商品説明
70年代の当初から製作されていた高知のベテラン製作家。
田村満ギター工房のご出身である。
当時の現代ギター誌の広告欄にもお名前は出ている。
農業に従事する傍ら、年に2~3本のペースでご自身が納得できるギターのみを世に出されていた。
90年代の一時期は愛知県西尾市で活動されていたが、晩年はふたたび郷里の高知県で、本名の「岩田博行ネーム」で製作を続けられていた。
ただ数年前に惜しくも他界されている。
岩田氏は2018年頃までは製作をお続けになったらしいが、その晩年期になってようやく岩田ギターの真価が一部マニアの間に浸透し始め、それに伴い岩田ギターの価格も上昇した。
近年の作はローズモデルでも70万円程度の高額なギターとなっている。
昔から岩田ギターの真価を知る自分としては「何で今頃になって、遅すぎるだろう」の感はあるが、継続的な宣伝力や強力な販売ネットワークを持たずコツコツと製作を続けるだけでは、ギター製作家として世に出ることの困難さを改めて感じる次第である。
何も劇的にギターが変わった訳ではない。
その作風は70年代から近年まで一貫して変わらず、製作家としては頑固一徹な方とお見受けする。
その一例を上げる。
クラシックギターのネックの「仕込み角度」をご存知であろうか。
ボディとネックの接合部分の角度である。
試みに、ご自身の愛器を横向きに目線の高さにして、かつ表面板を水平にして、ヘッドからネックまでご覧いただくと、その結合部分に角度がついているのがお分かりいただけると思う。
順反りしているわけではない、ましてや「ネックの元起き」しているわけでもない。
クラシックギターがエレキやアコギと決定的に違う点は実は多く、この仕込み角度もその一つ。
余談になるが、過日YOU・TUBEで某リペア工房の動画を閲覧したが、この仕込み角度を「ネックの元起き」と判断してネックを表面板と水平になるよう仕込み直していた。
ネックを外す技術は凄いが、残念ながら大前提が間違っているとしか言いようがない。
話を岩田ギターに戻すが、岩田ギターの「ネックの仕込み角度」は昔から近年の作まで一貫して国産手工ギターとしては比較的に大きくとる。
ホセ・ラミレス1aを筆頭に、かってのスペインギターはこの「仕込み角度」を大きくとるのが特徴の一つと思う。
極論とは思うが、最近の製作家は弦高をかなり重視されるので、この「仕込み角度」が小さい傾向にある。
それでは何故この「仕込み角度」大きくとるのか、まず一番には弦を強く弾いた時に弦の振幅も大きくなり、「仕込み角度」をつけないと弦がフレットに当たる確率が大きくなる。その他にもメリットはある。
詳しく書き出せば膨大な文章量になり、とても書くことは出来ないが、要点だけを申せば「弦テンションの柔らかさ」、「ビブラートがかかりやすく、多彩な音色がだせる」、「弦高の調整が、かえってしやすくなる」…等々になる。
岩田ギターは一見すると、ごく地味な外観のギターだが、高度な製作技術で組み上げられ、音色・音量・バランスとも素晴らしいギターと思う。
また本器については適正な弦高調整がなされており、12フレット上の弦高が6弦側3.9㎜、1弦側2.6㎜、で弾き易い弦高になっている。
本器の状態については、同年代のギターとしては傷&打痕は比較的に少なく外観はキレイな状態にあるが、表面板の繋ぎ目であるセンターシームに補修歴がある。
補修自体は確実にまた丁寧に処理されているので、画像のようにあまり目立つものではない。
またセンターシームの裏側には力木がはしっており、それとも強力に圧着されている事から補修自体の強度は大きい。
本器の仕様については、表面板/スプルース、側板&裏板/インディアンローズウッド、指板/黒檀、…等でもちろんオール単板仕様になる。
また本器のローズウッドは真正のインディアンローズウッドで、昨今おおはやりの代替材ではない事を一言付け加えさせていただく。