商品説明
1960年から始まるラミレス3世の栄光の歴史を飾るパウリーノ・ベルナベ製作の記念碑的ギターの第一号と思われる作品です。
この作品、弦長は664mmで1963年頃以降、表面板が杉材で製作されるスタンプ入り・ラミレス3世の原点になると思われるギターですが、表面板は従来の松材(ラミレス3世がギター製作史上初めて表面板に杉材を使用する以前)で、しかもネックの付け根のベロには“PB”のスタンプが刻印されています。
ラミレス3世が工房を引き継いだのは父である2世が1957年に死去する前になります。
当時ラミレス2世の工房は多くのギター職人を抱えており、工房の後継者となった3世はその職人達の生活の面倒も見なければず、そのためにはこれまで以上に売れるギターを作っていかなければならない経営者としての責任がその肩に重くしかかっていました。
ただ、それ以上にラミレス3世は父の作るギターを超える作品を生み出すギター製作家としての職人気質が勝っていたようで、父2世の先代であるラミレス1世から続くスペイン伝統的ギターの流れから逸脱するギターを作ってはならないと、2世から厳命されていたにも関わらず、更に上を目指すべく密かにハウザー1世に強く憧れを持って研究していたと伝えられています。
ラミレス2世はあまりハウザー1世を評価していなかったようで、息子の3世にはセゴビアが使用して世界的人気を博したハウザー1世のギターと雖も時流に迎合するギターは製作して欲しくなかったと思われます。
それでも2世の死去によって、皮肉にも先代からの呪縛から解放されたラミレス3世は革新的ギターの創作へと邁進することになります。
その後は、と言えば順風満帆とは真逆で、2世の没年の1957年からこの作品が生まれる1960年までの3年間はまさに血のにじむ試行錯誤が繰り返されたとのことです。
スペイン・ギターの伝統的設計とハウザー1世の音との融合、という難問。
その3年間の革新的ギター創出の試作期間にあっても、ラミレス3世は一定のギターの売り上げは維持して行かねばならず、その苦労の様子がその時期に製作されたギターのスペックから垣間見ることが出来ます。
1960年という同じ製作年でありながらラミレス3世のギターには2世縁のボディーで少し小振りな旧モデルと、このギターのように弦長664mmでボディーも大振りな革新的ギターが混在し、ラミレス3世が今般の先進的経営者にも通じる、経営の現実と未来に向かってのイノベーションの両立、を図っていたことが窺えます。
それに更に想像力を膨らませると、ラミレス2世から引き継いだ職人の中でも特に優秀だった人気のスタンプラミレスとなるP.ベルナベやM.テサーノスには、革新的ギターの試作に従事させる一方で、伝統に拘泥する職人には旧スペックのギターを製作させるという、ラミレス3世ならではの職人達への役割の棲み分けが感じとれ興味深いです。
そんな経緯を経て製作されたこの記念すべきPBスタンプ・ラミレスは、その数年後からベストセラーとなる表面板が杉材の3世とは異質のポテンシャルを有しています。
表面板は松材特有の音質で、透明感と涼やかな響きに優れ、力強くも上品にギターの醍醐味を満喫させてくれます。
その音の特徴は従来のスペインギターとは一線を画しつつ、一括りに杉材のスタンプ入りラミレス・トーンに代表される甘く・分厚い音色とも全く別のテイストです。
状態:全体的に極めて良好で使用感があまりないところもその歴史的価値を高めています。
表面板のセンターにはサウンドーホール真下から1本のクラック痕がありますが、丁寧に修理されておりあまり目立たないので、このギターの本来の価値を下げるモノではないと思います。
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03-5281-0922(担当:カワヒラ)