商品説明
73年製作の菊池正義ギターになる。
自分の思い出話になるが、菊池正義ギターを弾いたのはおよそ半世紀前になる。
場所は当時アンチ・河野賢ギターの店として、ある意味では有名であった東京ミック様で弾かせて頂いた。
同店には舶来ギターは勿論、国産手工ギターも数多く品揃えされていたが、当時の自分には製作家のお名前さえ知らないギターばかりであった。
クラシックギターを買うなら、河野ギターか中出ギターという言わば有名ブランドのギターを購入したいという一心であったので、最初は少しがっかりしたのだが、店主様のお勧めギターを順番に弾かせて頂いた。
正直なところ驚きの連続であった。
どのギターも素晴らしかったが、中でも菊池正義ギター・松永仁一郎ギター・山野輝慈ギターが秀逸であった。
当時はサラリーマン一年生で、初めて頂いたボーナス+給料を片手に、田舎の青年が花の東京にギター探しの旅に出た、というわけである。
結局のところ他店で河野ギター30号を購入したのだが、思い返せば雑誌・現代ギターの熱烈な読者であった自分が、何時の間にか「河野ギターこそが日本一のギターである。」そういう思い込みというか、一種の刷り込み現象があったように思う。
河野ギターはその後20年近く愛用したが、あくまで個人的な感想をいえば、確かに太く甘い河野トーンは魅力的ではあったのだが、弦のテンションが強くその分音色の変化に乏しいところがあったように記憶している。
設定された弦高も高く、当時の自分の拙い演奏技術では荷が勝ちすぎる所があって少し弾きづらいギターであった。
そしてそれにつけて思い出されたのが、東京ミック様で試奏した3本のギターで、音色・音量を保ちながら3本ともとても弾き易いギターであった、という思いである。
いずれも新品ギターであったが、もしかすると東京ミック様の方で綿密な調整がなされていたのかもしれない。
おぼろげながら当時の心境をたどると、この3本の内どれかを選んで購入したかった…心の奥底ではそういう気持ちがあったのだと思う。
結局は当時の自分のブランド志向?に引きずられたということだろう。
当店ではお客様のご要望があれば弦高調整(12F上の弦高は勿論、場合によってはナット弦高≒1F弦高も)をさせていただいているが、その際に心がけている言葉がある。
「本当に弾き易いギターは最良のギター教師である。」
自身の経験をもとに考えた言葉であるが、これは絶対の「真理」であると確信している。
例えば、何年も或いは何十年も練習して弾くことが叶うことがなかったフレーズや曲も、ギターを変えた途端に魔術のように弾けるようになった…そういう事例も少なからず見聞きしている。
1本のギターとの出会いが、あなたのギターライフを根底から変えることがあるかもしれない。
だからいくつ何十になってもギターをやめられない。
本器はもしかすると自分のギターライフを変えたかもしれない、菊池正義氏の秀作である。
哀感と気品が匂い立つ美音、柔らかいテンションで音色の変化にも敏感に反応する。
12フレット上の弦高は、6弦4.1㎜、1弦3.0㎜と標準弦高だがとても弾き易いギターである。
サドル残も3.0㎜~3.5㎜程度あるので更なる調整も可能。
状態としては、少し弾き傷が多いが、割れ補修など重大なものはない。
中古ギターとしてはとても健全な状態にある。