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ギターテクニック-Guitar Technique-

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大友博の音楽旅コラム LONESOME HIGHWAY

VOL.11 WHEN THE SUN GOES DOWN

以前、あるFMステーションのプログラムで、旅と音楽をテーマにしたコーナーの構成と選曲を手伝っていたことがある。ほぼ毎日のペースでエッセイと詩の中間のようなものを書き、そのテーマやイメージにあわせて曲を選ぶ。あるいは、曲にあわせて、エッセイと詩の中間のようなものを書く。もちろんそれを読むのは本職のDJ。いい仕上がりの時は、夕暮れ時の東京にひとつの異空間を創出することができたような気がして、勝手に喜んだり、満足したりしたものだが、そういったもののひとつを若干手直しした形で紹介したいと思う。ちなみに、この時にかけたのは、前々回のコラムのタイトルにも使ったトム・ペティの「イントゥ・ザ・グレイト・ワイド・オープン」だった。

西に向かって、ひたすら西に向かって車を走らせる。
毎朝、夜明けとともに目をさまし、薄いコーヒーで
ベーグルを流し込むとすぐ、ハイウェイに出る。
誰かと口をきくのは、ガソリンを入れて、空気圧をチェックし、
ついでにサンドイッチとミネラル・ウォーターを買う時ぐらい。
あとはひたすら、ただひたすら、西に向かって走る。

走りはじめてからしばらくのあいだはバックミラーに映っていた太陽が、
気がつくと、真上から車の屋根をじりじりと焼いている。
そして、やがては、その太陽が目の前の地平線に沈んでいく。
そうやって刻一刻と変化していく空の眺めが、旅のナビゲーターだ。

太陽が完全に地平線の向こう側にいき、空が茜色に染まったころ、
たどり着いた街の安モーテルに落ち着く。
明日もまた、無限の可能性の象徴のようでもあり、
行く手をはばむ壁のようでもある空に語りかけながらの旅がつづく。

カリフォルニア州東部ニューベリー・スプリングの夕景。映画『バグダッド・カフェ』の撮影が行われた場所だ。

カリフォルニア州東部ニューベリー・スプリングの夕景。映画『バグダッド・カフェ』の撮影が行われた場所だ。

若いころ、意味もわからずに読んだケルアックの『オン・ザ・ロード』。あるいは、40代を迎えたばかりのころ、影のある主人公と過去の自分をどこかで重ねあわせるようにして読んだポール・オースターの『ムーン・パレス』。それらの名作で描かれる旅は東から西に向かうものだった。

もちろん、厳密な意味で東から西に向かう移動である必要はないのだが、旅の暮らしのなか、夕暮れ時になにかに想いを馳せる、その気持ちが人を表現に向かわせるのではないだろうか。ロックでいえば、ジェイムス・テイラーの「ユー・キャン・クローズ・ユア・アイズ」やヴァン・モリソンの「クレイジー・ラヴ」などは、まさにそういう状況から生まれたものであったはずだ。モリソンには『アヴァロン・サンセット』という印象的な名作もある(アメリカン・ニュー・シネマの時代を象徴する名作『イージー・ライダー』と『断絶/トゥー・レーン・ブラックトップ』は、いずれも西から東への旅を貴重としていた。あれは開拓時代的価値観へのアンチテーゼでもあったのだろうか)。

ブルースに近づいた旅

90代の末、幻のオールド・ハイウェイ=ルート66を使ってシカゴからロサンゼルスのサンタモニカ・ビーチまでを走り抜ける旅を体験した。いろいろな意味で、長く記憶から消えることのない、きわめて貴重な体験となったのだが、その旅を通じてなによりも強い印象を受けたのは、日々、さまざまな表情をみせるアメリカ大陸の夕景だった。

前半で紹介したエッセイ/ポエムにもあったように、朝、車を街道に乗せたころは、バックミラーに大きな太陽が映っている。早朝の出発なら、朝焼けが広がっていることもあるわけだ。何時間か走り、ちょうど空腹を覚えはじめたころ、太陽はほぼ真上に来ている。背後から追いつかれたような、そんなイメージだ。一気に気温も上がる。

