やがて大学を卒業するんですが、時は就職氷河期といわれる時代。文芸部の仲間も特に就職活動を行うでもなくそれぞれバイトなどをしながら何となく世の中に出るような感じだったんです。私も神保町に古くからあるS楽器店でバイトを始めまして、そこでギターや古い楽器の事などを学ぶことになりました。ただ、こういう環境にいると嫌でもいろいろなギターと出合うわけで、結局1年に1本強のペースでギターを手に入れるようになってしまって。それは現在のブルージーでも同じ環境ですけど(笑)、その結果、今では手元に40本ほどのギターがあります。』

――自作のオールドブラック

お話を伺うかぎり、三上氏は好きなアーティストができるとその人が持つギターと同じものが素直に欲しくなり、好きになったアーティストの数だけギターが増えるタイプのよう。 そんな彼にとって、楽器店で仕事をするという事はまさに「沼の中」で働く状態であったといえよう。 それをよく表すもう1本のギターを見せていただいた。それは誰もが知る、あのニールヤングが愛した「オールドブラック」をモディファイドした、三上氏お手製のLPだ。

Orville by Gibson ES-175 1992年製

全ての塗装剥がし(再び!)とディティールの加工、オリジナルの各パーツ集めには約2年(!)を費やしたそうで、P-90のピックアップの中古を探し、ファイアーバード用のミニハムも単品の中古が出るのを根強く待つなど、このパーツ探しは自身にとって楽しくも長い長い日々であったとか。情報を辿る中で同じくオールドブラックの沼にハマった仲間と出会った事からあの特徴的な金属のピックガードを入手できたり、お店のリペアマンが忙しい仕事の後、プライベートタイムを削って塗装を仕上げてくれるなど、氏のオールドブラックはそうした仲間の協力の下、あのニールヤングの愛器を彷彿とさせるような佇まいを手に入れたのだ。

ところで、そんな三上氏、実はこれまであまりテレキャスターには縁がなかったそうであるが、「Stuff」を聴き始めたことから最近ちょっとテレキャスターが気になり始めているのだとか。ということは あの名ギタリスト、コーネルデュプリーの「ジャム-No.1」? するとまた塗装を剥がし、センターPUのザグリ加工に没頭する姿が。。

まるで少年のように眼をキラキラさせながら語る三上店長。氏の「マイギターストーリー」に、まだまだ終わりは見えそうにない。

(掲載日:2022年10月06日)

ブルージーコーポレーション

Orville by Gibson ES-175 1992年製

〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-6-9 カケイビル青山1階
TEL:03-6273-7585
営業時間:平日11:00-20:00 日祝11:00-19:00
定休日:毎週月曜日

×
×