商品説明
関山公道(せきやま きみみち)氏の為書きラベルの作品。 個人名が書かれているので、オーダーによって製作されたものと思う。 関山氏は、東京都北区上中里に工房を開かれた、昭和期を代表するベテラン製作家のお一人である。 自身の話で恐縮だが、自分のように雑誌「現代ギター」の創刊当時から愛読している者にとっては、どこか懐かしいお名前でもある。 現代においては、クラシックギターのようなマイナーなジャンルでさえ、その気になれば溢れんばかりの情報や動画等が手軽に入手・閲覧できるが、自分がギターを始めた頃はギターの全般的な情報が乏しく、唯一の情報源であった「現代ギター」などは隅から隅まで何度も何度も読み返したもので、その時の内容はおぼろげながらでもまだ頭の片隅に残っている。 近頃は加齢のせいか、最近覚えた名前や事柄などは、覚えた端からどんどん忘れていくが、それこそ自分が中学生の頃に覚えた関山公道氏のお名前などは決して忘れない。 関山氏については、元々が個人注文がメインな方のようで製作本数も少なく、そのお名前を知ってから実に半世紀以上の時を経て現物のギターを今回初めて見る事が出来た。 やはり寡作な製作者らしく実に丁寧に製作されており、その工作精度は非常に高いレベルにある。 肝心の音については、一音一音と音の輪郭が明瞭で引き締まった美音であり、低音と高音それに和音を弾いた時のバランスが素晴らしい。 発音が明瞭なので、たとえばテンション系の和音や♭系のセーハを伴う複雑な和音も心地よく響く。 弾き易さについては、オリジナルな弦高設定が12F上で、6弦=3.5㎜、1弦=3.0㎜、等々の数値で、実に弾き易く設計されている。 弦高といえば大抵の方は12フレット上の弦高を気にされるが、ローポジションの押さえに直結する 1フレット上の弦高にも、もっと着目されても良いと思う。 本器のそれは絶妙に調整されており、たとえば1フレットのセーハも抜群に押さえ易い。 これも私事だが、最近はB・パウエルやジョー・パスなど10代後半の頃に夢中になった楽曲に改めて強く惹かれるようになった。 そのB・パウエルだが、開放弦とセーハを素早く交互に弾く独自のパーカッシブ奏法ゆえに、たとえば1フレット・セーハの和音(特に多用されるのがB♭7-5やF♯dim等)の押さえが困難で音が出切らないギターが多い。 そんなものテメーの拙いテクニックのせい、と言われれば返す言葉もないが、本器のように1フレットの弦高が絶妙に調整された個体であれば、押さえ易さがまるで違う。 とにかく、ローポジションからハイポジションまで弾き易いギターであるのは間違いない。 状態としては、年代相応の弾き傷や若干の塗装の擦れなどあるが、重大なものは一切ない。 また別途お問合せいただければ、画像付きでより詳細な状態をお知らせできると思う。 最後に本器の仕様については、トップ/スプルース、サイド&バック/ローズウッド、指板/黒檀、等々で良材が使用されており、もちろんオール単板仕様である。