モンタナ州のメキシカン・レストラン。

モンタナ州のメキシカン・レストラン。

ひと休みしたあと、数時間走ると、太陽はもう、フロントガラスの向こう側にいっている。追い越されてしまったわけだ。やがて太陽は地平線の向こうに沈み、美しい夕焼け空が広がっていく。茜色という表現がよく使われるが、地勢やその日の気候に応じて、夕焼け空は毎日、その表情を変える。なにかを想わざるにはいられない。どこかにいってしまった誰かであったり、過去の一時期であったり、あるいは詩への誘いであったり。ともかく、なにかを想わざるにはいられない。大陸を旅するあいだ、夕焼け空は、毎日そういった、根源的な喜びを与えてくれた。

カリフォルニア州のモハビ砂漠。ヨシュア・トゥリーを夕陽が美しく染めていく。

カリフォルニア州のモハビ砂漠。ヨシュア・トゥリーを夕陽が美しく染めていく。

もちろん、これだけで充分といえるわけだが、僕が好きなのは、太陽が地平線の向こうに沈み切ってから数十分後に見ることができる、いわゆる残光という光景だ。英語なら、アフターグロウというのだろうか。この場合は、晴天より、多少は雲があったほうがいい。雲が多すぎて夕焼けを拝むことができなかったのに、信じられないほど美しいアフターグロウを目にすることができたということも、実際に何度かあった。

サンタモニカを訪れた際、いつも利用する立体駐車場で目にした夕景。あまりにも美しいアフターグロウに、言葉を失った。

サンタモニカを訪れた際、いつも利用する立体駐車場で目にした夕景。あまりにも美しいアフターグロウに、言葉を失った。

しばらく山道を走ったあと、夕焼けに照らされた街を目にした時の、あの、安らぎにも似た感触。ニューメキシコとアリゾナの州境を越えた時、その向こうに広がる荒野を染めていた夕焼けの、神々しいほどの美しさ。都市のビル群をシルエットのように浮かび上がらせるアーバン・サンセット(という英語表現もあるらしい)。サンタモニカ・ビーチからマリブ・ビーチにかけての夕景。西に向かって走りつづけたあと、まるでなにかのご褒美のような感じで、目にすることを許されたいくつもの光景が、また新しい旅へと僕を誘う。

コラムで紹介した音楽

ヴァン・モリソン
Avalon Sunset [Original recording remastered] [Import] [from US]

偉大なアイリッシュ・シンガー・ソングライター、ヴァン・モリソンは、これはまったく個人的な意見だが、夕暮れ時をイメージさせる曲を数多く残してきた。89年に発表されたこのアルバムがいい例。ロッド・スチュワートのカヴァーでヒットを記録した「ハヴ・アイ・トールド・ユー・レイトリー」も収められている。(大友)

ヴァン・モリソン
ムーンダンス [Original recording remastered]

70年に発表され、ヴァン・モリソンの評価を決定づけたソロ3作目。本文中で紹介した「クレイジー・ラヴ」や「イントゥ・ザ・ミスティック」、「キャラヴァン」など深い味わいの名曲がずらりと並んでいる。(大友)

Jack Kerouac(著)
On the Road (ペーパーバック)

いわゆるビート・ジェネレーションの代表的作品で、60年代のロック世代にも多大な影響を与えた名作。1950年前後のアメリカを舞台に青年たちの旅と精神的彷徨、苦悩や夢がスピード感にあふれた美しい文章で描かれている。ちなみに、今回のコラムのタイトルは、最後のパラグラフからいただいたもの。(大友)

Paul Auster (著)
Moon Palace (ペーパーバック)

デビュー当時から熱心に読みつづけてきた現代アメリカ人作家、ポール・オースターの代表作(89年発表)。69年のニュヨークを舞台に自己のアイデンティティを求める青年の彷徨が、やがてアメリカ大陸を横断する旅へとつながっていく。終盤は、『オン・ザ・ロード』とイメージの重なる部分も多い。(大友)

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