商品説明
製作者の牧野氏は茶位幸信工房のご出身。 一度は工房を辞められ、製作家として独立されたのだが、優れた職人であっても、優れた商売人とは限らない。 いやむしろ、そのようなケースの方が稀であろうと思う。 大手の小売業では言い古された言葉だが、「商・販・宣」というのがある。 商品を拡大販売させるには、まず商品力(品質・価格)、次に販売力(店舗や代理店も含む営業力)、そして宣伝力の三要素が必要とされる。 日本で最も有名なクラシックギターであるK・Sブランドを見れば、お分かり頂けると思う。 現代であれば、PCのネットワークで自身の製作した商品の情報を発信できるが、何十年も以前であれば、それも叶わない。 いくら良いギターを製作しても、販売力と宣伝力がなければ、一般の愛好家までには届かない。 親方の工房を卒業し、自身の工房を開き、勇躍、自身の思う様なギターを製作し始めても、すぐに売れていくわけでもない。 販売店との地道な営業と名前を知ってもらう為の地道な広告等が、何年も必要となる。 自身の名前と作品が、一般愛好家の間にじわじわと浸透するまで、これを続ける事が出来た者だけが、ギター製作家として長く活動できるものと思う。 残念ながら牧野氏も、70年代後期の数年で自身の工房を閉じ、元の茶位工房へ戻られたと聞く。 70年代後期の数年間のみ、個人製作家として活動されたのみであるが、その間は茶位工房では製作できなかった自身の創意工夫を凝らした独創的なギターを製作された。 その製作方法は少し変わっていて、通常はネックとヘッドは一体型だが、このギターはヘッドとネックは別々に製作され、ナットが埋め込まれる部分で張り合わせてある。 通常のネック&ヘッドであれば強度的に一番弱い部分(ネック折れの大部分がこの場所)が、こうする事で強度が増している。 また通常のネックはネック部分と指板の張り合わせで二重構造だが、このギターは間に別板の黒檀が挿まれていて、丁度サンドウィッチのような三層構造、いわずもがなネックの補強の為であろう。 肝心の音については、少し甘いが純度の高い透明な音色で、強く弾いても、弱く弾いても、どのようなタッチでも良く反応し、音色・音量ともに素晴らしいものがある。