商品説明
古びてはいるが上質な和紙のラベルに「手工品 渡辺美樹」とある。 外観もまた古びてはいるが、当時としては珍しい塗装のマット仕上げがそうさせるのか、地味ながら上品なイメージを保っている。 また普通はあまり意識されない内部の力木やペオネス等の仕上げも丁寧で、総合的に見て、まさに額面通り「手工品」と判断してよさそうなものだが、多分違っていると思う。 名古屋市内に、つい先ごろまであった「㈲ナゴヤ楽器」様だが、近年は、CD・DVD・書籍そして楽器を取り扱うショップ形態に業態を変えられていたようだが、元々は1948年創業のギターを主体にした楽器卸し業者様であった。 主力であるギターのブランド名は「Metoro Guitar」で、クラシック・アコースティック・ピックギターなど多岐にわたって取り扱いされていた。 国産の古いギターがお好きな方であれば、このブランド名のギターは御存じかも知れない。 そしてこの渡辺美樹ギターであるが、かなり前にヘッド裏に「SALES AGENT NAGOYA GAKKI 」とシール貼りされた別の個体を見た事があり、先のナゴヤ楽器様で取り扱いされていた事には間違いない。 シールにあるのは販売代理店の意味だが、実際は他のMETOROギターと同じく、同社が隣県であり現在に至るまで日本のギターメーカーの中心地である長野県の何れかのメーカーにOEM生産させたものと思う。 長野県のメーカー数であるが、ギター生産の最盛期と思われる72年度の「長野県工業名鑑」からの抜粋であるが、一定規模の中小メーカーだけで54社、それ以外でも木工関連でギターも生産する家内工業のような零細なメーカーも含めると、200とも300とも言われる程の数であった。 ただハッキリというが、それらのメーカーで生産されたギターの多くは、かって「下駄屋がギター屋になった」と揶揄されるようなレベルであったのは紛れもない事実であろう。 しかし全部が全部、そうだと言うわけではないと思う。 何か手前味噌を言う様で大変恐縮ではあるが、個人的な趣味もあって、その時代に生産されたギターを数多く見てきた、その数の多さだけは誰にも負けない、そういう言わばオタク的な歪な自負はある。 過去に見てきたギターの中には、ほんの一握りではあるが、それが量産ギターなのか、手工品なのか、外観や音質面も含めて、すぐには判断できないものがある。 もちろん名だたる製作家の手工ギターに比肩するという意味ではないが、それら手工品に比べ「あと少し、もう少し、惜しい、実に惜しい」というようなレベルのギターも存在する。 純正な手工品(ほとんどが全単板仕様)と比べ使用材が劣るのが量産品と呼ばれるギターの定義の一つだが、この使用材の差だけが「あと少し」になったように思えるギターもあった。 ギターの音色・音質、なかでもクラシックギターの音色・音質の好みは人様々でありハッキリとこうだと断定する事など出来ないが、本器については一般的な量産ギターと比べ、いわゆる純正な手工品との距離は遥かに近いところに位置すると思う。 最後になるが本器の仕様については、オール合板仕様で (※サイドにしっかりとした割れ止めはあるが合板と判定している。)、指板/ローズウッド等で当時の量産ギターとしては良いレベルの仕様と思う。