商品説明
剣持義明氏のプロフィールは不明である。
70年代の当初から雑誌・現代ギターの広告欄では何度もお見かけしたお名前ではあるが、そのプロフィールを紹介するような記事はなかった。
失礼ながら現在では、ほとんどの愛好家の方がそのお名前を知らない、忘れられた製作家であることは否めない。
ただその製作家の手になる本器であるが、同時代の有名ブランドのギターと比しても決して見劣りするものではなく、むしろ頭一つ図抜けた感がある。
その精巧な工作技術を見る限りでは、おそらくは独力で修業されたのではなく、どなたかの工房で長らく有名ブランドのギター製作に携わってきた方とお見受けする。
さて本器であるが、前述した精緻な作りと使用材のレベルの高さに目を奪われる。
表面板は少し横目の入る細やかな木目の極上のスプルース。
指板は指当たりの滑らかな真正の黒檀。
側板&裏板は黒味の強い真正のインディアンローズウッド。
少し話がそれるが、インディアンローズウッドにしろハカランダにしろ漆黒に近い黒味の強い材が極上とされる。
それとは逆に色味が薄い茶褐色で、木目が派手で目立つ材は
もはやインディアンローズウッドとは呼べないものと思う。
ソノケリンという木材をご存知であろうか。
楽器店やメーカーではその名前を使わないので、ご存知ない方が大半と思われる。
ソノケリン材とは、インディアンローズウッドの種や苗木を
本来の自生地である気候の寒冷なインド北部・パキスタン・ネパール…等のヒマラヤ山系の国々で育てるのではなく、高温多湿の東南アジアやインドネシアで植林した材である。
高温多湿の気候ゆえ成長が早いが、言わばそれは促成栽培された材で、現在ではローズウッド材としてアコースティックギターやクラシックギターにも広く用いられている。
真正のインディアンローズウッドに比べ、比重も軽く、軟質で、樹脂分(油分)も多い。
当然ながら音響特性も程度の差こそあれ違うと思われる。
本来はインドネシア・ローズウッドとでも呼称すべきと思うが、いかがであろうか。
肝心な本器の音であるが、スプルース特有の硬質な音ではなく、やや甘美なそれでいて甘さに流れない凛とした気品と深い情感をたたえている。
また弦のテンションも柔らかいのでビブラートもかけやすく
その音もまた絶品といえる。
一度手に取ると弾き手を何時までも飽きさせない、まさに名品の音と思う。
弾き易さについては弦長655㎜ながら、12フレット上の弦高が6弦側3.2㎜、1弦側2.5㎜、の数値でフラメンコギター並みに弾き易い。
ナット幅も50.5㎜と小振りで、ネックの形状もやや薄く絶妙に仕上げてあるので、とにかく弾き易いギターである。
指を故障された方や女性の方にも安心してお勧めできる。
状態としては、相応の弾き傷&打痕、左右の側板に目立つものではないが塗装の擦れ…等はあるが、割れ補修など重大なものは何もない。
中古ギターとして、この先も長く弾いていただけるような良い状態を維持している。