商品説明
【受注生産品】
ギターのボディーは,響板となる表面板が振動することにより音を発し,裏・側板は振動する表面板をしっかりと支える役目があります。支える役目の裏・側板が一緒に振動してしまうと,表面板は正しい振動ができなくなります。そのため裏・側板には,硬くて重いローズウッドなどが用いられますが,それでもまだ随分振動しており,表面板の振動を邪魔しています。そこで,このModel CL-Sでは,オーディオのスピーカーの理論を応用したボディが使われています。高級スピーカーのボディ(エンクロジャー)は,スピーカーの振動板のみを正しく振動させるために,極めて強固に作られており,どんな周波数の振動にも共振しない工夫がされています。それにより,振動板は入力された信号に極めて正しく振動し,必要な音のみを発し,余分な音を発しません。ギターのボディにも,これと同じ考えがあてはまります。表面板の周囲には厚く頑丈なフレームが入っており,側板とともに表面板をしっかりと支え,表面板に余分な振動をさせない構造になっています。
もう一つの特徴は,裏板が膨らんだラウンドバックです。通常,ギターの裏板は,薄い板を中央で継ぎ合わせるので,サウンドホールから裏板内側を見ると,横向きに数本の補強材と中央に縦に1本木材が入っています。しかしこのCL-Sの裏板は,厚いローズウッドから,ヴァイオリンのように削り出すことにより,裏板が膨らんだ構造になっています。そのため補強が必要なく,裏板の内側には,音の反射の邪魔になるような補強材がありません。
ギターの表面板の裏側には,力木という数本の木材が取り付けられており,ギターの音質は,この力木の長さ,太さ,配置などにより決まります。それぞれの製作家やメーカーは,ここに様々な工夫をこらすことにより,独自の音を追求しています。19世紀末からクラシックギターでは,6〜7本の力木を団扇の骨のような扇状に配置する方法が最も一般的ですが,現代のアコースティックギター(フォークギター)などでは,より大きく張りのある音を目指し,主に格子状の力木配置が採用されています。このCL-Sでは,アコースティックギターのような格子状力木をクラシックギター用に改良した配置を採用し,先に述べたフレーム構造とともに,クラシックギターの独特な音色を維持しながら,より大きく力強い音を追求しました。
表面板にはヒマラヤスギという木材を用いています。これは一般にギターに使われるスギ科の米杉(レッドシダー)ではなく,スプルースと同様のマツ科に属する木材です。木の外観がスギに似ているために,日本ではヒマラヤスギと呼ばれていますが,植物学的にはマツ綱(Pinopsida)/マツ目(Pinales)/マツ科(Pinaceae)/ヒマラヤスギ属(Cedrus)に属す木です。見た目にはやや赤みがかかった木質で,スギのように見えますが,音質は松と杉の中間的な音です。