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vol.10 岡山/倉敷市「ギタートレーラー」オーナー:スコット チャドウィック 氏 (1963y) TJ Thompson '31 OM-18 1990年製

Vol.10 岡山/倉敷市「ギタートレーラー」
オーナー:スコット チャドウィック 氏 (1963y)
TJ Thompson '31 OM-18 1990年製

岡山/倉敷市「ギタートレーラー」オーナー:スコット チャドウィック 氏 (1963y)

――メリーランドから倉敷へ

江戸時代の情緒を残す岡山県倉敷の美観地区。ここからほど近い街道沿いでコンテナをショップに改造した「ギタートレーラー」を営むのは、アメリカ・メリーランド州出身のスコット チャドウィック氏。

氏は1991年にミュージシャンとして来日、日本人の奥様と結婚後、2017年に長年の夢であったギターショップをこの倉敷にOPENする。

――2本の日本製ギターとの出会い

スコット チャドウィック氏 幼少期

スコット氏が初めてギターを手にしたのは8歳の時。クリスマスプレゼントにもらった荒井貿易製"LYLE"のSGタイプだった。6歳離れたロック好きの姉の影響もあり、Mountainの「Mississippi Queen」が弾きたくて近所の楽器店でレッスンを受けたという。
このギターは後に友人が持っていた「NAGOYA SUZUKI」のアコースティックギターと交換したそうであるが、この2本のギターが共に日本製であったことからも何かしら日本との「縁」を感じると話す。

『メリーランドは昔から音楽やアートが盛んな場所で、私も小学校2年生から大学まで、ずっとクラシック・トランペットをやっていたんです。もちろん、現在もトランペットを演りますが、ギターは大学でブルーグラスをやるようになってから気を入れて弾くようになりました。
この頃は時々カフェなどで演奏したりしましたが、一番の思い出は当時住んでいたミシガン州からフロリダ州のキーウエスト島まで毎日いろいろな場所で演奏しながら片道約3,000kmを2ヶ月ほどかけて車で旅したこと。
たまにギャラをもらえることもありましたが、ほとんどチップで生活していました(笑)』

――Elderly Instruments からの音楽人生..

『その後ミシガン州に戻り、21歳の時1983年に名店「Elderly Instruments」に勤務することになったんですが、この時に周りの先輩などに「ホンモノのギターを買いなさい」と諭され、ちょうど店に入荷した'64年のEpiphone Texanを購入しました。
また、この頃からギターやマンドリンを本格的に弾くようになったんですが、その翌年にあるバンドがベーシストを募集しているという話を聞きまして、ちゃんと弾いたこともないのに「やります!」とエントリー(笑)。
その日の夜に、店のベースを借りて帰ってオーディションを受けたところ、まさかの合格。。(!)
というわけでその日から早速ベーシストとしても仕事を始め、6年後にはミュージシャンとして日本にやって来ることになったんです。
もちろん現在も弾き語りやレコーディング、トランペットやヴォーカルのジャズ演奏などを定期的に行っていて、フジタユウスケ氏のアルバムにも参加したり、自分でもアルバムをリリースするなど音楽活動を行っています。』

――TJトンプソンのスペシャルギター

TJ Thompson '31 OM-18 1990年製 1
◆TJ Thompson '31 OM-18 1990年製

『エルダリーで働いていた1986年のこと、今では大変有名なルシアーとなった「TJトンプソン氏」が修理工房のマネージャーになったんです。彼は住む家を探す間、私の家から通っていたこともあって、大親友になりました。
また、同時期に彼はエリック・ショーンバーグ・ギターズにも関わるようになり、私も検品のためにTJやダナ・ボジョアと共にMartinの工場に出向き、ディック・ボーグ氏の自宅に泊めてもらったこともありました。
のちにTJがショーンバーグを任されるようになった1989年に、私は彼に私自身のための'31スタイルのOMを作ってもらうことになったんです。
当時から人気があったのはやはり45タイプでしたが、私はあえてマホガニーモデルの「OM-18」に拘りました。』

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TJ Thompson '31 OM-18 1990年製 6

『これは私にとって、「世界に1本」のギターで、トップ材のアディロンダックスプルース、サイドバックのホンデュラスマホガニーなど、材は全て自分で選びました。接着は当時のままのニカワで、バーフレット(TJは現在もこれを得意とします)にバンジョーペグ、ロングサドルのまさにヴィンテージスタイルのカスタムモデルです。
実はこのギターが出来上がった時、ちょうど私はベーシストの仕事で日本に来ていて、代わりにアメリカの友人が受け取ってくれたので、初めてこれを弾いたのはその友人でしたが(笑) 帰国して初めて弾いた時には TJトンプソン特有の綺麗なサスティーンと、素晴らしく軽やかな響きに感動したことを覚えています。それ以降、まさに私は「宝物」としてこのギターを大切に弾いてきました。
昨年アメリカに送って30年ぶりのメンテナンスをしてもらいましたが、これまで特に修理などはしておらず、現在も当時のままの良いコンディションを保っています。』

――コンテナを改造したギターショップ

コンテナを改造したギターショップ

ギターショップをやってみたいと長年思っていたスコット氏であったが、たまたま自宅のほど近く、倉敷美観地区より1.5キロの郊外にあるコンテナの複合商業施設から店を移転する知人が声をかけてくれたことをきっかけに一念発起。2017年9月にこのお店をOPENすることができた。
自身でもブルーグラスやフォーク系ミュージックに長年親しんできたことから、楽器はアコースティックギターを中心に、ウクレレ、マンドリン、バンジョーなど、生まれ故郷のアメリカの音楽にちなんだ楽器を自分なりのこだわりを持って仕入れてきた。

現在、氏の「イチオシ」は2020年にアメリカバーモント州で生まれた「IRIS」という若いギターブランドで、このように知名度は低くてもよくできたギターを日本のアコギファンに紹介して行きたいと語る。
また、ギタートレーラーでは打田十紀夫、告井延隆、藤本一馬、井草聖二、Joshua Breakstone、フジタユウスケ、塚本浩哉、豊田渉平、西山隆行(敬称略) といった国内外の素晴らしいギタリスト、ミュージシャンによる店内ライブも開催。スコット氏もオープニング演奏や彼らとの共演など、ステージに立つこともあるそうで、今後も積極的に音楽活動を続けたいと語ってくれた。

< スコット氏の2枚目アルバム(2022年4月リリース) >
Scott Chadwick on Apple Music

(掲載日:2023年7月5日)

Guitar Trailer(ギタートレーラー)

Guitar Trailer(ギタートレーラー)

〒710-0014 岡山県倉敷市黒崎70-1
TEL:086-442-8063
営業時間:15:00-19:00(土曜日/13:00-19:00)
定休日:毎週水曜日・日曜日

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